(第12章)デストルド(死の欲望)の覚醒

(第12章)デストルド(死の欲望)の覚醒

 

(デス・死の世界)。

覚醒した『のぴ』はそのまままるで石像の様にただ黙って突っ立っていた。

彼女はようやく一瞬だけ正気に戻ったがすぐに脳裏にミャンマー軍が

市民に行った裁判によらない処刑をされた人々。

軍に拘束されている途中に死亡した人々。

拷問や不法な拘束による数多くの殺された人々。

過剰な武力行使に巻き込まれて次々と殺されたミャンマーの自国の一般市民達の

人権侵害の映像が次々と脳内に流れ続けてまた彼女は正気を失った。

そして甲高い声で長々と絶叫し続けた。死者は約598人にも昇った。

やがてのぴは完全に沈黙した。更に無表情になり、まるで操り人形と化していた。

続けてのぴは両腕を組み、バッ!と左右に一気に広げた。

次の瞬間、彼女の全身は真っ赤な光に包まれた。

更にのぴの意識と自我を失った抜け殻の霊体・魂の周囲に真っ黒に輝く

分厚い鎧のようなまるでパチンコ玉のような球体が現れた。

そしてその中に『のぴ』を閉じ込めた。やがてそれはコア(核)となった。

続けてコア(核)の表面が大きくデコボコと波打ち始めた。

やがてとても小さな四角いブロックの形に

割れて無数に増えてクルクルと回転し始めた。

更にコア(核)の表面はどんどん大きくなり。やがて形を創造し始めた。

まるでカチャカチャと音を立てて動くルービックキューブのある形に変形して行った。

それは超巨大な真っ赤な昆虫のような姿をしていた。

続けて頭部は牛のような形をしていた。

頭部から2対の昆虫の触覚に似た角が生えていた。

上部は赤色で下部から先端は美しい緑色をしていた。

さらに4対の青い冷たい輝きを放つ眼を左右に三角形に3つ固まって開いた。

両腕は真っ赤な筋肉で覆われて肘の下部から上腕筋辺りから

4対の真っ赤に輝く翼の形をした鋭利なカッターが生えていた。

更に両脚は太く分厚い赤い筋肉に覆われていてまるで恐竜のような形の脚をしていた。

両膝に緑色の羽根を生やしており、両足3対の細長い緑色の爪が生えていた。

ドスン!と地響きを立てて歩き始めた。更に頭部の下顎から黄色の角を生やした。

両頬から2対の細長い魚のエラ状の突起を生やした。

胸部には意識と自我が消失したのぴが真っ黒に輝く

パチンコ玉の球体のコア(核)の中で体育座りしてピクリとも動かなかった。

更にその赤い異形の怪物は青空の天空に向かって甲高い吠え声を上げ続けた。

それを見ていた佐代子は大喜びしていた。

「やった!やりましたあああっ!天魔ヴァルティエル様ッ!ついに!ついに!

アレッサ・ギレスピーとシェリル刑事に代わって楽園の扉が開きます!

ああ!これで憎っくき旧人類は滅び去るんですよおおおっ!

いじめで自殺に追い込む悪い大人達や中学生や家族はみんなおしまいだよおおっ!!

キャハハハハハハハッ!みーんな!みーんな!みーんな!

すっきりといなくなるんだああっ!!」と佐代子は勝ち誇った表情を浮かべた。

そして途轍もなく巨大になった異形の怪物を見上げた。

「キャハハハハハハハッ!さあー死神ホラー・タナトス

今こそ旧人類を肉体を滅して全ての魂を回収して楽園の扉を開き!

死者と生者の全ての魂を新人類に一人残らず移してしまうのです!

そして楽園を天魔ヴァルティエールと太陽神テスカトリポカと共に!

一緒に創造するんです!私が主(あるじ)です!だから!

私の言う通りに動きなさいッ!キャハハハッ!最高の気分よおおっ!!

あいつらは私のいじめを無視して。生きる邪魔をした!

あいつらはみんな一人残らず死ぬべきなのよ!これでおしまいよ!キャハハハハッ!」

佐代子は狂ったように笑い続けた。そして彼女の心の中には

旧人類に対する敵意と怒りと憎しみの感情をここで一気に爆発させた。

彼女は恍惚状態となり、精神が完全に崩壊していた。

彼女は嬉しさの余り、ぴょんぴょん爪先立ちで飛び回った。

「ゴミは!ゴミ箱に!あいつらみんなゴミだ!だから消し去ってやるんだああっ!」

死神ホラー・タナトスはグニャリと牛のような頭部の青い冷めた輝きの

放つ眼で佐代子の方を見た。死神ホラー・タナトスは背中からずぽっ!ずぽっ!

天文学的な数字の美しく緑色、黄色、青色、赤色に縁取られた

太く長い触手をぎゅるぎゅると音を立てて動かした。

そして太く長い触手はゆっくりと佐代子の方へと伸びて行った。

同時に触手の先端をカパッと開いた。

さらにカポッ!と言う音の後に触手の先端の銀色の

刃物のようなものを佐代子のむっちりとした白い肌の

内太腿を通ってドスッ!と彼女の下腹部に突き刺した。

更にズルッ!と佐代子は尻もちを突いた。

それからすぐに佐代子の身体は浜辺をズルズルと引きずられて空高く持ち上げられた。

彼女は痛みで一瞬だけ顔を歪ませた。

「痛いっ!痛いっ!あれ?何で私が?あっ!ひゃあああっ!うわああっ!きゃっ!」

間も無くして佐代子は青空高い所で仰向けに明らかに

無理な姿勢のまま成す術もなくブンブンと振り回され続けた。

続けて何かを吸い出すような不気味なじゅるじゅるじゅると言う

音を立てて彼女から血液を吸い取り続けた。

彼女はピンク色の唇をプルプルと震わせた。

彼女は戸惑い、恐怖を感じ、信じられない表情をした。

「いやああああああああああっ!ああっ!いやっ!助けて!助けて下さいッ!

あああっ!いやああっ!ヴァルティエール様!あたし!

死神に!血液をたくさん吸い取られている!ひいいいっ!いやあああっ!

なあんでぇっ!あうううううっ!うわああああっ!」

佐代子の耳には自分の血液をじゅるじゅると吸い取られる音を聞きながら。

「ああああっ!んああああっ!ああううううっ!あああっ!ぐうううっ!あああっ!」

佐代子は断末魔の声を長々と上げ続けた。間も無くしてドスン!と

音を立てて血液を吸い尽くされてたちまちカラカラのミイラと化した。

彼女は骨と硬くなった筋肉と皮を残して細長い両腕で自らの胴体を抱きしめる形で

白い砂の上に座り込み、そのままドサッ!と仰向けに倒れた。

両眼は落ちくぼんでいて茶色の瞳が見えた。口を大きく開けたまま息絶えていた。

同時に佐代子の魂も血液と共に触手から吸収されて行った。

そして完全に吸収された佐代子の青緑色に輝く魂はやがて

死神ホラー・タナトスの体内の下腹部にある子宮に似た広い空間に閉じ込められた。

彼女は楽園創造の新人類のSHB(サイレントヒルベイビー)の赤子の中に

転生されるその日まで佐代子の全ての前世の記憶は完全に消滅した。

同時に旧人類に抱いていた敵意も憎しみも怒りもあらゆる感情が消去された。

原始の本来あるべき幽体の姿に戻った。

つまり肉体からの『死』の解放である。

しかも母なる黒き月の原始の世界に閉じ込められたのは

どうやら彼女だけではないらしい。

そこには今まで異形の怪物達や

ワンバック』『天魔エグリゴリ』『ヴァルティエル』達。

怪異天使レギオンや田村花の兄の異形の怪物や自殺した者達。生贄の儀式

として殺された大勢の男女の人々の魂も原始に還り、ここに閉じ込められていた。

他にもこの怪異事件が起きる前の事故や人間同士による殺人や虐待により

弱って死に至った普通の子供や老人、女性、男性多くの人々。

中には赤ちゃんもいた。

全員、佐代子と同様に全ての前世の記憶は完全に消滅していた。

また子供達は20代の成人に。老人は20代の成人に強制的に姿を変えられた。

そして『SHB(サイレントヒルベイビー)』の赤子に転生されるその日まで

人間が当たり前にしていた日常の会話と原始的な行動と恋愛に似た関係や元々の

人間達の生活を偽世界の日本の街『東京』を再現した世界で何も知らずに続けていた。

真実を覆い隠しているであろう世界で。またその偽世界『東京』には

老人や子供が存在しない違和感があるのにも関わらず誰も気付いていなかった。

そこには大人の姿をした人々の魂だけがいた。

大人の姿をした人々の魂と心はお互い融合してひとつとなっていた。

男女でセックスと恋愛を模倣し続けていた。

しかし肉体が無い為、子供は創造出来なかった。

その為、偽世界の『東京』には『妊娠した妊婦』や『産婦人科

『分娩室』が存在せず『病院』すらも存在していなかった。

しかしそれでも純粋に愛し合う男女もいれば何度も重ねて不倫を行い。

複数の男女と関係を持つ者達もいた。

そこには旧人類の常識やルールは無い。

不倫をしている男女を批判したり間違いを指摘する者はほとんどいなかった。

偽世界は街の暮らしを表面の形だけを再現したルールや

常識の無い混沌としたカオスの世界だった。

ある意味では正に楽園のような場所だった。

彼らは魂である為に食べる必要もなければ寝る必要さえも全く無い。

仕事に行く事も闘いも争いも人を失う悲しみも存在しない。

そして魂の中ではミャンマーでの軍政府による弾圧やテロリストによって。

あるいは国の中の紛争で亡くなった数多くの国民だった者も含まれていた。

彼らは自然に寿命が尽きて亡くなった者達に交じって暮らしていた。

彼らは儀式的・模式的に『食べて』『寝る』。

『仕事をする』を日常の中で曖昧に繰り返し続けていた。

もはや必要の無い行為に過ぎないのだが。

ただ人々の魂は何も知らずに繰り返していた。

偽世界とは全ての魂もアストラル体も意識も全く理解していないのである。

そして曖昧な日常の中、魂の人々は男女や男性同士と交わり続けた。

人々の魂は溶け合う心の中で性的快楽に溺れて行った。

また魂になれば性別は一切関係なくなるので

男女の区別もほとんど意味も無いものだった。

生前の男女と愛し合い狂い合い、交わる行為を模式的に続けられた。

佐代子はそんな人々の姿に戸惑いつつも声を聴き続けた。

彼女は人々の心が溶け合い、男女も区別も無くただただ

性的快楽の為に性行為をしている光景に衝撃を受けていた。

さらに佐代子の耳に男女の会話が聞えて来た。

「気持ち良かったよ!!仕事の後は最高よ!」

「じゃあ!沢山しましょう!女帝様と太陽神様の為に!」

それから男女の会話する声と太い喘ぎ声と甲高い喘ぎ声が佐代子の耳に聞こえた。

「うおおおおっ!おっ!あっ!あっ!いいよ!もっと!うわああっ!」

「んほおおおっ!あっ!いいよ!もっと!うわああっ!ほおおおっ!」

「あっ!そんな!いつの間にあっ!あん!あっ!」

佐代子は気が付くとお互いセックスをしていた男女の心と

自分の心が完全に溶け込んでいて既にどこまでが自分で何処までが

他人の男女なのか分らなくなっていた。

しかし佐代子が辛うじて認知出来きたのは自分が座ったまま

男の身体の上で激しく腰を振り続けている光景だった。

佐代子はだんだん全身が暑くなって行くのを感じた。

ふっくらとした白い肌に覆われた両頬と深い胸の谷間を紅潮させた。

彼女はハアハアハアと徐々に荒々しく息を吐き続けた。

同時に彼女の張りのある大きな丸い両乳房

は早く早くに上下左右にプルプルと揺れ続けた。

「うああっ!ほああっ!マルコさんッ!気持ちいいですッ!凄いッ!あっ!」

「んんんんっ!ほおおおっ!おおおおう!ほあああっ!ほおおおおうっ!」

佐代子は直ぐに両瞼を閉じて、細長いややキリッとした茶色の眉毛をハの字にして

額にしわを寄せた。佐代子は長い間、喜びに満ちた甲高い喘ぎ声を上げ続けた。

同時に佐代子は両頬まで伸びたショートカットの茶髪も

上下にフルフルと揺れ続けていた。

「気持ちいいですッ!もっと!もっと!突き上げて下さいッ!きゃああんっ!」

佐代子はピンク色の唇の口元を緩ませて笑うと美しい白い前歯が見え続けた。

佐代子はマルコに甘い声でこんな要求をした。

「あっ!あっ!ふっ!うっ!いいです!お尻を強く握って下さいッ!」

マルコは彼女の言う通りに大きな白い肌の丸いお尻を両手でムギュッと強く握った。

佐代子は「あああんんっ!イグッ!イクッ!ああううん!」

と天井に向かって遠吠えした。

天井にはタロットカードの12の大アルカナの絵が見えた。

すると佐代子のお腹から一人の裸の女性が出て来た。

彼女は元々マルコの心と溶け合っていた他人の女性だ。

仰向けの姿勢となり、気持ちよさそうに瞼を閉じていた。

さらに見ず知らずの他人の女性は胸元まで伸びた茶髪のロングヘア。

丸っこい低い鼻。ピンク色の唇を震わせて白い前歯を見せていた。

同時に張りのある中位の白い肌に覆われ

た丸い両乳房を上下左右にプルプルと震わせた。

むっちりとした両脚を大きく左右に広げて腰を上下にカクカクと揺らし続けた。

すでに茶色の乳輪や乳首は屹立していた。

彼女は細長いキリッとした茶色の眉毛をハの字にして額にしわを寄せていた。

 

(第13章に続く)