(第61章)帰って来た狂気の造形家・偶像のガーゴイル(後編)

(第61章)帰って来た狂気の造形家・偶像のガーゴイル(後編)

 

魔獣ホラー・ガーゴイルが説明した後にそのチリ人の若い女性刑事の

両脚の間に徐々に這いずりながらテズルモズルの姿をした

ゴーレムと呼んでいるUMA(未確認生物)が近付いた。

しかしすぐに魔獣ホラー・ガーゴイルは強化された聴力で

遠くから徐々にパトカーのサイレンの音が聞こえた。

直ぐに彼はUMA(未確認生物)を特殊な空間に隠した。

ちなみに魔獣ホラー・ガーゴイルは魔王ホラー・ベルゼビュートと裏で繋がっている

ガルヴァスター・D・スカーレット伯爵夫人の命令を秘密裏に受けており。

『静かなる丘』の街各地で太陽の聖環を創り出す聖なる石の欠片を回収していた。

魔獣ホラー・ガーゴイルはガルヴァスター・D・スカーレット伯爵夫人から譲り受けた

聖なる欠片を若村秀和暗殺の仕事をする傍らでお守りとして常に持ち歩いていた。

そしてとうとう彼は聖なる欠片を魔獣ホラー・ガーゴイル

オレンジ色のコア(核)の内部に取り込んだ。

聖なる石の詳しい正体は不明だが。

ガルヴァスター・D・スカーレット伯爵夫人の説明によると

『完全な神』が身に着けていた装飾品らしい。

そして聖なる石の『完全な神』の身に着けていた装飾品を自らのコア(核)に

取り込んだ結果、オレンジ色のコア(核)は

真っ赤に変色した事で自らの肉体強化に成功した。

また太陽光に晒されても全く平気になった。

日中でも自由に魔獣ホラーに変身出来るようになった。

更に左手の甲に真っ赤な太陽の聖環が刻まれていた。

彼は『進化体の上位種』となった。それにより人間の女との間に

SHB(サイレントヒルベイビー)を宿す能力も同時に得ていた。さらに

自らの偶像を操り、ゴーレムを多機能を与えて創造し、

操り人形にする能力を身に着けた。

やがて急に魔獣ホラー・ガーゴイルの全身の細胞が変形を始めた。

同時にドサッ!とうつ伏せに倒れていた。そして人間体に戻った。

間も無くしてパトカーのサイレンが聞こえた。

魔獣ホラー・ガーゴイルは人間体のまま慌てて立ち上がった。

続けて魔獣ホラー・ガーゴイルはその場から素早く逃げ出した。

魔獣ホラー・ガーゴイルが逃亡した後。カプランとワンが乗ったパトカーが到着した。

更に救急車や応援のパトカーが駆け付けた。

ワンとカプランは被害に遭ったチリ人の若い女性刑事を無事保護した。

現場に残されたチリ人の若い女性刑事の彫刻を証拠物件として押収した。

 

一方、そのころ現場から逃げ出した魔獣ホラー・ガーゴイル

人間体のまま現場近くの倉庫内で「グエエエエエエエエッ!!」と悲鳴を上げ続けた。

更に全身の激痛と共に体内の始祖ウィルスの源の賢者の石と

魔獣ホラーの魔力が活性化して行った。

そして約10時間かけて徐々に肉体を強化させて行った。

黒い服と眼鏡は変わらなかったし、顔も容姿も変わらなかった。

だが代わりに彼の茶髪は金髪になった。

魔獣ホラー・ガーゴイルは『太陽の聖環』と

『完全な太陽神』の一端を手に入れ進化していた。

さらに人間体の魔獣ホラー・ガーゴイルはガルヴァスター・D・スカーレット

伯爵夫人から1991年当時のアンブレラ社の『Tウィルス計画』『タイラント計画』

遺伝子工学』と『ウィルス学』、ウィリアム立案の『Gウィルス計画』。

『始祖ウィルス、Tウィルス、ネメシスの研究資料とサンプル』。

『マーカス博士独自の研究書』そしてー。『ウェーカーズリポートⅡ』を入手。

元々は彼女が吸血鬼種族の集約された弱点の弱い部分を克服させて

肉体の強化の実験の為に利用していたらしい。

更に彼女は研究用のTウィルスを密かに魔獣ホラー・ガーゴイル

右腕に投与し、経過を観察していたらしい。

だからTウィルスと私の体内の賢者の石の始祖ウィルスも

活性化したのは成功と言えるのだ。

そして私は新たに『進化体の上位種』として。究極の存在『暴君』として。

魔獣ホラー・ガーゴイルは全てを思い出して我に返った。

そして狂気的な高笑いをした。やがて無線と思わしき音が鳴った。

直ぐに魔獣ホラー・ガーゴイルは元の人間の姿の戻ると無線に出た。

「こちら!ガーゴイル!どうしたんだ?園田さん!」

「こちら!園田真理!!若村秀和の暗殺を中止せよ!!状況が変わった!!

魔王ホラー・ベルゼビュート様の命令よ!先程BSAA所属の魔戒法師の烈花氏の

若村秀和氏の反メディア団体ケリヴァーの幹部を強制捜査した際に『コトリバコ』

を十個余り発見したそうです。そして無効化後に全て処理されました。

製造した数人の男達は『若村に教えて貰った』と供述したので。

真相の有無と若村がどうやって『コトリバコ』の製造方法を知ったのか?

いつ?どこで?知ったか?色々洗いざらい白状して貰って入手ルートを

詳しく探す必要が出たみたい。だから。

貴方には若村秀和を生きたまま。先に動き出したSCP財団よりも早く

秘密組織ファミリーに連行する事よ。

あとはジョン様と私がその人間の男を

拷問して色々吐いて貰うわ!殺しちゃ駄目よ!!」

「全く!どうしてだ?あいつには他人の価値観を全否定して。

大事なものをどこかに叩きつけて壊したり。重りで潰したり。

踏みにじったりするような物を大事に出来ない

人間のあいつには相応の天罰を与えるべきでしょ?違いますか?」

魔獣ホラー・ガーゴイルは大きく彼女に不満を訴えた。

「そうね。でも今はそれが重要じゃないのよ!!」

園田の返答に魔獣ホラー・ガーゴイルはこう要求した。

「では!それ相応の埋め合わせをして下さいッ!!」

「もう!子供なの?あんた?」と園田は呆れた表情をした。

「その若村秀和をそちらに連れてきます!!言う通りにね!!

貴方の身体も子宮も私のものになります。」

「はあー分かったわよ!仕事が終わったら!

私の部屋に来なさい!!貴方の暑い身体を待っているわ!

赤ワインとステーキと共に楽しみましょう!悪魔の夜宴をね!!」
園田真理は案外楽しそうに答えた。

勿論、彼をやる気にさせるお得意の悪魔の交渉と取引だが。

実際に本当にやるかは悪魔(あくま)でも本人の気まぐれである。

勿論、彼女の返答に大いに気を良くした魔獣ホラー・ガーゴイルは大喜びをした。

ニヤニヤと笑いながら。「では!若村秀和の暗殺から生きたまま捕らえて

秘密組織ファミリーに連行します!!楽しみにしていますよ!!」

「はーい!はい!楽しみにしとくわよ!」

園田はやる気の無さそうな声で答えた。そしてさっさと無線を切った。

 

『静かなる丘』教会の鐘桜の部屋。

その錆び付いた鐘桜の部屋の周囲は円形で

中央の床に大きな太陽の聖環が描かれていた。

ま周囲に錆び付いた4対の細長い柱があった。

また錆び付いた鎖も4本吊るされていた。

そして角は灯の付いていないランタン置き場。

その周りにはまた3枚の絵が飾られていた。

エイダ、鳴葉、エア、魔人フランドールの4人は一人一人その絵を見た。

更に絵の下には文章があった。

1枚目は(明かりのせいで金髪に見えた)茶髪のオールバックに茶色と緑の色が

半分づつある長いドレスを着た女性。

彼女は祈りをささげる直前に手を合わせたポーズをしていた。

文章はこうあった。「聖者ジェニファー。死の刃に合っても信仰や揺るがず」と。

更にグルリと時計回りに歩いて2枚目は黒髪にオールバックの青緑色の腕と

灰色のドレスを着た女性は両腕に産まれたばかりの白い布にくるまった上に

茶色の暖かそうなフードをかぶせられた赤ちゃんを抱いていた。

文章はこうあった。「聖アレッサ。神の母にして神の娘」とあった。

それを見ていた魔人フランドールはその絵の聖アレッサと自分の今の状況を

重ね合わせてしまい。喜びと悲しみが混じった複雑な表情を浮かべた。

彼女は何故か静かに両手を合わせて何かを祈った。

最後の絵には坊主頭の黄色の服を着て、白い布に覆われた木の机に

向き合っている中年の男。

しかも机には人間の骸骨が置かれていた。文章はこうあった。

「聖ニコラス。奇跡の手。神に仕える医師」とあった。

「あれ?ニコラスって?聖ニコラウスの事よね?」

鳴葉の質問にエアとエイダは言葉が詰まった。すると魔人フランドールがこう答えた。

「同一人物か分から無いけど。聖ニコラウスなら。

クリスマスのサンタクロースのモデルになった人かしら?」

「それ知ってますよ。

恵まれない家族の為に毎日朝靴下の中に金貨をこっそり入れた人で。

それがクリスマスに靴下の中にプレゼント入れる習慣が生まれたとか。

幼い頃に母親が良く話してくれたなー。懐かしいな。」

エアは昔の思い出を語った。魔人フランドールは「そう」と答えた。

鳴葉は聖ニコラウスの絵の近くの窪みから金色の鍵を入手した。

エイダは中央の床の太陽の聖環のを中心に一枚のメモが落ちていた。

エイダはそれを屈んで拾った。メモには『アグラオフォティス』とタイトルがあった。

アグラオフォティスのメモの内容はこんな感じに短くまとめられて書いてあった。

「血の色にも似た赤い液体。または結晶。この名前はカバラ文献でアラビアの砂漠に

育つと言われる悪霊を追い出す力を持つ薬草から取られている。

服用の他、加熱し、気化させて散布する事により、悪魔に対する防護の力を持つ。

強力であるが希少な為、入手は極めて難しい」

「アグラオフォティス?あたしをあの巨大蛾から救ってくれた?あれ?」

「そうよ!入手はこっちの秘密組織ファミリーがしたわ!

かなり大変だったらしいわ。アラビアの砂漠に行って。

とても苦労してオアシスを探してようやく見つけて。

アメリカに持ち帰ろうとしたら空港の麻薬探知に引っかかって。

説明を散々しまくった挙句に薬草であるが麻薬では無い事が分かって

ようやく持ち帰ったの。だから貴重なのよ」

「そこまでして苦労する連中は珍しいわね。」とエイダはくすくす笑った。

「名前も聞き慣れないから新型の違法薬物と思われたみたい」

エイダと魔人フランドール、鳴葉は鐘桜の部屋から出た。

そして鍵を手に入れたのでさっきの茶色の扉のところに戻った。

エイダは茶色の扉の鍵穴に鍵を入れて回した。

カチャ!と音がして鍵によって扉が開いた。

カチャッ!と扉を開けて先へ進んだ。

その先には長い赤い血と錆の細長い壁に金網の床と端に

汚れたシーツを被ったベッドが幾つも置いてあった。

ついでに点滴の棒があった。「うわー」と鳴葉は声を上げた。

しばらくして急に真横からガチャガチャと音が聞こえた。

「あっ!ああっ!」とエアは悲鳴を上げて後退した。

エアは音の方をした金網を見ると僅かな隙間から何かが蠢いているのが見えた。

しかも四つん這いでまるで追いかけるように前へ移動していた。

魔人フランドールは冷静な表情で静かにこう言った。

「天魔ヴァルティエルよ。聖母の私を監視しているのね。」

「監視?ここまで付いてきたの?嫌な奴ね。」と鳴葉。

「まるでストーカーじゃない。困った奴ね。」とエイダ。

 

(第62章に続く)