(第5章)神化するのぴ。そして

(第5章)神化するのぴ。そして

 

『のぴ』は額に真っ赤に輝く目を出現させた。更に両瞳を真っ赤に輝かせた。

続けて両頬も真っ赤に輝く太陽の聖環の模様が浮かんでいた。

のぴは天を仰ぎ、口を開けた。口内は真っ赤に輝いていた。

「のぴさん!ダメよ!これじゃ!止めなさい!のぴさん!人に戻れなくなるわ!」

必死にシェリル刑事は彼女を止めるべく声を枯らして叫び続けた。

しかしのぴの耳には全く聞こえていないらしく無反応だった。

魔獣ホラー・ガーゴイルは『神化』しつつあるのぴを止めるべく空を飛び、突撃した。

しかし周囲の真っ赤に輝く分厚いバベルの結界に阻まれてしまい。

身体を弾かれてしまいステージの下の鉄の床に叩きつけられた。

余りの力に大きくへこみ、クレーターが出来た。

だっ!駄目だッ!バベルの結界のせいで入れないッ!

弾き返される!どうしようも・・・・。

とうとうシェリル刑事も魔獣ホラー・ガーゴイル事、板尾龍もお手上げ状態だった。

「あははははははっ!馬鹿め!裏切りの太陽神よ!偽りの太陽神め!

あの頭上にいる選ばれし最高位の光の戦士のセラフィヌ・ケリヴァーがいるんだ!

彼らは賢者の石を持ち!真っ赤に輝くバベル超結界で『セフィロトの生命の樹

は創り出せるんだぞ!さあー選ばれし光の戦士達よ!やれえええっ!」

頭上を飛んでいた8体のセラフィヌ・ケリヴァーは

素早く『神化』しつつある『のぴ』の周囲に集合した。

そして瞬時に『セフィロトの生命の樹』の形に超強力なバベル超結界を形成した。

「やがて俺の理想通りの楽園の扉を開く!!全ての太陽の聖環の我が光の力を

持つ聖なる光のバベルの超結界はメディアに汚されて悪魔の毒に侵された

肉体から性的興奮の絶頂と共に肉体から美しい魂は解放される!

選ばれた若い女性達は個体生命の維持を失い!原始に帰る!」

シェリル刑事は苛立ち、当たり散らすように甲高い声で叫んだ。

「黙れ!クソジジイ!」と。しかしどうしようもなかった。

このまま人類は滅びてしまうのだろうか?しかし・・・・・・・。

シェリル刑事と魔獣ホラー・ガーゴイル事、板尾龍は『神化』

しつつある『のぴ』の頭上の遥か上空に黒い人影が見えたのに気付いた。

しかも天高くから高速で落下しているようだ。

やがて人影が徐々に大きくなるにつれてはっきりと見えた。

その人影は遥か上空から落下して来たBSAA隊員のジル・バレンタインだった。

彼女は真っ赤に輝く両刃の細長い槍『ロンギヌスの槍』を所持していた。

どうやらかなり高いヘリからパラシュートも命綱も無しに落下して来たらしい。

「いくら何でも無茶過ぎるわよ!」とシェリル刑事。

「いや。彼女なら・・・・大丈夫ですッ!」と魔獣ホラー・ガーゴイル事、板尾龍。

一方、遥か上空から落下して来たジル・バレンタインは両手に持っている

ロンギヌスの槍を青い瞳に映る目の前のオレンジ色に輝く太陽に深々と突き刺した。

ジルはのぴの頭上に輝くオレンジ色に輝く太陽にロンギヌスの槍

突き刺すと耳に付けた無線から誰かに何かを報告した。

「槍を太陽に突き刺したわ!ロンギヌスが鍵となる筈よね!!」

やがてジルの無線からノイズに交じってジョン・C・シモンズの声が聞こえた。

「よろしい!鍵を回してガフの扉をロックして!部屋を封鎖しろ!急げ!」

「ラジャー!回すわよ!うおりゃああああああっ!」

ジルは空中で逆立ちのまま静止したままロンギヌスの槍を両手でしっかりと掴んだ。

続けて彼女は渾身の力を込めて手首を大きく捻った。

すると今まで起きていた異常現象は全く逆の反対の流れに変わって行った。

セフィロトの生命の樹の形をしていた超強力なバベル超結界は

徐々に蜘蛛の巣状のヒビが入り、やがてバリン!

と音を立ててガラスのように砕け散り、消滅した。

また『神化』しつつあるのぴの周囲を飛んでいた『セラフィヌ・ケリヴァー』は

結界の破壊と同時に8体全て爆四散して消滅した。

異世界の裏世界の暗黒に入っていたヒビ割れも消滅して元通りになった。

天を仰いでいた『のぴ』の口内の真っ赤な光は消え去った。

続けて両頬の真っ赤に輝く太陽の聖環も白い肌の中に吸い込まれるように消えた。

真っ赤に輝く両瞳は元の茶色の瞳に戻った。

額に現れた真っ赤に輝く瞳も白い肌の瞼が閉じ、消えた。

『のぴ』の全身から真っ赤な光は徐々に消えて行った。そしてとうとう。

オレンジ色に輝く太陽の中央に現れたドーナッツ状の無限の数だけ

重なった超巨大なまるでブラックホールを思わせる穴が急速に閉じて行った。

『神化』しつつある『のぴ』の頭上に輝くオレンジ色の太陽も消失した。

『のぴ』の頭部の真っ赤に輝く巨大な天使の輪も消えた。

最後に『のぴ』の背中から生えていた巨大で長いまるで天女の羽衣を思わせる

6体の真っ赤な翼は空中でバラバラに分解されて消えた。

『のぴ』はそのまま完全に意識を失いゆっくりと仰向けに倒れた。

周囲は『静かなる丘』の暗闇に戻って行った。

どうやらギリギリのところでガフの扉は閉じ、部屋は封鎖されたようだ。

ジルは空高い所からゆっくりと『静かなる丘』

の遊園地のステージの木の床に着地した。

「ふーつ。何とか間に合ったみたいね!危ういところだったわ。

あの『セラフィヌ・ケリヴァー』が展開していた『セフィロトの生命の樹

のバベル超結界が異世界の現実(リアル)に物質化して臨界点を突破してしまえば。

一部の彼に選ばれた若い女性達の個体生命を維持出来なくなるところだったわ!」

そして辺りはシーンと静まり返っていた。

ジルの安堵した表情を見ていた魔獣ホラー・ガーゴイル

板尾龍の姿に戻り、茫然とした表情をしていた。

そして生まれて初めて力が抜けて座り込むと言う大きな経験をした。

シェリル刑事も正に冷や汗をかきながら正座した。

ちなみにジルが2人にいまの『のぴ』の状態をこう説明した。それによると。

『のぴ』は一時的に短い間、神の依り代(よりしろ)にされただけで。

肉体的な異常は無いとの事。

ついでにのぴの精神面は神秘体験による多少の変動はある。

ただ正常に目覚めれば正気に戻るでしょうと説明されたのをシェリル刑事は聞いた。

しかし彼女は強い疑問が心の中に芽生えた。

どうして?まるで最初からこの結果になる事を知っているような言い方なのか?

それは明らかに『静かなる丘』の超常的な力とは異なる何か未知の能力が

彼女の肉体と精神的に備わっているのだろうか?

一方、何が起こったのか分からずに茫然と頭が追いつかず

理解出来なかった若村秀和は頭の処理を終えた。同時に一気に我に返り。

自分の理想の計画があと一歩で成功しようとしていたのに。ジルの妨害により

失敗した事にようやく気付き、またしても激怒して大声で喚き散らしていた。

ジルと板尾は若村のキンキン声で頭が痛くなった。

ジルはようやく事が落ち着いて眠っている『のぴ』氏を起こしたくないのと。

『R型暴走事件』と今回の一連の『静かなる丘・サイレントヒル終末事件』

の今までの過去から現代に至るまでの若村の今までのやり方と言動。

更に死者や遺族を馬鹿にし、蔑ろにする彼の彼の態度。

荒々しい動きに心底腹が立ったジルはシェリル刑事の代わりに

改めて右腕を空に振り上げて若村の側頭部を力の限り殴りつけた。

若村は「うっ!くそっ!」と唸り、舌打ちした。続けてジルは右脚を振り上げた。

「ぐえええっ!」と若村身動きが取れなぬまま蹴り飛ばされた。

同時に彼の身体はゴロゴロと木の床をしばらく長い距離を転がった。

その頃には若村はあっと言う間に腹部と全身の激痛で気絶した。

ようやく真の沈黙が訪れたのだった。ついでにジルも悪態をついた。

「クソ野郎が!ずっとそこで寝て反省しなさいッ!つくづく腹の立つ男ね!」

「全くだわ!」「同意です」とシェリル刑事と板尾龍。

普段は心優しく相手がテロリストであってもそのリーダーの悲惨な末路に対して

「せめて魂が安らかに」と声をかけるジルですら怒りをにじませる程。

若村秀和と言う男は悪かつ外道極まりない男だと言うのは確かだろう。

だからこそ放置するにはあまりにも危険すぎる男なのだ。

もうすでにアメリカ政府や魔獣新生多神連合や世界中。

自国の日本政府にも敵視されていた。

そしてジルは魔獣ホラー・ガーゴイル事、板尾龍と

しばらく何事か揉めて口論をしていた。

「彼から色々、魔戒人形やコトリバコとかについて拷問して聞き出す予定の筈だろ?」と。「ええ。でも我々の管理は難しい上に若村秀和の『静かなる丘』の

超常的な力は当初のジョンの予想を遥かに超えていた。だから・・・・」

その時、カランコロンとどこかで音がした。

反射的にシェリル刑事は素早く音の下方を見た。

木の床には水の入ったペットボトルが落ちていた。

するとジルは何かに気付き、大急ぎで走り始めた。

同時にシェリル刑事も全速力で転がっているペットボトルに向かって駆け出した。

若村秀和は自らの『静かなる丘』の超常現象を使い。

シェリル刑事が念じて創り出した太い頑丈なロープを消滅させた。

そして四つん這いで若村は走った。

続けて彼はペットボトルに手を伸ばしてしっかりと掴んだ。

次の瞬間、パチン!パチン!と火花が散る音が聞こえた。

同時に若村の肉体とし精神はペットボトルの水の中に吸い込まれて消えた。

2人は若村が掴む前にペットボトルを取り上げようとした。

しかしジルとシェリル刑事のタッチの差で取り上げられなかった。

つまり完全に逃げられたのである。

シェリル刑事は悔しそうに唇を噛みしめた。

畜生!まさか!ペットボトルの水の中で道を作るなんて!!

「あいつは鏡を使って刑務所から逃げた。今回は水か・・・・。」

ジルは悔しそうにしつつも冷静に分析した。

シェリル刑事はあと一歩で捕獲寸前で逃げられて足を振り上げた。

そして両脚を木の床をガンガン踏みしめて腹ただしくも何かを叫んでいた。

魔獣ホラー・ガーゴイル事、板尾龍は彼も走り出そうとしたが。

コア(核)のあった胸部から全身に至るまで激痛が走り。

身体の力が抜けて倒れかけたので走る事が出来なかった。

「申し訳ありません・・・。やはり胸部と腹部の痛みが・・・。」

「いいのよ・・・」とジルは優しく言うと直ぐに

無線でジョン・C・シモンズに報告した。

「こちら!HQ!若村秀和はSCP財団のシェリル刑事が捕獲寸前に

ペットボトルの水を利用して門(ゲート」を作り、逃亡しました!」

「やはり持った通りだな!案ずるな!必ず我々が捕らえる!

SCP財団には手に負えないようだね。やはり君達には彼の管理が無理のようだね!

彼はやはり我々が捕らえて!あとは予定通りに。

色々、魔戒人形やコトリバコとかについて聞きたい事がある。

そう言う訳で『のぴ』と『最後の聖なる石』を回収してくれ!以上だ!」

「了解!『のぴ』と『最後の聖なる石』を回収して戻ります!アウト!」

ジルは言うと無線のスイッチを切った。

「よかったわね!園田さんとの食事の約束が出来たわよ!」

「ですが胸部と全身が痛いのでセックスは無理です!」

「食事できるだけ良かったじゃないの!ホラーにとっての幸せ!」

ジルは板尾にニッコリと笑って見せた。しかしすぐに真顔に戻った。

「それと!これも回収!貴方には過ぎた力よ!

既にアメリカ合衆国に散らばっていた聖なる石は全て集めたわ。

貴方の物がラストよ!」

「グヌヌヌッ!」と魔獣ホラー・ガーゴイル事、板尾龍は悔しそうに唸った。

ジルは「しょうがないのよ」と言う表情を浮かべてこう言った。

「これはジョン・C・シモンズ!魔王ホラー・ベルゼビュートの命令よ!」

・魔獣ホラー・ガーゴイル事、板尾龍は仕方無くジルの言う事におとなしく従った。

そして去り際に板尾はシェリル刑事を見ると少し笑った。

彼は気晴らしにと考えてサイン色紙にサラサラとボールペンで自分のサインを書いた。

彼はシェリル刑事に笑顔で渡すと背を向けた。

「あげるよ!せっかくだから!!君はジョン様の命令で見逃してあげる!」

魔獣ホラー・ガーゴイル事、板尾龍はニッコリと笑って見せた。

更にジル・バレンタインは『のぴ』の身体をよいしょと両手で抱き上げた。

それはまるで母親のように両腕でしっかりと抱き締めながら。

「その子はどうする気ですか?」とシェリル刑事。

 

(第6章に続く)