(第27章)『STEVEN』(今日から毎週水曜日と土曜日に続きを投稿)

(第27章)『STEVEN』

 

『STEVEN』はそこまで説明すると大きく一呼吸を置いた。

そしてゆっくりの椅子の背にもたれかかった。

再び口を開いて説明を再開した。

「ほとんどの大勢の悪魔や妖精。人間。堕天使達は消滅したかに見えたが。しかし。

辛くも生き延びた一部の者達もいた。生き延びた人間や悪魔達は次元の漂流者となり。

やがて魔王ベルゼブブや一部の悪魔達はこちら側(バイオ)の世界に

強い繋がりがあったもうひとつの向こう側の世界(牙浪)の世界の

時空を操るメシアの涙・エイリスと契約をして

魔獣ホラーの上級の魔王ホラーに転生して魔王ホラー・ベルゼビュートとなり。

魔獣新生多神連合を君達こちら側(バイオ)の

世界で組織しているのも知っている筈だ。

また先の『第3の世界(真・女神転生Ⅳファイナル)の東京を完全に

消滅させたマイクロブラックホール『大アバドン』は大きく時空を歪めた。

つまり『第3の世界(真・女神転生Ⅳファイナル)』の周辺の並行世界

パラレルワールド)の時空も大きく歪み、空間の壁も脆く崩れやすくなった。

あらゆる世界の存在。人物。都市。オーバーテクノロジー外来種

君達の世界には本来存在しないものが流れ着き、漂流する現象が相次いでいる。

『静かなる丘・サイレントヒル』『ガイウスの槍』『メトロイドプライム』。

これらは本来こちら側(バイオ)の世界に存在しない筈だったものだ。

幸か不幸か第3の世界(真・女神転生Ⅳファイナル)と

恐らくペルソナ3の一部の世界がこちら側(バイオ)の世界は

人間界と魔界の様に一本の道として繋がってしまったようだ。

だから唯一神側の大天使や天使達も悪魔達や魔獣ホラー達も自由に

3つの世界の行き来が可能となった。

いずれは何人かペルソナ能力者も現れるかも知れない」

「だからBOW(生物兵器)や犯罪組織やバイオテロ以外にも悪魔や

異教の神々による怪異事件が増えていると言う訳か。ペルソナはまだ見た事無いが。

まさかオロス・プロスクや逢魔(おうま)以外にもこんな事件を起こす奴らが。

「さて!大体の必要な話はこの位にしておこう。

今君達は向かおうとしている場所はこちら側(バイオ)の世界の中心であり。

例えるなら地球の中心の核に当たる始まりと終わりの地。

『柳星張の宇宙』。望む世界へと変える事が出来る唯一の場所。

エヴァの世界』のゴルゴダオブジェクト同様『全ての始まりで約束の地』。

『世界の書き換えが可能な場所』『宇宙の卵』である。

私は観測の力を以て解釈させて貰っているよ。」

「あっ!あのー!」とのぴはおずおずとゆっくりと手を上げた。

「のぴさん!どうぞ!私の知る範囲の答えとヒントを与えよう」

『STEVEN』は眼鏡の奥の茶色の瞳でのぴを見た。

「そもそも貴方は何者ですか?人間なんですよね?何か目的が?もしかして?

私達の目的とは別の・・・・目的が?」

『STEVEN』は優しく口元を緩ませて答えた。

「私はかつて『真・女神転生』と呼ばれた

最初の並行世界(パラレルワールド)で物理学者をしていた。

私は離れた場所へ物体を転送するターミナルシステムの開発者だった。

しかしアクシデントによってターミナルが魔戒に繋がってしまった事によって

悪魔に襲われて車椅子を生活をしなければならない程の酷い怪我を負ってしまった。

私はその苦い経験から悪魔に対抗する手段として悪魔召喚プログラムを制作。

それをパソコン通信を利用して無差別にばらまいたのさ。

そして私はどの勢力にも属さず多くの悪魔や異教の神々と戦う人間達を導いて来た。

ここは多くの人間達や自ら望んで天魔となった者やあの包帯の少女の

地母神アスカも私の協力に応じて君達を導いている。気付いていたかい?」

のぴは驚き目を丸くしていた。クリスもただ茫然としていた。

しかし唯一ドラキュラ伯爵だけは薄々気づいていたらしい。

彼は両腕を組み、さっきの『STEVEN』の話を聞いてようやく納得した表情をした。

「やっぱり。そうだったのか・・・・この良く分からない奇妙な違和感の正体は

人間を超えた君の干渉だったのか。通りでフットワークが軽い訳だ。しかし驚いた。

まさかここまでの理(ことわり」に干渉する力を持つ人を超えた存在が実在するとは」

ドラキュラ伯爵が感心している中。

さらに『STEVEN』は途轍も無く衝撃な真実が語られた。

「さてと!ついでにのぴさんとクリスさんとドラキュラ伯爵。

今回の『柳星張の宇宙』へ行き『神の玉座』に近づいた。

そしてのぴさんは人を超え神となったよしみだ。

こちら側(バイオ)の世界の成り立ちについて少しだけ語ってあげよう。

「こちら側(バイオ)の世界にはかっては大いなる理(ことわり)に従い。

ここもあの第3の世界(真・女神転生Ⅳファイナル・ロウルート)と同じように

唯一神YHVAが支配する古き宇宙だった。

しかし古き宇宙の世界の東京に住んでいた15歳の少年

『ナナシ』と呼ばれた人外ハンターと言う人物が。

本来は魔獣新生多神連合の前身となる筈だった多神連合の

魔神クリシュナをマサカドの太刀で切り裂き封印した。

そして宇宙の卵の最深部に位置する心臓が変化した

玉座に座り、全ての人類の魂と新宇宙を手にした。

彼は救世主(カルキ)のフリンを神殺しとして魔神ダグザと共に利用された。

モノリスを通り抜けてYHVAの宇宙へ行き、唯一神を原天使サタンと共に討った。

宇宙の卵は仲間の魂をひとつづつ砕き、宇宙の卵を孵化させた。

ナナシは15歳の少年であり『神』となった。神殺しのフリンは彼の分霊として。

寄る辺の女神のアサヒと言う少女は転生を利用して大勢の人間を産み育て続けた。

ナナシとアサヒは男神と女神として共に新たな世界を創造した。

しかしそんなナナシとフリンが何故?白痴の魔王ホラー・アザトホースと呼ばれ。

フリンが外神ホラーの副王ヨグソトホースと呼ばれるようになったのか?

私には分からない。ただこちら側(バイオ)の世界の人々が

そう観測したのかも知れないね。

何億年以上かけてこちら側(バイオ)の世界は

新たな自然や動物や植物。鉱物。あらゆる万物を創造し。

そして2030年の現代に至ると言う訳だよ。

つまりこれはナナシとアサヒの宇宙創世後の世界だった。

ちなみに魔神ダグザは唯一神YHVAの言葉から自由となり

『ダグザ』と言う役割から解放されて。

宇宙の一部としてずっと君達を一現象自然神として見守っているよ。」

「そんな。始祖ウィルスや始祖花を創造したのはナナシと言う少年なのか?」

クリスはどうしても信じられず『STEVEN』に尋ねた。

「君がナナシをそう観測すれば真実となるだろう」と

意味深な事を『STEVEN』は答えた。

「スケールがでか過ぎて?えっ?良く分かんないよ!どう言う事?どう言う事?」

のぴは大混乱してしまい頭を両手で抱えて考え込んでしまった。

そんなのぴの様子をドラキュラ伯爵は気遣い「無理に考えなくていい」と言った。

「さて!これ以上時間は無いだろうから失礼するよ!

君達も自らが信じる道を目指して頑張りたまえ!」

『STEVEN』はクリスとドラキュラ伯爵と

のぴを激励すると何処かいずこかへ去って行った。

ドラキュラ伯爵に促されてのぴとクリスは先を急いで進んだ。

クリスも『STEVEN』が言った真実について考えていた。

しかし余りにも突飛過ぎて未だに信じられずにいた。

だが今はじっくりと考察している心の余裕は無かった。

だから全ての真実を考えて頭の中を整理するのは後回しにした。

 

再び生と死の境界の三途の川頂上決戦。

魔獣ホラー・タナトスを捕食した4対の塔のような造形物はまるで生き物のように

銀色に輝く太い三角形の触手のようにユラユラと不気味に蠢いていた。

さらに4対の銀色に輝く触手はお互い複雑に螺旋状に絡み合った。

そして巨大な天空まで続く三角形の銀色に輝く塔を形成して活動を一度停止した。

「あれはマイナス宇宙の高次元に封印されている外神ホラー・イリスのものだ!」

「と言うとあれは現世のこちら側(バイオ)の世界に通じるゲート(門)なのか?」

「ああ、そうだ!あいつは高次元の異空間に封印されているが。復活が始まると

あのように高次元空間から死と生の境の三途の川と

現世のこちら側(バイオ)の世界へと光速移動して

復活する為に自らの肉体を分離させた転送装置を作り出すんだ。そして」

「その間にあの残りの5つのラッパを鳴らして人間の魂を回収するのか?」

「さあーただ選ばれた魂だけで残りは何処かに永遠に閉じ込められるだろうな」

しばらくして大河は阿門法師とピアーズとスティーブンにこう言った。

「恐らく若村秀和はあれを現世のこちら側(バイオ)の

世界に召喚するタイミングを狙っている筈だ!」

「と言うと?」とスティーブン。

「今、『静かなる丘・サイレントヒル』の教会礼拝堂の地下のバベル

超結界内部で私の息子の冴島鋼牙と賢者の石の力を持つ男・エア・マドセン。

神を産んだ聖母のフランドール。彼らによって膨大な魔力と

賢者の石の補給源を断ち切られて弱体化する瞬間をな。」

「そして弱った太陽神を彼らが封印すれば邪魔な神は消せるじゃろう。しかし奴は」

「最後に若村が神となり、楽園を創造する。

そして最後にイリスを利用して太陽神テスカトリポカと

他の邪魔な人間達や魔獣ホラーや神々を消し去り。

神殺しの役目を果たし、自らの目的も同時に果たすのじゃろう。」と阿門法師。

すると冴島大河も両腕を組んで何かを考え続けていた。

 

『最果ての死の砂漠』の地下の若村秀和の心の最深部の潜在意識に

通じる細長い通路は下へ下へと続く一本道となっていた。

のぴとドラキュラ伯爵とクリスは若村のいる『柳星張の宇宙』へ続く光速で

高次元の『イリスオブジェクト』の存在する場所へと急いで向かって行った。

その間ドラキュラ伯爵は続きを話した。

「よし!この先にあるはずだッ!間も無く『静かなる丘・サイレントヒル』の礼拝堂で

鋼牙達によって太陽神テスカトリポカの弱体化が始まる。

奴は今それを狙っているんだ!」

「そういえば」とクリスは今までドラキュラ伯爵に対して

妙な意地を張って言えなかった事を話した。

それはもはや遅い質問だった。もはや愚問かも知れない。

「若村秀和の計画は何故?

太陽神や神の従者や他の神々や天使に知られていないんだ?」

すると案の定「愚問だな」とドラキュラ伯爵に言われて案の定、むかっ腹が立った。

しかしすぐにドラキュラ伯爵はこうちゃんと説明した。

「若村は『静かなる丘・サイレントヒル』の超常的な力と他の場所や並行世界

パラレルワールド)から手に入れた『ネガブドネザルの鍵』や特殊な呪術結界を

利用してあの第1から第2の研究室を含む高次元の柳星張の宇宙へと続く

光速装置も全て秘密のベールに覆い隠していたのだろう。

もしかしたら?この先にタイムマシンとやらがあるかも知れないな。

そもそもこれを太陽神様が知ったらとうの昔に『若村秀和のイリスの儀式』

は連中に阻止されているだろう。誰も気が付かなかったのさ。

でもそれをヨグソトホース様と

ジョン・C・シモンズ事、魔王ホラー・ベルゼビュートの二人が計画を知った。

だから私とクリスとのぴと守護天使のアスカが送り込まれたのさ。

だから太陽神テスカトリポカは若村を死んだと思い込んでいるだろう。」

それから一本道の壁にドイツ語と日本語の混じった文章のメモがあった。

ドラキュラ伯爵は分かるように全文日本語にしてクリスとのぴに聞かせた。
守護天使について。その名前と人間の名前。私の知っている限り。

鳴葉有子の守護天使は『天魔アルミサエル』聞いた事があるような無いような。

魔人フランドール・スカーレット守護天使は『天魔ヴァルティエル』。

太陽神の聖母らしい。エア・マドセンの守護天使は『破壊神ミカエル』。

強そう。優しそうなのにこんな奴が何で?人々の守護天使『聖母シェリル』。

最初の聖母。アレッサの転生体。運命の人。

主にエイダ・ウォンや多くの人々を導いているらしい。

のぴの守護天使『この私!惣流・アスカ・ラングレ!この私こそ!聖母にして。

まーいーや。私は貴方のペルソナ。私は常に貴方の心の中にいる。

だから怖がらないで大丈夫よ!私達守護天使の役割は迷える人々を導く事!

それが出来るのは私達だけなの。私は恥ずかしいけど魔法と物理が使えっ。あーつ」

のぴは途中まで書いている当の本人のアスカも

恥ずかしくなったのか書くのを止めていた。

彼女の手紙は途中で途切れていたがのぴはそんな彼女の励ましに元気づけられた。

そして気持ちが楽になり幾つか明るくなった。

やがて一本道を抜けてのぴとドラキュラ伯爵とクリスは若村秀和の

心の最深部にあるイリスオブジェクトの存在する『柳星張の宇宙』に続く

巨大なまるで古びたお城を思わせる空間に出た。

周囲には茶色の古びたレンガの壁に覆われていた。

また途中で壊れた階段が上部に何か所かあった。

しかしすぐに捨てられて忘れ去られたように内部は荒れていた。

そこはお城の入り口のエントランスの広場のようだ。

周りには既に破けてボロボロとなった赤い旗や青い旗があっちこっちに

立てかけられていた。ほとんどはお城の中へと続く廊下は

全て崩れた茶色のレンガや木の柱の一部により完全に封鎖されていた。

そこじゃとてもうす暗くむせかえるような異臭が立ち込めていた。

クリスは平気な顔で辺りを探索して歩き回っていた。

「よく平気だな・・・酷い場所だ」とドラキュラ伯爵。

「もう酷い場所は慣れっこさ!もっと酷い場所を知っている。ここはまだマシさ!」

そう言うクリスの横に立っていたのぴは涙目になって咳をしながら周囲を見渡した。

しかしどこも荒れ放題でまるで心霊スポットの中に入っているようで少し怖かった。

また周囲には大量の血痕が周囲のオレンジ色のレンガの壁に付着しているのを

見つけてしまい顔を青くしてのぴは情けない悲鳴を上げた。

「わあああっ!あああっ!血が付いてるうううっ!」と言う具合に。

ドラキュラ伯爵はその血痕を調べた。

「彼の心の傷だな。恐らく幼い頃に両親や『教団』に虐待された時に付いたものだ。」

「荒れた心城の中は彼の今の心の中か・・・」とクリス。

「こんなに酷いなんて・・・・」ただただ茫然とした表情を浮かべるのぴ。

「あっちこっちボロボロだな。よほどこっぴどくやられたのだろうな。」とクリス。

「あれは?イリス?どうやら廃棄処分されたようだな。」とドラキュラ伯爵。

のぴが見るとボロボロで傷だらけのイリスと思わしき生物の死骸があった。

しかもイリスと思わしき生物の傍に落ちてた資料は。

「2020年。実験用の若い女性捕獲用イリス起動。13番目の無人機。

2030年。十分な実験用の若い女性が20人集まったので廃棄処理」とあった。

よく見るとイリスの胸部には真っ白になった捕獲用の繭の残骸があった。

「どうやら完全に生命機能は停止している。アンブレラ社よりもうまく処理したな」

そしてドラキュラ伯爵とクリスとのぴは城のイメージのエントランスの広場の中央に

周囲のボロボロな城の内部と正反対に美しく七色に輝く長四角の巨大な装置があった。

「これだ!これが『柳星張の宇宙』へ続く装置だ。エレベーターのようなものだ。」

「この先に若村秀和とイリスオブジェクトが・・・・・」とのぴ。

「ああ、この先が高次元の『柳星張の宇宙』に続くものだ!」とドラキュラ伯爵。

「よし!行くぞ!早いところ若村と

インパクトを止めて元の世界の戻さないと」とクリス。

「じゃ・・・行きましょう!私達で何とかしないと・・・・・」

のぴは歩き出した。続いてドラキュラは伯爵もクリスも歩き出した。

ドラキュラ伯爵とクリスとのぴは高次元に向かって七色に輝く長四角の装置に入った。

やがて3人の目の前が真っ白になった。

数分後。ドラキュラ伯爵とのぴとクリスはゆっくりと瞼を開けた。

そこは巨大な暗黒空間だった。

どうやら虚無空間のディラックの海らしい。

さらにのぴが下を見ると大量の真っ赤な液体。

いや海のようなものが広がっていた。

 

(第28章に続く)