(第43章)女神

(第43章)女神
 
「おのれえええええっ!」
ソフィア・マーカーは怒りの声を上げた。
そしてボール状に自らの身体を丸めた。
やがてズンズンと成長して行った。
同時に全身の肌色は真っ赤に輝く分厚い鎧に覆われた。
彼女が起き上がると身長が15mもあった。
当然、鋼牙は彼女を見上げた。
真の姿であるシュブ・二グラスは。
山羊の頭部に茶色の複雑に捻じれた2対の角。
茶色のポニーテールは真っ赤な一本角に変化していた。
パックリと五角形の口を大きく開けた。
口内にオレンジ色に輝く触手の先端のヒル特有の無数の牙と歯が見えた。
ま五角形の巨大な口の周囲にはオレンジ色に輝く5つの眼球があった。
両肩から幾つもの横線の入った真っ赤に輝く四角錐の突起
上半身は深い胸の谷間も大きな丸い両乳房もくっきりと残っていた。
そして真っ赤に輝く分厚い鎧の肌に対して
乳輪と乳首は青く妖しく輝いていた。
両腕も真っ赤に輝く分厚い鎧に覆われていた。
両手の10対の爪は急激に発達し、捻じれた太い触手に変化した。
また両手の捻じれた太い触手の先端は鋭利だった。
下半身はまるでクモの様に発達していた。
8対の真っ赤に輝く分厚い鎧に覆われた太い蜘蛛の脚が生えていた。
しかも8対の蜘蛛の脚の先端は鋭利だった。
シュブ・二グラスは山羊の頭部の五角形の周囲の
オレンジ色の眼球で敵対する冴島鋼牙を睨みつけた。
鋼牙はシュブ・二グラスのオレンジ色の眼球が放つ
禍々しい殺気に満ちた邪気を感じても一切動じなかった。
彼は何事も無かったかのように白いコート
の赤い内側から赤い鞘を取り出した。
そして赤い鞘をコートの赤い内側にしまった。
彼の手にはいつの間にか魔戒剣が引き抜かれていた。
続けて魔戒剣を頭上に掲げた後、ヒユッ!と頭上でひと振りした。
同時に彼の頭上に円形の裂け目が現われ、
黄金の光が鋼牙の全身を包みこんだ。
ガルルッ!と獣のように唸る声がした。
鋼牙の全身を包んでいた黄金の光は止んだ。
そして黄金の光の中から狼を象った
黄金騎士ガロの鎧を纏った冴島鋼牙の姿があった。
「ゴオルルッ!ゴオルルッ!ゴオオルッ!」
シュブ二グラスは大きく獣のように唸った。
「もう!これ以上!我が外神ホラーの領地で好き勝手させぬわ!」
「待て!領地とはどう言う事だ??」
「おっ!そうか汝は黄金騎士ガロの称号を持ちながら知らぬと?
では!冥土の土産に教えてやろうぞ!
我ら外神ホラーの領地は太古の昔から
こちら側(バイオ)の世界、窮極の門、混沌の地と決まっておるのだ!」
「ザルバ!本当なのか?」
「いや、俺様も初めて聞いたぜ……」
ザルバは困惑した表情を浮かべた。
「ここは!我ら外神ホラーが支配すべき場所!!
故に真魔界に住まう偽救世主のホラーの始祖メシア由来のホラー共!!
そして向こう側(牙浪)の世界に住まう貴様ら魔戒騎士や魔戒法師共が
ここに本来は来るべきところでは無いのじゃ!
そして!!こちら側(バイオ)の世界と宇宙を支配する唯一神は!!
万物の王にして!白痴の魔王ホラー・アザトース!!」
鋼牙は無言では歯を食いしばった。
「何をしている!来るぞ!」
シュブ・二グラスは五角形の口を大きく開けた。
口内に真っ赤に輝く球体が現われた。
キイイイイイイイイイイン!ドオギュウウウウウウウン!
轟音と共に五角形の口から真っ赤に輝く熱光線を放った。
熱光線はそのまま狙いたがわず鋼牙の胸部に高速で向かって行った。
鋼牙は咄嗟に牙浪剣を両手で構えた。
赤く輝く熱光線は牙浪剣に直撃した。
同時に鋼牙は芝生の上を高速で滑り、地面を抉り、後退して行った。
「うっ!ぐっ!」
「何て威力だ!」
続けてシュブ・二グラスはやや筋肉質な
背中から8発の針状のミサイルを放った。
鋼牙は冷静に牙浪剣を上下左右、左斜め、右斜めと巧みに振った。
そして牙浪剣で6発全てのミサイルを弾き返した。
しかし弾かれたミサイルは全て弧を描き、
鋼牙の周囲の芝生に着弾し、爆発した。
「ぐああああああああああっ!」
爆発に巻き込まれた鋼牙の身体は駒のようにくるくると回転した。
そして鋼牙は芝生の上に仰向けに倒れたがすぐさま立ち上がった。
再び両手で牙浪剣を構えた。
「うおおおおおおおおおおっ!」
鋼牙は芝生を力強く踏みしめ、20mも飛び上がった。
続けて空中で前転した。
そして牙浪剣をシュブ・二グラスの
山羊の頭部の脳天に向かって振り降ろした。
しかしシュブ・二グラスは右手の複雑な
捻じれた触手で鋼牙の身体を軽々と薙ぎ払った。
彼は真横に吹き飛ばされ、芝生エリアの近くに
違法駐車されていたクレスタに激突した。
クレスタは鋼牙が激突した強い衝撃で真っ二つに切断された。
シュブ・二グラスは追い打ちをかける様に
やや筋肉質な背中から8発のミサイルを放った。
そして鋼牙共々クレスタを木端微塵にしようとした。
しかし鋼牙は辛くも脱出した。
代わりに真っ二つになったクレスタは
更に木端微塵となり、廃車も同然となった。
それを見ていたシュブ・二グラスは高笑いをした。
「ウククククッ!キャハハハハハハハハハハッ!」
鋼牙はフラフラと立ち上がった。
「そうじゃ!もうひとつ教えてやろうぞ!黄金騎士!!
先程!我が言った通り、こちら側(バイオ)の世界は
我ら外神ホラーの領土じゃ!
そしてアフリカ南部のとある国にある巨大な地下遺跡に
太陽の階段があるのを知っておろう。」
「太陽の階段??始祖ウィルスが見つかった場所か?」
「そうじゃ!あの太陽の階段の土壌に真っ赤に輝く未知の細菌を発見した。
しかも御月製薬の連中はそれが賢者の石だと気付いた途端、
Tウィルスと組み合わせて、『T-エリクサー』
と呼ばれる新種のウィルスを製造したのじゃ!」
「それは例の魔獣ホラーに賢者の石とTウィルス
とやらを組み合わせた新型ウィルスの投与実験の事だな……」
「そうじゃ!全く!人間の好奇心は度し難いものがらあるのう!」
シュブ二グラスは冷笑を浮かべた。
 
(第44章に続く)