(第53楽章)聖女の死刑執行・甘い姉妹の死と呪縛のギアス

(第53楽章)聖女の死刑執行・甘い姉妹の死と呪縛のギアス
 
ジルは真っ青な顔にして鋼牙の話を聞いていた。
しかしその直後、また目の前は真っ白になった。
そしてまたジルの視界の真っ白な光が消えた。
どうやらまたもや前世の記憶が復活したようだ。
しかももっと忌々しく最悪で思い出したくない記憶だった。
それはまさにー。ジルの前世であるジャンヌダルクルーアン
ヴィエ・マルシム広場で高い柱に縛り付けられた自分は立会人のマルタン・ラドニュー
とイザンヴァル・ド・ラ・ピエール2人の修道士に自分の前に十字架を
掲げて欲しいと頼んでいた。また一人のイングランド兵士もジャンヌの
服の前に置かれた小さな十字架を立てて、ジャンヌに見えるようにした。
そしていよいよ火刑が始まった。ジャンヌの足元の薪に火が放たれた。
やがて火は彼女の両足を燃やし、両脚と白いロングスカートを燃やした。
ジャンヌは激痛と苦しみの中、肉が焼け焦げるような
匂いを嗅ぎ、死の恐怖と戦い続けた。
やがて炎は柱となり、ジャンヌの肉体を生きたまま燃やし尽くした。
彼女な泣き叫び、神に祈り続けた。
やがてジャンヌの肉体は全て炭化し、息絶えた。
更に息絶えたジャンヌが生き延びたと誰にも言わせない為に処刑執行人達が
薪の燃えさしを取り除いて黒焦げになったジャンヌの遺体を人々の手に晒した。
更にジャンヌの遺体が遺物となって人々の手に渡らないように再び火が付けられ、
灰になるまで燃やされ、マチルダと呼ばれる橋の上からセーヌ川に流された。
それでも肉体は完全に滅んでも緑色の彼女の魂は残り、燃えて灰になった
場所の宙にふわふわと浮き続けていた。
そして家計も終わりに差し掛かった頃、ジャンヌの火刑を見物しに来ていた
ルーアンの独房でジャンヌの服を剥ぎ取り、レイプした
イギリス人の看守が空を見上げ恐怖で顔を青めた。
「ひっ!ひっ!悪魔だっ!赤い悪魔だっ!」
イギリス人の看守が全身をガタガタ震わせて指さす方を
広場に来ていた人々が空を見上げた。
そして太陽が隠れた曇り空に赤い悪魔事、魔神レミリア・スカーレット
魔人フランドール・スカーレットの姿があった。
やがて二人の悪魔はニッコリと笑った。
両腕を上げた。お互い息もぴったりに。
 
次の瞬間、2人は可愛らしい声で歌を歌い始めた。
同時に空は次第に真っ赤な霧に覆いつくされた。
さらに人々はこの赤い霧を吸うだけで気分が悪くなった。
また続けて今度は禍々しい邪悪な赤紫色の霧が現れ人々の頭上に降り注いだ。
やがてイギリス人の看守がいきなり倒れ、のた打ち回り、苦しみ始めた。
そうあのジャンヌの服を剥ぎ取ってレイプしたあの男である。
その男は全身の鎧の隙間から大量の赤い血を周囲にばら撒き、のた打ち苦しんだ。
更に多数のルーアンの独房を監視していたイギリス人の兵士達、
ジャンヌが裁判で不利になるように12の罪を改ざんした宣誓供述にすり替えて
ジャンヌに署名させた不特定多数の裁判関係者達も同じように全身の皮膚が爛れて
大量の血液を鉄砲水の様に噴射させ、全身の激痛でのた打ち回り、苦しみ続けた。
たちまちジャンヌの火刑が行われた広場は大パニックになった。
やがて不特定多数のイギリス人の看守、イギリス人の兵士達、異端審問官、
イングランドの牢番達、ジャンヌが裁判でで不利になるように
12の罪状を改ざんした宣誓供述にすり替えてジャンヌに署名させた不特定多数の
裁判関係者の肉体は血液を絞り尽くされ、カラカラのミイラとなった。
間も無くしてミイラ化した遺体は広場の床に多数転がって行った。
そして搾り取られた大量の真っ赤な血液は上へ上へと引き上げられた。
どうやら魔神レミリアと魔人フランドールが操っているようだ。
更に対抗しようとした兵士も全て一滴残らず血液を肉体から絞り出して殺害した。
また処刑執行者も同じ末路を辿った。
更にジャンヌの青緑色に輝く魂はまだ広場の中央の火刑が
行われた場所に留まってふわふわと宙に浮いていた。
集められた大量の血液はどんどんジャンヌの
青緑色の魂の場所にどんどん集束して行った。
小さな両腕を左右に広げた。同時にジャンヌ・ダルクの青緑色の魂は変形し、
両腕を左右に広げた人の形となった。それは生前の19歳の姿だった。
やがて集束した大量の血液も形を開けて巨大な十字架となった。
そしてジャンヌは正にイエス・キリストと同じ磔となった。
さらに大量の血液が変化した巨大な十字架は7本の赤いリボンに変形した。
更に大量の血液が変形した赤いリボンの先端は両頬と額を初め、大きな丸い両乳房、
両外側の太腿の緑色の皮膚に突き刺さり、どんどん吸い込まれて行った。
やがて巨大な十字架は徐々に崩れて消えて行った。
同時に両頬と額に薔薇の花の形をした模様が現れた。
更に彼女の大きな丸い両乳房の青緑色の皮膚には十字架の模様が現れ、
両外側の内太腿にははっきりとした英語文字で右外側の太腿にはー。
「アダムはエヴァに責任を押し付け、
エヴァは蛇に責任を擦り付けた」と刻まれていた。
左外側の太腿にはー。「選択を行う者は苦痛を味わう」と刻まれていた。
続けてジャンヌの青緑色の魂は真っ赤に輝いた。
同時に今度は巨大な戒(ギアス)で縛られた鳥籠が現れ、ジャンヌの魂を閉じ込めた。
魔神レミリア・スカーレットはこう言った。
「君にねぎまつる」
魔人フランドール・スカーレットはこう言った。
「まがつ日の恐れも」
2人は同時にこう言った。
「地の果てまで嘆こうマリア!!」
ズドドドオオオオオオオオオン!!
大きな騒がしい爆発と共に真っ赤な光輪が広がった。
その凄まじい衝撃はと烈風は地上にいた人々を円形に弾き飛ばした。
全員仰向けに倒れ、何人かは失神して動かなくなった。
他はどうにか立ち上がり、人々は恐怖と絶望に囚われていた。
そして人々はただただあの天空の魔神レミリア・スカーレット
魔人フランドール・スカーレットが自分達に牙を向けないよう
ただただ命が惜しく思い、必死に両手を握り、両膝をついて祈り続けた。
すると魔神レミリア・スカーレットは最後に一人の若い娘を見た。
どうやらこの広場にいる人々の中で一番健康で生命エネルギーに溢れていた。
生命エネルギー、そう生体マグネタイドである。
その若い娘は両胸まで伸びた茶色のサラサラのウェーブ。
四角く長いサラサラの茶髪の前髪。細長い茶色の真っ直ぐな眉毛。
ぱっちりとした茶色の宝石のような美しい瞳とピンク色の唇。
その若い娘は白い生地の衣服を着ていた。どこにでもいる町娘と言う感じだった。
魔神レミリア・スカーレットはその若い娘に向かって手を伸ばした。
すると若い娘は急に全身が金縛りとなり、動けなくなった。
そして魔神レミリア・スカーレットは右腕をゆっくりと上げた。
すると操られるように若い娘も天空に引き上げられた。
「最後の仕上げね!お嬢様!」
すると魔神レミリア・スカーレットも笑い、こう言った。
「ええ、これで最後よ!これで儀式は完成よ!」
すると魔人フランドール・スカーレットは若い娘に向かって右手を差し出すと
彼女の身体から大量の真っ赤に輝く生命エネルギーの生体マグネタイドを吸い出した。
若い娘は「ぐっ!あっ!はっ!がはっ!ぐっ!」と声を上げて苦しそうに呻き続けた。
「大丈夫!殺しはしないわ!ちゃんとしなさい!」
「分かっているわ!手加減するわよ!」
それから魔人フランドール・スカーレットは若い娘から死なない程度の出来るだけ
多くの量の生命エネルギーの生体マグネタイドを吸い出した。
若い娘を元の石畳の床にそっと降ろしてやった。
それから魔人フランドール・スカーレットは若い娘から出来るだけ多く抽出した
生命エネルギーの生体マグネタイドをテニスボール程の大きなにまとめるとそれを
戒(ギアス)に縛られた鳥籠の中の
ジャンヌダルクの青緑色の魂に向かって投げ込んだ。
するとテニスボール大にまとめられた生命エネルギーの生体マグネタイドは
青緑色に輝くジャンヌダルクの魂の中に吸収された。
そして戒(ギアス)で縛られた鳥籠は砕けて消えた。
解放されたジャンヌダルクの魂は青緑色から真っ赤に変化し、
光の柱となって天高く飛び去り、やがて消え去った。
同時に空を覆っていた赤と紫の霧は完全に消滅した。
その頃には魔神レミリア・スカーレット
魔人フランドール・スカーレットも行方を眩ませていた。
これによ全て終わり、人々は恐怖と絶望から解放された。
そして誰もが安心し、力無く石の床に座り込み、泣き出していた。
そこでジルはまた目の前がフラッシュバックし、ようやくジャンヌダルク
前世の忌まわしい記憶から解放された。
「なっ?何だったの?さっきの儀式?あれがあたしに?」
鋼牙は「ようやくか」と呟くとまた解説した。
「そうだ!あれがあんたの前世のジャンヌの魂に刻まれた
あの血の薔薇の刻印だ!若返ったのもそれが原因だ!」
「それは闇の儀式のひとつだ!まあ一種の呪術さ!」
魔導輪ザルバは横から口を挟み解説した。
「太古の昔、人間達はあらゆる生物の血液には神秘的な力があるとされていた。
また人間の生気や元気も同じようにな。
だから太古の昔から人間は重要な儀式や儀礼には血を使っていた。
特にレミリアやフランドールのように力のある吸血鬼は
血液を利用した強力な呪術に長けていたと魔戒騎士や魔戒法師達の間で有名な話さ!」
「そしてその事件を知った元老院達はドラグノフ神官とグレス神官の
命によって大勢の魔戒法師達が現場に向かい、
法術でレミリアとフランドールが起こした
血の薔薇(ブラッディローズ)の刻印の儀式の一部始終の記憶を消し去って、
遺体を処理してジャンヌの火刑が無事終了したかのように見せかける為に
死んでしまった彼らに成り代わって裁判を進めて終わらせた。」
「じゃ人々は無事何事も無くジャンヌの裁判は終わったと?」
「そうだ!誰もレミリアやフランドールの事は覚えてい無い」
ただし当時は前例の無い大事件に新人の魔戒法師も多数参加していたが
実はたった一人だけ記憶を消し忘れた人間がいたそうだ。
ちなみに法術で記憶を消せ、前世の記憶として残る事はないが。
ありゃ!きっと前世の記憶に残るだろう。
男の言葉はジャンヌ・ダルクの各書物として残っているだろうな」
 
(第54楽章に続く)