(第8章)思わぬアクシデント

(第8章)思わぬアクシデント
 
目玉の異生物はジョナサンとジムが向けた懐中電灯の光により
激痛と熱さで追い立てられ、ワームホールを発生させる台座の上に追い込まれて行った。
おいおい、大丈夫なのか?
目玉の異生物の激しい抵抗ぶりに流石のジョーダンは心配になってしまった。
このまま素粒子加速器の装置が故障なんかしたら万事休すだぞ。
あともう少し……あと2cm。あと1cmだ。
ジョナサンは心の底であの忌まわしい目玉の異生物が素粒子加速器の台座に乗る事をただ祈った。
しかし目玉の異生物は急に何かに気が付いたのか?
広い素粒子加速器の実験室の真上の天井をギロっと見た。
ジョナサンはつられて真上の天井を見た。
真上の天井には換気用の大きなダクトがあった。
目玉の異生物はその場で大きくジャンプをした。
なっ?なんだと?
ジョナサンは慌てて天井に向かって5mも飛び上がった目玉の異生物の姿を目で追った。
あいつまるでノミかダニの様な奴だな。
目玉の異生物は天井の換気用の大きなダクトの金網を目玉の下部にある
昆虫に似た口吻でバリッと破壊するとダクトの穴の中に再び吸い込まれる様に消えた。
くそっ!あと1cmだったのに!
すかさずジョナサンは無線を取り出し、大声でジムに呼びかけた。
「ジム!あいつ素粒子加速器の実験室の真上にある換気用の大きなダクトから逃げ出したぞ!」
 
ガラス張りの素粒子加速器のコントロール室。
ジムはジョナサンとジョーダン、ノートン達が目玉の異生物を素粒子加速器のある
台座まで追い込む、最初の作戦が成功するのを今か今かと待っていた。
目玉の異生物を台座まで追いたてたら、ジョナサンが無線機で知らせてくれる。
私は素粒子加速器の起動スイッチを押す。
それで我々の勝ちだ。
しばらくして机に置いてあった無線からジョナサンの大声が聞えた。
「ジム!あいつ素粒子加速器の実験室の真上にある換気用の大きなダクトから逃げ出したぞ!」と。
なっ!なんだって?
ジムは目玉の異生物の思わぬ行動にすっかり動揺していた。
慌てて彼はこの極秘研究施設の見取り図を取り出した。
素粒子加速器の広い実験室の真上のダクトは換気用だ。
とすると……あああっ!ヤバイ!このままじゃ!あいつ外に出ちまうぞ!
ジムは慌てて無線機を取り、ジョナサンとジョーダン、ノートンに呼びかけた。
「おい!ヤバいぞ!君達のいる素粒子加速器の実験室にある真上のダクトは換気用だ。」
「とすると研究所の外に繋がるのか?」
「ああ、ヤバい!」
「だからあいつはここに来たのか?」
ノートンとジョーダンは大慌てで素粒子加速器のある広い実験室の真上の金網に穴の空いたダクトを見上げた。
「あの真上のダクトに通じる道は?」
「分からない。えーと。えーと。ああっ!」
「落ち着きたまえ、冷静に探すんだ。」
ジョーダンは静かな口調で無線の先にいるジムに助言した。
「あった。機械整備室に戻って……そこにある換気ダクトの整備用の通路があった筈だ。」
「よし、行くぞ!あっ!痛い、畜生……」
ジョナサンは走り出そうと地面を足で強く蹴った衝撃で脇腹に激痛を感じた。
「君は休んだ方がいい。私とノートンが追う。」
「しかし……2人だけでは……」
「大丈夫だ!懐中電灯がある。」
ノートンとジョーダンは一度、機械整備室を通り、ジムのいるガラス張りの素粒子加速器
コントロール室に怪我したジョナサンを預けると2人は再び機械整備室に戻り、
そこから換気用ダクトの制御室に続く通路を通り目玉の異生物の後を追った。
「まさか。真上のダクトから逃げ出すなんて……」
「あの目玉の異生物は我々よりも賢く狡猾なのかもしれない。」
そう話しつつもジョーダンは換気用ダクトの制御室のドアを慎重に開けた。
ノートンは懐中電灯で真っ暗な制御室の周囲を照らした。
「いない……」
ジョーダンも懐中電灯で真っ暗な制御室の周囲の機械、ダクトの機械の部品が置かれた
大きな棚の僅かな隙間、天井の僅かな壁の隙間に至るまで注意深く何度も覗き続けた。
 
(終章に続く)