(第61章)カウセリング

おはようございます。
畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第61章)カウセリング

 アヤノが特殊生物犯罪調査部の2人にディスプレイ殺人の容疑として逮捕され、
軍法会議にかけられている事実もまだ知らないジェレルは、
精神不安定で自分が見た幻覚についてカウセリングを受けていた。
ジェレルは自分が見た幻覚を短く簡潔に始めた。
「自分の部屋でベッドの上に寝ていて、アヤノが現れて……彼女は『お見舞いに来た』と言った。
それで私は安心して……彼女の目を見たら……」
とまで言って急に言葉を切った。
カウンセラーは
「目が?どうかしたの?」
「彼女の目が……あの宇宙人のノスフェラトゥと同じ……青い色で瞳孔が蛇の様な形に変わって……」
更にジェレルの口調は再び落ち着かず早口になり
「私は『やめろ!』と言った!でもバーンって言う銃声みたい
な音と共に8本の蛇のような触手が飛び出して……
そこで私は悲鳴を上げて毎晩いつも目が覚めるんです!」
「やっぱり!あなたは精神的に疲れているのよ……ここにいたら不安で眠れないでしょ?」
「はい……でも……」
しかしカウンセラーは
「あなたは静養した方がいいわ!」
ジェレルは動揺した様子で
「どうして?私が欠けたら!特殊部隊のスピーシ・バックはどうなるんですか?」
カウンセラーは動揺したジェレルに対し優しい口調で
「やっぱり!両親がいる実家に静養した方がいいわ!」
「でも……無理です!」
とジェレルは拒んだ。
「たしか?お父さんがアメリカ人でお母さんが日本人だっけ?」
「そうです!でも怪獣が現れたら戦わないと!」
カウンセラーは立ち上がるジェレルの腕を掴み、その場に押し留めようと
「無理しちゃ駄目よ!しばらく静養すべきだわ!」
ジェレルはカウンセラーの言う事を頑なに拒み続け、
自分の唯一の居場所である地球防衛軍の寮へ戻ろうとした。

 東京の地球防衛軍本部内では未だに軍法会議が続いていた。
「それに!身体が凍りついた状態でこの特殊病院に運ばれたミュータントが一人いたと
報告を受けているが?これは事実なのかね?」
とドイツの地球防衛軍の代表に指摘されると熊坂司令官は黙り込んだ。
そこにオーストラリアの代表が
「どうしてミュータント兵達にその事実と危険を知らせないのかね?」
「それは……下手に情報を流せばミュータント兵がパニックを起こす危険があるからです!」
カナダの地球防衛軍代表は
「だが!それが事実なら?これは由々しき問題だぞ!」
「ミュータント全員に再び遺伝子検査を行うとか?」
「それで足りるのかね?」
「日本の地球防衛軍全職員に行うべきじゃないのかね?」
「それでもまだ足りない!」
それからしばらくの沈黙の後、ドイツの地球防衛軍の代表は
「いずれにしろ!彼女はテロリストの仲間かもしれない!」
「アヤノさんをそこまで疑うなら!彼女の話を聞いてください!」
と怒りを堪え、熊坂司令官は言った。

 ヘリポートの上に落下したジラは逆三角形の頭部を持ち上げ、
徐々に自分に近づくガイガンを睨みつけた。
 ジラの顔は骸骨のような恐ろしい顔に変化し、
しかも右腕の鉤爪のみがさらに巨大になり、ガイガンによく似たカマに変化していた。
その姿はまるで漫画や映画に登場する死神そっくりだった。
 更にジラはガイガンに向かってびっしりと並んだナイフのよ
うな牙を向き出し、辺りに涎をまき散らしながら唸った。
 しかしガイガンはその恐ろしい表情を見ても一切、感情を表で出さず、
先程、アサルトライフルの形に変化させた尾をジラに向け、再び青緑色のレーザーを放った。
 青緑色のレーザーはヘリポートのHマークのコンクリートを抉り、
続いて先程崩れた瓦礫の山を弾き飛ばした。
 やがて炎と煙が晴れると四角い巨大な地下研究所に通じる穴が現れた。

 祥郷医師は、容体が急変した尾崎の心臓が一向に回復しないので、
看護婦達にもう一度、電気ショックの電力を上げ、再挑戦した。
再び「バーン!」と言う大きな音と共に再び尾崎の身体が弾けた様にベッドから浮き上がった。
ガーニャはすぐに
「大丈夫ですか?すぐによくなりますよ!頑張って下さい!」
と尾崎に呼びかけた。
そして
「一時的に彼の体内が0度以下に晒されたから!
今になって心臓が停止したのか、薬物アレルギーのせいかも?」
とつぶやいた。祥郷医師はそれを聞きながらも、また電気ショックに挑戦した。
 尾崎の心臓は動き出し、生き返った。
 祥郷医師は額の汗をぬぐい
「よし!心臓が回復したぞ!」
ガーニャは安堵した様子で
「良かった……」
とつぶやいた。
尾崎の体温が平温になると、デストロイア型の微小細胞が自然消滅して行くと同時に、
先程祥郷医師が点滴で投与した抗アレルギー疾患の薬が効いてきたらしく、
時間が経つにつれ、徐々に尾崎の顔や全身の皮膚の腫れはひいて行った。
しばらくして尾崎はふと眼を開け、周りを見ると
「俺は生きているのか?」
とつぶやいた。
尾崎は心配のあまり
「あの……本当に大丈夫ですか?」
と祥郷医師に妙な質問をした。
 祥郷医師は笑顔を尾崎に返し、先程、尾崎の病室に入って来たガーニャの方を見ると
「ガーニャさんの適切なアドバイスのおかげで!もう大丈夫ですよ!」
と答えた。
「よかったですね!尾崎さん!」
とガーニャ。
それから祥郷医師は腕組みをしながら
「しかし!ガーニャさんの適切なアドバイスが無ければ!
あなたは原因不明のままで危うく死ぬところでした!」
尾崎は思わずポカンとした表情で祥郷医師に
「身体や精神に異状は見られないんですか?」
「ええ!幸いにも!ただ精神に関しては専門では無いので分かりません!
恐らく軽いトラウマに襲われるかもしれませんが精神も肉体もとにかく元気ですよ!」
それを祥郷医師から聞いた尾崎は安堵した表情で
「良かった……」
と一人生きている喜びを噛み締めた。

(第62章に続く)

では♪♪