(第49章)賢者の黒炎

(第49章)賢者の黒炎
 
一階ではクエントがエロースの下腹部から伸びてきた細長い触手の一本が
『R型』の説得に成功し、抱き合っている烈花の方に向かって伸びて行くのが見えた。
更にそのエロースの細長い触手の先端の6本の細長い触手が『R型』
を背中でかばっている烈花に向かって高速で伸びて行ったのをクエントは見た。
「危ないです!烈花さん!『R型』と一緒に避けて下さい!」
思わずクエントは力の限り大声で叫んだ。
しかしその直後に『R型』の絶叫が聞こえた。
「ダメえええええええっ!ママを殺さないでええええええっ!」と。
続けて突然、地面が大きく上下に揺れた。
クエントはバランスを崩し、尻もちをついた。
更に一階の分厚い床をバキイン!と割って一枚の
分厚い無数の蔦が複雑に絡んだ巨大な壁が高速で
一階から二階まで伸び、烈花と『R型』は壁の向こう側に隠れて姿が見えなくなった。
更に先ほど烈花に向かって高速に伸びていた6本の触手は目の前に立ち塞がって来た
無数の長い蔓が複雑に絡んだ巨大な壁に激突し、「ピイイイッ!」
と痛みで甲高い声を上げ、またスルスルとエロースの下腹部に
6本の細長い触手の先端を閉じ、2対の角の頭部に戻り、引っ込んでいった。
クエンと胸を思わず撫でおろした。
それから気を取り直し、改めてマシンガンを両手で構え直した。
クエントはマシンガンの銃口をエロースの青く透明な胴体に向かって引き金を引いた。
連続で放たれたマシンガンの弾丸はエロースの青く透明な胴体に直撃した。
弾丸は60人の女性の姿をした赤い内臓器官や
表面の青く透明な胴体の表面に穴を開けた。
しかし見る見る内に穴は塞がり、弾丸は全て吸収され再生した。
クエントは両手でマシンガンを構え、引き金を引き続けた。
だが放たれたマシンガンの弾丸はエロースの青い透明な胴体や
60人の女性の形をした赤い内臓器官に多数の穴を開けた。
しかしあくそばから次々と塞がって行った。
更に放たれた多数のマシンガンの弾丸は全て吸収された。
クエントはマシンガンを背中に背負い、腰のホルスターから
コルト・パイソンを抜き、両手で構えて引き金を引いた。
放たれた威力の高いマグナム弾10発はエロースの青く透明な胴体と
60人の女性の形をした赤い内臓器官を次々と撃ち抜いていった。
その内に女性の顔の一部が吹っ飛んだりしたがそれも瞬時に
元の女性の顔に戻り、欠けた部分の顔は再生した。
更に青い透明な胴体に空いた幾つもの穴も全てやはり
あくそばからあっと言う間に再生し、塞がっていった。
またスナイパーライフルを両手で構えてスコープを覗いて
エロースの弱点を探るものの見つからず、やむなく弱点を探す為に
その弱点と思われる部分を狙って発砲してみるも全く効果がなかった。
思わずクエンとは躍起になり、自分に向かって来る
多数の青く透明な細長い触手に向かってあらゆる攻撃を仕掛けた。
スナイパーライフルから火炎放射器に持ち替え、引き金を引き、
オレンジ色の火炎で攻撃した。しかし多数の青く透明な触手の表面の肉を
黒く焦がしてもあっと言う間に癒えた。
しかし負けじとクエントは巨体を利用して急降下して体当たりを仕掛けてくる
エロースに向かって手榴弾やBOWデコイを投げつけた。
しかし何個も投げつけても手榴弾やBOWデコイで生じた
青く輝く透明な胴体の日表面の肉にも青い透明な細長い触手の一部の
肉に幾つもの裂傷が出来ても急速に再生して癒えた。
どうやら酷い怪我でも自分で治せるようですね。
クエントが考えている間にエロースはさっきの攻撃に応え、
下腹部から伸びた多数の青く透明な触手の先端の口ではなく
あのオレンジ色の2対の眼球の付いた頭部の既に割れた
6本の細長い触手と巨大な牙を持つ口から青い球体の形をした液体を4発吐き出した。
クエントは上空を見上げ、青い球体が次々と自分めがけて落下してくるのを
見るなり、慌てて全速力で走り回り、回避した。
そしてクエントが全速力で走り続ける方向に次々と青い球体が
円形に落下し、分厚い床に着弾した。
同時に青い球体は爆発し、たちまち分厚い床はジュウッと
音を立てて溶けて液化し、幾つものクレーターが出来た。
どうやらあの青い球体は強酸性のようだ。
当たればひとたまりもないだろう。きっと骨も肉も溶けてしまうに違いない。
「クエント!待たせたな!」
クエントは声がした方を見ると丁度、広大な四角い部屋の
真っ赤な錆びて古くなった扉が左右に開き、2丁のRPGロケットランチャー
を背中に背負ったゾイ・ベイカーが現れた。
しかしその時、なぜか耳まで伸びた髪は黒色ではなく白髪だった。
確かあのE型特異菌感染の後遺症のようだ。
クエントはすっかり安心してしまった。
「よっ!よかった!!一人で大変だったんですよ!」
「安心しろ!もう一人来る!」
ゾイの言葉にクエントは「えっ?」という顔になった。
そしてバン!と再び真っ赤な錆びて古くなった扉が左右に開いた。
その人物はクエンとがよく知る人物だった。
人物は女性で黒い皮のレザスーツを着ていた。
黒みを帯びた茶色のポニーテール。青い瞳にスレンダーな美しい身体。
背中には黒い鞘を背負っていた。
「えっ?どうして貴方が?」
「ジョンの依頼よ!自分の意思であの人に従っているの!」
ジル・バレンタインさん!まさか?貴方がここに来るなんて!」
クエントは信じられないという表情でジルを見ていた。
「ゾイ!準備はいいわね!」
「分かっている!あのエロースに取り込まれた60人の
女性を分離させてエロース本体を回収する!」
「ちょっ!ちょっと待って下さい!」
クエントはジルとゾイの話について行けず混乱していた。
しかしジルとゾイはお互い何か合図を送った。
するとジルは静かに瞼を閉じた。
そして大きく唸り、全身の筋肉に力を込めた。
ジルの周囲に真っ赤に輝くオーラが全身を覆い始めた。
更に徐々に黒みを帯びた茶色のポニーテールの髪が真っ赤に輝き始めた。
クエントとゾイは眩しさの余り両腕で目を覆った。
やがて目もくらむような赤い閃光が収まり、2人が静かに目を開けた。
目の前にいるジルは真っ赤に輝くポニーテールの髪。
更に彼女の額に真っ赤な血の薔薇(ブラッディローズ)刻印が現れていた。
両頬に真っ赤に輝く薔薇の花の形をした模様。
全身は真っ赤に輝くオーラに覆われていた。
またジルは静かに瞼を開けた。するとジルの青い瞳は真っ赤な瞳に変わっていった。
「これは?外神殺し??10年前とは違いますね。」
「行くわよ!ゾイ!」
「分かったよ!ジル!」
ジルはゾイの返事を聞くと背中の黒い鞘に右腕を伸ばした。
そしてジルは黒い鞘からからゆっくりと剣を抜いた。
ジルの手には漆黒に輝く両刃の長剣が握られていた。
「そっ!それは!魔戒剣ですか?」
するとジルはクエントの方を真っ赤に輝く瞳で見た。
「そうよ!これは光の力ソウルメタルではなくて!
闇の力デスメタル出来た『黒炎剣』よ。」
「でっ!でも!そんなものを何故?貴方が?」
「この魔戒剣はかつて闇に堕ち暗黒騎士キバが所持していたものよ。
これはジョン・C・シモンズから譲り受けたの!」
ジルは自慢気に話した。
「しかしそれた賢者の石の力でどうやって?」
「説明するより!見ている方が分かりやすいわ!」
そう言うとジルはにっこりと笑った。
 
(第50章に続く)