(第12楽章)組曲・逃れられない運命を背負う異形の戦士

 (第12楽章)組曲・逃れられない運命を背負う異形の戦士

 
自由の女神と青い美しい空と白い雲を背景にしたニューヨークのとある海岸。
海岸の浜辺の上には2人の人影があった。
右側には2人の人影があった。
右側の浜辺の上には緑色の髪に青い肌に緑色の瞳。
分厚い黄色の鳥の羽が6対生えていた。
更に両手に両刃の長剣を構えていた。
左側には黒みを帯びた茶色の髪のポニーテールに
大きな丸い両胸に丸いお尻の女性の姿があった。
そしてその女性は青い瞳から鋭い視線を相対する人間とは何か違う存在に向けていた。
「仕方ありません!あの汚れし東京の民と同様の罪深み者よ!契約の長として……」
「ええ、私は貴方達天使や大天使、唯一神の為に神殺しにはならないっ!
そしてあの子も殺させないっ!あの子は!あたしが守る!」
「そうですか?ケガレ中のケガレにして悪魔と人間の混血児の
アリス・トリニティ・バレンタインだけでは飽き足らず!
あの我々の第三の世界(真女神転生Ⅳファイナルロウルート)
のケガレビトの里・東京を消滅させた大アバドンから生き延びた
あのケガレビトの少女すら守ろうとするのですね!
しかもあのケガレビトの少女は我が主をも恐れぬ忌まわしい魔獣ホラーを召喚した!」
「黙りなさいっ!あたしの子供を殺して!新しい家族を手に入れて!
ようやく!たった一人の孤独から解放されたあの少女を殺すというのなら!!
あたしは!!貴方を殺すっ!絶対に殺してやるうううっ!大天使カズフェル!」
 
ジルは腰のベルトを見た。同時に円形のバックルに付いている
球体の宝石が真っ赤に発光した。
「へーんーしーん!ウニャアアアアアアアアアアアッ!!」
彼女が獣のような叫び声と共に全身が真っ赤に発光した。
ドオオオオオオオオオン!!
大爆発と共に浜辺の大量の砂や小石が円形に一気に吹き飛ばされた。
カズフェルは爆風で僅かに後退したがしっかりと立っていた。
吹き飛ばされたクレーターにはー。
上半身が深い胸の谷間と両乳房のくっきりとした
輪郭に沿って緑色の分厚い鎧に覆われ、両肩から2対の緑色の翼を生やしていた。
またしなやかな両脚にも緑色の鎧に覆われていた。
また関節も灰色の昆虫に似た節に変わっていた。
真っ赤な血管状の線が全身の緑色の分厚い鎧にまで広がっていた。
頭部は2対の触角。
燃える昆虫に似た複眼。
ひし形に開いた大きな口の上顎に4対の牙を持つマスクをかぶっていた。
更に真っ赤に輝くポニーテールの髪は風になびいていた。
さらに緑色のマスクの両頬には真っ赤に輝く模様があった。
両手の甲から伸びた黄色の鉤爪はいつの間にか七色に輝く魚の
ヒレの形をした無数の鋭利なカッターに似た細長い突起が所狭しと並んでいた。
いわゆるアームカッターと呼ばれるものである。
するとカズフェルは悲しそうに作った表情でこう言った。
「やはり!こちら側(バイオ)の世界に住む貴方達も所詮は……。
ケガレビトですね!神に反逆し!大天使すらを殺す愚かな人間!そして……
うっ!ぐっ!なんですかぁ!その力はわああっ!」
カズフェルは反射的に両腕に持っていた両刃の長剣をX時に構えた。
カズフェルは不意を突いたジルの攻撃を辛うじて伏せた。
バリバリバリとオレンジ色の火花を散らし、ジルの両手の甲から
生えた七色に輝く魚のヒレに似た細長い突起はカズフェルの
両腕の両刃の長剣の表面を激しく削り続けた。
更にカズフェルは目にも止まらぬ予想外のジルの動きに戸惑いを見せた。
「ぐっ!なんて力と素早さだ!全く動きが見えん!」
「ウニャアアアアアアアアアッ!!」と獣のような唸り声をジルは上げた。
続けてジルは目にも止まらぬ速さで緑色の分厚い鎧に覆われた
しなやかな長い太腿の右脚を振り上げた。
同時にその場で大きく弧を描くように体を横回転させた。
続けてジルは分厚い緑色の鋭利な右足の爪先をグサリと突き刺すように放った。
グチャアアアッ!という大きな音と共に放たれたジルの分厚い緑色の
鋭利な右足の爪先はカズフェルの青い肌の胸部を貫いた。
やがてカズフェルの青い肌の胸部からまるで噴水のように真っ赤な血液が
ブシュウウウウッ!と噴き出した。
「うぐううっ!があああっ!バカな!大天使であるこの私が!ぐほっ!」
カズフェルは口から大量の血を吐き出した。
吐き出された大量の血はボタボタと白い砂浜に落下した。
カズフェルは息も絶え絶えにかすれた声でこう言った。
「目的は?ハアッ!カアアッ!やはり前世の……ジャンヌの……復讐……」
「そう、私の本来の目的は大天使も天使も一匹残らず潰す事よ!」
「ぐっ……このっ!それが我が主がお許しならぬ筈がッ!」
「じゃあね!」とそっけなくカズフェルにそう言った。
ジルはカズフェルの青い肌の胸部に突き刺さっていた右足の爪先を引き抜いた。
同時にカズフェルの胸部から大量の真っ赤な血が噴き出した。
続けてジルは既に虫に息となったカズフェルにとどめを刺した。
ジルは再び右腕の肘を曲げ、右手の甲から伸びた七色の輝く魚の
ヒレに似た突起と鋭い5本の長い爪を向けた。
カズフェルは何か言おうとした。
しかしそれよりも早く目にも止まらぬ速さでジルは動いた。
ジルは目にも止まらぬ速さで白い砂浜の砂を蹴り上げ、
その場を大きく飛び上がるとカズフェルに向かって右手の甲から
伸びた七色の輝く魚に似たヒレに似た突起を振り下ろした。
ズバアアッ!という切断音が聞こえた。
ジルは青い肌に覆われた首筋の皮膚を目にも止まらぬ速さで深々と切り裂いた。
首筋の皮膚の傷口からまるでスローモーションのように
真っ赤な血が天空に向かって勢いよく噴き出した。
ジルはそのままカズフェルの身体を目にも止まらぬ速さですり抜け、
カズフェルに背を向けた状態で反対側の白い砂浜に着地した。
やがてカズフェルは周囲に自身の真っ赤な血と黄色の無数の
鳥の形をした天使の羽根を周囲にまき散らした。
やがてカズフェルは最後の言葉を述べる間も無く白い砂浜の上にうつぶせに倒れた。
カズフェルは無念の内に跡形も残さず姿も黄色の天使の羽根も
大量の血も全てフッと消えた事で息絶えた。
ジルは緑の異形の戦士アンノウンの鎧を解除した。
そして元の黒みを帯びた茶色のポニーテールに青い瞳に
スレンダーな身体のさっきの女性の姿に戻った。
直後、ぱちぱちぱちと拍手が正面から聞こえた。
間も無くしてジルの青い瞳には一人のインド人の少年の姿があった。
しかもそのインド人の少年の姿は以前、ピエロ型宇宙人から
ナルシッサ・ウィッチャーを助けたのはあの少年だった。
数日前のニュース映像にいたのをジルは直ぐに思い出した。
そのインド人の少年は緑色の四角い帽子をかぶり、髪は緑色に輝いていた。
肌は褐色で同じジルと同じ青い瞳で彼女を見ていた。
また緑色のスーツに赤いスカーフを首を巻き、茶色のズボンに茶色の靴を履いていた。
「フフフフフッ!さすが神殺しに目覚めた実力は本物のようだね!」
「貴方?何者?どうやら人間じゃないみたいだけど」
するとインド人の少年はハアーと溜息をついた。
「もう!あの魔導輪ザルバから聞いたと思うんけど」
「じゃ!やっぱり貴方が魔神クリシュナね!」
ジルの返答に魔神クリシュナと呼ばれた緑色の服の
インド人の少年は屈託のない笑顔でこう応答した。
「そう!僕は魔神クリシュナ!君と会うのは初めてだね!
ジル・バレンタインさん!魔王ホラー・ルシファーの力を
持つ人間にして彼女の神殺しだね!なかなか凄まじい力だね!」
「なんの用なの?もうここは貴方がかつて住んでいた第三の世界
(真女神転生Ⅳファイナルロウルート)とは違うのよ!
こちら側(バイオ)の世界では貴方に出番は無いわ!
ニュースでいくら派手にナルシッサを救い出して人々の前に現れようとね!」
「フフフッ!そうだね!僕はこちら側(バイオ)の世界の存在じゃない。
正確には第3の世界(真女神転生Ⅳファイナルロウルート)
の世界と宇宙から来たいわゆる外国人だからね!
僕は天使や悪魔とは違う考えを持っている!僕の考えはこうさ!
第3の世界(真女神転生Ⅳファイナルロウルート)は
君と魔王ホラー・ベルゼビュートが敵対する創造主によって支配されている。
そして奴らは僕やあのベルゼビュートがかつてのバアル・ゼブルや
他の神々を異神と謗り、人間を肉に封じ、空で囲い、言葉で縛った。
奴は自分に都合の良いように彼らや僕達の在り方を捻じ曲げている。」
「そうね!ジャンヌ・ダルクも同じだったわ!」
「聖女から魔女へ火刑に処さされ、堕落し、死んだ。」
「でもあの後は結局、また魔女から聖女に捻じ曲げた。」
「君は記憶がある故にそんな彼らの勝手が許せないんだね!」
「ええ!そうよ!だから私は奴を殺そうと考えていたの!」
「僕も協力しよう!新たな救世主!カルキさん!おっと!
それと君はこの先の未来、力を振るい神となる事が許されている。
僕の力の一部を与えよう!!きっと!役に立つさ!」
クリシュナはジルのところへ歩を進めー。そしてー。
クリシュナはスーツとジルの身体を通り抜けた。
「あっ!はあぅ!」
ジルは小さく声を上げ、全身が震えた。
クリシュナとジルはしばし重なった。
そのあとはまるで全身を抱き込まれたような感覚を残してー。
クリシュナはスーツと消え去って行った。
ジルは全身に力が張るのを感じた。
ジルはただクリシュナが消え去った場所を無言で青い瞳で見つめた。
 
(第13楽章に続く)