(第62章)血の反逆

おはようございます。
畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第62章)血の反逆

 「アヤノさんをそこまで疑うなら!彼女の話を聞いてください !」
と怒りを堪えた熊坂司令官の意見を聞いた各国の地球防衛軍の上層部達は口々に
「よかろう!」
「了解した!」
と答えた。
それから2人の特殊生物犯罪調査部に連れられ、両手に手錠を掛けられたアヤノが現れた。
アヤノはすぐに各国から集まった地球防衛軍の代表達に
「あたしは!無実です!」
と涙ながらに証拠として挙がっている青い衣服や黒いベルトについて
「あれは!空き巣に盗まれたの!24日前に」
と訴え始めた。
しかし各国の地球防衛軍の代表は
「これだけの明確な物的証拠と付近の住民の目撃証言が多数ある!言い逃れは出来ないぞ!」
「無駄だよ!アヤノさん!」
「軍人がテロリストに加担するなどあってはならない!」
「つまり国を裏切った君は立派な犯罪者だ!」
「いずれ!君は刑法82条の『外患援助』をしている疑いがある!」
「更に君は300人の犠牲者を口封じに殺害したので当然!
刑法199条の殺人罪にも問われる事になる!」
「各国を敵に売って!300人を口封じに殺したんだからな!」
「その場合!死刑または無期懲役に処される!」
とさらにアヤノを追い詰めた。

 祥郷医師は尾崎に採血を行い、すぐに血液検査とアレルギー検査を行い、
アレルギーの原因を調べた。
程なくして祥郷は尾崎が安静している病室に現れ、説明を始めた。
また病室にいたガーニャも聞いていた。
「アレルギーの直接の原因は、ノスフェラトゥが元々持っている
あのデストロイア型の微小細胞と同時に排出されたPS44と言う薬物……
つまり極めて毒性の低い幻覚剤の一種に対し、カイザーが持つ、強力な免疫が過剰に反応して
アナフィラキシー・ショックを起こした可能性が高いと思われます!
PS44もデストロイア型の微小細胞もどちらも現在は
あなたの体内から完全に消滅しましたのでご安心下さい!」
尾崎は
「やっぱり!あの老人が言う事は……全て本当だったのか?
俺はカイザーの血のせいで危うく命を落とすところだった……やっぱり呪いの力なのか?」
と尾崎は心の中で、自分の身体に流れるⅩ星人も人間も凌駕する身体能力と念動力を持つ、
あのカイザーの血に自分が過剰に攻撃を受けた事に強い精神的ショックを受けた。
まるで生まれた時から長年付き合っていた親友に裏切られた様な暗い気持ちに駆られた。
ガーニャは尾崎の心痛な表情を見て
「どうしたんですか?」
と尋ねられたが彼は無理に笑顔を作り
「何でもないです!命を助けてくれて本当にありがとうございます!」
と感謝の言葉を述べた。

 アルカドランの地下研究所。
サンドラの謎の手術が始まる一時間前、狭い部屋に閉じ込められたマークは、
小さいノートパソコンのキーボードをいじり、
地下研究所のメインフレームのデータに自分が作成したウィルスを送り込み、
ジラ本体が休眠する前に、M塩基破壊兵器のジラに関する情報を
ひとつ残らず解除してしまおうとしたが、
さすが世界最大の研究所のアルカドランだけあって、
研究所のメインフレームはマークの想像以上複雑で、
何重にも及ぶ強力なセキュリティで厳重に守られていたのでウィルスは一つ残らず駆除されてしまった。
すでに自分のメインフレームのアクセス権限は彼がクビになった時点で剥奪されていた。
その為、メインフレーム内に厳重に保管されている
ジラに関するデータにさえ指一本も触れられない状態だった。
それでもマークは地道にウィルスとハッキングコードを
メインフレームへ送り続けるが、幾ら送ってもたちまち厳重なセキュリティに引っ掛かり、
ハッキングコードは解除され、ウィルスは駆除され、と言う事を延々と繰り返した揚句、
とうとうマークは癇癪玉を暴発させ、訳の分からない大声を上げ、
小さいノートパソコンを金属で出来た壁に叩きつけた。
パソコンは火花を散らし、完全に破壊された。
それからマークは椅子に座り込み、
「畜生!これじゃ!ママチャリVS戦車じゃないか?
なんでこんな無駄な事を……」
と言いとうとう悔しさのあまり、目頭が熱くなり泣き出した。
しばらく泣いた後、マークは
「もう……M塩基破壊兵器を止められないか……だが……ここで無駄な事をして泣いてていいのか?
私には美雪を誘拐した目的があるじゃないか?何とか脱出しなければ?」
とつぶやき、しばらく脱出方法を考えていたが
ふと白衣のポケットに隠し持っていた睡眠薬を取り出した。
マークは「一か八か試してみるか……」
と言うと決意した表情でその睡眠薬を出来るだけ
大量に死なない程度の量を考え、それを一気に飲んだ。

 アルカドランの地下研究所に続く狭い通気口の蓋がガタンと開き、その穴から凛の両手が見えた。
凛はそこからようやく這い出て、立ち上がり、
周りを見渡すと巨大なドラム缶の中にオレンジ色や濃い茶色の液体が入っていた。
良く見るとどうやらなたね油らしい。近くの機械の画面が
取り付けられた鉄のドアを開けると風に乗って、
エタノールや工業用のアルコールの僅かな臭いがした。
凛はポケットから白い手袋をし、
「ここがローランドが言っていた噂のBDFね!」
とつぶやいた。
目の前に巨大な機械が現れた。
巨大な水槽にエタノールや工業用のアルコールを絞り出した茶色の液体がとめどめなく流れていた。
更に試験管を見ると何かボロボロの紙が浮いていた。
それから白いボードを見ると、炎や光線を吐き、
油を主食とする怪獣達の名前がズラリと書き込まれていた。
「やっぱりあのローランドが言っていた通り……目的は餌ね! 」
白いボードの一番下にはジラの名前が書かれていた。
「M塩基破壊兵器のジラ……こんなのも食べているの?」
それからドアを開けると、そこは暗く陰気な長い廊下だった。
凛はその人気のない廊下を歩き、角を曲がり、壊れかけ、崩れかけたドアを開けた。
そこは廃棄されたばかりの研究所跡だった。
その壊れかけた研究所の水槽の中には恐らく人工授精で生まれたと思われる
子供のサンプルが陳列されていたが、もう全て死んでいた。
大量の埃が被った人工授精に使う医療器具が机の中に置かれていた。
酷い薬品の刺激臭と死臭で凛は胸が苦しくなり、水槽の中で死んだ怪獣の子供の死体を見る度に
心の底から悲しみや怒りが湧き上がるのを感じた。

(第63章に続く)

では♪♪