(第1章)黄金騎士ガロ対へドラ(前編) へドラ生誕50周年記念エピソード(3部作)ー第1章から第3章までのみ先行公開ー

(第1章)黄金騎士ガロ対へドラ(前編)

へドラ生誕50周年記念エピソード(3部作)。

 

ニューヨーク市警の近くの一般道路を10時間余りを進むと

何処か広場のある住宅街のとある一角をパトロールする一台にパトカーの姿があった。

そのパトカーの車内の運転席には金髪のお団子のツインテールの髪型。

キリッとした細長い黒い眉毛。ぱっちりとした茶色の大きな瞳。高い鼻。

ピンク色の唇。ふっくらとした両頬。

警官の制服に包まれた張りのある大きな丸い両胸。

彼女は田中ルーラーン巡査。日本人とアメリカ人のハーフである。

20歳の若い新人警官だった。彼女はハンドルを操作してパトカーを

走らせながら助手席に両腕を組んで何かを考えている

茶髪に白いコートを羽織った背の高い日本人の男を見た。

彼の名前は魔戒騎士の最高位の黄金騎士ガロ・冴島鋼牙だった。

しばらくしてルーラーンはおずおずと鋼牙に尋ねた。

「あのー本当に信じているんですか?あの都市伝説の噂を・・・・。

新種のUMA(未確認生物)の実在を???」

「ああ実在する可能性は考えるべきだろう。」と鋼牙は冷静に答えた。

「本当に実在するのかしら?と言うか確かそのUMA(未確認生物)って。

日本の特撮映画でゴジラ対へドラに出た公害怪獣にそっくりだって話じゃない?」

「ああ、つまりその生物は本来は映画の中でしか存在しない架空の存在だ。」

「でも最近、『へドラ』『スモッグモンスター』を見たという目撃証言が

沢山警察に通報されていて今じゃ困っているのよね!あのニュースも本当なのか??」

「都市伝説によると『へドラ』は午後0時に闇夜に潜み現れるらしい。

そいつは道路に現れて夜中に運転する自動車を襲うのよね。

どうやら昔の日本の怖い話のように『自動車で夜のハイウェイを走行してると

真っ黒な海坊主の姿をしたへドラそっくりの怪物が自動車のマフラーから噴出する

有毒な車の排気ガスを求めて超高速で後をどこまでも追いかけて来るらしい。」

それからルーラーンは車の運転席のどこかから新聞を取り出した。

新聞はニューヨークタイムズ紙だった。この大都市ではお馴染みだ。

ニューヨーク市内各地で白骨死体を相次いで発見!!

都市伝説の怪物へドラの仕業か?!」と言う大見出しがあった。続いて内容はー。

「13日前からニューヨーク市内の裏路地や森や空き地にてまるで強烈な酸で

溶かされて殺害されたと思われる白骨死体が発見された。

一部ではへドラの仕業と考える者が多いと言う事実が警察の取材で明らかになった。

警察は被害者が全員、ポリコレ過激派だった事や性的偏見や差別を持つ男女に

襲い掛かっている事から憎悪や復讐の為に無差別テロを

繰り返しているテロリスト集団の可能性を指摘した。

今後も人間達の殺人事件の可能性を考えて慎重に捜査を進めている。」

しばらく鋼牙が新聞を最後まで読んだ直後、いきなり車の駆動音とは

別にまるで濡れ雑巾を大きく叩いたかのような大きな音が聞こえ始めた。

べちゃ!べちゃ!べちゃあっ!。

「何?」とルーラーンは反射的に車のバックミラーを見た。

次に瞬間、「ひっ!」と小さく悲鳴を上げてみるみる顔が青くなって行った。

べちゃっ!べちゃああっ!べちゃっ!

べちゃべちゃべちゃべちゃべちゃべちゃべちゃ。

べちゃべちゃべちゃべちゃべちゃべちゃべちゃ

。べちべちべちべちべちべちべちべち。

車のバックミラーのガラスには真っ黒な

海坊主ののような得体の知れない何かが見えた。

しかも超高速でパトカーの後ろのマフラーから排出される

排ガスを求めて後を執拗に追跡し続けた。

ルーラーンは顔面蒼白となり、声も掠れた。

鋼牙は一切表情を変えず相変わらず不愛想な表情で助手席に座っていた。

「現れたな。魔導輪ザルバ!奴は魔獣ホラーなのか?」

すると鋼牙の指に嵌められていた魔導輪ザルバと呼ばれた

大きな銀色の髑髏の指輪の口がカチカチと金属音を立てて

とても景気良くおしゃべりを始めた。

ルーラーンはそれにびっくりしてビクッ!と全身を震わせて驚いた。

「今、あいつを調べている!鋼牙!後方の車から超強烈な邪気が

所狭しと俺達が乗る車を爆走中だぜ!」

「正体は?あいつはホラーか?それとも霊的な別の何かなのか?」

「待て待てそう慌てなさんな!鋼牙!余り焦らすな!彼女が焦って事故っちまうぞ!」

そう言うと魔導輪ザルバは隣の運転席で顔面蒼白でハンドルを

握って運転している田中ルーラーンを顎でしゃくった。

確かに彼女は無言でハンドルを握り締めて全力でアクセルを踏みしめていた。

恐ろしく縦に垂直に左右に開いた真っ赤に輝く瞳をギラギラと輝かせて

地面の道路のアスファルトを高速で滑るようにパトカーの後方を執拗に追跡し続けた。

更にもっと恐ろしい事に真っ黒なへドラそっくりの姿をした

UMA(未確認生物)の胴体から4本の巨大な翼のような

ものでもあり、巨大な両手にペラペラの指を数本生やした。

そして超高速で前後に両手を振り続けさらにスピードを上げて走り続けた。

流石のルーラーンも恐怖の余り、絶叫して涙目になりながら運転を続けた。

鋼牙は今にもパニックを起こして運転中にハンドル操作のミスで事故を

起こしそうな彼女をどうにか冷静な口調で落ち着かせて指示を出した。

しかしなかなか彼女のパニック状態は収まらない。

「落ち着け!とにかく予定通り!この先の広場におびき寄せる!ザルバ!!

奴の正体は何なんだ?急いでくれ!彼女は正体が分からず限界だ!」

すると魔導輪ザルバはカチカチと金属音を鳴らして何かを言った。

「クソっ!なんてこった!鋼牙!きおつけろ!周囲にまだ他にも…ぐわっ!」

「うおおおおっ!」と鋼牙は後方から感じた衝撃で前のめりになった。

「きゃああああああああっ!あああああああああっ!」とルーラーンの甲高い絶叫。

次の瞬間、バゴオオオオン!ドゴオオン!と言う激しい激突音がした。

パトカーは大きく前に無理矢理押し出されるように吹っ飛ばされた。

続けてパトカーはキーキーキーと地面のアスファルト擦るように

左右に大きく動き、車体を水平に保てずジグザグ走行になっていた。

ルーラーンは死に物狂いで車体を水平に保とうとハンドルを操作し続けた。

「ぎゃああああああああああっ!まって!洒落にならないよ!あああああああっ!!」

パトカーは気が付けば人気の無いニューヨーク市内郊外の林のデコボコ道を

走り続けていた。やがて目の前の目的地の広場の入り口がぼんやりと見えた。

「よし!ここだ!ここで車を停めてくれ!」と運転しているルーラーンに呼びかけた。

しかし彼女は恐怖の余り、身体が石像のように硬直していて無反応だった。

鋼牙はさらに大声で「早く停めてくれ!」と声をかけた。

次の瞬間、田中ルーラーンはビクッ!と全身を震わせて我に返った。

同時に反射的にアクセルを思いっきり踏みつけた。

「きゃあああああああっ!やめてええええええっ!殺さないでええええっ!」

彼女は何故か聞えてきた自分が踏んだ時に

鳴り響いた甲高いブレーキ音に過敏に反応した。

その事でまた軽いパニックに陥った。

キイイイイイイインと甲高いブレーキ音と共に大きく半円にドリフトした。

そして周囲に土煙と砂埃を舞い上げて散らした。

ようやくパトカーは事故る事無く無事に停車した。

しかし彼女が安堵する間も無くズドオオン!と大きな激突音がした。

続けてパトカーの天井が大きくへこんだ。

どうやらへドラそっくりのUMA(未確認生物)はパトカーの

天井のサイレンに乗っかって暴れ回っているようだ。

ガアアン!ガシャアアン!と大きな音と共に

更に天井は小山のように大きく内側にへこみ続けた。

さらに大きくガラスが割れる音と共にパトカーの左右のフロントガラスは

大きく上の方からヒビが割れて今にも破壊寸前となっていた。

続けて蜘蛛の巣状にヒビが割れているフロントガラスから真っ赤に輝くランプと

真っ青に輝くランプのサイレン部分がいつの間にか引き千切られて

それを素手でバラバラにへし折り、怒り任せに遠くへと

ゴミの様に投げ捨てているのが見えた。

鋼牙は冷静に自分と恐怖で身動きが出来ない

田中ルーラーンのシートベルトを素早く外すと「出るぞ!」と呼びかけた。

鋼牙の合図で田中ルーラーンはパトカーのドアを開けて

一目散にパトカーの外へ飛び出して脱出した。

田中ルーラーンはパトカーから脱出すると鋼牙を探してパトカーの前方から

大回りして走った。そして正面の白いヘッドライトが付いたままのパトカーの正面の

ところでいきなり目の前にあのへドラそっくりの姿のUMA(未確認生物)が現れた。

彼女は目を見開いて口を開けた。しかし恐怖の余り声が出なかった。

へドラそっくりのUMA(未確認生物)は

どろどろとした口の部分の海藻の部分が開いた。

しかしその時、「クウオオアアッ!」と彼女の背後で鳴き声がした。

恐る恐る田中ルーラーンが背後をゆっくりと首を曲げて振り向くと。

目の前に巨大な頭部と真っ赤な瞳を持つ、もう一匹のへドラ

そっくりのUMA(未確認生物)が現れていた。

田中ルーラーンは今にも泣きそうな表情でさっき見た個体よりも一回り

大きいサイズのへドラそっくりのUMA(未確認生物)を見上げていた。

しかもその個体はさっきよりも青みが掛かった体色で口の周りに

複数の太い管が伸びていた。そして後ろの個体よりも若干スリムな体形だった。

そしてもう一体のへドラそっくりのUMA(未確認生物)は田中ルーラーンを

何故かメスと認識した。続けてもう一匹のへドラそっくりのUMA(未確認生物)は

多量の人体を溶かさない弱い酸を全身から放ち、田中ルーラーンの制服と下着を溶かして全て全裸にするとそのまま彼女を捕らえて林の奥の暗闇の中へと瞬時に姿を消した。

その直後に鋼牙が停車していたパトカーの上を前転で飛び越えた。

へドラそっくりの姿をしたUMA(未確認生物)と田中ルーラーンが

立っていた場所に着地した。そして素早く鋼牙は顔を上げて周囲を見たー。しかし。

そこに2体いた筈のへドラそっくりの姿をしたUMA(未確認生物)も

田中ルーラーンの姿を忽然と消していた。

さらに田中ルーラーンが立っていた場所には少し酸で溶けて

ボロボロになった青い制服とブラジャーとパンツが地面に散らばっていた。

鋼牙は大きく焦った。

「ザルバ!彼女がやられた!奴はどこへ消えた???」

「待ってくれ!クソっ!邪気もそのままそっくりと姿を消した。

完全に気配が消えちまった!!」

魔導輪ザルバも大慌てで逃亡したへドラそっくりの姿のUMA

(未確認生物)を探し出そうと気配と邪気を探り、逃げた位置を割り出そうとした。

しかし何故か完全に探知できず「取り逃がしたのでは?」と彼も焦りを募らせた。

「クソっ!逃げ足の速い奴だぜ!まるで探知できない!!」

「もしも彼女を連れ去ったなら遠くへと言っていない筈だ!!」

鋼牙は魔導輪ザルバに消えたへドラそっくりの姿のUMA(未確認生物)

の気配と探知を任せて自分は鋭い耳と目とサイコメトリーの力で何とか自力で

林の中を走り回り、懸命に消えたへドラそっくりの姿のUMA(未確認生物)

と田中ルーラーンの行方を探し続けた。彼は真っ暗な森の中を緑の芝生を

両手でかき分けて大木をジグザグに隅々まで

目で追って人影や怪物らしき影がいないか。

鋭い茶色の瞳で一本一本の樹の表や裏側を念入りに確認し続けた。

気が付けももう10時間以上も探し回っていた。

しかしへドラそっくりの姿をしたUMA(未確認生物)らしき怪物の影も

田中ルーラーンらしき女性の人影もまるで手品のように何の手掛かりも

無く逃亡した跡も残さず忽然と姿を消した。

幾ら走り回っても結局はいつまでも現状は変わらなかった。

しかしすぐに魔導輪ザルバが鋼牙に警告した。

「マズイ!鋼牙!避けろ!」と。

鋼牙は目にも止まらぬ速さで素早く反応した。

咄嗟に大きく身体を屈めて目にも止まらぬ速さで右側転をした。

次の瞬間、鋼牙の真横近くを緑色の汚泥の塊が高速で弾丸のように通過した。

さらに「ぎゅうううっ!」と短い小動物の断末魔の鳴き声がした。

鋼牙が咄嗟に小動物の断末魔が聞こえた方を見ると緑色の汚泥の中に

毛や肉や内臓が硫酸によって溶け去って白骨化したドブネズミの死体が見えた。

思わず鋼牙もゾッとした。魔導輪ザルバも「うえー」と苦しそうに声を上げた。

鋼牙はいつも通り冷静沈着の不愛想な顔を

していたが少し血の気が引いて青くなっていた。

しかしすぐに彼は緑の芝生を左右にかき分けてさっきのヘドロ弾が飛んで来た

方向に向かって疾風の如く走り続けた。

 

(第2章へ続く)