(第13楽章)全ての悪魔が集う邪教の異曲

(第13楽章)全ての悪魔が集う邪教の異曲
 
アメリカ・スパニッシュハーレムのとある道路を一台の大きなトラックが走っていた。
そのトラックはよくある宅配業者を装っていた。
しかも内部は丁度、研究所のように改造されていた。
そこにHCFのスパイのリー・マーラと医療チームが数名乗っていた。
医療チームの男がリーにこう言った。
「そうだな!あとは今ピエロ型の宇宙人の遺伝子が
混じった血液を利用してB型T-エリクサーを改造すれば!」
「新しいB型T-エリクサーの変異株が作り出せる!」
その時、もう一人の女性研究員がリーに話しかけた。
「でも!リーさんって凄いですね!あのいかにも凶暴で!
頭がいかれているピエロ型宇宙人と交渉するなんてね!」
「まあーいきなり人間を綿アメにする銃を向けられた時は
ヒヤリとしたけれど!取引の餌を吊るしたらうまくいったわ!」
そう!種が滅びかけている彼らにジルの賢者の石を持つ
血液の情報を提供してあのピエロ型宇宙人の血液を手に入れたわ!
飛来したあのサーカスのテント型のUFOを監視して正解だったわ!
さて!変異株の製造を始めていい??」
「あのー待って下さい!ダニア博士から通信でーす!」
リーは男から無線機を借りた。
「はい!こちら!リー・マーラ!えっ?計画は変更?
どういう?はい!やはり地球外の生物には未知の物質や遺伝子も多く!
もう少しきちんと研究してから慎重に使用したい!」
「はい!了解しました!ピエロ型宇宙人の
血液サンプルは極秘研究所へ全て運びます。」
「なんだって?」
「中止よ!変異株の製造は中止よ!」
「おいおい!マジかよ!せっかくの材料を!」
男性研究員が大声を上げたのでリーは「お黙り!」
と一喝したので男性研究員は黙った。
「はい!新型ウィルス兵器に必要なものは秘密組織ファミリーが所有している
ビアンカと言う女性の細胞片があるとか?はい!それを手に入れればいいんですね!」
やがてHCFのトラックはどこかへ走り去って行った。
 
秘密組織ファミリーの本部に当たる大きな屋敷の地下。
この大きな屋敷の主にして秘密組織ファミリーの長である
ジョン・C・シモンズは武器庫の奥の分厚い
六角形の扉を通って部屋の中へ入って行った。
そう他のメイドや執事達や一部のファミリーの構成員には知られず
一部の研究員となっている構成員やスタッフになっている構成員、
ファミリーの幹部数名のみ入室を許可され、
外部に情報が決して洩れぬように徹底的に管理されていた。
その部屋の広大で10階建ての部屋だった。
2階部分には多数の本棚があり生物学や遺伝子操作技術についての
分厚い本や化学薬品や製造ノートやファイル。
また過去に集めたアレックス・ウェスカーの転生技術に関する
ファイルや資料、またウィルス兵器やアンブレラ社が開発した
BOW(生物兵器)やディレックが作り出したBOW(生物兵器
やあの南極にいたアレクシアからも手に入れた蟻とT-ベロニカの
サンプルや資料、資料ファイルも所狭しと並べられ、山積みとなっていた。
また魔獣ホラーや真魔界、天使や悪魔、神々に関する資料があった。
一階の巨大な水槽の中にシャーロットの友人であの謎の白いスーツを着た男達と
防護服の男2人に誘拐されたビアンカワンエイトの姿があった。
ビアンカは美しい白い肌が真っ赤に輝く蟻の触角の形をした
腫瘍に覆われ、完全に怯え切っていた。
ジョンは水槽の脇の白い床に立っている老博士に声をかけた。
すると老博士は気さくに話を始めた。
「マルセロ・タワノビッチ博士!あの子の例の症状は?」
「ああ、最初の症状は全て収まった。じゃが半透明の皮膚と腫瘍はま
だ全身に残っておるが。間も無くホラーと人間の遺伝子と
細胞が融合しようとしておる!悪魔合体のようにのう!」
水槽の中でビアンカは強化ガラスの内側から何かを言おうと口を
開きかけたがいきなり全身を打ち付けるような衝撃を2回感じた。
間も無くしてビアンカの身体が花火のように何度も弾けるように発光した。
同時に小さく悲鳴を上げた。
バチイイイン!バチイイイン!バチイイイン!バチイイイン!バチイイイン!
その度に水槽の強化ガラスは内側から高熱に晒されたように内側が赤紫色になった。
やがて赤紫色に輝く高熱が収まり、赤紫色の光が消えた。そこに立っていたのは?
魔獣ホラーと人間の遺伝と細胞が融合し、新たなハーフの新種が誕生した。
その新たな姿はビアンカの顔と容姿を基に変化していた。
美しいサラサラの金髪は両肩まで伸びていた。
キリッとした禁色の眉も残っていた。
そして美しい緑色の瞳は真っ赤に輝く複眼に変化していた。
少しふっくらとした両頬はそのままだった。
また両頬から茶色の三角形の2対の牙が生えていた。
両肩から巨大な眼球がギロッと現れていた。
両腕は分厚い昆虫の外骨格で出来た鎧のような皮膚に
覆われており、10対の真っ赤に輝く細長い爪が生えていた。
頭部には茶色の細長い無数の棘に覆われた2対の触角が生えていた。
オレンジ色の肌に覆われた大きな柔らかく
丸い両乳房は相変わらず露出したままだった。
下腹部は分厚い茶色の昆虫の外骨格に似た鎧に覆われていた。
恐らく子宮やその他の内蔵を守る為だろう。
背中からバサッと三角形の巨大な羽根が生えた。
さらに巨大な羽根の付け根から太い茶色の棘に覆われた
4対の細長い短い鉤爪の付いた蟻の脚を生やしていた。
しかしビアンカの意識や自我は残っているらしく
自分の意志で分厚い茶色の外骨格に覆われた両脚で一歩二歩進んだ。
ジョンはそんな姿を見てふと朝のテレビで放送されていた
『イット・カム・フロム・デザート』の二度目に映画化されたやつを思い出した。
やがて「お腹すいた」と水槽の中のビアンカがジョンに訴えた。
ジョンの指示でファミリー所属の男性研究員がステーキの
入った皿を持ち、机の上に置いた。
ビアンカは机の上に置かれているステーキに気付いた。
同時ビアンカは直ぐに手掴みで素手でステーキの肉を引き千切り食べ始めた。
しかしすぐにビアンカは苦虫を噛んだ表情をした。
「違う!こんな牛肉じゃないっ!こんな味じゃないいっ!」
次の瞬間、ビアンカの両眼が真っ赤に輝く複眼に変わった。
やがて口内から鋭利な4対の細長いハサミ状の牙が生えて来た。
異変に気付いたマルセロ博士はそれをただじっと見ていた。
何故ならスピーカーのスイッチを押す間も危険を知らせる間もなかったからである。
水槽の中でビアンカは片手で襲い掛かったファミリー所属の男性研究員
を自分の目の前に吹き寄せるとバキバキと音を立てて口内から伸びた
鋭利な4対の細長いハサミ状の牙を頭はおろか顔面に突き刺した。
同時にビアンカは水槽の周囲の強化ガラスに真っ赤な血と小さな肉片をブチまけて
あっと言う間に両腕と両脚のみの残してバリバリと頭から全ての身体を食い尽くした。
食事終えたビアンカはそのままソファーの上で
仰向けにばたりと倒れて深い眠りに落ちた。
「もう!いいよ。そのまま頼むから眠ってくれ!」とジョン。
「困ったやつじゃのう」とマルセロ博士。
それからジョンはあんな酷い惨劇が起きたのにも関わらず何食わぬ顔で地上へ戻った。
ジョンはメイドのメアリーからHCFのリー・マーラ氏が来た事を伝えられた。
ジョンはメアリーに彼女を門を通し、自分の部屋に連れて来て待たせるよう命じた。
そのあとリーとジョンは夜中8時12分を指した時計のある自室で待たせた。
リーは挨拶をした後、わざと困った表情をした。
ジョンはコップに水を入れながら尋ねた。
「今日は何の用かね?まだ僕に気があるのか?それとも?何か困り事かい?」
「ええ、少々困った用事をダニア博士に頼まれたのよ」
リーはまた困った表情でハアーと溜息を付いた。
その時、ブーンとジョンの部屋の片隅に置かれた機械から一枚の紙が出てきた。
「電報?今時珍しいわね」
「まあね!僕のおじさんが昔から愛用していたものさ!」
ジョンは部屋の片隅に置かれた機械から一枚の紙を取った。
「なんて書いてあるの?」とリーはジョンの横から覗き込んだ。
一枚の紙にはファミリーの構成員の電報が書かれていた。
「DEBIRUSAMA計画ノ8番目ノ眼球ガ逆五芒星ノ形二
オレンジ色二輝ク未知ノ症状ヲ起コシタ。アサヒナ・ルナ。
魔導ホラーノ白波秀行二ワレタ際二!悲シミノ氷結と憤怒ノ炎ヲ持ツ魔獣ホラー
『モロク』ヲ召喚シ!配下達ト魔導ホラー討伐二成功サレシ!シカシ……。
『モロク』を召喚シタ直後二天空カラ赤イ光ノ柱ガ現レタノヲ付近ノ住民ガ目撃。
配下のホラー達ヤ魔導ホラーヲ討伐シタ際二大キナ爆発二ヨリ、家ノ壁ガ崩壊シタ。
マタ召喚二成功シタ、アサヒナ・ルナハ意識不明デ病院二搬送サレタ模様。
現在、カオル・サエシマガ付キ添イ意識回復後二自宅二連二帰ル予定。以上」
「うーむ、計画は大成功だが……どうにも目立ちすぎるな……」
「なんて書いてあったかはあえて聞かないけれど……」
「そうか!ああ!すまん!すまん!確か彼女は我々の極秘研究を知っていたね!
つまり!君が欲しいサンプルはこれだろ?」
ジョンは慌てて机の上に置いてあった銀色のジェネラルケースの鍵を外した。
ジェネラルケースの蓋をパカッと開けると中には太く長い3本の試験管が入っていた。
3本の試験管の中には赤く輝く細胞片が入っていた。ジョンは淡々と説明した。
「これは!僕の分霊の魔獣ホラー・バエルの細胞だ。
いや厳密にはある女性の細胞から抽出したものだ!勿論!女は死んでいない。
不足分は養分さえあれば自己増殖して元に戻るさ!
これは!そうだな!『賢者石バエル細胞』と呼ぼうかな?」
「ありがとう!準備が早いわね!」
「もちろん当然!これに見合った事はちゃんと!」
「もちろん!ベッドの上で満足させてあげる!」
リーはジョンの唇に熱いキスを交わした。
リーはジョンとの大人の事情のあとHCFのセヴァストポリ研究所へ
『賢者石バエル細胞』を持ち帰った。
それから『賢者石バエル細胞』の遺伝子をB型Tーエリクサーに組み込み、
変異株の製造に成功した。そしてそれは9年後の『R型暴走事件』の原因となる
新型ウィルス兵器『TーSedusa(シディユウサ)』
の誕生のほんの始まりに過ぎなかった。
 
(第14楽章に続く)