(第65楽章)機械生命体警告

(第65楽章)機械生命体警告

 

アルカードは淡々とキャリーに今の現状の説明を続けた。

それからどう言う理由かは知らんが例のニューヨーク市内のチャイナータウン

を中心に発生した時空の歪みから現れたその謎のタコの触手の形をしたUMA

(未確認生物)が現れた現場から採取された赤黒い粘液からあの

新種の真菌のE型特異菌に酷似した遺伝子が検出された。

だから現場の広場は直ぐにBSAAやブルーアンブレラ社の手で

完全に封鎖され、アメリカ陸軍も出動して騒ぎになっている。

現場にいた目撃者も氷塊に閉じ込められた若い女性達もそのE型特異菌に

酷似した真菌の感染リスクがある為に不運な事に全員一人残らず隔離された。

今や一般人やおろか私達でさえ、立ち入り禁止となった。だから今は無理そうだ。」

「ベイカー家の事があったからみんなもの凄く警戒しているのね」

「これに関してHCFやコネクトの動きは無かった。」

「連中!流石に信じていないんじゃないのかしら??」

「かもな俺でもまだ信じ切れるかどうか……だが!実は魔戒法師なる女が

そのアイリスの氷塊を法術で溶かしたら。息を吹き返したようだ。」

「成程。コールドスリープ(冷凍休眠)の状態だった。」

「その通りだ。そしてこれが彼女が後に証言したテープデータ」

アルカードと言う男はスマートフォンを操作して画面上のアイリスの声を再生させた。

それは短い動画だった。『私達は魔王アブホースの時空の中にいた。

私達は魔王アブホースと交わって沢山の魔獣ホラーを産み出した。

私達は10万年もの遥か未来までずっと!ずっと!」

「はあ―何言ってんの?今の時代は2021年よ!」

キャリーは混乱した。アルカードはシーツと言って彼女を静かにさせた。

「私達は他の人達と一緒に沢山産んだ。全ては在るべき場所の真魔界へ還って行った。

でも私達はあの子達とは行けない。私達は再び魔王ホラー・アブホースの手によって

時空をまた遡り。現在の2021年のこちら側(バイオ)の世界に戻ってきたのよ。

分かる??でも私は機械生命体。あるデータを受信した。

『反メディア団体ケリヴァー』

の大人達が10歳の子供の『R型』の大切な宝物を目の前で壊そうとしている。

そんな事をしては駄目だ!止めろ!他人の価値観の無理解は不毛な虐殺を産む。

大切な宝物が目の前で壊れたら『R型』は大人に対する憎悪で

周りの大人達の存在を無理解しようとする。破壊は憎しみを。

破壊を憎しみを。破壊を憎しみを。破壊を憎しみを。破壊を憎しみを。

破壊を憎しみを。警告しなければ!警告!ワーニング!ワーニング!」

再びアイリスはまるで機械のような口調で何度も、何度も、何度も、繰り返し。

繰り返し、繰り返し、グルグルと回る車輪のように『私は機械生命体』の

ところから徐々に甲高く悲痛な声で同じ警告を永遠に繰り返し続けた。

アルカードはテープを止めた。

「なんだか壮大な時間の旅ね!それと何の警告?」とキャリー。

「ああ,だが途中から急に機械のような口調になって。

『機械生命体警告』を永遠に繰り返した。

そのあと『機械生命体警告』は自動停止し、今度は自らの事を

寄る辺の女神のコピープログラム。『オートマタ』って名乗ったらしい。

『私は機械生命体警告』の意味も……。全く理解不能だ。」

「コピープログラム『オートマター』?まるで機械人形みたいじゃないのよ!

どうなってんの?しかも!あの機械生命体の不気味な警告とか一体?何なの?」

「分からん!寄る辺の女神だとか?『オートマタ』だとか良く分からん!」

「もう!それじゃ!本当にまるで彼女が道具か機械じゃないのよ!」

キャリーは憤慨して思わず口調が少し荒っぽくなった。

慌てふためいてアルカードがなだめた。

「頼むから静かにしてくれ!君の怒りはごもっともだな!

しかし今は本当にどうしようもないんだ。とにかく今分かった情報は。」

「アイリスの事を調べた結果、BSAA医療チームやブルーアンブレラ社の

報告によればアイリスの全身には魔戒騎士や法師とかが言う

魔王ホラー・アブホースに由来する賢者の石なる生命体が寄生していて。

更に彼女の遺伝子にはあのE型特異菌に酷似した遺伝子が検出されたようだ。

しかも魔戒騎士や法師が言うにはいわゆる

メシア一族の同胞の素体ホラーを産み出したり。

新たな存在として転生させる能力を持つ寄る辺の女神のコピー

『オートマタ』になったらしい。彼女の子宮は人間の子供を産む事は出来るけれど。

既にアイリスの胎内は人間のものとは違うらしい。それでー。

魔獣ホラー達や悪霊や幽霊達が新たな肉体を

手に入れて転生する器になってしまった。」

「転生?まさか?異種を産む身体に?」

「信じられんがそういう事らしい。しかも彼女は自我や記憶があるあるらしいが。

実質は『生産能力を持つ人間型の魔獣ホラーの特殊個体』。

魔王ホラーアブホースによって変えられた。その人形らしい。

「・・・・・・・・・・・・・それで?彼女は仕事に復帰できそう?」

「それは何とも言えないなー。機械的な感情を持つ彼女が元通りに

この仕事に復帰できるかは未定だ。他の一般就職の若い女性達もね。

「そうねえ!未だにあの広場は封鎖状態だものね」

アルカードの話にキャリーは困った表情で溜め息交じりにそう答えた。

 

同じ頃。秘密組織ファミリーの本部に当たる大きな屋敷。

「何故?彼女達をもう在るべき場所、つまりそちら側(バイオ)の

世界に戻したんだ?まだ一日しか経っていないのでは?」

軍曹ホラー・リャナンシーは魔獣新生多神連合のリーダーであり、

秘密組織ファミリーの長のジョン・C・シモンズに思い切って質問していた。

すると自室の椅子に座っていたジョンは静かに口を開き話し始めた。

「ああ、問題無いよ。こちら側(バイオ)の世界の時間の流れは遅いが

魔王ホラー・アブホースがいる異世界の時間の流れは極めて速いが。

彼女達は精神的にとても速い時間の流れを経験している筈さ!

そして寄る辺の女神のコピー『オートマタ』となり、魔王ホラー・アブホース由来の

賢者の石とE型特異菌の遺伝子が組み込まれている彼女達は人形に近い存在になった。

故に老化も停止した。これもあの別次元の宇宙から来訪した『ニーアの方舟』の

中にあった膨大なデータを魔王ホラー達。つまり僕や魔王ホラー・マーラ。

アブホース、真魔界竜アナンタは全てを解読し、自らの遺伝子にその膨大なデータを

組み込んだ。そして魔戒法師の反乱分子がイデアを使って滅した魔獣ホラーの

個体数は既に10万年かけて生産し、元の個体数まで回復した。だから

10万年かけて未来に遡って元の時代のこちら側(バイオ)の世界にお返ししたよ!」

「そうか!だがオリジナルの寄る辺の女神のジル・バレンタインから転生して新しい肉体を得たアンドレイ・チカチーロだが厄介な

事実が判明したのでご報告を申し上げます!」

「成程!オリジナルの寄る辺の女神から転生し、恐らくは」

「お察しの通りです!奴は悪霊から魔王ホラーに転生。

それと同時に寄る辺の女神のコピーの『オートマタ』にする為に若い女性を

何人か襲っていて。人間の男は魔王ホラーとして血肉魂も全て捕食していたようです。

そして現在。ようやく捕まえ、マルセロ博士のところにいる

アメリカ遺伝子研究所へ移送。監視と調査が同時進行中のようです。

また魔王ホラー・チカチーロは『ニーアの方舟』の機械生命体の記憶データを

襲った若い女性に植え付けて『オートマタ』にしていた事も全て吐きました。

あと貴方の息子バエル様を利用した例の計画は。

妊娠した女性は5001人。妊娠していない女性5001人。

そして妊娠していない女性5000人の内、我らメシア一族の魔獣ホラー達を

自らの肉体を依り代にして召喚、他種族ホラーや大天使、天使と戦う能力を得たのが

アサヒナ・ルナを含む2000人。その能力の未覚醒の女性が3000人。

また完全に魔獣ホラー化し、自我を失い人を喰らうようになった女性は

1000人です。また10000人の女性達の体内には

オリジナルの寄る辺の女神のジル・バレンタイン

から転生し、新しい存在となった貴方の息子の名を取り『賢者石バエル細胞』

が検出されました。またこの細胞にはGウィルスの変異株も含まれています。」

「そうか。まずまずの実験結果だね。DEBIRUSAMA計画は。

そう。人間と魔獣ホラーの混血児が産まれ、魔獣ホラーを召喚する

能力を持つ最初の人間の女性が現れる。全て計画通り。

これが我々メシア一族の新たな生き方であり、闘い方でもある。」

ジョンは満足した表情でにやりと笑った。

「そうですね。では!報告は以上となります。失礼します!」

軍曹ホラー・リャナンシーはジョンに向かって丁寧に一礼した。

続けてクルリと時計回りに身体を半回転させた。

それと同時に彼女の背中まで伸びたサラサラの金髪の

ポニーテールも右側に半回転した。

彼女はザッザッザッザッザッ!と靴底の音を響かせてまるで軍隊のように歩き始めた。

そしてジョンは目の前のパソコンのスイッチを押し起動させた。

続けて目の前のパソコンの画面を見て両手の10対の指でキーボードを叩き続けた。

やがてパソコンの画面にはHCFの極秘データが表示された。

「ジルのクローンのストークスはセヴァストポリ研究所にてグローバルメディア

企業の軍用AIが搭載された最強兵士の試作品。新型ウィルス兵器

(大体8年後に誕生するT-sedusa(シディウサ)である。)

の強力なウィルス抗体の製造工場として利用され、コールドスリープ(冷凍冬眠)

カプセル内で抗ウィルス剤とワクチンの研究用の抗体及びBOW(生物兵器

やプラントデッドの極度に知能低下や自我喪失、病の予防策(主に味方の)肉体強化と

安定の為にジルのオリジナルに近い賢者の石とウィルス抗体を生産・抽出し続ける為の

安定個体として10年を目途に生き続けられて保存されることが公式決定される。

ただ彼女の最後のお願いとして女の子らしくロングヘアーからボブカットにしたあと。

カチューシャや黒いゴスロリの服を着用した上でコールドスリープ

(冷凍冬眠)カプセルに入ったらしい。以上である。」

「10年後、彼女をどうにか助け出さないとな‥‥‥‥」

そう呟きながらジョンはパソコンの画面をずっと見続けた。

 

翌朝。ジルに自宅では全員早く起きて昼食を食べ終えたアリスとシルク達は

予め決めた時間にチェルシーシネマ。つまり映画館へ行った。

建物の中には真っ赤な壁と黄金の飾りが付いた扉に天井に

黄金のシャンデリアの付いた大きなロビーがあった。

アリスとシルク一行はお目当ての映画作品を上映している部屋を探した。

するとそこに焼き肉店で会ったキャサリン・ウォーレンの

そっくりさんのキャリーの姿もあった。彼女もどうやら映画館を

観に来たらしくお目当ての映画作品を探していた。アリスは気前よく話し掛けた。

「あっ!キャリーさん!映画観に来たんだ!」

するとキャリーもアリスとシルクを見つけて「どうも!」と声を掛けた。

「うん!もしかして?あたしと同じ映画を観に来たんだ!」

するとシルクも「えっ?」と言う表情をした。

「そーなんすか?」とシルク。

「そうなのよ!私も丁度、一作目を観ていてね!」とキャリー。

「じゃ!一緒に観ようよ!」とアリスは笑顔で誘った。

アリスがキャリーを映画に誘う理由は勿論、皆で観た方が楽しいからである。

しかしキャリーは残念な表情でこう言った。

「御免なさい!実は彼と来ていてね。一緒に観るの。」

「そーなんですか」とモトキ。

「うーん残念だけど!もしかして焼き肉店にいた金髪の男の人かな?

一緒にいたよね?」

 

(第66楽章に続く)