(第36章)自殺者の怨念

(第36章)自殺者の怨念

 

エイダはポケットラジオから聞こえた日本以外の別々の様々な

外の世界の国々のニュースに深刻な表情を見せた。

アメリカ。あとエイダさんの国の中国やオーストラリアやアフリカ!クソっ!」

エアは悔しさのあまり歯ぎしりをした。

しかもこれらの異世界化はそれぞれ人間の心の闇と更に明らかに

オペラ座の怪人・サトル・ユウマ』の精神の接触によって心を侵食されて

具現化している可能性が考えられた。

例えばポケットラジオのニュースの日本のケースの場合ー。

そのニュースを男性アナウンサーが困惑した様子で原稿を読んでいる感じがした。

しかも時々、ノイズが掛かったり、雑音が入ったり、

聞き取りにくいが幸いにも大体の内容は理解出来た。

「今日、未明。東京の歌舞伎町全体が・・・。街の壁や建物の・・・床・・・。

家具・・民家の壁がピリピリと剥がれて赤い血と錆びだらけの

恐ろしい街となり・・・。生き残った住民達の話によると全員共通して・・・。

災害を伝える大きなサイレンの音が街中に響いたと・・・・。

ザーザーザーザーザーガーガーガーピーピーピーピーガガッ!ガガッ!

更に街のあっちこっちで暗い空から複数の同一人物と思われる天井から

首を吊って死んだ男子中学生が現れたと・・・。

男子中学生にはザーザーザーガガガッピーツ!ピィーッ!

一年前に姉の田村花さんが自殺しており。

田村花さんはとある日本の有名なリアリティ番組に出演しており。

番組の中で実際に起こった問題行動をきっかけに

SNSで激しい誹謗中傷を集中的に受け続け、不特定多数の

医名の人々の言葉の暴力と精神不安定でリストカットを繰り返し。

1ケ月前に硫化水素による心肺停止となり、

遺書も書き残された事から自殺と断定された。

男子中学生は田村花さんの弟であり。

ガーガーガーガーガガガーガーガーピーピーピー。

そして彼と容姿が一致した男子中学生は自分の姉のSNS

(主にツィッターやキックトック)に誹謗中傷を書き込んだ不特定多数の

人々に同じ苦しみを味合わせて復讐して。そして間違った世界を壊して。

創り直して転生した姉と一緒に暮らす為に偉大なサトル様に従い。

聖母マリア』からの神の誕生の為に人間の男と女の血を集める!

お前達を生贄にする事で殺して復讐を果たす!

と宣言すると超巨大な人型の異形の怪物となって周囲にいた

一般市民に無差別に攻撃を始め。これにより多数の男性や女性が全身の血液と

体液を抜き取ってサラリーマンや会社員、中学生、高校生がミイラ化した死体となって

死傷者数が多数出ました。更に何人かが触手で首を絞められ窒息死や

意識不明の重体になり、現在病院に搬送されて治療を受けています。

一方で20代のOL(オフィスレディ)や中学生、高校生、大学生の

多数の女性達も多数の触手に捕らえられて全身から血液と体液を吸い尽くされて

男性同様ミイラ化した遺体なって多数の死傷者を出しました。

そして生き残った男子学生は異世界と異形の怪物の姿が見えた

直後に誰もいなくなった元通りの東京の歌舞伎町に戻ったようです。

そして大量のミイラの男女の遺体と僅かに残った血液の跡等が残った

惨劇に街中は大混乱に陥っています。

ガーガーガーガーガーザーザーザーピーピーピーピィーツ!ピーツ!

ノイズは長々と続きニュースは終わったのか何も聞こえなくなった。

エアとエイダと鳴葉はショックで一時的に言葉を失った。

「知ってる田村花さんって女子プロの悪役レスラーだった。

もう10年前に一回だけ仕事で話した事があるの。明るい人だった。

本当に普段はとても優しくて。どうして?こんな事に・・・・・・・」

「言葉の暴力はどれだけ人を傷つけ、追い詰めたか分かった筈だ人々は。だけど。

どうして彼女の兄は。・・・・」と言葉を切ったエアはこんな考えが頭をよぎった。

いや、もしかしたら自殺して死んだ

彼女の兄のゴーストを『オペラ座の怪人』が見つけて。

『姉を生き返らせてやる』と彼女の兄を唆したのかも知れない。クソっ!

でも基本は魔人フランドールの魔力を持つ『静かなる丘』の負の力。

このまま放置して置けばもっと現実世界では酷い事が起きるだろう。」

「ええ、なんとか魔人フランドールの肉体を見つけて。

『静かなる丘』の力を抑え込まないと!世界中で最悪な出来事が

何時まで経っても終わらないわ。とにかく急がないと!」

「魔人フランドールって誰ですか?」

「ああ・・・実は・・・」と困った表情でエアはエイダを見た。

「説明してあげる。ちゃんと聞いてね。」とエイダ。

「はい!」と鳴葉は素直に答えた。

エイダは鳴葉に魔人フランドールについて詳しく説明した。

そしてホワイトフランドールもフラウロスの力を借りて

善のホワイトフランドールと悪のブラックフランドールに分離した事も全て説明した。

鳴葉がエイダとホワイトフランドールの

説明を聞いて納得したところで3人は出発した。

3人はまだ真っ直ぐの道路を警戒しつつ進み続けた。

そして上側の入り口が封鎖された建物更に十字路に

近い場所にあるレンガの壁の建物を通り過ぎた。

とにかく周囲は異世界を象徴する白い霧に覆い尽くされて何も見えなかった。

時折、ストレッジジャケットフラン数体がチラチラと見えるだけだった。

エアは勿論、エイダもこの深刻さに気付いていた。

この魔人フランドールが創造した『静かなる丘』の異世界の力と

あの『オペラ座の怪人』の脅威が日本やアメリカ、世界中に拡大している。

魔力の漏れは思った以上に深刻だ。

エアは「もしかしたらグーフィの言う通り、僕達人類の人口が激減する

可能性は極めて高いだろうな。」とそう思わざる負えなかった。

それに・・・・・。いくら精神的に追い詰められて自殺したとは言え。

死んでも生きた人間を異世界に引きずり込んで殺すなんて・・・。

地縛霊のようになった彼女の兄は復讐の為に悪魔の『オペラ座の怪人』と

多分、契約のようなものを結んで。復讐の為に不特定多数の人間を狙った。

理由は自分の姉のSNSで誹謗中傷を書いた相手が誰なのか?

いわゆる弁護士やSNSを運営している会社のプロバイダー達に

頼らなければ特定出来ないし。沢山の医名の人々から人物を特定するのに

もやはり時間が掛かる筈だ。

素人なら勿論、人物の特定は無理。そう考えると・・・・。

「つまり無差別殺人になっちゃうって事。だよね?」

ホワイトフランドールは消え入りそうな悲しい声で言った。

「疑わしい奴は常に罰を与えると言う方法だね。」

「だからあんなにたくさんの人々が。」

「下手すると彼女の誹謗中傷に

全く関係ない人達にまで巻き込まれた可能性も高いわね。

きっとロクに区別もつけずに。」

エアもエイダも鳴葉も黙り、しばらく周囲の空気は重苦しい空気に包まれた。

それ以降、エイダとエアと鳴葉と魔人フランドールは黙って前へ進んだ。

そして十字路を出た後に端末機の地図通りに上に直線道路へ進んだ。

幾つかの木やレンガの壁、青い家を通って先へ進み続けた。

やがて白い霧の中から大きなレンガ造りの円形のアーチ状の

2,3mの高さの門が現れた。

アーチ状のレンガの上には『CERA GROVE SANTAR IUM』

と言う文字が鉄の棒で作られて乗せられていた。

もちろん鉄の大きな門は左右に大きく開いていた。

エアはその先からただならぬ賢者の石と威圧感のあるはっきりとした気配を感じた。

どんな敵が?いやこれが黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)なのか?

とにかく奴はこの先にいる。だから。行かなきゃ。

行かなきゃいけない。行くべきなんだ。だから。

エアは鳴葉とエイダ、ホワイトフランドールと一緒に療養所の門をくぐって行った。

彼らは黄金の三角頭(ゴールドピラミッドシング)の待つ療養所へ入って行った。

その時、エアは門の内側に一枚のメモが落ちているのを拾った。

どうやらさっき電気屋の屋上で見た若い女性と鬼神のような生物が残したものらしい。

どうやら知能があるようだ。

「とにかく。あの天魔ゼルエルはヤバい!!くそっ!俺とした事が。

大怪我を負ってしまった。あいつ俺の身体を切り裂いた上に

追撃の強力な破壊光線を喰らい。身体の50%を喪失した。俺は止む負えず逃げた。

『静かなる丘』の大量の怨霊を喰い尽くして体力と傷を回復させた。

まだ奴は俺を追っているようだが。どうにか生き延びた。

あいつは別の用があって冥王ホラー・サウロンと共に行動しているようだ。

とにかく目的の物を探し当ててあの妻のアミリとビップに合流しないとな。

まさか俺があの女に苦労するとはね。」とあった。

「成程、まだ生きてこの街にいるか。」とエア。

「何者かしら?」とエイダ。

「分からないけど。なんかヤバそう」と鳴葉。

鳴葉とエイダの感想を聞いた後、エアは黒い箱にメモをしまった。

ホワイトフランドールは黙っていた。

その表情は僅かに怯えているように見えた。

エアは「大丈夫!」と笑顔で言った。

 

(第37章に続く)