(最終楽章)生命の誕生

(最終楽章)生命の誕生

 

「まあーそうは言ってもねー!やっぱりムズイよなー!」

その瞬間、アリスとンダホは一斉に最後の

ピザの一切れを喰い続けるシルクの方を見た。

途端にシルクは全身をビクッと震わせた。

「最後にピザのおおおおおおおおっ!」とアリス。

「一切れえええええええええええっ!」とンダホ。

2人の大声にシルクは呆れ果てた表情で目を瞑った後、

首を左右に振り回して突っ込んだ。

「あんた達!またかーいいいいいっ!」と。

ジルの自宅ではアリスとFISCHRRS(フィッシャーズ)のメンバー達は

昼食のピザを食べた後。昨日の夜に日本にいるマサイの愛用のパソコンに動画を

送ってアップしてもらうように頼んで置いたあの一日前の人食い車の

噂を確かめたあの映像がYouTube(ユーチューブ)

のFISCHRRS(フィッシャーズ)のチャンネルで公開されていた。

早速アリスはマウス操作で噂の動画を再生させた。

その映像は最初はマサイが付けたと思われるテロップが映し出された。

「これはアメリカのニューヨークで都市伝説『人食い車』の実在をンダホとシルクが

確かめた映像です。これは決してやらせでも。

編集で手を加えたものでもありません。」

それからあのニューヨーク市内某所の東の駐車場の前辺りに停まっていた

赤いセダンに近付いて行くンダホとシルクの姿が

手に持ったカメラの映像に映し出された。

シルクが持っていたカメラの映像内ではンダホが赤いセダンに乗り込もうとした瞬間。

彼は何もしていないのに勝手に赤いドアが閉じ、ンダホの太った上半身は

ドアの内側と車体に挟まれ身動きが取れなくなったところで全速力でで走り出した

シルクがカメラを落とした為、カメラのレンズは赤いドアを無理矢理右手で抑え込み、

左手でンダホの太い身体を抱えて引っ張り出そうとする二人の姿を

横向きで鮮明に映し出した。後にドオオオン!と言う騒がしい音と

「うっ!ぐえええっ!」と苦しそうに呻くシルクの声が聞こえて来た。

赤いセダンは白いコートの男に思いっ切り殴り飛ばされて何処かに

吹っ飛ばされる光景が一瞬だけ映った。そしてそこでカメラの映像は終わった。

YouTube(ユーチューブ)のFISCHRRS(フィッシャーズ)のチャンネルで編集無しの

ノーカットで公開されていた『人食い車』を探していたらンダホが喰われかけた』

と言う最新動画の再生回数は203,978回視聴された。

評価のグッドは19,780でバッドは10と言う数字の結果だった。

「ほえー凄いねー大ヒットじゃないの?」

その最新動画の再生回数の結果にアリスは

自分の事のように喜び、ンダホに話しかけた。

「まーそっ!そうだね……」とンダホはあの事件を

思い出したのか顔が真っ青にしていた。

「いやーあれはヤバかったね!マジで!」

シルクは昨日のあの人食い車の事件を

振り返りながら思わずブルッ!と全身を震わせた。

「本当にマジでヤバかったねー」

「でも!鋼牙おじさんとママに助けて貰ってよかったよー」

「後で聞いたけれどアリスちゃん僕たちを心配してくれて!」

「電話でママと鋼牙おじさんにしたんだよねー」

「ありがとう!本当に感謝!感謝だね!」

「本当にありがとうな!おかげで助かったよー」

アリスは「ヘヘへっ」と照れ笑いを浮かべた。

「いいの。いいの。FISCHRRS(フィッシャーズ)のみーんな大好きだから!」

アリスの笑顔にFISCHRRS(フィッシャーズ)のメンバーも全員笑顔になった。

「でも明日!日本に帰るんだよね?でも動画は楽しみにしているよ!」

アリスは少し寂しそうにそう言った。

それに対してFISCHRRS(フィッシャーズ)のメンバー達は

「寂しくなるけど!また元気に動画を変更していくから!」

「動画のアップも楽しみにしていてね!」

「でも怪しいものを追いかける時はできるだけ気お付けるね」

やがてアリスも笑顔で「うん!楽しみにしているよ!」と頷き、元気良く答えた。

 

魔獣ホラー・バエルや魔獣新生多神連合が起こした数々の事件から数か月後。

魔獣ホラー・バエルと交わり、子供を宿したエミリーやぺルシッサを初め

5001人の若い女性は9か月間隔でバエルと人間、つまり

魔獣ホラーと人間の混血児の赤ちゃんをどんどん無事に出産して行った。

そして街中は新しい生命の誕生の喜びに満ちていた。

勿論、BSAA北米支部の医療施設でようやく出産の準備が整った

シャノン・カエデ・マルコヴィアはベッドの上にあお向けに寝かされ、

産婦人科の分娩室に運ばれていた。ちなみにこれらの医療施設が

産婦人科が作られた大きな理由は本来のBSAA北米支部では

日々バイオテロ対策に必要な武器や医薬品の開発と研究で24時間365日。

休みがあっても勤務し続けるBSAAのエージェントや職員

(特に若い女性や将来子供や家族を持ちたいと考えている何人かの若い女性)

の為にこの産婦人科をBSAA北米支部に設置した。

そして妊娠した場合や仕事中の体調不良等を申告したエージェントや職員には速やかに

こちらの医療施設で精密検査や長期治療を

受けられるシステムも作られているのである。

また万が一BSAA北米支部バイオテロによる攻撃でウィルス兵器や

BOW(生物兵器)が放たれた場合、BSAA北米支部内でも

研究用のウィルス兵器やBOW(生物兵器)のサンプルが事故で漏れた場合、

外部に漏れて被害が出ないようにするのも医療施設や産婦人科

作られた大きな理由である。特にラクーンシティの事件では

Tウィルスが地下の下水道に住んでいたネズミやゴキブリを介して

人間に感染したケースもある。だからこそ妊娠した女性でも普通の健康な男女でも

間違って危険なウィルスや寄生虫を外部に持ち出すか。

あるいは漏れる可能性は全くないとは言い切れない。

しかし今回はおめでたい話である。

分娩室に運ばれたシャノンは不安な表情でシャノンの妊娠と

出産と産後のケアーを担当している助産師の若い女性を見た。

彼女はシャノンに優しく話しかけて出産後の不安を取り除こうと

色々思案し、言葉を慎重に選び話しかけ続けた。

いよいよシャノンの子宮の収縮の度合いが

キツイかなり痛い陣痛は始まりお産が始まった。

シャノンは「ああっ!」と声を上げた。

助産師は直ぐに出産前にシャノンに何度も繰り返し、繰り返し練習させた

ラマーズ法の実践を促した。ちなみにラマーズ法は古い時代のロシアのシベリア等の

開拓地で無事に出産する為に夫や家族、友人の助力を得て出産する為に伝承された

助産と出産方法である。この出産技術は後のヨーロッパを経由してアメリカ開拓の

地での出産方法として用いられ、日本ではウーマン・リブ運動の活動の一環として

紹介されたのをきっかけに日本中の病院や助産施設に広まったものである。

シャノンは大きく息を吸い込み、落ち着いてラマーズ法を始めた。

「ひっ!ひっ!ふーつ!ひっ!ひっ!ふーつ!ふっ!ひっ!ひっ!ふーつ!」

シャノンは陣痛によって思わず悲鳴を上げた。

「ひっ!いっ!たっ!ひっ!ひっ!ひっ!ふーつ!

ひいっ!いたっ!ひっひっふーつ!」

シャノンは時々、走り、陣痛を歯を食い縛って耐え、瞼を閉じて天井を見上げて

どうにか耐えようと自分なりに努力した。

「ひっ!ひっ!ふーつ!ひっ!ひっ!いったいっ

!ひっ!ひっ!ふーつ!ひっ!ひっ!」

するとシャノンの出産を助けてい助産師の女性はシャノンに

笑顔を向けてお産の痛みを和らげようと世話しなく語り続けた。

「はい!もうすぐですよー!頑張って下さいっ!

ほら!頭が出てきましたよー!あともう少しですよっ!」

「うううっ!ううっ!ぐああああっ!痛いっ!痛いっ!ううっ!ううっ!」

「ほーら両肩も両腕も出て来ましたよ!だから何も心配ありませんよ!

あともう少しです!頑張って下さい!胴体も出たわ!」

「ううっ!ひっ!ひっ!うがあああっ!ひっ!ひっ!ああっ!無理!うわあっ!」

「はい!足が出て来ています!もうすぐです!もうすぐですよーっ!」

そして出産が終わったのかシャノンは陣痛が全快したのを知った。

更に一瞬の沈黙。しかしシャノンはその一瞬の沈黙さえとてもとても長く感じられた。

私の赤ちゃんは?どうなったの?まさか?

しかし間もなくして元気な赤ちゃんの産声が

分娩室の部屋の隅々にまで響き渡り続けた。

新しく産まれた自らの生命を歌うように力強く大声で果てし無く。

「おめでとうございますっ!元気なしかも健康な男の子ですよ!

ちょっと待って下さい!今!顔を見せますので!」

助産師の若い女性は直ぐに生まれた新生児と胎盤を繋ぐ臍の緒を処理した後、

温かい毛布でくるみ、両腕で優しく抱き、いまだに信じられ無い表情で荒々しく息を

吐き続けるシャノンに産まれたばかりの元気な男の子を見せた。

シャノンは自分が母親になったんだと言う実感が

徐々に心の底から沸き上がるのを感じた。

そして嬉しさの余り、自然と両眼から涙が止め止めなく溢れて来た。

シャノンは元気な男の子を顔を見るなり、甘い声でこう言った。

「てあっ!あっ!とてもキュートよ!こんにちは!私の赤ちゃん!」

シャノンはうまく言葉に出さなくても恥ずかしそうに顔を赤らめた。

すると助産師の若い女性はシャノンにこう説明した。

「産後は妊娠と分娩によってもたらされた母体は元の子宮に戻るまで4~6週間

かかりますが。特に今後の経過を見て合併症が

無い限りは絶対安静の必要はありません。

とりあえず無理を強いない。重い物を持ったり。長時間立つ程度であれは

通常の生活は可能です。また貴方の場合はAV女優の仕事ですが

とりあえずしばらくは産後休暇は必要になるでしょう。

それとマツダBSAA代表から伝言で。今回の出産で子育てが始まるに当たって

2つの選択をしなければいけません。つまりAV、ポルノ映画の仕事を続けたら

あの魔獣ホラー・バエルの息子の子育てを両立させるか?それとも。

AV、ポルノ映画の女優を引退して魔獣ホラー・バエルの息子の子育てに専念するか?

どちらか自由に決めないといけないと言う事です。

こちらに関しては今後、産婦人科の担当医師と精神科医のアシュリーグラハム先生と

ジル・バレンタインさんと私と色々カウセリングや相談をしっかりと行い、

自分自身が一番正しいと思える道を一緒に模索したいと考えています!」

「私の友人では子育てしながらポルノ映画やAVに出ている人も何人か知っています。

でも今は息子を優先したいと考えています。」

「そう、いいですか?今日からこちら側(バイオ)の世界は目まぐるしく

移り変わりつつあります。それは貴方が好きか嫌いかの問題ではありません。

もはやウィルス兵器やBOW(生物兵器)が台頭する時代は

終わりを迎えつつあると言う事です。」

「それは?どう言う意味でしょう?良く分かりませんが・・・・・・・・」

「私は感情で憎悪に身を任せて冴島鋼牙を傷付けようとした

貴方のやり方は間違っているでしょう・・・・・・」

「でも!ジルさんに諭されました。憎悪よりも憤怒よりも自分の子供が

幸せに大人までちゃんと自立するまで最後まで育てないといけない。

でも私の中にある憎悪と怒りは消えていません。でも私はー。」

ちなみに魔獣ホラー・バエルの息子の赤ちゃんは健康だったので

保育器では無く普通のベッドに仰向けに眠っていた。

赤ちゃんは目を閉じたまま仰向けにムニャムニャと口を動かした。

シャノンはそれがたまらず可愛らしくその赤ちゃんの動きや時々する大きな欠伸や

手を振る仕草が全て愛おしかった。これが生命の誕生なんだなー。

シャノンはしみじみとそう思った。

 

(牙浪Xバイオ魔獣狂騒曲・ホラーラプソティ完結)

 

これで牙浪Xバイオ魔獣狂騒曲・ホラーラプソティは完結です。

長い間ご愛読ありがとうございます。

当ブログの引っ越しなど色々ありましたが何とか完結しました。

それで次の小説は『バイオハザードブラッディローズ本編』の

前日譚と後日談を組み合わせ新しいHCFのセヴァストポリ研究所が舞台で

HCFに所属するある青年とクローンジルのストークスを巡る闘いと

『R型暴走事件』で使用されたウィルス兵器誕生の謎に迫った物語を書いた

『ミカエル』が近日公開となります。更なる『ミカエル』の続編はあの

コナミの有名なホラーゲームの『サイレントヒル』を舞台の物語が始まります。

とはいってもまだまだ構想中の段階で『ミカエル』完結後に書く予定です。

でもいずれもお楽しみに。では♪♪