(第37章)天敵

(第37章)天敵

覇王と蓮、真鍋と山岸は気絶した男の検査結果を聞きに

彼の検査を担当した医師のいる診察室を尋ねた。

「ええ、2人の命に別条はありません。

アメリカ人の男の方は先程、 意識を取り戻しました。」

アメリカ人の男とは事情聴取は可能ですか?」

「はい、出来ますよ」

医師は笑顔で答えた。

覇王と蓮は島上冬樹さんの検査結果の説明を聞いた後、

アメリカ人の男性に事情聴取を行った。

既に彼の所持品から大戸島米軍基地の米軍兵であると事。

さらに奇妙な形をした拳銃が押収されていた。

そして覇王と蓮の任意の事情聴取で彼は突如、不可解な話を始めた。

「私はこのアメリカ人の人間の身体を少し借りただけです。

今回は彼にあのドリンクを飲ませるのが私の任務です。」

「では?君の中にいるお前は何者だ?」

「偉大なるイースの種族。原始キングギドラを創造した者です。」

「話が飛躍過ぎだな……」

「彼は精神状態も良好で健全なアメリカ人の男性です。」

「他に仲間は?」

スウェーデン人の男性とカナダの地球防衛軍の司令官の男性と

島上ルーシさんの身体を借りています。

島上冬樹さんにはアヤノさんに飲ませたのと

同じ成分の薬を注射しました。」

「何故そんな事を?」

「そうしなければ我々の種族が滅亡するからです。」

「それにこの薬を人間が飲んでも注射されても

命に関わるような害はありません。」

真鍋はその男にマイクを向け質問した。

「あの奇妙な形の拳銃はもしかして貴方のものですか?」

「その通りです。あれは冷凍冬眠銃と言います。」

「つまり?あれを撃つと?撃たれた人間は冷凍冬眠状態になるのか?」

覇王は急に嬉しそうな表情でそう言った。

「その通りです。現に彼の全身は低温状態だった筈です。」

確かに彼の身体に触れた時、低温だった。

しかも医師の説明によれば一時的な睡眠状態だったと言っていた。

そのうち体温が戻れば目覚めるようだ。

長い沈黙の後、アメリカ人の男は静かに口を開いた。

「実は彼、つまり島上冬樹さんも地球防衛軍のSPB所属のアヤノさんも

実はいままで旧支配者クトゥルフの強力なテレパシーによって

自覚症状が全くないまま、奴の都合のいいように

操られ利用されていました。

今、彼らは旧支配者のクトゥルフに異常なまでに怯えています。

洗脳する為の手軽な手段、つまり恐怖を煽るという方法で。」

「つまり彼らはクトゥルフに全身が引き攣り、

怯える余り操られている事すら気づいていないと?」

「その通りです。」

アメリカ人の男は一呼吸をおくと話し続けた。

「彼は薬を投与され、二度と呉爾羅に変身出来無くなっているでしよう。

そして島上冬樹さんの他にアヤノさんにもその薬を飲ませました。

これで彼らは奴の強力なテレパシーの洗脳から解放されました。

それに仲間のカナダの地球防衛軍の司令官の身体を借りた仲間は

『地球適応型の初代ゴジラを本来のバガン由来のゴジラに戻す』

と理由を付けてGコロニ―計画の要である

13ヶ月前に液体窒素で冷凍保存されていた

初代ゴジラの受精卵に原始バガンのDNAとバガン由来の

ゴジラのDNAを組み込みました。

さらに2つのDNAを活性化させる特殊な化合物も組み込み、

念入りに細工を施すように彼の部下に指示させました。」

すると真鍋は彼の突飛な話が信じられず、

半信半疑の様子でアメリカ人にマイクを向け、こう質問した。

「あなた達は原始キングギドラを創造したんですか?

そして初代ゴジラのクローンの受精卵に念入りに

細工を施した貴方の目的は?」

アメリカ人の男性は勝ち誇った笑みを浮かべ、こう質問に答えた。

「その旧支配者クトゥルフが隕石に乗ってジュラ紀の地球に

飛来した事を知った我々は地球上から彼らを根絶すべく

様々な邪悪な力を持つ生物、原始アオシソウにより怪獣化した生物を

捕食する天敵として未完成の禁断の書物である

死霊秘法(ネクロノミコン)の外なる神の幾つもの禁断の秘儀と

高度な遺伝子工学技術を基本にその原始キングギドラを創造しました。

事実、我々が創造した原始キングギドラは進化の過程で

バガンキングギドラゴジララドンに進化し、

地球上の食物連鎖の頂点に立ちました。

そして彼らは原始アオシソウにより怪獣化した

無数の邪悪な生物群を食い尽しました。

さらにモスラを初め地球の怪獣達には自らの体内で

原始アオシソウに対抗するG抗体を生み出しました。

結果、原始アオシソウは死滅し、 種を安定させる事に成功しました。

これにより地球上から今回の事件の元凶の

2つの例外を除いて原始アオシソウは根絶されてます。」

「そんな、そんな事があったなんて、ネクロノミコンが実在し、

そして、貴方達が原始キングギドラを創造した。」

真鍋は驚きと興奮を抑えられず早口で言った。

その後、アメリカ人(偉大なるイースの種族)の

事情聴取を終えた覇王と蓮は早速、

2人の男の精密検査の結果を聞きに診察室へ向かった。

診察室で覇王はアメリカ人の男性が

島上冬樹に注射した薬の作用も気になっていた。

アメリカ人の中にいた偉大なるイースの種族と名乗る者は

『薬を人体に入っても命に関わるような害はありません』と言っていた。

だが、本当に命に関わるような害が無いのか?

その薬を念の為、科学的・生物学的に確かめる必要があった。

「それと、あの例の薬の分析結果の方は?」

覇王はおずおずと尋ねた。

医師は口を開きこう説明した。

「あの薬のからゴジラのDNAを活性化させる

特殊な化合物も多数検出されました。

またあのBウィルスやゴジラのDNAを持つ

ウィルスに対して抗体がありました。

具体的な薬の効果は2つの特異な抗体でウィルスを死滅させた

のちに種を安定させる作用があるようです。 」

何故?そんなものを?やはり呉爾羅化を防ぐ為か?

 

大戸島の無人島。

攻撃目標をゴジラに変更したリヴァイアサン

直ぐに砂煙を撒き上げ、砂地に潜って身を隠した。

すかさずゴジラは首を左右に振り、

何処から襲ってくるのか周囲を警戒した。

やがてリヴァイアサンはすぐ近くで砂煙を撒き上げ、

深紅色の尾の先端の電気発生器官から赤い光弾を撃ち出した。

赤い光弾はゴジラの右肩に直撃した。

ゴジラはガハッと大きく口を開け、

そのまま身体を捻り、 ゴロンと砂煙を撒き上げ、倒れた。

再び砂煙を撒き上げ、リヴァイアサン

巨大な4つの牙だけを露出させた。

そして巨大な4つの牙で倒れているゴジラに噛みついた。

続いてリヴァイアサンは三角形の兜を被った頭部を現した。

続けてゴジラの身体を軽々と持ち上げた。

さらにゴジラの両肩や腰の黒い鱗に覆われた皮膚に牙が食い込み、

たちまち巨大な4つの牙はゴジラの血で真っ赤に染まった。

リヴァイアサンは首を左に大きく振り、ゴジラを遠くに放り投げた。

ゴジラはそのまま宙を舞い、砂煙を撒き上げ、砂浜に落下した。

ああああっ!ぐうあっ!

ゴジラは全身の激痛で凄まじい咆哮を上げた。

全身血まみれで明らかな重症であるにも関わらず

ゴジラは再び立ち上がろうとしていた。

 

(第38章に続く)