(第38章)命がけの救出

(第38章)命がけの救出

 

アメリカワシントンDC・ホワイトハウス

エバート大統領は大統領の黒い椅子に座り、

まだあの「Bウィルスによる感染の中間報告書」を読んでいた。

やがて報告書を机に置き、再び「特別なG血清に関する資料報告書」を読み始めた。

そして最初に酷い頭痛と腰痛。

顔や両腕に黒い鱗が現れる。

40度前後の高熱と全身の痛みのあと急激に黒い鱗はたちまち全身に広がる。

オレンジ色の両目と爪が生える。

またゴジラの自己再生能力により、

40代~50代の感染者の人間の

全身の細胞やDNAを新しく再構成し

20代の健康な肉体に造り変える能力もあるようだ。

この呉爾羅化の一連の症状は人間に感染した場合であるようだ。

しかし他にも怪獣に感染した場合の症状も書かれていた。

それは怪獣(主にガニメ)のウィルス感染による

変異の過程が写真付きで書かれていた。

症状は甲羅の表面に無数の虹色の球体の形をした腫瘍が現れる。

更に全身の無数の虹色の球体の形をした腫瘍は無限に増殖し続けたあと

急激に転移を繰り返し、全身に広がるようだ。

さらにこのゴジラのDNAを持つ未知のウィルスに感染し、

虹色の卵状の球体と化した感染者は体内に多量のゴジラのDNAを持つ

未知のウィルスを蓄えており、爆発する事で周囲に空気感染で広げて

行こうとする性質があると書かれていた。

こちらはかなりヤバいな。

エバート・F・ブッシュ大統領は直感的にそう感じた。

理屈では無く、いわゆる動物的な勘だが、これも馬鹿になるまい。

既に極秘研究所のカリュード所長にはBウィルスに対して

抗体のある音無凛さんの誘拐計画は失敗したと伝えた。

ちなみに既にBウィルスの生体サンプルや全データは私の手中にある。

凛の誘拐計画の失敗を知ったカリュード所長は大きく落胆していた。

その後、カリュード所長はBウィルス感染実験による変異の

経過の観察を続け、出来る限りの臨床データを確保する事を私に説明した。

何故なら音無凛さんの抗体が手に入らない以上。

時間を掛けてBウィルスの感染者のサンプルの実験から

Bウィルスの試作ワクチンを完成させる必要があるからだ。

ワクチンさえあればそのBウィルスは高価なウィルス兵器の商品になりうるからだ。

だが、MJ12が製造したあのゴジラのDNAを

持つ未知のウィルスは余りにも危険すぎる。

MJ12は何故こんな危険極まりないウィルスを製造したのか?

明らかに連中は頭が狂っているとしか言いようが無い。

とんでもない偽善者集団だな。

それとも本当に旧支配者であるクトゥルフに操られているのか?

 

大戸島の無人島。

このまま死ぬ訳にはいかない。立ち上がってみせる!

ゴジラは平衡感覚がほとんど失い、力が抜けかけているのにも

関わらず両脚を力の限り踏ん張り、立ち上がった。

ゴジラは自分の寿命が尽きる前にあの得体の知れない奇病に侵された

初代ゴジラのクローンを救い出す方法を必死に考えた。

一方、全身、虹色の無数の球体に覆われた虹色の円筒状の生物に

取り込まれた初代ゴジラのクローンは夢を見ていた。

目の前は真っ暗で何も見えなかった

しばらくしてぼんやりとした輪郭の灰色のスーツを着た人間の男が見えた。

「Gコロニー計画は完成します。

ただ既にガニメや他の怪獣でのウィルスの感染実験で実証したように

初代ゴジラのクローンに例の病気が

発症すれば確実に肉体は消滅して死んでしまうでしよう。

しかし代わりに呉爾羅のDNAを持つウィルスを

空気中に解放させる事で大流行を誘発させる。

そして全人類、ミュータント、ノスフェラトゥ

はウィルスに感染し、呉爾羅に変身する事で

放射能放射線の恐怖や凶暴な怪獣達の恐怖から解放され、誰もが幸せに暮らせます。

何よりも妻のルーシも喜んでくれるに違いないでしよう。」

えっ?僕は死んじゃうの?嫌だ!死ぬのは嫌だ!

 

既にゴジラは両肩や腰の傷口から血が抜けると

共に全身の力も徐々に抜けて行くのを感じた。

しかも手や足の指先が既に冷たくなりつつあった。

マズイ。このままでは私は……。

ゴジラは自分が今日この日に寿命が尽きる事を悟った。

だが、ここで私が寿命を迎えたら……あいつはどうなる?

ゴジラは反射的に初代ゴジラのクローンが取り込まれた

虹色に輝く円筒状の生物を見た。

無数の虹色の腫瘍と両肩から両腕にかけて覆われていた青い腫瘍と

全身の虹色の球体の形をした腫瘍が徐々に風船のように大きく膨らみ始めていた。

ドックンドックンと心臓の不気味な鼓動は更に大きく高まっていた。

さらに名状しがたい言葉もさらに大きく強く聞こえ始めた。

ゴジラはどうにか初代ゴジラのクローンを助ける方法を考え続けた。

自分の核エネルギーはそこを付きかけている。

何発かの放射熱線はあのリヴァイアサンと言う怪獣に放った。

それに放射熱線で一度に大量のエネルギーを消費するから仮に

その放射熱線で運良くリヴァイアサンに撃退したとしても自分の寿命が縮まり、

初代ゴジラのクローンを助け出す前に自分の体内の核エネルギーは

底をつき私の方が先に死んでしまう。

この寿命が尽きかけた自分の体内の僅かな核エネルギーをいかに有効に使用するか?

考えに考え抜いた末に一つだけ初代ゴジラのクローンを助ける方法を思いついた。

初代ゴジラのクローンの命は確実に助けられるだろう。

だが代わりに自分の体内の核エネルギーが尽きて私の命は確実に失われる。

何もしなければどの道、私は寿命が尽きて遅かれ早かれ肉体は消滅する。

昔、人間達が軍艦から私に私のエネルギー粒子を送る方法を試した事がある。

とうとうゴジラは決断した。

よし、私はこの方法に懸けよう。

そう、あの初代ゴジラクローンの虹色に輝く円筒状の肉体に

自分の僅かに体内に残った核エネルギー粒子を直接叩き込む。

このまま何もしないで死ぬよりもやれる事をやってから死のう!

既にゴジラの視界はうっすらとぼやけて見えていた。

まるで曇りガラスを見ているかのように。

だが、それでも精神を集中させ、

目の前にいる初代ゴジラのクローンの姿をしっかりと見据えた。

だが、別方向から砂煙を上げてリヴァイアサンが出現した。

リヴァイアサンは再び巨大な4つの牙をガバッと広げ、口内から初代ゴジラ

クローンの両腕を癌化させ、激痛と苦痛を与えたあの忌まわしい毒矢を放とうとした。

だが、ゴジラは既に気配を察知していた。

邪魔だああああああっ!

ゴジラは砂煙を上げて突っ込んで来たリヴァイアサンの口の中に直接、

今までよりも一番強烈な破壊力を誇る放射熱線を叩きこんだ。

 

(第39章に続く)