(第39楽章)魔神覚醒・黙示録からの刺客

(第39楽章)魔神覚醒・黙示録からの刺客
 
ニューヨーク市内、セントラルパークの広場。
ジルと鋼牙は魔獣ホラー・バエルをあと一歩封印するところまで追いつめていた。
魔獣ホラー・バエルの口内に鋼牙が牙浪剣を突き刺し、身動きを完全に封じた後、
ジルが鋼牙の呼びかけに答え緑色の分厚い鎧に覆われた右腕を上空に振り上げた。
そして空高くジャンプして両手の甲のヒレの形をした無数の鋭利なカッターをが並んだ
アームカッターを魔獣ホラー・バエルの身体に向かって振り下ろそうとした。
たがその途端にジルは全身を車に跳ねられたような衝撃を感じた。続けてー。
ジルは高い場所でまるで壁画のように静止し、金縛りにあったように動けなくなった。
「どうなっているの?身体が動かないっ!」
それからジルは激しく身体を動かして魔獣ホラー・バエルに攻撃しようとした。
しかし一向に動く気配が無かった。
「くそっ!どうして?なんでなんで動かないのよ!うっ!ぐっ!がっ!」
とうとう数日前に大天使カズフェルを自由の女神が見える海岸で
通常フォームの神殺しの力をプラスさせた強力な必殺技で倒した後に出会った
あの魔神クリシュナによって体内に埋め込まれた『ヴィシュヌ』あるいは『黒天』
の力を宿した金色に周囲を縁取られた模様の付いた真っ黒に輝く
正八面体の物体が突如活性化したように黄金に輝き始めた。
やがて黄金の光はジルの全身を包み込んだ。
魔獣ホラー・バエルは目が眩み、全身の巨体を左右に振り、慌てて後退しようとした。
しかし鋼牙の牙浪剣が口内に刺さったままな上に黄金に輝く鎧に覆われた
両脚でコンクリートの道路を踏みしめ、逃げられないようになっていた。
その為魔獣ホラー・バエルはその場方一歩も動けず、鋼牙と同様
身動きが取れなくなっていた。鋼牙も突然起こったジルの異変に戸惑いを見せた。
慌てて魔導輪ザルバに尋ねた。
「おい!どうなっている!あの黄金の光は何だ?」
「まさか?……あれは魔神?魔神の力か?」
それから魔獣ホラー・バエルの言葉を裏付けるかのように
魔神クリシュナによってジルの体内に埋め込まれた
強力な魔神の力の一部がついに目覚めた。
そしてジルは1年前に御月製薬が殺し屋として送り込んだ
M-BOW(魔獣生物兵器)のメルギスと戦った時と同様にフォームチェンジをした。
フォームチェンジをした特徴は以下の通り。
頭部は緑色の触角が黄色と黒色の混じった2対の触角に変化していた。
マスクの両頬は緑色から真っ黒に変わっていた。
頭の上には巨大な黄色の輪が4つある何処か巻貝に似た三角の帽子を被っていた。
額にはひし形の黄金の模様。短い角がU字型に生え、金色に輝いていた。
しかし燃える昆虫に似た真っ赤に輝く複眼とひし形に開いた大きな口の上顎に
4対の牙を持つ部分はフォームチェンジ前と変わっていない。
両肩の2対の緑色の翼はピンク色の蓮(はす)の花の形をした固い鎧に変化していた。
やがて背中から2対の無数の棘に覆われた両腕が生えた。
背中から生えた両腕はジルの元々のしなやかな両腕と同様、
緑色から分厚い真っ黒な鎧に覆われていた。
そして全ての両腕が合わさると全部で4対のしなやかで
長い両腕がスレンダーなジルの身体から生えていたのである。
元々ジルのしなやかな長い両腕の両手の甲からは金色に輝く両刃の
長剣の形をした鋭利な爪が生えており、10対の指には黄金の爪が生えていた。
また背中から生えた生えたもう2対の無数の棘に覆われたしなやかで
長い両腕の両手の甲から紫色に輝く両刃の長剣が生えており、
10対の指は紫色の爪が生えていた。
上半身の胸部の深い胸の谷間と両乳房のくっきりとした
輪郭に沿って緑色から真っ黒な分厚い鎧に覆われていた。
更に腹部の分厚い黄金の鎧は逆三角形をしていた。
また逆三角形の分厚い鎧の中央には満月の模様が刻まれていた。
また両脚は元々長くしなやかな両脚のままだった。
しかしスレンダーな長い両脚は緑色から真っ黒な分厚い鎧に覆われていた。
両足は真っ黒な三角形の靴は履いてあった。
また関節も灰色から黄金に変化しており、
より柔軟に4対の両腕や両脚を動かせるようになった。
全身の真っ赤な血管状の線は黄金に輝く血管状の線に変化していた。
間も無くしてジルの脳裏に魔女王ルシファーとは違う別のしかも
自分に似た声をした威厳のある女の声が聞えた。
「我を目覚めさせたのは汝か?ジル・バレンタイン
我は魔神ヴィシュヌ!我は最高神にして救済の神!」
「ヴィシュヌ?クリシュナの本来の姿ね!」
「いかにも!我は汝が望むなら力を貸そう!」
「ええ!お願いするわ!ヴィシュヌ!私が受け入れてあげるから!力を!」
「承知した!おおおおおおおおおおっ!!」
ジルの脳裏で魔神ヴィシュヌが叫ぶと同時にジルも叫んでいた。
更に彼女の全身の分厚い鎧から真っ赤に輝く強烈な電撃をバリバリと放ち始めた。
続けて全身から放たれた真っ赤に輝く電撃は徐々にジルの元々
しなやかな両腕の両手の甲の金色に輝く両刃の長剣の形をした鋭利な爪と
背中から生えた無数の棘の付いたもう一対の両腕の両手の甲の紫色に輝く
両刃の長剣の鋭利な爪にそれぞれ両手の甲に
賢者の石の力とヴィシュヌの力を集束した。
やがて4対の両刃の長剣の形をした鋭利な爪はそれぞれオレンジ色と赤紫色に輝く
強烈な電撃の輪に包まれた。そして集束された賢者の石は電撃として
一層激しくバチバチと火花を散らして輝き続けた。
「おい!ジルはっ!どうなっている?」と鋼牙。
「俺様にも良く分からんが。どうやら魔女王ルシファー意外にジルの精神世界、
内なる魔界に新しく魔神ヴィシュヌが棲み付いたようだぜ!」と魔導輪ザルバ
魔獣ホラー・バエルも急にフォームチェンジしたジルに動揺した。
続けて自分の精神世界、内なる魔界に現れた魔神の力を得たジルの
4対の両刃の長剣の形をした鋭利な爪は魔獣ホラー・バエルの
赤白い分厚い鎧のような外骨格に覆われた額に突き刺さった。
魔獣ホラー・バエルは甲高い悲鳴に似た獣の絶叫を上げた。
「ピイイイイイイイイイッ!ギャアアアアアアアッ!!」
ジルは口元緩ませてニヤリと笑った。
しかしその時、自分の精神世界、内なる魔界にいる魔神ヴィシュヌとは別に
魔獣ホラー・バエルに憑依されたアレックス少年の苦しみの中で語った
心情の思念がジルの脳裏に流れ込んで来た。
「んっ?これは?彼の………思念??」
魔獣ホラー・バエル事、アレックスは苦しみの中、語り続けた。
「俺は!寄る辺の女神よ!メシア一族の母親よ!
俺は自由意志によって善では無く悪を自由に選んだんだ!
俺は時計仕掛けのオレンジじゃないっ!だけど私は我が家の温かい夕食の皿に。
そして帰って来ると!暖炉がぬくぬくと燃えて三人の妻がいて!
シャノン!エミリー!寄る辺の女神ジル!俺の息子達が
オンゴオンゴベッドの上で眠っているんだ!だがもう遅すぎた!
若さは過ぎ去り!俺は大人に成りかけている!
『ああ、時よ止まれ!お前はいかにも美しい!』」
ジルはそんな彼の心情を理解した。
するとジルはアレックスにある契約を持ちかけた。
理由は彼が同族のアグトゥルスの舞台で初めて会った時に感じた
自分に対する異常なまでの欲情を理解したからである。
そしてジルはアレックスの心に語り掛けた。
「貴方はもうエミリーとシャノンとは幸せにはなれない!
でも!貴方の欲情を少しだけ叶えさせてもいいわよ。そして。」
「どう言う意味だ!俺は!俺はっ!」
「自由に我がままに生きたいんでしょ?私の血を飲みなさい!
私の微かに吐く息を聞きなさい。喘ぐ声を聴きなさい。
最後は貴方は黄金騎士ガロの手によって封印される。
でも陰我は一時的に断ち切られても私の血を飲めば!
真魔界から現世に来る時、15歳のアレックスとしての姿と
記憶で再び現れる事が出来るの!悪くないでしょ?」
「ああ!悪くない!悪くないぞ!」
俺はその寄る辺の女神のジルの悪魔の囁きに乗せられた。
「自分はやられたふりしてあげる!深い胸の谷間から吸いなさい!」
魔獣ホラー・バエルはハート形の蜘蛛の形をした頭部の中央の
凹んだところから細長い触手を伸ばした。
続けて赤白い細長い触手の先端の牙をジルの深い胸の谷間の分厚い鎧に突き刺した。
ジルは激痛で「ぐおおおっ!」と声を上げた。
しかし激痛を感じつつもジルは内心笑っていた。
 
ニューヨークマンハッタン。ジョン・C・シモンズは魔王ホラー・ベルゼビュート
として捕食する人間を探してとある道路の裏路地近くをウロウロしていた。
とにかく落ち着かない様子で獲物となる人間を探し続けていた。
僕はあの子と再会して酷く心が乱れていた。もはや魔王の威厳もあったものではない。
例え自分の部屋にこっそりと二人目の子供が
欲しくて入って来たメイドが全裸になっても。
今回は気分的にメイド達もとい若い娘とのセックスは無理だ。精神的に正直キツイ。
とにかく早く人間を捕食して満腹にしたい。僕の元恋人あの子を喰わぬ内に。
その時、不意に脳裏に複数の威厳のある大人の男の声と女の子の声が聞こえてきた。
「コチラ!魔人保安警察MSS!敵ノアジト!特定完了!
「アジトハ!ジル・バレンタインノ家ノ直グ近クダッタ!」
「マザーハーロット突撃兵ヨリ報告ダ!敵ハ冴島鋼牙トジル・バレンタイン
留守ヲ狙ッテ侵入シ!娘ノアリス二魔導プラントヲ植エ付ケルヨウダ!」
「阻止しろ!何が何でもだ!アリスの保護を最優先にしつつもアジト内と
彼女の自宅周囲に出現した魔導ホラーは一匹残らず殲滅させろ!
そしてアジト内の魔導ホラーの魔導ホラーを殲滅してボスの首を僕のところへ
持って来い!今すぐにだ!シモンズ家の兄弟や姉妹や子供達!
親達を食い殺した報復を!それが任務だ!アメリカ国家安全保障局(NSA)
も協力してくれたんだ!全身全霊で逃がすな!アメリカ国民の安全の為にもな!」
「了解!魔導ホラーハ全テ全テ殲滅!ボスノ首ヲ大君主様ノ元ヘ
必ズオ届ケイタシマショウ!ソレヲ伝エマス!」
「ウヌ!ゴクロウ!トランペッタ!皆モ分カッテイルナ?」
「モチロンダ!工作兵レッドライダー!BC兵ペイルライダー!
衛生兵ブラックライダー!通信兼狙撃手トランぺッター!
モウ一人ノ狙撃兵ホワイトライダー!ソシテ!
幻想郷の魔人二シテ偵察兵、魔人フランドールヨ!イイナ!仕事ダゾ!」
「理解しているわ!でも全員本気で魔導ホラー達を殺しちゃうの?」
「当リ前ダ!邪魔者ハ全員殺セトノ命令ダ!我ラ二モ報酬ハアル!」
ジル・バレンタイント大君主様ハ我ラメシア一族ノ新タナ進化ト
繁栄ノ礎トナルオ方ナノダ!ダカラ命令通リ殺ス!
「話ハ終ワリダ!アジトノ偵察ヲ始メロ!フランドール!」
「了解!任務を開始するわ!みんなのあたしの報告を待って!」
「了解!報告後、行動ヲ開始スル!」
それから複数の者と女の子の声フッと消えた。
 
(第40楽章に続く)