(第54章)『自然ではない行いは、自然ではない混乱を生む。』シェイク・スピア

(第54章)『自然ではない行いは、自然ではない混乱を生む。』シェイクスピア

 

鋼牙によって破壊されたアキュラスが再び12歳の顔を持つ超巨大な

蜘蛛の形状の元の怪物の姿に戻ったのを見た鋼牙は再び両手に牙浪漸馬剣を構えた。

しかしアキュラスは「ぐっ!」と強い立ち眩みを起こしたのか

超巨大な身体を大きく左右にフラフラさせた。

「くそっ!僕は破壊されても何度でも何度でも復活するんだ!!僕は殺せないッ!!

絶対にだッ!お前のせいでリサ・ガーランドの魂を喰い損ねた!!

次こそ必ずお前をぶっ殺す!首を洗って必ず待ってろおおおっ!必ず報いを!!」

アキュラスは怒り狂い食事の邪魔をされた事に鋼牙に向かって怨みの絶叫を上げた。

それに対して鋼牙は牙浪斬馬剣から元の牙浪剣に戻り、その黄金の両刃の

先端をアキュラスに向けた。鋼牙は静かな口調でこう切り返した。

「何度お前が復活して。俺がお前を殺せなかったとしても。

お前がどんなに怒りに満ち溢れた悍ましい咆哮を上げて俺をぶっ殺そうとして

復讐しようとしても『結果』は同じだ!俺は『守りし者』の意志がある限り!

何度でもお前を斬り倒す!何度も報いを受け続けるのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

アキュラスは鋼牙に気圧され、それ以上話せ無かった。

アキュラスは黙ったまま素早く鋼牙に背を向けると

左右あっちこっちカニ歩きを何度も何度も繰り返しながら

鋼牙やリサ、スクールバスから徐々に遠くへ離れて行った。

アキュラスはたちまちカサカサと走り回り、白い霧の中にすーつと消えて行った。

やがてカサカサと走り回る音は遠くなって行った。

鋼牙は黄金騎士ガロの鎧を解除した。それから全裸で倒れているリサに近づいた。

彼はリサの傍で屈み、優しく話しかけた。

「あんた。大丈夫か?見たところあいつは・・・・・」

「あいつは『赤き太陽の呪い』にかかったのよ。

あいつは若い女性の精気を取り込んでいてどんな致命傷を負っても

溜め込んだ精気の力を使って回復できる。だから完全に破壊しても。」

「赤き太陽の呪い』は知っている。確かあれば自らの破滅を。」

鋼牙は白い霧の中へ消えて行った。アキュラスが去った方向を見た。

「破壊された部分を元通りに再生させたとしてもあの『赤き太陽の呪い』

からは逃れられまい。破滅の刻印や破邪の剣の呪い上に強力で厄介だぜ。」

「そうだな。魔導輪ザルバ。だがあいつは理想のメディアの存在しない

世界を作り出すと言う狂信的な妄想が具現化したされたものだ。

しかも少々厄介な事にあの天魔ヴァルティエルの力であのかつて

魔人フランドールの恋人だったアキラの記憶を植え付けた何者かによって。

そしてその何者かの自分自身のテレビ、スマートフォン、携帯、メディアに

一切興味の無い理想の子供のイメージがアキュラスの強い思念から読み取れたぜ!

こんなのを産み出せるのは!!」

「ああっ間違いないな!あの男だ!この事件の元凶だ!」

鋼牙は横目で魔導輪ザルバを見た。

リサはいつの間にか元通りの赤いカーディガンと白い服を着て立っていた。

彼女はアキュラスが立っていた場所に鉄板が落ちているのに気付いた。

鉄板には『操り人形』と言う文字が深く刻まれていた。

そして以前、手に入れていた『種族』と合わせて

『操り人形』の2つの鉄板が手に入った。

リサは『操り人形』の鉄板を鋼牙に渡しながらこう言った。

「あとは『母親』『父親』『虐待』の3つの鉄板が揃うわ!!」

「全て揃えると何が起きるんだ???」

「これは教会の地下の異世界の礼拝堂で使うのよ!!あとはこれも!!」

リサは鋼牙にある物体を差し出した。鋼牙は彼女の掌からそれを受け取った。

その物体は大きなオレンジ色と赤色の三角錐をしていた。

「これは何の装置だろう?魔道具の一種のようだが・・・・」

「この装置は『フラウロス』!!これは重要なアイテムなの!

これは前にダリア教団に悪用されてアレッサ・ギレスピーの

異世界の創造の力の一部を封じて、無理矢理自分に従わせていたの。

でも!うまく使えば!こいつを使って!あの復活した不完全な神を

『三面体』の箱の中に閉じ込められるわ!

過去にトラヴィス・グレディって男とアレッサが協力して不完全な神を

『三面体』の箱に閉じ込めて。

魂を分離させて片方をシェリルとして半分の魂を逃がしたの。

勿論、神の力は完全に封じて!!」

「つまり?こいつをうまく利用すれば有能な切り札になると?」

「そうよ!確実にやればね!!私生前それを見ていたから。

知っていたのよ。最初は薬の幻覚のせいだと思っていたけど。

『静かなる丘』のダリア教団が壊滅した時にあたしがカウフマンを

呪い殺すついでに回収したの!!ちなみにダリアはこれを『悪魔の遺物』と

呼んでいたらしいわ。うまく利用して!きっと最後に絶対に役に立つから!!」

リサは自信満々な表情でそう言った。また魔導輪ザルバが気まぐれに口を挟んで来た。

「それにしても!さっきの時間を操る能力?どこかで??

とにかく大した実力だぜ!!幾ら黄金騎士ガロでも侮れんな!」

「さっきの空間で見せた君の能力。あれは使える知り合いがいる。

魔界法師や俺達、魔戒騎士でもその能力を持つ者はー。

女魔法使いや魔術師や吸血鬼と数えて一握りしかいない。

それにあのナイフと銅の杭を花弁のように形造り。

そして自由に操る能力。もしや?紅魔館の者と??」

「正直に言います!私には娘がいます!とは言ってもアレッサとシェリルとは違って。

その分霊なんです。私は母親なんです。それじゃ!!」

リサはそれだけを一気に言うとバン!

と音を立てて赤い霧となって跡形も無く姿を消した。

「そうか」と鋼牙は呟いた。一方、ボロボロのスクールバスから2人の戦いと

吸血鬼のガルヴァスター・スカーレット伯爵夫人や鋼牙やアキュラスや

リサの会話のやり取りを聞いていた男子高生と女子高生を見た。

鋼牙はスクールバスに失礼して入ると運転手の『死』を知らせた。

「ここは危険だから安全な場所へ行く」と説明した。

そして『TOUTH PARK』通りの強力な魔よけの結果の結界が張って

ある安全地帯に避難させる為にスクールバスを運転して早く目的地へ走り出した。

目的地に着いた後、フィッシャーズに事情を説明した。

またブリーとアヴィゲイル、彼女達の胎内に

新しい命が宿っている事も鋼牙は説明した。

それを改めて魔導輪ザルバは自らの口で説明した。

勿論、ブリーもアヴィゲイルも一部の女子高生と男子高生も

フィッシャーズメンバーも仰天していたが真面目に話を聞いてくれた。

鋼牙はホッとした。

彼によると信じられないが吸血鬼と人間の混血児らしい。

それから鋼牙は裸のままの女子高生達にとりあえず

ボクサーパンツとふざけTシャツを全員に配ってくれるようにお願いした。

フィッシャーズメンバーは勿論それを了承してくれた。

その時、ピピッ!と携帯が鳴る音がした。鋼牙が出ると男らしい女性の声がした。

「元気か?鋼牙!報告があるんだ!!」

「烈花か?どうした?例のもうひとつの神降ろしの儀式か?」

「ああ、そうだ!2つ目の神降ろしの儀式は『24の新約の秘跡』だが。

さっきあの子宮の卵と呼ばれる場所であった神崎と言う男の情報によればその儀式は

ウォルター・サリバンって言う男が行った24の秘跡の完全版らしいが。

こちらでリヴィアのゲラルドとフィリパ・エイルハートと俺であの『オペラ座の怪人

の精神世界を抜けて『子宮の卵』に突入した。

そしてあの天魔ゼルエルイロウルもだ。

そして儀式を止めようとしたが。どうやら儀式自体は失敗だったらしい。

つまり『子宮の卵』孵化せずに機能を停止した。

本人は『ちゃんと間違えずに一つ一つ確認しながら丁寧に進めていた』らしい。

ただ俺とフィリパで調べて見た結果。儀式失敗の原因は大規模な魔力と24人分の

人間の生命エネルギーを使用した今回の儀式と鋼牙達が調査している『静かなる丘』

の魔人フランドールを使用した完全な土着神復活の為に使用した更に膨大な魔力と

無数の生命エネルギー。これらが同じ『静かなる丘』で同時に

こちら側(バイオ)の世界で発生した事によって急速に時間を蔑ろにしてしまい。

自然の調和を大きく乱した事が原因のようだ。

またこの儀式も完全版と呼んでいるが実際は不完全なものだった。

自然の流れで余りにも無理をさせ過ぎたようだ。

ちなみに『聖母マリア』の子供は虹の女神イーリスとやらの力は

失われて何の変哲の無い普通の人間の子供となった。

勿論、母子共に既にゲラルドが救い出した。

ついでに術者の『オペラ座の怪人』の真の肉体も『虚無』『暗黒』『憂鬱』

『希望』『誘惑』『起源』『監視』『混沌』の8つの槍を術者に突き刺した上で

母親役として天魔ゼルエルが真の肉体の中に入り、神の兵力で弱体化させた後に

ゲラルドが『裏切り者のサイファー』だから『オペラ座の怪人』の

偶像と真の肉体を倒した。奴はこちら側(バイオ)の世界と

異世界と共に完全に消滅してしまった。もう奴は存在しない。多分な。

今は『聖母マリア』の日本人女性と『絶望』から『希望』になった

ニューヨークタイムズの女性記者もこっちで保護した。以上だ!!」

「成程ね。自然科学の中では2つの儀式を同時に行うのは無理な訳か・・・・。」

と鋼牙。「『オペラ座の怪人』は案外、自然科学に関して素人だったようだ。

第2のカタストロフ(人類滅亡)は来る事は無さそうだな」

「さてと!シェリー・バーキンにもこの事実を報告して安心しさせないと。」

「確かシェリーはあの白痴の魔王アザトホースから第2のカタストロフ

(人類滅亡)が訪れるとか吹き込まれていたとか?1時間前位にレオンから聞いたな」

「残念だが。奴の大予言は大外れだ!」と

鋼牙はほとんどは表情を変えずにそう言った。

彼は直ぐにシェリーのいるアメリカ政府の合衆国エージェントのDSOに連絡した。

メンバーの一人のレオン・S・ケネディ

『第2のカタストロフ(人類滅亡)は来ない』

シェリー・バーキンに伝えてくれ。『21の新約の儀式は失敗した。』と。」

レオンは何の事だかさっぱり分からないのか?

もう一度聞き返したので鋼牙は親切丁寧に同じ説明した。

「つまり?彼女と奴が言っていたカタストロフ(人類滅亡)は来ない?

そう言う事なのか??しかしどうして??」

「自然科学・物理的に不可能だったからだ!」

「そっ!そーなのか?自然科学なんて初めて聞くが・・・・」

「今回!カタストロフ(人類滅亡)は一回だけだ。

勿論俺様達は必ず阻止する。『守りし者』として!!」

「分かった!シェリーに伝えておくよ!!それじゃ!」

レオンが携帯を切ったので鋼牙は携帯をしまった。

「さてと!問題は若村秀和だな。あいつがしでかした

儀式を止めに『静かなる丘』に戻らないと!!」

「そうだな!」と答えると鋼牙が『静かなる丘』の街の方を見た。

その時、フッと鋼牙の目の前に天魔ヴァルティエルが現れた。

鋼牙は素早く口を開いた。「あんたは21の秘跡の正しい儀式を教えた筈だ!

何故?成功しない可能性が高い方法を『オペラ座の怪人』に。

成功する可能性の高い神降ろしの儀式を若村に教えた?その意図はなんだ??」

「人間は愚かな理由で他の人間の世界と命を殺してはならない!」

「どういう意味だ?」と鋼牙が聞き返した。

魔導輪ザルバが「成程。自己欲の為に命を奪う者や憎しみと怒りだけで

軽い気持ちで人を殺し、世界を壊そうとする者に対する戒めか?」

天魔ヴァルティエルにカチカチと金属音を立てて返した。

すると彼は「これ以上は神や地球そのものが怒るだろう」と答えて姿を消した。

 

(第55章に続く)