(第22章)回転

(第22章)回転
 
「うおおおおおおおおっ!」
黄金騎士ガロに変身した鋼牙は
地面を力強く蹴り、一気に5mをジャンプした。
鋼牙は両手で牙浪剣を構え、シェイズの頭部に向かって振り降ろした。
ギイイン!
鈍い音と共に牙浪剣は頭部に激突した。
しかし大量のオレンジ色の火花が頭部から散るも、無数の赤いロープ
を束ねて形成された分厚い皮膚は牙浪剣の刃を通さなかった。
シェイズはせせら笑い、頭部を突き上げた。
鋼牙はたちまち宙へ跳ね飛ばされた。
続けてシェイズは芝生に落下して行く鋼牙の黄金に輝く
胸部に向かって一対の巨大な挟角を振り降ろした。
「ぐあああああああっ!」
鋼牙は絶叫した。
振り降ろされた一対の巨大な挟角は鋼牙の胸部に突き刺さった。
同時に鎧から黄金に輝くメッキが一気に剥がれ落ちた。
ドゴオオン!と大きな音を立てて芝生に叩きつけられた。
「フッ!ガロウケンノイギョグバダイギタコドモナヴナ!」
シェイズは右脚を振り上げ、鋼牙の脇腹を蹴り飛ばした。
「うっ!ぐあああっ!」
鋼牙は芝生の上を1m程転がった。
さらに追い打ちをかける様にシェイズは背中から生えた
10対の太いクモの脚の細長い爪で
鋼牙の黄金の鎧の胸部を執拗に串刺しにした。
ドゴオオン!ドゴオオン!ドゴオオン!ドゴオオン!
何度も黄金の鎧の胸部を串刺しにされる度に
大量の黄金に輝くメッキが剥がれ落ちた。
そして剥がれ落ちた黄金のメッキは
月夜に照らされ、空中でキラキラと輝いた。
鋼牙も胸部の激痛に苦しみ絶叫した。
「ぐああああっ!ぐああああっ!ぐああああっ!ぐああああっ!」
シェイズは倒れている鋼牙からジャンプして距離を取った。
鋼牙はフラフラと立ち上がった。
シェイズは自らの頭部に巨大なサーチライトを
彷彿とさせる紫色の球体を作り出した。
「ザルバ!あれはなんだ?!」
「マズイ!鋼牙!回避を!ぐああああああああっ!」
鋼牙はザルバのアドバイスで素早く横跳びをした。
しかシェイズの頭上に現れた紫色の球体から放たれた
紫色の電撃ビームが周囲をグルリと一周した。
その後、鋼牙の黄金騎士ガロの鎧ごと全身を頭上から貫いた。
「ぐあああっ!くそっ!身体が動かない!」
「あががががっ!鋼牙!どうやら身体が麻痺しているようだ!」
鋼牙の黄金の鎧は紫色の電撃に覆われ、
歩くことはおろか、指一本さえ動かせ無かった。
どうやらザルバの言う通り完全に身体が麻痺しているらしい。
「ゴノママ!オマエオ、ナヴリゴロシニシデモ、ズマラスバ!」
シェイズは魔界語でそうしゃべった。
やがてシェイズは近くの森に現れたクレアとモイラを8つの目で捉えた。
「ヂヨウドイイッ!ゴノママゼズボウヲアジアバセテヤル!」
シェイズは大きくジャンプするとドスン!
とクレアとモイラの目の前に着地した。
「マズバ!ビドリ!」
シェイズの狙いはクレア・レッドフィールドだった。
「マズイ!クレアが!」とザルバ。
「クソっ!動け!動け!何故??動かない!」
鋼牙は紫色の電撃から逃れようと抵抗した。
しかし幾ら頭で動けと身体に命令しても
やはりその場から一歩も動けなかった。
モイラは気絶していたジルを
おんぶしていたのでクレアを助けられそうになかった。
「マズイよ!クレア!早く!逃げてええっ!喰われちゃう!!」
顔が青ざめ、クレアに逃げるようモイラは警告した。
だがクレアはおぞましい姿をした
シェイズを目の前にしても一切動じなかった。
それどころかすーっと自然にクレアは背中に手を伸ばした。
シェイズは大きく獣のように吠えた。
そして一対の巨大な挟角をクレアの胸部に振り降ろそうと高く持ち上げた。
「ザバ!ゼズボウ二ボチロ!!」
シェイズはクレアを捕食しようとした。
ダアアアアアアン!と大きな銃音がした。
「グバアアアアアッ!」
シェイズは一対の挟角の中央からダラダラとどす黒い血を流し、苦しんだ。
「グッ!何故だ??通常の人間の武器は
我々、魔獣ホラーには通用しない筈だ!!」
クレアの背中から取り出したショットガンは。
『ウィンチェスターM1887』を改造した魔戒銃だった。
しかもその銃口から放たれたショットガンの弾は。
ホラー封印の法術が込められた特殊弾である。
続けてクレアは『ウィンチェスターM1887』
を改造した魔戒銃のトリガーガードと一体となった
メリケンサック状のループレバーに指を掛け、
銃全体を片手でグルリと回転させた。
同時に使い切ったホラー封印が込められた特殊弾は自動で俳莢された後、
次のホラー封印が込められた特殊弾が装填された。
そしてまた『ウィンチェスターM1887』を改造した
魔戒銃の銃口をシェイズに向け、片手で引き金を引いた。         
放たれた2発目のホラー封印が込められた特殊弾は
シェイズのX字型の傷を負った胸部に命中した。
そこはジルの真っ赤に輝く憤怒の刃による攻撃で受けた切り傷だった。
シェイズは身体をくの字にして絶叫した。
「うっ!馬鹿な!あの女と言い!何故?何故?男に歯向かう!!」
クレアはシェイズの頭部で浮いている紫色のサーチライトが目に入った。
クレアは無言で『ウィンチェスターM1887』を改造した魔戒銃の
メリケンサック状のループレバーを手に掛け、
銃全体をクルリと回転させた。
同時に使い切ったホラー封印が込められた特殊弾は自動で俳莢された後、
次のホラー封印が込められた特殊弾が装填された。
クレアはシェイズの頭上に浮いている紫色のサーチライトに
『ウィンチェスターM1887』を改造した魔戒銃の銃口
を向けると無言で引き金を引いた。
クレアが放ったホラー封印が込められた
特殊弾は見事、紫色のサーチライトを撃ち抜いた。
紫色のサーチライトはパアン!と言う大きな破裂音と共に消滅した。
同時に鋼牙の全身の狼を象った
黄金の鎧を覆っていた紫色の電撃はフッと消えた。
鋼牙は電撃の麻痺から解放された。
「よし!動けるぞ!」
鋼牙は再び黄金に輝く牙浪剣を両手で構えた。
「おのれえええっ!小娘共がああああああっ!」
シェイズは再びクレアを捕食しようと一対の鋏角を上に持ち上げた。
キシャアアアアッ!
しかし急にシェイズは顔を歪ませた。
そしてジルに負わせられた
X字型の深い切り傷を庇う様に両手で胸部を覆った。
「鋼牙!どうやらあの深い傷が致命傷のようだぜ!」
ザルバは素早くアドバイスした。
「よし!」と返事をした後、鋼牙は牙浪剣を手の甲に乗せた。
さらに緑色の瞳でシェイズのX字型の深い切り傷の付いた胸部を見据えた。
「うおおおおおおっ!」
鋼牙はドンと両足で芝生を力強く踏みしめた。
そして大きく前方にジャンプした。
「グゾオオオッ!オべバヤラレズバズガアッ!」
グサリと黄金に輝く牙浪剣の両刃の鋭利な先端は
シェイズのX字型の深い切り傷の付いた胸部に深々と突き刺さった。
「グッ!グゾオオオッ!ボゴス!ギザマ!ボゴス!」
「うおおおおおおおおおっ!」
鋼牙は一気に牙浪剣を両手でグイッと捻った。
「グアアアアアッ!オウゴンキシメエエエエッ!」
シェイズは断末魔の絶叫を上げた。
同時に身体は大爆発し、肉体は完全に消滅した。
 
(第23章に続く)