(第58楽章)まつろばざる者達の反乱の狼煙

(第58楽章)まつろばざる者達の反乱の狼煙

マツダBSAA代表は烈花の言う魔戒法師の不祥事
『布道シグマが起こしたイデア事件』を詳しく説明した。
これでレオンもヘレナも彼女が謝罪する理由は理解出来た。
マツダBSAA代表はこう話を続けた。
「起きてしまった事は仕方がありません!
まずは今、目の前にある問題を。起きてしまった問題を片付けましょう!」
「ああ……そうだな……」と烈花は心痛な表情で答えた。
 
アリスとモトキとダーマは一度自宅へ戻った。
そしてテレビを付けて毎週土曜日に放送される特撮テレビドラマを見ようと
ジャパニーズアニメチャンネルに合わせる為にリモコンを操作した。
するとテレビ画面には1年前に観たアメリカの特撮テレビドラマの
『カメンライダードラゴンナイト』のアメリカリメイク版のオリジナルの
仮面ライダー竜騎』が放送されていた。
ちなみに特撮テレビドラマとして放送された『カメンライダードラゴンナイト』は
いわゆる日本で放送された『仮面ライダー竜騎』がアメリカで
リメイクされて逆輸入されたものである。
リメイク版は基本的な設定が原作と同じだが大きな違いが幾つかあった。
しかもアリスは『カメンライダードラゴンナイト』しか観た事が無く
原作である日本版の『仮面ライダー竜騎』がどのようなものなのか全く知らなかった。
故に思わぬ恐怖に襲われてしまうのである。
アリスは「楽しみだなー」と呟き、『仮面ライダー竜騎』
の日本語版のオープニングを見た。
そして本篇が始まった。
それは幼い子供が知るにはあまりにも残酷で非道な物語だった。
特にあの蟹刑事の最後は……。アリスはテレビを観ている内に
「あれっ?あれれっ?」と声を上げ、ある違いに気づいた。
ちなみにアリスが一年前に観たリメイク版の『カメンライダードラゴンナイト』に
登場する蟹刑事は刑事では無く大金持ちの両親を持つ20歳の青年と言う設定で
金目当てに他の仮面ライダーと戦いを挑み、結局は負けてしまい。
最初の脱落者になると言う大筋は原作と同じだった。
しかし問題は最後の部分が原作とリメイク版では全く違うと言う事である。
そしてアリスはそれを目の当たりにしてカルチャーギャップに苦しんだ。
テレビ画面では仮面ライダーナイトと蟹刑事が変身した仮面ライダーシザーズ
戦いの末にファイナルベントと言う必殺技を発動させ、仮面ライダーナイトの
手によってシザーズのデッキ(変身ベルト)が破壊され、
負けてしまうと言う展開が映し出されていた。
勿論、アリスはリメイク版を知っているのだが原作は知らない為、
いわゆるリメイク版と同じように『戦いに敗れた仮面ライダーは『ベント』
と呼ばれる現象によってアドベント空間と言う異次元に冷凍睡眠の状態で
飛ばされて敗れた本人は死なない設定だと思っていた。
だからこの後の展開も怖くないだろうと高を括っていた。
しかしアリスがテレビで見ている原作の仮面ライダー竜騎では
仮面ライダーナイトとの戦いに敗れた仮面ライダーシザース
元に人間の姿に戻り、そしてー。契約モンスターである蟹型の
ミラーモンスター・ボルキャンサ―は人間の姿になった日本人の男が
仮面ライダーナイトによってデッキを破損させられ、カードも失った事からー。
契約破棄とみなしある行動を取った。
「えっ?ええええっ?えええっ!えっ?えっ?えっ?えっ?あああっ!待って!」
アリスと突如始まったボルキャンサーの
恐ろしい行為に驚きと戸惑いの表情を浮かべた。
更にアリスの顔はみるみると血の気が引き、真っ青になった。
ダーマもモトキもボルキャンサーがとった行動に驚いていた。
「えっ?えっ?まって!おいおい!うわわっ!」
「ええええっ!やばっ!やばいっ!ちょっとやべえーぞ!」
2人も慌ててお互い顔を見合わせた。
テレビ画面の中で契約モンスターのボルキャンサーは
突如、人間に戻った日本人の男を捕らえるとー。
やたらにリアルな咀嚼音と共に頭から生きたまま元仮面ライダー
シザーズだった日本人の男をあっと言う間に捕食してしまった。
バキュウウッ!バキュッグッ!バキュッグッ!バキュッグッ!
そしてその酷い有様に仮面ライダーナイトお思わず顔を背けた。
それからボルキャンサーはその男を捕食してもまだ腹が満たされないのか?
今度は仮面ライダーナイトに向かって大きな
鋏を左右に振り回し、襲い掛かって行った。
そのテレビの光景にアリスは両眼を見開いたまま顔を真っ青にして、
口を開けたまま全身を激しく上下左右に震わせた。
やがてアリスは両目を白目にしたまま、顔を真っ青にして全身を硬直させた。
しばらく彼女は金縛りにあったように動かなくなった。
「おいおいこりゃあ!酷いなぁ!」
「ちょっと!アリスちゃん!アリスちゃん?」
異変に気付いたモトキは隣で座っているアリスに声を掛けた。
しかしアリスは過去も全身も硬直させたまま、口を開けた状態で
何も声を発せず呼吸も荒々しくなっていた。
今にも逃げ出せずただ黙ってその場でテレビ画面に釘付けになっていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あーあ恐怖の余り固まっちゃった……」
ちなみにテレビ画面では仮面ライダーナイトに襲い掛かるものの
乱入した主人公の仮面ライダー竜騎によってボルキャンサーは倒された。
こうして最初の仮面ライダーシザーズは死亡し、刑事でありながら
性格が完全に歪んだ悪のライダーが自ら破滅して行く様と喰われる瞬間はアリスの
心の奥底に激しい恐怖と絶望と共に深い深いトラウマを刻み込んだのだった。
そして仮面ライダー竜騎のトラウマ回は終わり、エンディングテーマが流れた。
その間、ずっとアリスは無言だった。顔も真っ青でまだ少し震えていた。
やがてテレビ画面ではCMが流れ続けていた。
しかし間もなくしてまた一瞬だけテレビ画面にノイズが走った。
だがそのノイズは更に酷くなり、やがてテレビCMも消え、
何も映像が見えなくなっていた。
「あれっ?何で映んないのっ?えーつ!ちょっと!ちょっと!」
正気に返ったアリスは映らなくなったテレビに大声で抗議した。
やがてまたテレビ画面が映り出した。
しかもCMの場面は途中で切れていて今は
全く別のどのテレビ番組でもCMでも関係の無い映像が流れ出した。
どうやらライブ配信のようだった。
 
秘密組織ファミリーの本部に当たる大きな屋敷。
その食堂で依頼された二つの仕事を片付けた後、
ジョンの帰りを待っていた魔人フランドールもテレビを付けて
ジョンのライブ配信が始まるのを待っていた。
しかもテレビでは丁度、アリス・トリニティ・バレンタインが観ていた
仮面ライダー竜騎』の途中部分が流れていた。
テレビ画面では仮面ライダーナイトの戦いに敗れた仮面ライダーシザーズ
元の人間の姿に戻り、そしてデッキとカードを破壊され、契約破棄とみなされ、
元契約モンスターであろうボルキャンサーが元の人間に戻った日本人の男を捕らえると
やたらにリアルな咀嚼音と共に人間の男はあっという間に捕食されてしまった。
それを見ていた魔人フランドールは驚きはしたものの
恐怖を感じる事も無く意外に冷静だった。
「あーあ、悪魔に魂を討った男の末路か?でもそれよりも。」
魔人フランドールは自分が吸血鬼であり悪魔なので大体こんな出来事は
中世の時代から義理の姉のレミリアと共に何度も見てきたのでもう慣れっこだった。
間も無くしてテレビで流れていた仮面ライダー竜騎も終わり、CMが流れた。
しかしその途中でノイズが走り、やがてCMは中断され
例のジョンの生ライブ配信が始まった。
 
ニューヨーク市内のどこかにある使われなくなったスタジオでは一人の
黒いスーツ姿の男はスタジオの中央に立ち、目の前の大きな木の机にある
マイクを見ると茶色の瞳で目の前のスタジオの奥の撮影用のカメラを見た。
黒いスーツの男、ジョン・C・シモンズは
茶髪のオールバックに黒いスーツを決めていた。
間も無くして木の机に両手を置き、口を開いた。
「さてと!僕は魔獣新生多神連合軍が一柱。魔王ホラー・ベルゼビュート。
僕達はこちら側(バイオ)の世界とは違う第3の世界、君達人間が言うところの天界
を支配する唯一絶対神YHVAを抹殺し、君達を神の支配と奴隷から解放する為に
行動を起こすのが目的である!彼ら唯一絶対神YHVAと大天使、天使達は
人間の味方では無く敵なのである!彼らはー。」
そして魔王ホラー・ベルゼビュートはこちら側(バイオ)の世界の
ブラック企業のアンブレラ社とその創設者のオズウェル・E・スペンサーの野望
(選ばれた優秀な人間達を残して自分達より
能力が劣った劣性で不要な人間達を排除して
自らが神としてこちら側(バイオ)の世界を完全に支配すると言うもの)を例にとって
いかに唯一絶対神YHVAや大天使達、天使達によって法と秩序を強要し神に忠実に
従う優秀な人間を残して、神に忠実に従わない反逆者と蔑み、全ての神の怒りや裁きを
持って皆殺しにする選民思想がいかに愚かで
下劣で最低の行為なのかを長々と説き続けた。
さらに自分達に従わなければ街そのものを滅ぼしても構わないと言う事を
ラクーンシティやトールオークスやソドムとゴモラを例に取り上げた。
「またノアの大洪水でも気に入らないと言う理由で人や巨人も全て巻き込んで
溺れ死にさせ!大量の人間や動物が死のうが大天使も天使達も唯一絶対神
YHVAもなんとも思っていないし!手を差し伸べ事も救済する事も無い!
自分が『信じれば救われる』と宣っておきながら、何もしない!
人間や紙や悪魔、異教の神をまるで人形のように弄んでいる!
そして言葉で縛り付けて!我々を悪の中に閉じ込めているのだ!
我々はそんな傲慢で自分勝手な唯一絶対神YHVAを決して許さないっ!」
魔法ホラー・ベルゼビュートは何度も両拳で木の机を叩き、腕を大袈裟に降り、
身振り手振りで自分の主張をテレビの前の人々に訴え続けた。
「我々は彼らの横暴を決して許さない!そして君達は!
僕の言葉に耳を傾けてくれるのか?自分達が最も愛した
アニメやゲームや漫画のキャラクター達が『尊厳』を奪い取る。
あるいは彼らは他人の自我の視覚を邪魔する存在!
子供の暴力を助長する最悪の悪の権化。
だから存在する価値もなければ排除されるべきだと考える大人の欲望。
さらにその崇高な行いをしたキャラクター達のキャラクターや
偉人と呼ばれるまでの善き行いをしたキャラクター達を模した
プラスチックに人形を生命の感情の無いただの人形と呼び!決めつけ!
価値の無い存在だと!コンピューターゲームさえも尊厳や存在価値を認めないと
言う自己満足でしかない大人達が強要し、無理矢理辞めさせられたり!変える!
そんな勝手な行為に対して君達は許せるのか?!許せないのなら!!
そんな大人達に対して『NO』と突きつけよう!!」
 
(第59楽章に続く)