(第50章)怪獣世界の扉

こんにちは畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第50章)怪獣世界の扉

 蓮は洋子が通うトレーニングジムに到着した。
蓮がドアを開けようとしていた時、ふと背後の電柱に気配を感じ、
すぐにふりかえるとそこに老人が立っていた。
蓮は少しきつい口調で
「何の様だ!二度と洋子や俺達につきまとうなと警視庁から言われた筈だ!」
老人は静かな口調で
「そうとも……もっとも最後に言い忘れた事があってな!それを言えば二度と君の前には現れんよ!」
「一体何の用だ?」
「再び空想と現実の狭間の怪獣世界の扉が開かれようとしている……」
「また!アンバランスな世界に行けと言うのか?」
と蓮は我慢が出来ず怒鳴り散らした。
しかし老人はしわがれた声で
「君達の内、何人かは眠りについた時、肉体から魂が離れ、
そこに行かなければいけない!どんなに距離が離れていても必ず一か所にコマが揃う日が来る!」
「なんだと?まさか洋子が狙いか?」
そこにトレーニングを終えた洋子がジムの自動ドアを通り、
蓮の車のある駐車場の方へ歩いて来た。
 老人は蓮が言う事を無視し、洋子の姿を見ると不気味な笑いを浮かべた。
老人は彼女がここに来るまで無言で不気味な表情のまま待っていた。
 その姿を見た洋子はカバンをギュッと握りしめ、その場で硬直し、動かなくなった。
老人は恐怖で硬直した洋子にお構いなく
「あの……Ⅹ星人は朱雀の巫女の『ヤサカニノマガタマ』と同じ物質で……
同じ物質の塊が極秘に南シナ海から大量に回収され、
邪悪な勾玉で何か恐ろしい生物を作ろうとしておる!
恐らくその生物の肉体に朱雀の魂が宿るだろう……
一つ君達にヒントをやろう!昔!東京に現れた死神の存在をご存知かな?」
蓮と洋子は急に老人の目から背筋が凍りつくような激しい殺気を感じた。
危険を感じた蓮は腰のホルスターから拳銃を取り出し、
「なに?死神ってなんだ!何の事だ?」
と質問しながら老人に向かって拳銃を両手で構えた。
洋子は恐怖のあまり震えながら持っていたカバンを落とし、蓮のTシャツの裾を掴んだ。
老人は静かに
「悪魔じゃよ!『第3の堕天使』の間に繋がりを持ち、
あのデスギドラさえも利用して闇の世界で暗躍する存在がおるのじゃ!
しかもその『第3の堕天使』は積極的で意識的な悪意に寄生して自我を食い尽す存在じゃ!
誰かがデスギドラのような物に触れると『第3の堕天使』の圏内にリンクし、
無意識の自分を餌にしてしまう。気を付けたまえ!
従って多くのノスフェラトゥもⅩ星人も!貴様らも!『第3の堕天使』
の影響を受けて思うがままじゃ!時は満ちた!
ゴジラやケーニッヒギドラに復讐する時がな!アッハハハハッ!」
そう言って、老人は急にタガが外れた様にけたたましい声で笑い始めた。
 その時、急に洋子は酷い臭いを嗅いだかのように眉間にしわを寄せた。
蓮は怪訝な顔で
「どうしたんだ?」
洋子は片手で鼻を押さえ
「なんか……臭い……」
蓮は急に自分の服の袖の臭いを嗅ぎ始めた。
「違うわよ!あのお爺さんからよ!」
と洋子は老人を指さした。
「加齢臭だろ?」
と蓮は苦笑しながら両手を振った。
「違うわ……死臭よ……」
と洋子。
途端に
「死臭?何だって!」
と蓮の声が一オクターブ高くなった。
洋子は拳で頭を軽くこずき、
「どうして?今まで気がつかなかったの……あたしの馬鹿!馬鹿!」
「あの爺さんが元々死んでいるなら?何者だ?」
と蓮。
「さあ?何者だと思うかね?フッハハハハッ!」
と再び狂った笑い声を上げ、突然、老人の身体がノスフェラトゥに似た姿に瞬時に変身した。
しかし全身は青黒い皮膚では無く暁とオレンジ色をしていた。
 蓮はそのノスフェラトゥに変身した老人に向かって拳銃を向けながら、
老人を睨みつけている洋子の顔を見るなり
「やっぱり?ノスフェラトゥか?」
と尋ねた。
洋子の目は宇宙人特有の細い蛇に似た瞳孔と濃いブルーの目に変わり
「離れて!あたし達の仲間じゃない!敵よ!」
「君が離れるべきだ!あいつは危険だ!」
しかしすでに遅く、洋子は本来の宇宙人に変身しようとしていた。
「なにをやってる?馬鹿野郎!死ぬ気か?」
と必死に逃げるように説得したが、
洋子はそのノスフェラトゥに変身した老人の身体から発せられる死臭を嗅ぎ、
どうやらかなり危険な存在と認識したのか、彼女は激しい自己本能を向き出しにし、
その老人に甲高い声で激しく吠え立てた。

 凛は車でボルチモアのホテルに到着していた。
 自分の部屋でイアホンを両耳に付け、アイポットに収録され
ている何個かの曲からポルノグラフティのメリッサを選んだ。
レトロな曲である。
 やがて軽快なギターの音が聞こえ、歌詞が流れた。
 凛はその歌詞を口ずさみながら、ノートパソコンを起動させた。
過去の盗聴で得たⅩ星人の最新情報や、ホテルの、
アメリカ大統領やMWM社の関係者がいる部屋に仕掛けた盗聴器から
得た膨大な情報をメールに添付すると、
それを東京の地球防衛軍本部の『特殊生物情報部』の特殊諜報部に送った。
 それから、しばらくして行われるアメリカ大統領やMWM社の関係者の
食事会までまだ時間があるので、メリッサの中盤の歌詞を口ずさみながら
仮眠しようとベッドの上にバタッと横たわった。
 しかし、テレビを付け、チェサピーク湾から出現した
ゴジラがどうなったのか気になったので、見ておこうとした。
 ゴジラは幾つかの化学工場とリッチモンドフィリップモリス本社の建物を
半壊させた後、アパラチア山脈の森へ入って行ったらしい。
続いてアメリカ人アナウンサーは
「ただ今!入った情報では!アパラチア山脈の地下から出現したジラらしき巨大生物に対し、
アメリカの地球防衛軍や米軍に出撃命令が下り!
現在交戦中との事です!
また同じくアパラチア山脈の森に落下した隕石から、
Ⅹ星人が送り込んだ尖兵のガイガンが起動したとの未確認情報が入っています!」
しばらくしてスタッフの一人が新しいニュースペーパーをアナウンサーの机の上に置いた。
「最新の情報です!Ⅹ星人が送り込んだ尖兵のガイガンが起動しました!
現在!ガイガンアパラチア山脈付近に同時刻に現れたジラらしき巨大生物の方へ
まっすぐ移動中との事です!ガイガンに対しても、
ジラと同じく地球防衛軍や米軍に出撃命令が下っています!」

 アメリカの地球防衛軍のランブリング部隊や米軍はレーザー
光線やアサルトライフルやミサイルでガイガンに向かって攻撃を続けた。
 しかしガイガンは何事も無かった様子で戦車や建物を幾つか
をグシャ……グシャ……と静かに確実にゆっくりと踏み潰し、軽快な足音でどんどん先へ進んでいた。

(第51章に続く)

では♪♪