(第56章)色仕掛け

おはようございます。
畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第56章)色仕掛け

 ボルチモア市の高級ホテルで凛は部屋で豪華なドレスにカラーコンタクトを入れ、
髪型を変えて変装すると、レストランでMWM社の一部である
『帝洋パシフィック製薬』が主催するパーティに潜入した。
 そこで自分の母親とアルカドランに関する手掛かりを知っている可能性が高い
『帝洋パシフィック製薬』上層部のローランドが座っている
テーブルにグラスを持って、優雅に近づいた。
「こんばんは!素敵なパーティね!」
と話しかけ、接触を図った。
 もちろんすでに帝洋パシフィック製薬の
上層部のローランドとMWM社の関わりについては下調べ済みである。
 蓮の情報筋では、ローランドと言う男はMWM社の上層部の一人で
この企業に莫大な投資金を送っていて、現在は軽自動車の燃料の
BDFや怪獣生態に関する極秘研究を行っているらしいとの事。
 相手は帝洋パシフィック製薬の上層部……うまく情報を引き出せるのだろうか?
 自分は今日あなたの身の安全を守るために雇われたSP(保安警察官)だと語ると
「成程!」
とローランドは何の疑いも無く答えた。
 それから凛とローランドは楽しく赤ワインや白ワイン、
豪華な料理を味わいながら
「やっぱり君は柔道や剣道もやるのかね?」
「ええ!大の得意よ!でも……」
と顔を天井のシャンデリアに向けながら考え
「あたしこれでもね!CQC(クロース・クオーター・コンバット)の達人なのよ!」
「ほお!これはすごいなぁ~日本人でCQCの達人とは頼もしいね!」
ちなみにCQC(クロース・クオーター・コンバット)
とは相手の銃口を巧みにかわしながら一気に敵の懐に飛び込み、戦う最新の対テロ戦術である。
それから凛はワインを運んでいるウェイトレスに
「冷えたハイボールを一つ!」
とお願いした。
「へえ!ハイボールが好きなのかい?」
「19世紀にソーダーとウィスキーを混ぜた飲み物を飲んでいた人がね!
ゴルフの偶然のミスショットの高い球、つまりハイボールから名前が来ているのよ!」
「詳しいんだね!」
「焼酎もハイボールの仲間よ!」
と答えると頬をピンクに染めながらそのハイボールを静かに飲み始めた。
ローランドにも勧めた。
 パーティが終わり、ローランドはほろ酔い気分というよりは
泥酔気味で凛に抱えられ、彼の部屋に連れられて行った。
彼女は仕事の為に男の部屋に入るのに迷いはなかったが、恋人の山岸を思うと少し罪悪感を覚えた。
 それでも凛は優しくローランドをベッドに座らせた。
彼は酒の勢いで彼女をあれこれ口説き始めた。
残念ながら彼女が欲しいのは見ず知らずのローランドと言う
アメリカ人の男の愛ではなく、地下研究所のアルカドランの情報である。
 凛は言葉巧みにその重要な情報を聞き出そうとした。
しかし肝心の情報源のローランドはただひたすら彼女を口説こうと早口で話しているだけである。
 凛は根気よく会話を続けたが一向に2つの重要な情報を引き出せず、徐々に焦りを感じ始めた
まさにその時、ようやくローランドの口から
「そう言えば!アパラチア山脈の森の中に巨大なBDFの工場があるのさ!」
すかさず凛はそのローランドの言葉に食らいつき
「それ!本当?」
「ああ!本当だ……それより君のブロンドは美しい……生まれは日本じゃないんだろう?」
と片手で凛のピンク色の頬を撫でた。
それから凛は
アパラチア山脈って大きいじゃない。どこのこと?」
「詳しくは知らんが……まあ……軽自動車やトラックの燃料に
使う研究だがね!」
凛は思い切って
「油を食べる怪獣の餌に狙われたりしないのかしら?」
ローランドはアハハハハと笑い
「そう来たか!まあ大丈夫だろう!
それにアメリカではかなり評判が高い研究所でね!
シェナンド国立公園にあるとか?」
ようやく凛は地下研究所のアルカドランの位置を特定する事に成功し、嬉しさのあまり笑い出した。
ローランドは
「楽しいかい?」
と聞いたので凛は頷き、恐らくその場所に
自分の母親の美雪も誘拐されたのだと何となく脳裏で考えていた時、
彼はとうとう我慢が出来なくなったのか、急に凛の両肩を掴み、
ベッドに押し倒し、首筋にキスを始めた。
 数時間経ち、ローランドが酔いつぶれて寝た深夜、
凛はベッドから起き上がり、彼の荷物から、アルカドランの極秘地図や
その研究所の内部構造が描かれた紙や自分の母親に関する極秘情報が書かれた資料を見つけた。
 彼は夢の中で
「ムニャムニャ」
と寝言を言った。
「間違いない……ママはあそこにいるわ!」
と凛はつぶやくと、その資料をすべて高性能の小型カメラに写しとり、
服を着て、こっそり彼の頬におやすみのキスをしながら
「お休み……ローランドさん!」
と言って、彼の部屋から出て行った。

 ガイガン、ジラ、ゴジラが地上のアパラチア山脈の山中に現れる数時間前の事。
 夢から目覚めた美雪がハッと目を開けると、そこは自分の部屋では無く、
新設アルカドランの地下研究所内にある狭い部屋のベッドだった。
 美雪はベッドから起き上がり、部屋の隅に座りこんで眠って
いるサンドラの寝顔を見た。
 その時、ガタンと音を立て、部屋のドアの細長い四角の僅か
な隙間から、2人分の四角いトレイに乗せられた野菜を挟んだ
パンとコップに入れられた牛乳が差しこまれた。
美雪はすぐにパンを掴み、静かに食べ始めた。
しかしサンドラは取りに行かず、まだ部屋の隅で眠りこけていた。
美雪がサンドラを起こそうかと考えている間にサンドラは静かに目を開け、小さい声で
「美雪さん……どんな夢を見ていたの?」
美雪はパンを食べながら静かな口調で
「どうして分かったの?」
サンドラは
「あなた寝言を何度もつぶやいていたわよ!」
と答えた。
しばらくして空になったトレイは再び部屋のドアの細長い四角の僅かな隙間から消えた。
サンドラは興味津々無表情で
「何の夢を見ていたの?」
美雪は顔を赤くしてそっぽを向き
「別に……たいした事じゃ無いわ!」
と答えた。
サンドラは
「でも……羨ましいわ!あなたは今でもその恋人を愛しているんでしょ?」
「でも?あなたの彼氏のガーニャさんも今でも愛し続けているんじゃないの?」
「さあ?どうかしらね?あたしは彼を裏切った酷い女だから……」
と悲しそうな表情をした。
その瞬間、ガタガタと音を立てて、急に床が震え出し、美雪は
「なに?地震?」
その時、サンドラと美雪の耳に再び
「グギャアアアッ!」
と言う怪獣の唸り声が聞こえた。
「また奴だわ!怪獣を食う怪獣!」
とサンドラ。
「なんか様子が変よ!」
と立ち上がる事が出来ず、床にへばりつきながら美雪が答えた。
「きっと!連れ戻されたけど!またあいつ!飢えのあまり脱獄をする気ね!」
とサンドラも同様に床にへばりつきながら言った。
 しばらくして徐々に地震は止んで、2人はようやく立ち上がった。

(第57章に続く)

では♪♪