(第48章)尖兵

こんにちは畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第48章)尖兵

 それから特に大きな出来事は無く、X星人ガイガン

キングギドラの総攻撃の話に乗じ、つい最近まで東京で

あれだけ世間を騒がせていたディスプレイ殺人も、
300人の被害者を出したあとは、結局警察や
地球防衛軍本部の特殊生物犯罪調査部達の懸命な捜査にも関わらず、
犯人グループが逮捕されないまま、ぴったりと止んでしまっていた。
 又、世界中のノスフェラトゥのコロ二―でも大きく目立った動きはなかった。
 アメリカのニューヨーク近海やアパラチア山脈から
姿を消したジラとゴジラも、世間では行方不明となっていた。
 そして……X星人がM塩基破壊兵器を一掃する為にガイガン
キングギドラを使用した大規模な空爆を開始するまであと4日前の事。

 アメリカ大陸・メキシコの森。
 分子生物学者のタトプロス博士と日本の国連から
派遣された神宮司博士は、アメリカ、日本、ロシア、
中国いずれかの国に落下したとされる隕石が、
ようやくアメリカ大陸のメキシコに落下した事を受けて、その調査に訪れていた。
 2人は数人の助手を引き連れ、クレーターがある所まで生い
茂る森の中を進んでいた。
タトプロス博士は息を切らし、目の前の木々を払いながら
「全く!私はジラの調査の為にわざわざ来たのに……」
と長々と愚痴をこぼしながら歩き続けた。
神宮寺博士は
「君は?1997年にジラの個体を目撃したんですね……」
タトプロス博士は
「まあね!」
と言い自分の事を話し始めた。
彼はチェルノブイリ原子力発電所でのミミズの研究から、
米軍のジラ対策プロジェクトに招かれ、それからニューヨーク・マッハタンで
仲間と共にジラを目撃し、ジラの調査を続ける内にその繁殖力に危機感を抱いていた一人だった。
 案の定、ニックの予感が当たり、マッハタンのマディソン・
スクエアーガーデンの地下にジラは単体生殖で大量の卵を産みつけた。
 それらはニックや米軍達の奮闘により、卵から生まれた親子共々退治された筈だった。
 しかし新たなジラが現れ、一匹はオーストラリアでゴジラに秒殺されたが、
最近現れたジラは米軍を壊滅まで追い込むほど強くなっていた。
しかも以前効果があった筈の攻撃では日本のゴジラと同様、傷を付ける事さえ、出来なかったと言う。
 もし、ノスフェラトゥ達が遺伝子操作で作ったジラに同じ繁殖能力が加われば、
かなりマズイ事になるとタトプロス博士は神宮寺博士に熱心に説明した。
タトプロス博士は神宮寺博士に
「もしあれが樟運佑送り付けた尖兵だったら?」
「すぐに報告しないといけないだろう!」
と神宮寺博士は息を切らし答えた。
 全ての木々が円状に薙ぎ倒された場所には巨大なクレーターが広がっていた。

 東京、地球防衛軍『特殊犯罪調査部』。
 山根蓮は自分の部屋で、凛が送ってきた、アメリカのメリーランド州
ボルチモア市付近を飛行していたX星人のUFO内の会話を盗聴したデータから、
新たなを掴むべくそれを聞いていた。
会話には統制官らしき
「M塩基破壊兵器は……見つかったのか?」
と言う声が聞こえた。
すると別の男の声で
「見つかりました……場所は……小笠原怪獣ランド……しかし……」
「何だね?」
「M塩基破壊兵器は研究所ごと地球のどこか別の場所に移されたようです!」
「早く探して破壊しなければ!」
「大規模空爆まであと10日!我々には時間が無いのだ!」
 次の会話では、あと4日に迫ったガイガンキングギドラ
使用した大規模空爆計画について一部始終が話された。
空爆計画の一部変更を行う事にした!」
「変更!今頃?どうして?」
「調べた結果!開発されたのはG塩基を組み込まれた細菌を辺りにまき散らす媒介兵器だ!
名前はジラ!しかも反乱軍が開発できたのはその媒介兵器の一体に過ぎない……つまり!
まだ大量生産までは追い付いていないのだよ!」
「つまり?」
「G塩基を持つ生物はまだ謎が多すぎて大量生産は出来ないんだよ!」
「大量生産が追い付いていない今のうちに研究所ごと潰しておけば!我々の勝利は決定だ!」
「そして変更とは?」
「M塩基破壊兵器のジラを隠している反乱軍の研究所にのみ攻撃目標を絞り!
まずは尖兵として!最新型のガイガンを差し向ける!
その最新型のガイガンによりジラを抹殺し!研究所を破壊する!」
「それではキングギドラは?」
「必要無い!たかが一つの研究所の一体の怪獣を倒すのに!
大量のキングギドラを送りつける必要性は無くなった!」
「一部は撤退ですか?」
「ああ!その通りだ!」
「しかし相手がゴジラ並みに強かったら?それにゴジラアルカードKが現れたら?」
これを聞くと蓮はニヤリと笑い
「やっぱり!カンは当たったな!」
しかし盗聴の途中、しばらく雑音が続いた。

 山岸の自宅から
「なんで!教えてくれないんですか?」
と山岸の大声が外にまで聞こえた。
今度は
「駄目だと言ったら!駄目なんです!」
FBI捜査官の大声も聞こえて来た。
 実は彼が無事自宅に帰ってから、
FBI捜査官は山岸の不安を取り除こうと山岸の家を訪ねていたのだった。
「あなた達は!凛ちゃんが何者か本当は全部知っているんでしょ?
あの中国のテロリスト達に誘拐された時も!本当は彼女の正体を知っていた。
だから彼女と僕が通っている高校に来たんでしょ?」
FBI捜査官はバツ悪そうに下を向いた。
「彼女は……あなた達やテロリスト達の所有物じゃないんです!」
山岸はそう言って片手で頭を抱え込み、椅子に座り込んだ。
「君の気持は分る!」
と元FBI捜査官の男は彼の肩に静かに手を置いた。
山岸はブツブツと
「どうして?どうして?凛ちゃん……何も話してくれないんだ?
まるで僕はそこにいただけじゃないか?この……このゴチャゴチャした気持ち!
なんとかしたい!自分の心の中で解決させたい!それには彼女のことをどうしても知りたい!」
FBI捜査官は穏やかな口調で
「自分の心の中で解決できない事はあまり多く頭の中に持ち込むべきじゃない!」
「でも……不安なんです!未来が漠然として!あなた達、
アメリカのFBIやCIA、日本やアメリカ政府、中国やロシアのテロリスト達!
余りにも難しすぎて僕には分らない!
でも!単にゴチャゴチャしたままでゴールテープは切りたくない!」
と言いテーブルに置いた小さな箱から銀色の指輪を取り出した。
「そうか……結婚したいんだね?」
山岸は再び決意した表情で
「やっぱり!僕は彼女のことが知りたいです!」
と元FBI捜査官に訴えた。
 元FBI捜査官は困った表情で山岸の決意した顔を見ていた。

(第49章に続く)

では♪♪