(第35章)映画

(第35章)映画
 
鋼牙が見つけた映画のポスターは背景が白と黒でに塗られていた。
白い背景にはパーマの髪型の男性。
青い背景にポニーテールの長髪の男性とショートヘアーの女性。
黒い背景にはとげとげした茶髪の男性。
また白い背景とパーマをかけた男性の背後には大天使メルカバー。
青い背景にはポニーテールの長髪の男性と
ショートヘアーの女性の背後には白い長い髪に白い服の女性。
黒い背景にはとげとげした茶髪の背後に悪魔王ルシファーがいた。
映画のタイトルは『真・女神転生』らしい。
「映画のポスターの様ね。」
「ふーん誰が出る?」
鋼牙は興味があるらしくポスターの下のキャストをじっくりと見た。
「ちょっと!」ジルは制止しようと話しかけたが
鋼牙は気になって仕方が無いらしい。
「もう!」とジル。
ちなみにこれは初のハリウッドの実写化らしい。
「おいおい、俺達の知っているハリウッド俳優や女優がいるぜ!」
するとザルバは嬉しそうにポスターを見た。
呆れた表情のままポスターに釘付けの
鋼牙とザルバに刺す様な視線を向けた。
しかし鋼牙とザルバはそんなジルの視線を
気にも留めないばかりかむしろ平然としていた。
女神転生のキャストは以下の通り。
ちなみにこのキャストは小説の作者の畑内氏がネットで調べ、
真剣になおかつ大真面目に考えた末に設定したキャストである。
「フリン(エリック・ナドセン)」。
ヨナタン(イラジャ・ウッド)」。
「イザホー(エマ・ワトスン)」。
バロウズ(ミラ・ヨヴォヴィッチ)」。
「ユリコ/ギャビー(ケイト・マーラ)」。
「タヤマ(キーファー・サザーランド)」。
「ニューヨーク(東京)の女神(ミラ・ヨヴォヴィッチ)」。
「ニューヨーク(東京)の女神・女の子(エヴァ・ヨヴォヴィッチ)」
とまで読んだ後、鋼牙は白いコートの内側から
透明な袋を取り出し、破かぬよう丁寧に白いコートの赤い内側にしまった。
するとザルバは呑気にこう言った。
「そう言えば!クエントと烈花がこの映画を最近、観たらしいぜ!」
「そうだな!この事件が片付いたら観に行くとしよう!」
「行くわよ!早く地下の究極の破壊の神を封印しないと!」
少し不機嫌になったジルは鋼牙とザルバを急かし、
慌ただしく実験室を出た。
実験室を出た先はかなり細い通路になっていた。
そして歩き続けるジルの背後でザルバはヒソヒソ声で
鋼牙にハリウッド実写版の女神転生の話をチラリとした。
「この映画のラストはクエントから聞いた話によるとな。
いや、言わないでおこう!ただラストに重要な人物が。
ダニエル・ラドクリフ演じるスティーブンとミラ・ヨヴォヴィッチと
彼女の娘のエヴァが演じる東京の女神が関係しているらしい。」
「そうか……なおさら興味が……」
鋼牙がそう言い掛けた時、ジルは歩きながら大きな声で咳払いをした。
「ああ……」
「すまん……まずは究極の破壊の神を倒しに行こう……」
ザルバと鋼牙は同時にばつの悪い表情になった。
やがてジルと鋼牙はかなり細い通路を進む事、一時間経った頃。
細い通路の先は分厚い壁が破壊され、大穴が開いていた。
しかも周囲には真っ黒な焦げ跡が見つかった。
続けてその大穴が開いたぶ厚い壁の先から
つんざくような断末魔とも取れる絶叫が聞えた。
「ピイギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
「これは?」
「鋼牙!ジル!間違いない!
この先に究極の破壊の神とアナンタがいる!この絶叫は恐らく……」
「行きましょう!」
「ああ、行こう!」
ジルと鋼牙は駆け出し、分厚い扉に開いた大穴から入った。
そしてそのまま下へ下へと落下して行った。
「きゃあっ!ちょっと!落ちるなんて!」
「大丈夫だ!俺にしがみつけ!」
「いや、大丈夫……多分……」
そう言うとジルは何処までも続く穴の下を覗き込んだ。
鋼牙は黙ってジルを守ろうと両腕で優しく抱きかかえた。
そして二人は穴の底へどんどん落ちて行った。
間もなくして下へ下へ降下し続けた末。
とうとうジルと鋼牙は穴の底へと辿り着いた。
そこは正にこの御月製薬北米支部の極秘研究所ハイブの最下層だった。
 
ニューヨーク市内の幼稚園に通う
ジルの娘アリス・トリニティ・バレンタインは
赤いテディベアーのロッティと言う名前のクマの人形を両手で
抱えたまま赤いブランコに座り、考え込んでいた。
そこに胸元まで伸びた茶髪に青い瞳の彼女が
最も慕っている幼稚園の先生が来た。
「どうしたの?アリス考え込んで?なにか悩み事?」
幼稚園の先生はアリスに話しかけた。
するとアリスはうーんと小さく唸った。
更に口をモゴモゴさせ、話すべきか?話さないべきか?悩んだ。
間もなくしてアリスは口を開き、話し始めた。
「実は……昨日……夜中におしっこに行ったの……。
それで……トイレに行くにはママの部屋を通ったらね……。
何度も何度も変な声がしたの……凄く気持ちよさそうな……。
ママの部屋を覗いたの……そうしたらね……。
オレンジ色の両腕がある大っきな蛇が……。
裸のママとベッドの上で……激しくエッチしていたの……。」
そう言うとそれっきりアリスは黙りこんだ。
アリスの話を聞いた幼稚園の先生は思わず苦笑いを浮かべた。
 
御月製薬北米支部の極秘研究所ハイブの最下層に到達した
ジルと鋼牙は念の為、警戒しながら周囲を索敵した。
そこはやはり烈花法師の言う通り、巨大なコロシアムだった。
円形でとても広く周囲は分厚い銀色の壁に覆われていた。
「鋼牙……これって?」
「如何やら……一足遅かったようだな。」
「気お付けろ!鋼牙!ジル!アナンタだ!」
冷静な鋼牙、そして目の前で出来事に絶句するジル。
警戒する魔導輪ザルバの視線の先には……。
コロシアムの床に巨大な黒く焦げた跡があった。
更に巨大な黒い焼け焦げた跡の中心には巨大な灰の山があった。
恐らく究極の破壊の神の残骸だろう。
しばらくして青年の高らかな声が聞えた。
「ゲームオーバーだよ!究極の破壊の神!」
その青年の声が巨大なコロシアムの
天井の方から聞こえたので2人は天井を見上げた。
巨大なコロシアムにはあのクラゲ型の魔獣ホラーでは無く、
オレンジ色に輝く巨大な大蛇がいた。
特徴は巨大な花に似た形の頚部を広げたコブラの頭部の
周囲にまるで花弁の様に千の頭部を持つ、
花弁の頚部を広げたコブラの頭部。
千のオレンジ色に輝く眼と大口を持ち、
それぞれ2対ずつ鋭く細長い鋭利な牙が生えていた。
またオレンジ色の鱗にびっしりと覆われ太く長い胴体。
尻尾の先端には細長いオレンジ色に輝く槍をしていた。
「アナンタ……」
「大蛇だったの……あたし……こんな奴と……」
すると巨大な花に似た頚部を広げた
コブラの頭部に付いている口でしゃべった。
「もう!抱いたものは仕方がないじゃないか?
それにどうやら御月カオリ社長は戦闘データとやらを
手に入れる為に君達と僕を究極の破壊の神と闘わせて
戦闘データだけを持って逃げるつもりだったらしい。
でも……当てが外れたねぇ。
結局、御月カオリさんも捕まっちゃったしね!」
アナンタは口元を歪ませ、ニヤリと笑った。
 
(第36章に続く)