(終章)過去の陰謀に決着と新たな生活。

(終章)過去の陰謀に決着と新たな生活。
 
東京・音無凛の自宅のテレビでは緊急速報が流れていた。
「緊急速報です!先程アメリカ政府は違法な人体実験の事実を公表しました!」
「えーっ!」
凛と山岸は声を揃えて大声を上げた。
さらにテレビのニュースの場面はスタジオから変わり、
ホワイトハウスの場面に変わった。
「あっ!真鍋さんだ!」
ホワイトハウスの大きな門の前には右手にマイクを持ち、
右手で髪を斜めに降ろし、クリクリと可愛い黒い瞳の青年が立っていたのだ。
「こんばんは!日東テレビの真鍋ヴェラスコです。
現在ホワイトハウスの前に来ています。
アメリカのエバート大統領は違法な人体実験の事実を公表しました。
その人体実験計画の名前は『プロメテウス計画』と『Gコロニ計画』だそうです。」
流石に実名こそ出なかったが、『プロメテウス計画』にはかつて北海道網走市厚生病院
立て篭もり事件の主犯格でテロリストのリーダだったロシア人の女性を利用して
違法な人体実験を行い、ゴジラと人間の遺伝子を
融合させた胎児を出産させていた事が分かった。
また『Gコロニ計画』では日本の地球防衛軍のSPBの隊員もゴジラのDNAを持つ
違法なウィルスの実験体として利用されていた事や初代ゴジラのクローン
を製造していた事が明らかとなり、全米に衝撃が広がっています。」
「どうやらカナダ政府のホムンクルス計画は公表されないみたいね。」
凛はバリバリとポテトチップスを数枚まとめて口に詰め込みながらそう言った。
「しょうがないよ。カナダの政府が深く関わっているんだもの。」
山岸は呆れた表情でそう答えた。
「そしてこの2つの計画にはMJ12と言う
犯罪組織が深く関わっていた事が分かりました。
しかもその構成員は各国の地球防衛軍の司令官や
内閣官房副長官だと言う事実が明らかになり、
日本や全米に留まらずその衝撃は世界中で広がりつつあります。
またドラクルと言う名前の武装テロ集団は……」
「えっ?武装テロ集団?秘密結社じゃないの?」
「でも現にバイオテロを起こしたから……。」
再び二人はテレビ画面に視線を戻した。
テレビ画面ではまだ日東テレビレポーターの真鍋のレポートが続いていた。
「彼らはゴジラを抹殺する生物兵器の製造を行い、意図的にゴジラを攻撃させました。
さらに彼らは怪獣居住区の設置に反対し、
怪獣居住区設置委員会の事務所がある大戸島ビルで
人間に感染させ、異形の怪物に変身させる
危険なウィルスを利用してバイオテロを起こしました。
バイオテロ事件後、アメリカのホワイトハウス内の記者会見でエバート大統領は……。
『幹部や構成員の多くは既に拘束され、ドラクルと言う名前のテロ組織は壊滅した』と言う声明を発表しました」
「結局、エバート大統領の息子ウィルソンが秘密結社のボスで。」
「大戸島米軍基地でBウィルスを極秘に開発していた事実も全部、アメリカ政府が隠蔽しちゃったようだね。」
ちなみにカナダ政府も『ホムンクルス計画』の
事実を認めたが、その計画の詳細は一切公表していない。
また世界中で地球防衛軍の司令官達は全員、
違法な人体実験を行った容疑で軍法会議に掛けられた。
やがて彼らに変わって次々と各国で地球防衛軍司令官の後任が決まった。
ようやく各国の地球防衛軍の内部に渦巻いていた
過去の陰謀に決着が付いた事を意味していた。
凛はそうそうと上下に首を振り、思い出したように再び口を開いた。
「そう言えば日東テレビ緊急ドキュメンタリースペシャルっていつ放送だっけ?」
山岸は深くため息をついたあとこう答えた。
「残念だけどあの番組はお蔵入りになったけど」
「代わりにファウンドフッテージ系の
モキュメンタリー映画になる事が決まったんだよね。」
「出演しているのはあたし達をモデルにした架空の人物で。」
「僕達の当時のインタビューとその事件を
撮影したビデオ映像を元に脚本が造られているんだよね。」
「今、撮影は順調に続けられていて公開は来年になるらしい。」
「赤ちゃんも楽しみだけど。映画の公開も楽しみね。」
「そうだね。」
山岸は話題が尽きたのでホッと一息付いたあと凛の下腹部に視線を向けた。
凛の下腹部は大きく膨らみ、妊婦になっていた。
「病院の定期健診も赤ちゃんに異常は無くて健康で元気で良かったわ。」
「そうだね。ようやく安定期に入ったね。それで胎動は感じるの?」
「ええ、感じるわ。元気よ。実はね赤ちゃんが男の子なんてとても嬉しいのよ。」
凛は嬉しそうに両腕を伸ばし、掌で大きく膨らんだ下腹部を優しく撫でた。
山岸も嬉しそうな表情をしている凛の顔を楽しそうに見ていた。
自分が父親になる。
山岸はそう考えるだけで興奮と喜びの感情が湧き上がるのを感じた。
「ただいま」
自宅の玄関から凛の実の父親の覇王圭介の声が聞えた。
「あっ!パパだわ!」
そして自宅のテレビのあるリビングにブロンドの髪の覇王圭介が入って来た。
しばらくしてブロンドの髪に50代くらいの
男である覇王の背中から18歳位の少女がひょっこりと顔を出した。
「えっ?その子は?」
えーと彼女は水氣薫ちゃんで。」
覇王は連れて来た少女について説明を始めた。
どうやらこの18歳の少女は人間に擬態している宇宙人だと言う。
更に18歳の少女は国連と宇宙人の外交の
関係でホームスティをする為に地球に来たらしい。
「宇宙人?ノスフェラトゥですか?」
18歳の少女は覇王の背中から出て来るとこう言った。
「いえ、違います。この地球ではクロゴキブリと呼ばれている昆虫に似た種族です。」
「ゴキブリと言う事は貴方、Mハンター星雲人?」
「実はあたしの父親が『怪獣テラフォーミング計画実行委員会』のメンバーです。」
それは確か小笠原怪獣ランドと
同様に世界中に点在する無人島を怪獣達の住める環境として
改造したあとその無人島に無数の怪獣達を移住させる壮大な計画だっけ?
「国連は他の宇宙人種族間との交流を
積極的に進める計画もかなり前から推進しているんです。」
「確か貴方達は人間の残像現象を固定化させて
人間に化けられるけど人間から伸びる影ですぐに正体が……」
「大丈夫です。既に人間の残像現象を固定化させずとも人間の協力のおかげで……。」
「まさか?遺伝子操作?」
「はい、人間のDNAをベースに遺伝子改良が
極秘に行われていてあたし達はその第1世代です。」
「人間に近い姿なの?」
凛と山岸はその18歳の少女をまじまじと見た。
確かに姿は人間の18歳の少女と変わらない。
だが、ショートヘアの黒髪の両隙間から短く細い触角が生えていた。
また両腰にはゴキブリ特有の尾葉が生えているのがチラッチラッと見えた。
ちなみに彼女によると背中の翅は退化して失っていると言う。
またゴキブリと同じく頭の脳と身体に第2の脳に当たる神経も持っているようだ。
それゆえ、頭と体にある第2の脳に当たる神経を
統合してゴキブリと同じく素早い速さで運動できるらしい。
覇王によれば1972年に出現した初期のガイガンの設計図や
設計書を作成した水氣家の祖父の孫娘だそうだ。
「嘘……凄い宇宙人が来ちゃったな……」
「ええ、でも、面白い子ね!薫ちゃん!
空いている部屋があるから自由に使っていいわよ!」
凛は笑顔でそう言った。
水氣薫はうんと頷くと微笑んだ。
こうしてホームスティの水氣薫、凛の両親の美雪と覇王。
既に結婚し、男の子を妊娠した妻の凛とその夫の山岸の新たな生活が始まった。
 
ゴジラ・アフター・ザ・ファイナルウオーズ・ファイナルシーズン完結)