(第66章)ニア・ボルテクス界

(第66章)ニア・ボルテクス界

 

クレア・レッドフィールドが考えを巡らせている中ー。

突然、真横から強烈な突風が吹き荒れた。

「うわっ!何?!」と思わず吹き飛ばされそうになり何とか身体を支えた。

そして目の前を見ると底には人型の何かがいた。

頭部は緑色の触覚が2対生えていた。

燃える昆虫に似た複眼。

ひし形に開いた大きな口の上顎に4対の牙を持つマスクをかぶっていた。

更に真っ赤に輝く美しいポニーテールの髪は風になびいていた。

上半身は深い胸の谷間とくっきりとした両乳房の輪郭に沿って

緑色の分厚い鎧に覆われていた。両肩から2対の緑色の翼を生やしていた。

「うにゃああああああああああっ!」と女性の甲高い獣の吠え声の後に

しなやかな緑色鎧に覆われた両脚の膝を曲げた。

ドオオン!と大きな音を立てて謎の生物は空高く舞い上がった。

続けて左手の甲から伸びた黄色の鉤爪が変化したあと七色に輝く魚のヒレ

形をした無数の鋭利なカッターに似た細長い突起で相手の巨大な銀色の金属の不定形の

得体の知れない怪物の(咄嗟の防衛本能で形成させたものと

思われる一種の外骨格の鎧)で全身を身体を包み込んでいた

金属の液体が硬化した棘だらけの卵の殻の形をしたコア(核)

の部分を粉々にした後に内側の金属の糸を全て切断した。

それから謎の生物は再び「うにゃああああああっ!」と長々と吠えると

七色に輝く魚のヒレの形をした無数の鋭利なカッターに似た細長い突起で瞬時に

巨大な銀色の金属の不定形の得体の知れない怪物を天空から

スパッ!スパッ!と袈裟懸に切断してしまった。

すると得体の知れない金属の液体状の怪物はそのままX字型に切断された状態から

「ピイイイッ!」と短く鳴いた後にバチャン!と水柱を

高々と上げてニューヨーク湾の海の深くに沈んで行った。

それから謎の人型の生物は本来の姿に戻った。

クレア・レッドフィールドは顔見知りの人物だった事にホッとした。

彼女の名前はジル・バレンタインである。

「ジル?どうしてここに?あの怪物は魔獣ホラーなの?それともBOW(生物兵器)?」

クレアは気になる事をジルに聞いた。

しかしジルはそのことに関して名何も答えないかのような素振りを見せたが。

彼女は短く簡潔に分かりやすくあの不定形の怪物について説明した。

「野性化したDOOP(ドォープ)兵器は細菌の様に分裂して自身の複製を作れるのよ。

奴は人間の人体と金属を融合させて寄生するの。

ここ最近は他のあらゆる生物や無機物のショゴスのDNAと遺伝子情報や。

その他の生物の遺伝子をコピーして擬態(ミミック)と

思わしき行動を取る事が分かっているわ。

とにかくその子はもう妊娠しているから聖ミカエル病院に連れて行かないと。

さてと!救急車を呼ぶわよ!」とジルはポケットからスマホを取り出して

聖ミカエル病院のER(緊急救命室)に連絡した。

間も無くして救急車が現れてクレアのみが一緒に付き添い救急隊員と共に

聖ミカエル病院に搬送されたのだった。それからサマー・メイブリーは

しばらくは銀色の卵を出産するまで入院する事となったのだった。

 

表向きを古代生物研究所を装った秘密組織ネオプロメテウスの本部。

不敵な笑いを浮かべて緑川博士は仕事に戻って行った。

そして再び研究所内では『並行世界(パラレルワールド)』や

『柳星張の宇宙』や『その他の宇宙の未知の人型オブジェクトを観察する

様々なデータを取っている天体観測所内では緑川博士や他の大勢の物理学者や

科学者やNASAの関係者の研究チームが今回の一番の最大の計画と

観測プロジェクトを水面下で進めていた。

それはこちら側(バイオ)の世界の構造そのものを解き明かす

と言うものだった。しかもそれにはあの氷川と言う男が代表を務める

サイバーテック社も深く関わっていた。

例のマークしていたギルマン・マーシュと氷川の会話から彼が

『こちら側(バイオ)の世界で計画の実行が難しいから

こちら側(バイオ)以外の別次元の

人間だけの世界の移動による計画実行方法を探して。

時空の歪みを利用して移動する方法を何とか探していると言う情報を掴んでいた。

しかし氷川は「その必要はない」と伝えているようだ。

何故ならこちら側(バイオ)の世界こそアマラ宇宙に存在する

ボルテクス界に類似した世界なのだから。

そして我々、『ネオプロメテウス』の関係者は。

このこちら側(バイオ)の世界を『ニア・ボルテクス界』と呼んでいる。

氷川司令官はこれを『嬉しい誤算』と言っていた。

そして『ミロク教典』の当初のシナリオとは異なるもののやはり

サイレントヒル・静かなる丘』の儀式によって今や『ニューヨーク受胎』の

状態にある事もかなり前の調査と考察から最終的に結論付けていた。

OOO氏はこちら側(バイオ)の世界から変化したニア・ボルテクス界のどこかにある

『アマラ神殿』と『オベリスク』を呼び出す巫女となるようだ。

既に氷川とギルマンの『シジマ(静寂)』。

仁藤夢乃氏の『ヨスガ』守護神は目覚めており。

あとは幹部メンバーの一人のアレックス・パパリオスの『真のヨスガ』と

仁藤夢乃氏の『ヨスガ』とギルマン・マーシュの『シジマ(静寂)』の

人間は既に理(ことわり)に目覚めていると既に報告が入っている。

しかしまだ『ムスビ』の守護神や人間は目覚めていないようだ。

さらにまだ『カグツチ』も現れていない。

そして理(ことわり)を持たない半人半魔の『のぴしゅらM6』

はいずれは混沌(カオス)のニューヨークや世界に変革を

もたらす存在なりえるから我々は注目している。

そしてスーパーコンピューターを用いてそのこちら側(バイオ)の世界の

本来の姿をとても細かく短い時間で計算して巨大なモニター画面に分析結果が

3Dモデルでゆっくりと表示された。

「おおっ」

「嘘だろ・・・」

「これがニューヨーク?いや…世界なのか?」

「なんてこった」

「もう。どうして気が付かなかった?」

大勢の物理学者や科学者達は驚き、大きくどよめいていた。

その目の前の巨大モニターにはこちら側(バイオ)の世界の

ニア・ボルテクス界の本来の姿が堂々と3D映像で表示されていた。

ニア・ボルテクス。いやこちら側(バイオ)の世界はこんな姿だった。

その姿形はまるで球体の内側に地面が張り付いているような世界に見えた。

しかし現実(リアル)はいつもと変わらない普通の日常生活の世界にほとんどの

一般の大勢の人々や世界十の人々が住んでいるように認知が歪められ。

このニア・ボルテクスの丸い形を認識する事は全く無い様だ。

つまり真実を覆い隠した世界に無理矢理隔離されてと言う事である。

更にニア・ボルテクス界の中央に浮かぶカグツチさえも

普通の人間には全く認知できないようだ。

認知できるのは理(ことわり)を持つ3人の人間とのぴしゅらM6と

巫女であるOOOのみである可能性が高いと推測された。

いずれは理(ことわり)同士は対立し合い。

基本的に理(ことわり)の主を脱落させ無ければならない。

複数の理(ことわり)で創世するという選択肢は存在しないようだ。

更にすでにアマラ宇宙に繋がり、

情報を読み解く為の道具『アマラ転輪鼓(てんてりこ)』

の開発も進み、間も無くエリア間転送装置機能も完成しつつあるようだ。

さらにこのニアボルテクス界の『箱庭』の地下には『アマラ経絡』が

存在することも判明した。(しかし現実の視点からは目付ける事は

おろか発見する事をも不可能であり、視認できない)

またこれらの並行世界(パラレルワールド)には『アマラ宇宙』が存在し。

それは大いなる意思の元に定められたアマラの摂理が存在すると言ったものである。

そもそもカグツチとは創世の光を成す為の光で在り。

つまり創世とは今までの世界の滅びと引き換えに新しい世界を創造させる事。

また更なる調査と分析から他にもー。

広大なるアマラ宇宙で創世が成されているのはかつて存在した『東京ボルテクス界』

やこの『ニューヨークボルテクス界』だけではなく、アマラ宇宙において

無数の宇宙が存在し、滅びを迎えるとカグツチ的な存在を含んだボルテクス界となり。

新しい世界が生まれている事も徐々にだが明らかになりつつあった。

そしてこちら側(バイオ)の世界はニア・ボルテクスとなり。

やはり新たな世界の創世と誕生を今か今かと待ち続けているのである。

ちなみにヨグソトホースも全て知っていて『おこさまぷれーと』の緑担当の

『のぴ』に既に声をかけてさらに目覚めを促していた。

そしていずれは遅かれ早かれ『のぴ』は目覚めるだろう。

とは言え『おこさまぷれーと』の『のぴ』やしゅが、ちゃき、りあら、

ゆいにゃもいずれは確か何日かしたらアメリカ合衆国から日本に帰国する筈だ!!

しかし3にんの理(ことわり)が目覚めて『アマラ神殿』と『オベリスク

ニューヨーク市内に現れてカグツチの号令が掛かればいずれは『のぴしゅらM6』

として再び混沌修羅の力に目覚め。今度こそ恐らく『致命女(ちめいじょ)』として

目覚める日は近い将来起きるだろうと緑川博士は推測した。

「まだ彼女の旅は終わっていないのよ」とつぶやいた。

そして現在、こちら側(バイオ)の世界の現実(リアル)にいる冴島鋼牙と

リヴィアのゲラルド、フィリパ・エイルハート。鬼島神具。ヒジリ。烈花法師。

太陽神テスカトリポカ。魔獣新生多神連合の異教の多神教の神々と

魔王ホラー・ベルゼビュートの配下の下級と上級の魔獣ホラー達。

ルーアンブレラ社にBSAA。

さらにクリス・レッドフィールド隊長とハウンドウルフ隊。シェリー・バーキン

レオンSケネディ。あのウェスカーの息子だ。

そうそう。ローズマリー・ウィンターズや『R型』のローズもいたか?

彼ら彼女らの協力して人助けが好きな連中と協力するか?

あるいは拒み、対立してお互いの神の権利を巡って争うか?

それは実際に本格的のカグツチの号令が掛かり、それそれの3人の理(ことわり)

の人物達があるいは『のぴ』自身が決める事だ。

未だに『静かなる丘・サイレントヒル』の影響は残っているようだが。

それも間もなく時間の流れと共にそれも薄れて自然と消滅するだろう。

『ニューヨーク受胎』と言う誰も知られなかった大きな役割を終えて。

魔獣新生多神連合も強引に封印する必要もないし。

ましてやまた新しい『静かなる丘・サイレントヒル』の儀式を

例え行ったとしてもこれ以上。

何度も儀式の効果は二度と発動しない。

「生贄の人間が無駄になるだけ。やらない方が賢い選択よ。

太陽神テスカトリポカは既に世界創世の試験に脱落している。

そして法と秩序(ロウ)と混沌(カオス)の通常の役目を果たせず。

未だに中庸(ニュートラル)のままだ。

きっとカグツチは決して許さないだろう。きっとね。」

緑川博士は別のモニター画面に現実(リアル)の視点で見たこちら側(バイオ)の

世界のニューヨークのにぎやかな街並みをじっくりと眺めて見物し続けた。

今ようやく平和になった街。しかしそれはあくまでも仮初(かりそめ)に過ぎない。

そう考えた緑川博士は「偽りの平和は長く続かない」とつぶやいた。

緑川博士は永遠に続いた愚かな人間同士の争い。戦争。バイオテロ

アンブレラ社の負の遺産回収もゾンビパニックも。ウィルス開発。

BOW(生物兵器)。いや正しくは『有機生体兵器』の略だったかしら?

とにかくそのBOWの開発。それを偉い国々やテロリストや犯罪組織に

売り買いするビジネスも間もなく終わりを告げるか?

あるいは中庸(ニュートラル)のままそれらの負の出来事が今後も続くかは。

全ての未来は不確定。とても面白い事になってきた。私はそう思った。

不確定な未来をあれこれ想像するのは楽しいから。

緑川博士は心底まるで子供のようにわくわくした。

そう。未来なんてタイムマシンが無ければ誰にも分からない。

こちら側(バイオ)の世界はあらゆる可能性があっちこっちに

たくさん転がっているのだから。

どれも正しくてどれが間違っているのかなど。

私にとってはどうでもいい事である。

ただただこの世界がどうなるか?それが気になって仕方が無い。

さてとまだ仕事があるから片付けないと。

緑川博士はうーんと背伸びして両腕を伸ばした。

彼女は再び仕事の作業を開始した。

そう、さらなる『ニア・ボルテクス界』の謎を解明する為に。

この物語はまだ終わらない。いずれまた新しい世界。

あるいは元通りにこちら側(バイオ)の世界に戻ってしまうのか?

それか『ムスビ』『シジマ』『ヨスガ』『真のヨスガ』のいずれかの

理想の世界へと一気にすげ変わるのか?

緑川博士はワクワクが止まらなかった。

それにクリス隊長や冴島鋼牙やリヴィアのゲラルドとフィリパ・エイルハートや

大勢の『のぴ』との絆を結んだ人々や『おこさまぷれーと』の仲間達がどうなるか?

私は既に『のぴ』の『致命女(ちめいじょ)』の正体は

ある程度見当のついた推測は出来ている。

『致命女(ちめいじょ)』とは『人修羅』の完全な創造の力だと。

しかしこれも推測の域は出ていないから実際に

現実(リアル)に起きてくれないと確定できない。

もしかしたら全然違うかも知れない。

『人修羅』の力と『致命女(ちめいじょ)』の力はそれぞれ別々の力かも知れない。

そして致命女(ちめいじょ)の謎を解く手がかりはきっと彼女の中にいる

『巣食うもの』『ヴィシュヌ・アバター』『メルキセデク』の中にあるはずよ。

彼女のペルソナ。そして彼女の持つ最後のアルカナ『宇宙(ユニバース)』の力。

これを調べれば我々人間の知識はより高みの世界に昇り詰める事が出来るのだ。

 

(第67章に続く)