(第57章)サイレントヒルの隠された神話(前編)

(第57章)サイレントヒルの隠された神話(前編)

 

 

『静かなる丘』の教会の礼拝堂内の長四角のベッドの上に眠っていた全身が火傷した

魔人フランドールと魂と精神のレッドフランドールが

再び融合する事で元の在るべき姿に戻ろうとしていた。

全身火傷した魔人フランドールの肉体はうっすらと黒い瞼を開けて

赤い瞳で周囲のエアやエイダや鳴葉、レッドフランドールを見た。

静かにこう言った。「分かったわ!貴方達を今!信じてみる!」と。

レッドフランドールは全身火傷した魔人フランドールの肉体の上に乗るように浮いた。

エアはエイダと鳴葉を一度後退させた。

やがてレッドフランドールと全身火傷した魔人フランドールの肉体はゆっくりと

まるで日食のように重なって行った。レッドフランドールの精神・魂と

全身の火傷した魔人フランドールの肉体はとうとう一つに融合した。

同時にボン!と言う音と共に真っ赤な球体となり、周囲を照らした。

エイダと鳴葉、エアは余りにも眩しいので両眼を両手で覆った。

やがて赤い球体は赤い柱に変化し、周囲に赤い輪が広がった。

大量の魔力の放出による力に圧倒され鳴葉は倒れそうになった。

左右でエアとエイダは彼女の身体を支えた。

やがて赤い球体も赤い柱もゆっくりと消えた。

エイダ、エア、鳴葉はその場所を見た。

教会の長四角のベッドの上には本来在るべき姿に

戻った魔人フランドールが立っていた。

彼女はHCFセヴァストポリ研究所であった時と全く変わらない顔と姿をしていた。

金髪をサイドテールにまとめ、ドアノブ型のナイトキャップを被っていた。

瞳は真っ赤に輝いていた。服装は真紅を基調とした

半袖の服とミニスカートを履いていた。

ちなみにミニスカートは一枚の布を腰に巻いて2つのクリップで止めていた。

背中からは1対の枝に七色のクリスタルが幾つも並んで

ぶら下がったような歪な翼を生やしていた。

赤いソックスに赤いストライプシューズで長四角のベッドから床に降りた。

肌も黒く焼け焦げた生々しい傷は全て消滅し、美しい白い肌に戻っていた。

「はあーやっと!元に戻っちゃった!」

魔人フランドールは元の魂と肉体が元に戻った安心感。

この先、自分の胎内に宿る神の胎児をどうすればいいか分からず。

自分や人々や世界を破壊して、苦しめてしまうかも知れない。

不安感の混じったとても複雑な表情をしていた。

エイダは首を左右に振った後、こう言った。

「こっちはとても苦労したのよ。ようやく合流ねえ」

エアが横から思い出したように口を挟んだ。

「そう言えばここが合流予定ポイントでしたっけ?」

「私達はこの教会の調査もあったのよ。」

「そう言えば…。聞かない方が良さそう。」

「そうしてくれるとありがたいわ。鳴葉さん」

「これ以上関係ない人は巻き込む訳にはいきませんね」

エアとエイダは礼拝堂を見た。教会の礼拝堂は目の前に

3枚のステンドグラスと長四角のベッドの他にも

縦一列に木の柱が並び、長い椅子が左右にきっちりと並んでいた。

そして期の壁に全部で6枚の絵が吊るされていた。

4人はそれぞれ絵の下に描いてあるタイトルと文章を読んだ。

右側の1番目から読んで絵を見た。

1枚目には仰向けに倒れた黒髪の男性が赤い布を巻いていた。

そして横には茶色の長い髪の白い布を纏った女性と仰向けに倒れて

ブリッジしている男性らしき人物が描かれていた。

周囲には茶色の石の赤い布に覆われていた。

タイトルは「始原」とあった。

文章は。「全ての始まりの時、人は何も持たなかった。身体には苦痛。

心には憎悪の他には何も争い気づ付け合いながら死ぬ事すら叶わず。

永遠の泥土の中に人は絶望していた。」

2枚目には。背中まで伸びた長い茶色の髪の女性が緑色の植物を持ち。

座っていた。うしろに茶色の男性が立っていて手には

赤い長い布と太く長い口を開いた大蛇を持っていた。

タイトルは「誕生」。

内容は「ある男は太陽に蛇を捧げ、救いを祈り。

ある女は太陽の葦を捧げ、喜びを願った。大地に蔓延する悲しみを憐れみ。

神はこの一組の男女から生まれた。」

3枚目には。茶髪の長い髪に赤いドレスを

着た背の高い女性が真っ赤なカーテンから現れ。

救いを求める人々の前に現れていた。

タイトルは「救済」で。

内容は。「神は時間を作り、昼と夜を切り分けた。人に救いの道を示し、喜びを与え。

そして人から無限の時間を預かった。」続けて4枚目には。

数人の灰色の人々(しかも筋肉質な男)に支えられて

茶髪の長い髪に鳥の羽根のような椅子に座る赤いドレスの女性の絵が描かれていた。

左右にまるで翼のように真っ赤なドレスが描かれていた。

タイトルは「創造」。

内容は。「神は自分に従い人を導く存在を作った赤の神スチェルバラ。

黄の神ロブセルビス(破壊神ミカエルか?)

そして大勢の神々と天使である最後には楽園を作り出そうとした。

ただ人がいるだけで幸せに足る世界」とあった。

そして5枚目には黒髪の青い服と黄色の服の女性と黄色のターバンを巻いた男性。

また茶色の服を着た男がすでに痩せこけて茶髪の長い髪のあの赤いドレスの女性が

ベッドの白いシーツの上に力無く仰向けに寝かされていた。病気のようだ。

タイトルは「約束」。

内容は。「神はそこで力尽きて倒れた。世界の誰もがそれを嘆き悲しんだが。

神はそのまま意識を失い。土へと還った。一度生まれてくると約束して」

最後の6枚の絵には茶色の髪の女性に。白いローブとフードを着た男性。

肌色の帽子を被った男性が鉄製の祭壇の蝋燭が立てられている場所の近くに立って。

全員、腕をピンと伸ばして床の鉄製の長い円形の暗闇の穴を指さしていた。

タイトルは「信仰」。

内容は。「神は失われた訳では無い。私達は信仰を忘れず。

祈りを捧げる楽園への道が開かれる日を待ち望みながら。」

4人は全ての6枚の絵を見た後、

これで『静かなる丘』の神話についての全貌を掴んだ。

エイダは礼拝堂のステンドグラスの窓の近くには古い木製のオルガンがあった。

どうやらまだ動きそうだ。鍵盤を押すと音が鳴った。

オルガンの鍵盤の上にはメモが置かれていた。4人はそれを読んだ。

「その名前はこの土地を奪われ、追われた彼らの伝承に由来する。

『静かなる精霊眠る場所』。

ここでいう精霊とは自然世界における構成要素であり。

同時に死者であり、崇めるべき存在だと言う。

そしてこの伝承はそう呼ばれる土地が神聖な祭祀の為の場であったと語る。

しかし最初に彼らからこの土地を奪い。

移住したのは、今この人々の祖先ではない。

それよりも前にも移住者たちはいた。

その時は、この町は別の名前であった。

だがそれが何と言う名前なのかは記録も無く知る者もいない。

わかっているのはその名前があったと言う事。

そしてこの町が何らかの原因により一度は放棄されたと言う事だけである。山岡詩音」

「土地を奪った移住者がこの名前を変えたのか?」とエア。

「どうやらそうらしいわね・・・」とエイダ。

すると魔人フランドールが天井を指さしながらこう言った。

「私は紅魔館からこっそり持ってきた本があって。

たまたま『静かなる丘』の神話と伝承に関する知識があったの。

もう頭の中に文章と真実を暴く方法はあるの。」

魔人フランドールはゆっくりと天井を指さしながら口を動かした。

その瞬間、教会の礼拝堂の天井が開くように左右に大きく開いた。

天井の空いた長四角のスペースには。枚の絵と文章が現れた。

6枚目の続きの7枚目の絵には青い空と星々と黄色の雲が描かれていた。

更に真っ赤に輝く赤い球体の中には人型の生物がいたのは分かった。

しかしその存在は抽象的に描かれていて

はっきりとどんな形なのか良く分からなかった。

更に左右にはロブセルビスとスチェルバラ、イロウルが描かれていた。

他にも多数の天使や神々が描かれていた。

「神は人間に隠していた事があった。本来の始原は一組の男女の神から産まれた。

そして神は呼び出されたのだ。神は自らを導く存在、赤の神スチェルバラと

黄色の神ロブセルビス。更に恐怖の神イロウル。他4柱の神にして天使を作り出した。

また神は多数の神々や天使を創っていた。

そして神は大勢の天使と神々の姿を模して様々な動物を創り出した。

最後に神が一組の男女の神を模して人間達を創りました。

やがて人間が満ちて行き、彼らはこう考えるようになった。

「『自分達の姿は神と似ている。

故に神や他の神々、天使達よりも優れている存在だと。

神や他の神々、天使を模した動物は家畜として従わせればいい。』と。

その行いを見た他の神々、天使達は怒り、人間達にこう言いました。

「人間が動物を支配家畜とするならば我らにも人間の支配と家畜とさせよ』と。

こうして多数の他の神々と天使達は人間を滅する為に戦争を始めたのである。」

8枚目の絵には。新しく生み出されたマイキー・カール事、天魔アルミサエル

人間を助ける為に地上へとある男の命を懸けた儀式の力を以って人間に近い感情を

持ち、降り立った。天魔アルミサエルは自分の配下の動物達と共に人間を守るべく

勇ましく戦う姿が描かれていた。

9枚目の絵には。

天魔アルミサエルは霧のかかった空の緑の数本の木々が並んだ外の霧が掛かった

空の風景に腰までの高さの塀があった。天魔アルミサエルは目の前に描かれている

日本人とアメリカ人女性のハーフの女性に跪いて青い右腕を差し出した。

そして人差し指、中指、薬指が繋がった奇妙なゴムの手袋の履いた手を出していた。

出した彼の手には白百合の花が握られていた。しかも本来は純潔と貞操を表す為に

受胎告知のルールに従って雄蕊は描かれていない筈だった。

しかし天魔アルミサエルが持ってる白百合にはしっかりと雌蕊と雄蕊が描かれていた。

またよく見ると花の形がどこかクリオネの形に似ていた。

周囲の堀は聖母の子宮が人間の男性に閉ざされているのが受胎告知の絵では普通だが。

こちらの絵には天魔アルミサエル

手元の奥だけは堀が途切れて奥の風景が見えていた。

しかも途切れた堀と白百合と重なっていた。

つまり彼女は聖霊の力で身籠った訳ではなく。

恐らく男性と交わって子供が宿ったのだろう。

その日本人とアメリカ人のハーフの特徴は。

またエイダは彼女は間違いなくリタの娘でビデオカメラに写っていた

『山岡・フィリップス・詩音」の姉の

『山岡・フィリップス・莉奈』だとすぐに分かった。

両頬まで伸びたロングヘアー。キリッとした茶色の細長い眉毛。

丸っこい高い鼻。ピンク色のぷっくりとした唇。

ふっくらとした大きな丸い両頬はほんのりとピンク色になっていた。

また両側の神から見える両耳には金色のピアスを付けていた。

彼女は椅子に腰かけたまま青い瞳を見開き、驚いた表情をしていた。

その大きな丸いお尻は赤いスカートに覆われつつも大胆に大きく描かれていた。

彼女の大きな丸いお尻は強調されてエアは思わず溜息をついた。

「やがて神の分霊のエロースは人間と交わり。交わり合った人間の女は

地母神サンタムエルテと同様に死と夜と破滅をもたらす女神ニュクスとして転生した。

しかし戦争は多数の神々と天使の勝利に終わった。」と。

「これが忘れ去られた本来のこの『静かなる丘』の神話の中、

現実で確かに起こった事よ。ただ天魔アルミサエルは神が新しく生み出して、

名を与え、自らの神話に組み込んだのよ。旧き新しい神話と言った所かしら?」

「過去の現在と言う訳ですね」とエア。

「まって!この10枚目にも何かある」

エイダは10枚目のイコン画(宗教画)を見た。

 

(第58章に続く)