(第25章)機械の外の幽霊達とストークスの誘拐

(第25章)機械の外の幽霊達とストークスの誘拐

 

AI(人工知能)アポロは思い出したようにダニア博士にこう言った。

「今の時間は!もう9時です!いよいよ明日!ストークスを狙って

魔女王ホラー・ルシファーが動き出します!そこであの保安部隊員の

エア・マドセンは果たして魔女王ホラー・ルシファーに勝てるのでしょうか?

私には映像を見る限り、勝てる可能性は0%あるいは1%未満かと。

あの圧倒的な攻撃力と肉体の耐久性。どのデータを見る限り・・・・」

「ええ、そうね!勝てずに殺されちゃうかもね」

「それでは我々は『新型T-エリクサー(仮)(E型特異菌遺伝子有り)

及び新型T-エリクサー(仮)(E型特異菌遺伝子無し)の

抗体製造工場を失う事になります!早急に新たなウィルスワクチン

製造工場となる人間の被験者を確保を!!」

「まだ慌てる必要は無いわ。明日エアと

魔女王ホラー・ルシファーの戦いを見守りましょ!

それにあのエアのお母さんは何か別の考えがあるみたい。

でも正直、あんまり良くない方法の気がするわ!

まあー明日になれば分かる事よ!彼ならきっとやり遂げるでしょうね!

息子とストークスの未来の為にねー。

 

そして魔女王ホラー・ルシファーがストークスを狙って活動を始める決戦の日。

ダニア博士はまた自室のモニター画面の監視カメラを可能な限りセヴァストポリ

研究所内全体で一斉にモニター画面に表示させるようAI(人工知能)アポロ

は直ぐにモニター画面内に大量の監視カメラ映像を表示した。

そんな中、ダニア博士のメールボックスに2件のメールが届いているのに気が付いた。

ダニア博士はおもむろにそのメールボックスをマウスでクリックして開いた。

差出人はどうやら一人目がエイダ・ウォンから。もう一人が意外な事に

魔女王ホラー・ルシファーだった。まずはエイダのメールを開いた。

エイダ・ウォンのメールには例の殺人鬼クレーマータックと交渉しようとしたが

出来ずに代わりにサリンが蔓延した館に閉じ込められて謎解きしながら

解毒剤を探し当てて脱出してアンヘラと一緒にゲームクリアをして殺人鬼

クレーマータックとの協力の約束を取り付けた。と言う内容だった。

続けて2件目の魔女王ホラー・ルシファーのメールを開いた。

「すでにストークスは我の手の内にある取り戻したくばBOW(生物兵器

BOW(生物兵器)及びウィルス兵器研究開発中央実験室の深部の完成した

BOW(生物兵器)の特性や能力、商品としての価値を審査する為

のテストやチェックを行う『BOW(生物兵器)特性商品テスト用広場』

にて待つ。早くエアをこっちに寄こした方が良いぞ。

さもなくば手遅れになるかも矢も知れぬのう。」

「なんですって!!ストークスはちゃんと今まで以上に!!」

動揺するダニア博士に対してAI(人工知能)アポロはあくまでも冷静にこう答えた。

「どうやら・・・・いえ!こっ!これはっ!信じられませんっ!!」

AI(人工知能)アポロは驚きの声を上げた。

そしてすぐにストークスのいる隔離部屋のストークスの姿が消える

50分前の監視映像をモニター画面に移した。ダニア博士も両手を口に付けた。

彼女もまた驚き、両眼を見開いていた。

トークスの姿が消える50分前の映像にはー。

ベッドで座り込んで両手で頭を抱えて怯えているストークスの周りに

白い人影と黒い人影が隔離部屋の中に大量に現れていた。

そいつらは白い目と黒い目でストークスを見ていた。

「こっちに来て」「ルシファー様が待っているわ!」

「魔女王ホラー・ルシファー様はこの呪われた地から

我らを解放してくれる偉大なお方」

「何も心配は無い」「来なさい」「我々は死してからこの地に縛られ続けた。」

「我々はHCFの人体実験で実験体として殺された」「もう呪われた地に」

「これ以上!縛られる必要は無い!」「解放される日が今!」

その白い人影と黒い人影の話を聞いていたダニア博士は

彼らが・・・・・・今までこの土地で死んだ沢山の沢山の人間の霊魂。

つまり幽霊達だと直感した。

「アポロ!こいつらは人間の霊魂よ!どうやらこの地に!」

するとAI(人工知能)のアポロも驚きを隠せない様子で。

「あっ!有り得ません!霊魂も幽霊も科学的に証明されて」

「ええ、ほとんどね。でも科学は決して万能じゃないし。

目に見えるものだけが全ての世界じゃないの。目に見えない世界物の世界もあるのよ。

何より魔女王ホラー・ルシファーの存在が目に見えない世界の存在を証明しているわ。

「私は何を信じたら?プログラムでしょうか?」

AI(人工知能)のアポロもすっかり取り乱していた。

実際、プログラム以上の有り得ない現象にどうこたえていいか分からず

「回答不能」と言う文字がモニター画面に表示された。

「ちょっ!文字を退いて!映像が見えない!」

ダニア博士に指摘されてAI(人工知能)のアポロは

「失礼しました!」と回答し、慌てて回答不能の文字を消した。

「こんなの有り得ません!有り得ません!プログラムのバグですよ!」

とか「動作チェックをしたいのですが・・・」とダニア博士に呼び掛けた。

しかしダニア博士はきっぱりとこうAI(人工知能)のアポロにこう言った。

「気持ちは分かるけれど!映像が終わるまで控えて」

「分かりました黙ります。データをまとめます」

それっきりAI(人工知能)アポロは完全に黙り込んだ。

一方、50分前のストークスの隔離部屋の映像内では例のこの地に

縛られた大量の霊魂達の前にあの魔女王ホラー・ルシファーが現れた。

しかも正面入り口の四角い赤い空間からスーツと現れたのだ。

ベッドの上にいたストークスは「ひっ!」と小さく悲鳴を上げた。

すると隔離部屋に大量に表れた幽霊達は一斉にまるでモーセの滝の様に

左右に大きく割れるように移動した。そして真っ二つに大きく割れた大量の

幽霊達が作った長い一本道を魔女王ホラー・ルシファーは

ゆっくりと優雅な足取りで歩き続けた。

更に魔女王ホラー・ルシファーの歩いている左右の横で

大量の幽霊達はそれぞれ右膝を隔離部屋のダイヤモンドの床に

付けてゆっくりと頭を下げてまるで忠誠を誓うような行動をした。

魔女王ホラー・ルシファーはベッドの上に座り込んで

怯えているストークスのところまで近付いた。

魔女王ホラー・ルシファーは右掌をストークスの顔に向けてゆっくりと下へ降ろした。

それだけでストークスは両瞼を静かに閉じ、すやすやと眠り始めた。

魔女王ホラー・ルシファーは目に見えない力で

トークスのスレンダな身体を持ち上げた。

同時に大量の幽霊達もどこかにスーツと姿を消した。

そして隔離部屋に誰もいなくなったところで映像は終わった。

ダニア博士は素早く黙り込んでいるAI(人工知能)アポロにすぐにこの事を

エア・マドセンに伝えるように指示した。

そしてそれ以外の保安部隊や研究員、スタッフ、職員には

これまで通りの業務を行うように指示した。

もちろんHCF上層部にもこの事を報告した。

 

エア・マドセンは自室ですやすやと眠っていた。

するとAI(人工知能)アポロの声がスピーカー音声から聞こえて来た。

「エア!エア!エア・マドセンさん!魔女王ホラー・ルシファーが

隔離部屋に超常的な力で侵入し、ストークスさんが連れ去られました!

直ちに!BOW(生物兵器)及びウィルス兵器開発中央実験室深部の

『BOW(生物兵器)特性商品テスト広場』に急行して下さい!とにかく急いで下さい!ストークスさんは極めて危険な状態です!とにかく早く!早く!」

エアはそのAI(人工知能)アポロの声を聴くなり反射的にベッドから

上半身を起こして飛び起きた。それもすぐに支度を始めた。

彼は直ぐに素早く保安部隊の制服と防弾チョッキを着た。

ちなみに武器はあえて持って行かなかった。

持って行ったところで役に立つとは思えないからだ。

一応、サバイバルナイフとハンドガンは持って行く事にした。

使わなくても言わゆる戦場のお守り変わりだ。

その時、どう言う訳かAI(人工知能)アポロは何故か僕や彼女の好きな曲では無く。

僕の母親が最近大好きになったと言う日本の人気のボカロロックの。

確か曲の名前は『スーサイドパレヱド』だっけ?を歌い始めた。

でも?どうして?ユリイ・カノンの曲をAI(人工知能)アポロが歌うんだろう?

何か意味があるのだろうか?だったらどうしてママの好きな曲が??

そんなレベッカそっくりの歌声で歌う『スーサイド・パレヱド』を聞きながら

トークスと魔女王ホラー・ルシファーが待つ『BOW(生物兵器)及びウィルス

兵器開発中央実験室深部の『BOW(生物兵器)特性商品テスト広場』へ走り続けた。

彼は気付いていないが天井のAI(人工知能)アポロのレベッカの姿を模したホログラムを映すモニター画面には『アンヘラ・マドセン博士に捧げるレクイエム(鎮魂歌)』

と小さく申しわけない程度に表示されていた。

 

(第26章に続く)