(第1章)愚か者達の真夏の肝試し。

BIOHAZARD BIOOBY ROSE(バイオハザードブラッディローズ)

MICHAEL(ミカエル)KILLER KLOWNS MILTON

 

(第1章)愚か者達の真夏の肝試し。

 

『静かなる丘』の一連の怪奇事件から大体、1ケ月後。

HCFセヴァストポリ研究所のエアの自室では今日も厳しい軍事トレーニングを

終えて夕食をたっぷりと食べて満腹になったエアはベッド上で眠っていた。

しかし真夜中にエアの無線がいきなりな鳴り始めた。

エアはまるで寝ぼけたように身体を起こした。

無線機をまるで自宅の受話器のように手に持ち、

寝ぼけたように「もしもし?」と言った。

無線から雑音がしばらく聞こえていた。

「ザーザーザーザーザーザーザーザザーザー」と。

エアは誰も何も言わないのでとっとと無線機のスイッチを切ろうとした。

しかしスイッチを押す直前にいきなり緊迫した様子でブレス保安部長が

率いている隊員達とは違う別動隊の隊員の声が聞こえていた。

「こち・・・・ら・・・・くそ!囲まれている!くそっ!こんな事なら・・・・。

無許可で調べに・・・・行くんじゃ・・・・」

「おい!おい!あんた!マルフォス隊長だろ?一体?何があった??」

「どこにも逃げ道が・・・・隊員達が・・・・どこも隊員達が・・・・。

こちらマルフォス隊長!マルフォス!大至急!」

「無許可ってどう言う事だ!何でそんな事にっ!」

エアはマルフォス隊長の身に何があったのか聞き出そうとした。

エアに問いただされ、マルフォス隊長は半ベソでこう答えた。

「あの例のスパニッシュハーレムで暴れたあの宇宙から来た殺人ピエロ共だ!

我々は独断であいつらのサーカスのテントに潜入した!夏の肝試しのつもりだった!!

仲間はやられちまった!グラップスとゴイルズはピンク色の綿菓子の繭にされて。

他の男性隊員も全員だああっ!男性隊員はピンク色の綿菓子の繭で!

女性隊員は風船の中に閉じ込められて連れ去られてしまった!頼むっ!助けてくれ!!

とにかく!場所はD市街地の廃遊園地のお化け屋敷だ!」

「分かった!直ぐにリー・マーラさんと医療チームに伝える!

俺の仲間の部隊にもな!勿論、生き残ったら!」

「分かってる!少なくとも綿菓子の繭にされるよりマシさ!」

それからマルフォス隊長の通信が終わりに差し掛かった。

しかし急に女性隊員の甲高い悲鳴が無線機のスピーカーから聞こえた。

それから女性隊員の悲鳴の後、怒りに満ちたマルフォス隊長の声が聞こえた。

「おい!まさか?レイナ・ポートマン隊員か?」

「嘘だろ!なんてこった!あいつら!両手足首をロープで縛って吊り下げやがった!

しかも全裸だぜ!うわっ!こっち観たぞ!クソっ!笑ってやがるっ!

調子に乗ってやがるな!今に見てろ!」

するとエアは慌ててマルフォス隊長にこう警告した。

「よせ!バカ!恐らく位置はバレていない。だからいそうな場所に目星を付けて

レイナ・ポートマン隊員を利用して炙り出そうとしているんだ!いいか?

すぐに移動するんだ!間違ってもあのピエロ型宇宙人に姿を見られるな!

奴の思う壺だぞ!」とエアはマルフォス隊長を説得して突撃作戦を阻止した。

マルフォス隊長は今にも泣きそうな表情でこう言った。

「エア!あいつは!俺の彼女だぞ!今にも酷い目に・・・・。うっわ!

くそっ!くそっ!嘘だろ!あの野郎!初めてのデートに

俺がプレゼントしたワンピースを引き裂きやがった!!このクソがッ!」

「ダメだ!今い行けば!確実に殺されるぞ!!生き残りたかったら!」

「ああ!俺だって!生き残りてぇよおっ!でも!あいつは!クソっ!

汚い手でレの彼女の白い肌に触んじゃねえっ!

ああ、まじかよ!この野郎!クソオッ!いい加減にしやがれ!!」

マルフォス隊長の怒鳴り声と同時にレオナ隊員の「きゃああっ!」

と言う甲高い悲鳴がエアの無線機のスピーカー越しに聞こえた。

続けて荒々しく息を吐く呼吸音。さらに甲高く一定のテンポで

喘ぎ続けるような声が聞こえてきた。エアは思わず反射的に聞き耳を立てた。

「くそっ!あの!この野郎!俺の彼女を離せ!離せ!畜生!

畜生!このケダモノめ!!ぶっ殺してやる!クソっ!クソっ!」

「落ち着いてくれ!とっ!とにかく移動を!!」

エアはなるべく冷静な口調で今にも頭に血が昇って

飛び出して行きそうなマルフォス隊長を必死に説得した。

そしてなるべく落ち着いて静かにゆっくりと話しかけた。

しかしマルフォス隊長は落ち着くどころかますます興奮した。

マズイ!このままじゃ!隊長は殺されちまう!どうすりゃいいんだ?

エアはどうすればマルフォス隊長を落ち着かせるか冷静に考えた。

「いいか?マルフォス隊長!あんたまで死んじまったら!

レオナ隊員は連中に連れ去られちまう!冷静になれ!そこは戦場なんだ!

それにあんた達は賢い優秀な保安部隊の諜報班なんだろ?

ならスニーキングの達人な筈だ!12名全員で行ったのか?」

「あっ!いや!行ったのは俺とゴイルズとグラップスとベディズ。

アンナ、レオナ、レナード・コップス、えーとメイだ!残りの隊員達は

怖がって行こうとしなかったよ。あああクソっ!いい加減にしやがれ!

おい!エア!こんなのを目の前で連中に見せつけられて黙っていろと言うのか?」

マルフォス隊長は当て付けと言わんばかりにエアのスマートフォン

にある映像を送りつけた。エアはそのマルフォス隊長が送りつけてきた

スマートフォンの映像を確認しようとした。しかしすぐにまずは

マルフォス隊長の身の安全を最優先にしたかったので今は確認しなかった。

多分、自分もそのピエロ型宇宙人に襲われているレオナ・ポートマンの

映像を見てしまったらきっと自分も怒りと興奮で冷静で理性的な

判断を下せなくなるだろうと思っていた。まずはマルフォス隊長の身の安全を。

確保してから十分に確認できる。いずれはHCF保安部隊にも上層部にも

映像は送るかも知れない。その時、確認すればいい。

そう考えエアは彼には「映像を見ていない」とだけ伝えた。

「うっ!すまん!こんな時に変な映像を送っちまって!」

「気にするな!今取り乱すな!常に冷静でいるんだ!」

マルフォス隊長は自信なさげにこう返答した。

「そんなのは難しい」と。その声はとても重苦しかった。

それから彼が移動を始めた物音が聞こえるとエアはほっと一息ついた。

どうやらマルフォス隊長も冷静に判断し、その場からピエロ型宇宙人に

見付からない様に位置を変えようと移動しようとしているようだ。

それからしばらくマルフォス隊長は黙っていた。

なのでスピーカーから僅かな物音だけが聞こえ続けた。

またレオナ・ポートマンのあの喘ぐような声は荒々しく吐く息は止んで

微かにハアハアと息を静かに吐き続ける声が聞こえた。

ピエロ型宇宙人はなかなか姿を現さないマルフォス隊長に苛立ちを募らせた。

さらにピエロ型宇宙人達は激しく唸るような声と「探せ!」と言う号令が

何度も無線機のスピーカーから聞えてきた更にイライラが頂点に達したのか?

「ウガアアアアッ!」と言う野獣の吠え声も聞こえた。

他にも「どこだ!どこだ!人間!クンクン!クンクン!グゾオッ!」

「フーセン犬だ!フーセン犬を使え!」「見つけろおっ!」

間も無くしてキャンキャンと言う犬の鳴き声が聞こえて来た。

エアは自分が持っている無線機のスピーカーから犬の遠吠えが

聞こえて来ないかが気が気でならなかった。犬の遠吠えが聞こえたら

最後、マルフォス隊長はピエロ型宇宙人に見つかってしまい。

あっと言う間にピンク色の綿菓子の繭にされてしまうだろう。

そうなればもうエアも誰も救出するのか不可能になる。

エアは息を殺し、緊迫した表情でサーカスのテント型UFOのどこかを移動している

マルフォス隊長の「安全な場所に移動した」と言う報告を待っていた。

それからかなり長い時間が経過した。エアは何度もゴクリゴクリと喉を鳴らした。

既に額から汗が流れていた。また両手の無線機の持っている手が

僅かに汗で濡れていた。とにかく待つのがとてももどかしい。

ああーくそっ!マルフォス隊長!早く返事をしてくれ!俺の精神はかなり参りそうだ!

早く!早く!いや!ゆっくりでいい!あいつを急かすな!落ち着け!落ち着け!

エアはそう自分に言い聞かせながら辛抱強く長い間、ずっとマルフォス隊長の

サーカスのテント型UFOから脱出したと言う報告を待ち続けていた。

なかなか返事が無い。もしかして捕まったのか?いや!それは無い!何かあれば

彼の悲鳴なり、ビーム音なり、ピエロ型宇宙人の叫び声が聞こえる筈だ。

それに今は息を押し殺して移動しているマルフォス隊長の僅かな息遣いが聞こえた

のでその不安は消えた。よし!マルフォス隊長はまだ生きている!しかし問題はー。

彼が無事にサーカスのテント型のUFOの外へ脱出できるかである。

良し!直ぐにリー・マーラさんと保安部隊に連絡を!」

 

(第2章に続く)