(第19章)殺意

(第19章)殺意
 
BSAA北米支部内の自分のオフィスの机にある
パソコンを立ち上げる為、起動スイッチを押した。
続けてジルは立ち上げたパソコンの画面に表示されている
メールボックスをマウスでクリックした。
すると一件のメールが届いていた。
件名は『寄る辺の女神』と書かれていた。
差出人はジョン・C・シモンズだった。
メールの内容は以下の通りである。
「今夜、僕の屋敷で寄る辺の女神の儀式を行う。
しかしその前に君はメシア一族のカルキ(救世主)として
最後の同胞であるメルギスを探し出して、
アンノウンつまり賢者の石の力で封印して貰う。
それが終わったら必ず僕の屋敷に来て欲しい!」
でもアンノウンの力は強大すぎる。
あたしのような矮小な人間には過ぎた力なのよ。
あたしの肉体がどこまで負荷に耐えられるか?
あたしが外神ホラーになって人間を喰ったらおしまいよ。
精神もどこまで正気を保てるか?
でもやらないとT-エリクサーが原因のバイオハザード
(生物災害)やバイオテロを何としてでも阻止して
『守りし者』として世界中の人々を守らないといけない!
あたしはオリジナルイレブンだから……。
ジルは悩みつつもどうにか決意を固めた。
突如、ジルの脳裏に魔女王ルシファーの威厳のある声が響いたので驚いた。
「しかしまだ迷いが残っているようじゃのう。ジル・バレンタイン。」
「ルシファーね!貴方には関係ないわ!放っといて!」
「残念じゃが!我は大いに関係あるのう!
汝がメシア一族の賢者の石を持つ強力な魔獣ホラー達を封印できるのも!
我のルシファーの賢者の石の力じゃ!ついでに!
汝がメシア一族の魔獣ホラーを探知し、魔戒騎士や魔戒法師が持つ
魔導輪や魔導火の助けも無く人間の姿に擬態している魔獣ホラーを
見分けられるのも我の賢者の石の力と言うよりは
我ら魔獣ホラーが本来持つ能力のおかげなのじゃ!」
「そう、ザルバと同じ能力ね。でもこれは人間の問題よ!」
「人間の問題!残念じゃが!
これは人間の問題だけでは無くなるじゃろう。時が来ればのう!
そう言うとルシファーはジルの脳裏で笑い出した。
「嫌な女!いつからあたしの精神に棲み着いているのよ。」
「あのマルセロとか言う男が賢者の石の力を目覚めさせた時」
「マルセロ先生。余計な事を……」
その時、いきなりオフィスのドアが開いた。
ジルはついつい反射的に身構えた。
やがてオフィスに坊主頭の男、クエント・ケッチャムが入って来た。
「あっ!もしかして?取り込み中??」
「ん?いや、えーと、いいわ!ただ一人で考え事を……」
「えーとジルさん!メール読みましたか?」
「ジョン・C・シモンズから?」
「はい!僕の方にもメールが来て!
それでマツダ代表に相談した結果ですね。
今夜二人組でその魔獣ホラー・メルギスを倒すように指令を受けました。」
「じゃ?鋼牙はどうするの?」
「如何やらさっきのジムさんの件で落ち込んでいて。
マツダ代表から少し休みを取るように言われています。
「そう、当然よね。」
それと例のT-エリクサーの感染で変異したトムさんの
成れの果ては正式に『プラントデッド』と言う名前が付けられました。
そして今回はイレギュラーミュータントとして
データ保存され、報告されました。
ちなみにプラントE44はMーBOW(魔獣生物兵器
としてデータ保存され報告されたとの事です!」
「植物死体ね。昔の事を思い出すわ……」
「プラントゾンビですか?そうですね。」
「今後も『R型』も含めて厳重にしないと」
「そうですね!とにかく産業スパイには気お付けないと」
「ええ、そうね」
クエントの言葉にそう答えるジルだったが
密かに何か胸騒ぎがするのを感じていた。
これは虫の知らせなのだろうか?
今の自分にはまだはっきりと分からなかった。
 
マンハッタンにある秘密組織ファミリーの本部に当たる
大きなお屋敷の地下室にジョンとメアリーが入っていた。
その地下室にはベッドと家具が置いてあった。
また壁に掛けられたホワイトボードには
今まで自分が殺害したBOW(生物兵器
やHCFや他の組織の構成員の名前と数が書かれた張り紙が貼ってあった。
「流石はBOW(生物兵器)やHCF、
他の組織の構成員殺しの異名を持つ者……。
そう、コードネーム『ガドル』ですね。」
「僕が彼女に与えたコードネームは
BOW(生物兵器)を初め、HCF、他の組織の構成員
に対する憎悪や恨みは深いと言う事を物語っているのだよ。メアリー。」
「ええ、確かあの子は3ヶ月前に
別の組織の極秘研究所を襲撃した際には……。
その極秘研究所内に保管されていたT-アビス系統の
BOW(生物兵器)を僅か10分で180体殺したとか?」
「そうだね。あの組織の極秘研究所内の
T-アビス系統のBOW(生物兵器)は
ブルー・アンブレラ社の特殊部隊
BSAAの特殊部隊が駆け付ける頃には……。
極秘研究所の研究員、職員、
スタッフを含め、既に皆殺しされていたそうだ。」
これには流石のジョンも顔をしかめた。
メアリーも「彼女もまた完全なBOW(生物兵器タイラントですね。」
「だがディレックやカーラ・ラメダスのようにやり過ぎて
また大規模なバイオテロを起こされる事は無いから安心できるけどね。
実際、そのせいでBSAAやBOSの連中は
我々の行動を常に警戒・監視している。」
「それで?いかがなされます?ジョン様?」
「HCFを初め、他の組織の極秘研究所の
襲撃事件に関する情報収集の強化。
彼女の行動の徹底的な監視の強化を
ファミリーの構成員やスパイ達に伝える様に。
あと彼女が帰ってきたら睡眠薬
飲ませてゆっくりと身体を休ませるように。」
メアリーは「かしこまりました」とジョンに一礼をした。
 
BSAA北米支部の地下。
冴島鋼牙とマツダ代表は地下にある施設を訪れた。
そこは彼らBSAAにとって最も重要であり、最高機密の場所らしい。
「ここが重要最高機密の場所?」
「もちろん遺族の方々には外口を禁じた上で知らせているよ。」
「どうやら、お墓の様だな。」
「その通りだよ。ザルバ君。
ここは不正なウィルス兵器及びBOW(生物兵器)の研究開発の為に
無理矢理人体実験を受けさせられ、短い生涯を終えて亡くなられた。
多くの子供達や家族、元テロリスト、その他の
ごく普通の善良な人々が眠るお墓であり、
唯一安らかに眠り、過ごせる唯一の場所だよ」
鋼牙は一列に並んである墓石に刻まれた名前と歳を見た。
そう、右から順番に左の墓へと。
トレヴァー家』
『父親・ジョージ・トレヴァー』
『母親・ジェシカ・トレヴァー』
『娘・リサ・トレヴァー』
 
『ヴェルトロ(元テロリスト)』
『ジャック・ノーマン』
『ベルナール・コルディ』
『シャフェル・トクシュ』
『エクレム・アダイスイ』
『ウリゴーノ・バロー二オ』
『ジルベルト・レオーネ』
『ハシーム・カターレ
『リディア・レオ―ネ』
「テロリストもここに?」
「そうだよ!彼らはFBCのある男に人形の様に掌で踊らされてね。
そしてバイオテロを起こした後に口封じでばら撒いた
ウィルスとBOW(生物兵器)ごと海の底に沈められたんだ。」
「とするとテラグリジア・パニックか?」
 
(第20章に続く)