(第49章)未完成のガイガン

こんにちは畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第49章)未完成のガイガン

 ニックはその円状になぎ倒されできたクレーターを唖然と見つめながら
「一体?X星人達はどんな先兵を送ったんだ?」
「分からない……だが!見てみなさい!」
と神宮寺博士が巨大なクレーターの中央を指さした。
巨大なクレーターの中央には、背中に3列並んだ黄金の短い翼
とカマのような両腕、腹から股間まで続く
巨大な回転カッターと黄金の鱗に覆われた皮膚、まだ光っていない赤いモノアイ、
とぐろの様に丸まった先端が鋭く槍のような形をした尻尾の怪獣が横たわっていた。
「間違いない……ガイガンだ!」
と神宮寺博士。
「でも……まだ起動していないですね?」
とニック・タトプロス。
それから神宮寺博士はガイガンの顔を指さし
「見て御覧!確かに角や嘴、頬の2つの巨大な角、
モノアイ……皮膚の下の骨格に至るまで確かになにもかも
必要な物は全部揃っているが、ここには微妙な線が無いんだ!」
ニック・タトプロス博士は訳が分からず、
「それで?それが……」
神宮寺博士は
「これは!新型のガイガンだ!」
「新型?どうしてしてそれが?どう見ても?1997年製の旧型だろ?」
「いいや!汚れが一切ない……それに微妙な線が無い!
それどころか表情すらない!まるで個性のないのっぺらぼうな顔をしている!
このガイガンの顔にはまだ戦闘経験が反映されていない……つまり経験が完全に欠如しているんだ!」
「どうして?そんな事が?」
「わたしは人生の半分を生きて来た男だ!私にはすぐ分かる!
まだ未完成なんだ!もしかしたら?最後の仕上げを待っているのかもしれない……」

 東京、地球防衛軍『特殊犯罪調査部』。
 更に盗聴テープの会話で二人のX星人は新しい情報を話し始めた。
「ところで……この地球で考古学を研究しているノスフェラトゥの老人がいましてね!
その老人が奇妙な物を発見したらしいんですよ!」
「それはなんだね?」
「なにも古代アトランティス人が作ったと言う怪獣の能力を増幅させる装置だとか?」
「そんな話があるものか!」
「いや!幾つか研究データが!」
それから長い間、沈黙が続き
「成程……まずは!特定の怪獣の魂と特定の人間の魂……
つまりプラズマ……電気エネルギ―の一種だね!それらを同調させて両者の肉体を同化させると」
「但し!肉体は共有されている為、どちらか片方が死ぬともう片方も死ぬ……」
「つまり!怪獣が敵の怪獣の攻撃を受けて死んだ時は、
肉体を共有している人間も道連れに死ぬわけか?なんとも奇想天外な話だ!」
「実は過去にも亀の様な怪獣と少女と、
ジュニアと例の女……いや!『カイザー02』にも同じようなケースがある事が分りました!
あと勾玉と同じ物質の塊が南シナ海の海底で発見され、我々が地球人より一足早く回収しました!
古代アトランティス人が作ったと言う怪獣の能力を増幅させる装置の形は様々ですが!
勾玉の形をした物は、『カイザー02』の親友のノスフェラトゥから、
現在は別の親友の地球人の女が持っています!」
「それでは!その地球人の女に会って調べてみよう!」
そこで急に雑音が聞こえ、盗聴テープは終わった。
 蓮は腕を組み舌打ちしながら
「亀の様な怪獣とその少女?例の女の『カイザー02』とゴジラジュニア?
その親友のノスフェラトゥ?別の親友の地球人?怪獣と人間の
肉体を共有させて怪獣の能力を増幅させるアトランティスの勾玉型の装置?
一体何の事だ?クソ!何か他に情報が無いのか!」
と悔しさを滲ませながら盗聴テープのスイッチのつまみをカチッ!
と切って椅子から立ち上がり、黒い革の長いコートを着ると
蓮は洋子がプロレスのトレーニングの為に毎日欠かさず行っているトレーニングジムへ向かった。

 アメリカ・チェサピーク湾の海面が沸騰したように泡立ち、
やがて真っ二つに裂け、そこから青白く光る背びれが現れた。
 それはサメの様に前進し、やがて大きく吠えて姿を現すと、
バージニア州中心部に位置する都市の一つであるリッチモンドに上陸した。ゴジラである。
 ゴジラは出動した米軍の攻撃をものともせず、幾つかの化学薬品の工場を破壊した後、
フィリップモリス本社のコンクリートの壁を蹴り破り、さらに前進して本社の半分を破壊した。
 ちなみにフィリップモリス社は世界最大のタバコメーカである。
 それを双眼鏡で遠くから眺めていた米兵の3人は
「畜生!あの野郎!とうとうやりやがったな!」
と先程まで吸っていたタバコの吸い殻をゴジラのいる方へ投げつけた。
「これじゃ……しばらくタバコは吸えないな……」
「タバコ愛好家の俺達が会社の仇を取ってやる!」
と大声で一人の兵士がが叫ぶと残りの二人は
「イエッサー!」
と返事し、戦車の中に入って行った。
 戦車はバージニア大学の傍を通り過ぎ、アパラチア山脈の森へ入って行った。

 キツイトレーニングを2時続けたあと、洋子は椅子に座り込み、物思いに耽っていた。
その様子を見ていた仲間の男性のプロレスラーは
「どうした?」
「いや……悩みがあって……」
「俺が相談に乗ろうか?」
「実は…あたしの彼の妹の瑠璃ちゃんが……この頃!おかしな絵を描くの……」
仲間のプロレスラーの男性は少し笑いながら
「でも?どうせ空想のものだろ?」
しかし洋子は考え込み
「いや!どう考えても彼女が描いた絵は空想とは思えない程、リアルに出来ているのよ!」
「それが?どうしたんだ?良くある事だろ!」
「でも……何か変なのよ……なんだか?まるで……この先の出来事を予言しているのように……」
「予言?ハハッ!君はそんな物も信じるのかい?」
「いや……多分……でも……予言とも違うような気がするわ……でも!今はトレーニングをしなきゃ!」
と洋子は不安を掻き消すように額の汗と首をタオルで拭き、ペットボトルの水をゴクゴク飲んだ。

(第50章に続く)

では♪♪