(第25章)『死』を招き世界を破滅させる満月

(第25章)『死』を招き世界を破滅させる満月

 

『死』そのものを操る権利は一切無い!軽々しく口で『死ね』『殺す』と

言っただけで他人が軽く簡単に死なないのは『死』そのものを操れないからだ!

人間が『死』を手にしたら?どうなると思う?想像してみろ!」

ドラキュラ伯爵に詰め寄られクリスは歯を食いしばり黙り込んだ。

「恐ろしい未来が待っている。

嫌だ!みんな殺されちゃう!」とのぴは怯えた表情をした。

「若村秀和。彼は『死そのもの』と『神に等しき創造の力』を2つ手に入れたら。

旧人類とこちら側(バイオ)の世界は完全に消滅させた上で『楽園』の創造の為に

完全な単体生物として全ての人類はのぴを依り代にして合一化し。

彼が必要ない旧人類とこちら側(バイオ)の

世界を全て一掃させて浄化させるのだろう。」

「くそっ!まるでアルバート・ウェスカーとオズウェル・E・スペンサーのようだ!」

クリスは過去のアンブレラ社が目指していた彼らの愚行を思い出して怒りに駆られた。

「男性達は彼にとって必要無い存在のようだ。さらに選ばれた女性達は若村と合一し。

自分の信者の仲間は男女問わず合一させる。

残りの必要無い女性達は旧世界と共に消し去る気だな。

それも死神ホラー・タナトスから奪い取った『死』そのものの力でな。

クリストのぴとドラキュラ伯爵はもう調べ尽くしたので

『若村第2研究室』の裏口から出て行った。

3人は若村が指定した柳星張の宇宙にあるイリスオブジェクトのある

最深部の細長い通路に向かって進んで行った。それは下へ下へと降り続けた。

まるで若村秀和の心の最深部の彼自身の

潜在意識に向かって先へ先へ進んで行くように。

ドラキュラ伯爵は道中、独り言のようにこうつぶやいた。

「さてと。こちら側(バイオ)の世界を愛しいジルがいる世界の未来はどうなるか?

現実(リアル)は???若村秀和が進める人類補完計画による

全ての旧人類の穢れを滅ぼし、永遠の平穏と安寧の魂の安らぐ楽園にして神の国か?

あるいは太陽神テスカトリポカが進める

善悪に囚われる事の無い弱肉強食の世界の中より

強い個体のSHB(サイレントヒルベイビー)を旧人類の若い女性達の子宮で産ませて

弱い旧人類と人間社会を滅ぼし。強い母親になった旧人類の女性とSHB

サイレントヒルベイビー)と多数の神々と堕天使と悪魔を従えて

次の世界に進化した混沌の楽園か?それとも私達のような元の神々や悪魔に支配されず

今まで通りの人間のメディア社会と旧人類が暮らす楽園では無い

仲間と暮らす普通の中にある中庸か?・・・・・・・・・・・・・。

だが太陽神テスカトリポカは本当に更なる大きな混沌を目指しているのだろうか?

果たして?彼女は何を望んでいるのだろう?」

ドラキュラ伯爵はそうつぶやきつつも彼女の大いなる計画に思いを馳せた。

しかしそんな真剣な表情のクリスと太陽神テスカトリポカの大いなる計画に思いを

馳せていたドラキュラ伯爵の隣で突然のぴは急に眼球とこめかみと

額に針で刺されたような鋭い痛みを覚えた。

「痛っ!痛っ!」と思わずのぴは大声を上げていた。

続けてのぴは両手で眼頭や額やこめかみを押さえて身体を曲げた。

彼女はとうとうその場にうずくまってしまった。

「おい!大丈夫か?」とクリスはのぴに大声で呼びかけた。

しかしのぴの耳には何故か遠くで聞えているように感じた。

やがて何も聞こえなくなった。

同時にのぴの視界は真っ白になり何も見えなくなった。

続けて脳内に無数の脳神経のシナプスの複雑に絡んだ迷路が見えた。

それはまるで森の奥深くに進むように彼女の意識は潜り込むようかのように。

とにかくひたすら下へ下へ下へと下へと進むのを感じ続けだ。

やがて真っ白な光に包まれた。同時にある映像が再生させた。

そこにはお城と城下町のある広い広場だった。

ここは?東のミカド国?いやだ!あたしどうして?

ここの国の名前を知っているんだろう???こわい!!!こわい!!

更に大量の武器や衣服が転がっていた。しかも石畳の床に散らばるように。

そこは何者かに捕食されてまるで溶けたかのように。

大人も子供も男性も女性も全て。

さらにミカド城の頂上にクリオネとドラゴンを合体させたような巨大生物がいた。

そのクリオネとドラゴンを合体させたような

合成生物から強力な電磁信号が発信された。

続けて電気信号は城や城下町の各地に配置された謎の物体とも連携して同じように

電気信号を放っていた。謎の物体群はよく見ると全て10mの高さがあり。

細長く紫色に輝く4対の捻じれたDNA構造を模倣したような

四樹螺旋の形をしているのに気付いた。

しかものぴはそれが無数のミカド国に住む国民の全ての女性を素体に

何らかの方法で両腕と両脚と両手足が変化したものだと理解した。

さらに全体側面には旧魔戒文字が彫られているのが見えた。

しかも何故かのぴはその内容も意味も殆どただの人間には

読めないのにも関わらず完全に理解していた。

その事実に彼女は未知の恐怖を感じた。

のぴは悲鳴も言葉も出せずにただただ唇と全身を震わせていた。

そしてクリオネとドラゴンを合成させたような巨大生物と謎の物体群は周囲に

強力な魔力の場と磁場を発生させてまるで掃除機のように無数の天使軍や

生き残った僅かなミカド国の人々を吸い込んで魂と霊体と肉体を全て一つにして

集束して行った。やがて青く輝く満月の形をした『宇宙の卵』を完成させた。

それはまるでさもそこにあったかのように空高く浮いていた。

そして城の内部も城下町も『死』の沈黙が続いた。

もはやそこに網物も。昆虫も。植物も。誰もいなくなっていた。

更にのぴの視界は今度は青く輝く背景に包まれた。

同時に目の前に唐突に何かが現れた。

それはさっきの巨大な青く輝く満月の形をした『宇宙の卵』が三角形に並んでいた。

しかも約20体まで群れていた。

下部からは青く輝く無数の細長い触手が伸びていて先端は6対の

細長い青く輝く触手が生えていた。

しかも何かを話していた。

「宇宙ヘ来ル君ノオカゲデ我々ハ全員目覚メタ!目覚メタガ腹ガ空イタ!

我々ヲ東ノミカド国ノ他二モアラユル並行世界(パラレルワールド)ヘ!

連レテ行クノダ!我々ヲ完全二スルノダ!!」

そこですぐはのぴは我に返ると複雑に絡んだ迷路を抜けた。

「わっ!はあはあはあはあはあ!何だったの?今の映像??

みんな一つになって月になっちゃった!!」

のぴは唇と全身を震わせながらクリスとドラキュラ伯爵に説明した。

クリスとドラキュラ伯爵はお互い顔を見合わせた。

最終的にクリスとドラキュラ伯爵はのぴの見た幻視は一時的な

精神的疲れと結論付けられた。それにのぴは不満な表情をした。

 

再び生と死の境界の三途の川頂上決戦。

あの『静かなる丘・サイレントヒル』の教会の屋上の裏世界から

ヨグ・ソトホースが放った七色に輝く美しい矢が死神ホラー・タナトスの胸部に

あるのぴを閉じ込めていたパチンコ玉のコア(核)に突き刺さり。

すーつとそこで消えた後。しばらく一分程、経過していた。

やがて死神ホラー・タナトスは苦しそうにまるで獣のように長々と吠え続けた。

「ぐおおおおおおおおおおおおっ!なんだあっ?腹がッ!苦しいイッ!」

やがて下腹部がバアン!と大きく破裂した。

周囲にオレンジ色と黒の筋肉質な下腹部が弾け飛んだ。

そして周囲にオレンジ色と黒の細胞片を巻き散らかした。

その穴から黒き月と呼ばれる巨大な黒みを帯びた

紫色の月のような物体が飛び出してきた。

同時に死神ホラー・タナトスは本来の死神の力さえも徐々に失って行った。

続けて彼女にとって最悪な事に『リビドー形態』から退化してしまい。

素体の『デストルド第1形態』に逆戻りしてしまった。

その逆戻りはまるでビデオの早回しを見ているようにあっと言う間だった。

そして頭部に輝く真っ赤な二重の天使の輪もすーつと死神ホラー・タナトス

頭上から消えた。もはや両性両具の神では

無くただの魔獣ホラーの一体に成り下がった。

今の死神ホラー・タナトスの姿は最初と同じデストルド形態だった。

「ぐあああっ!くそっ!何故だ?たかが人間如きにッ!人間如きにッ!死神!

両性両具の神となる筈の我がッ!我がああっ!私の子宮がッ!まさか!

我が死神!いや!両性両具の神でありメシアの唇からただの!いや!

下級の魔獣ホラーに堕とされるなんて!!ふざけるなあああっ!!

許さん!許さんぞオオオオオッ!人間めええええええっ!

ぐおおおおおおおおん!がああああああっ!」

それを見ていたスティーブンもピアーズも驚いた表情をしていた。

するとすぐにスティーブンが阿門法師に大慌てて当初の計画の確認をした。

「おいおい!計画が?早過ぎないか?あの黒き月とのぴは同時に出てくる筈だろ?

何で黒き月だけ!あいつから出てきたんだよ!!」

すると阿門法師は大慌てしているスティーブンとは反対に冷静にこう答えた。

「ほう。間違いないのう!若村秀和の仕業じゃ!

予想外の事をしでかしたようじゃな!」

そこの轟天に乗った大河がスティーブンと阿門法師の横から現れた。

「まあ世の中そううまくは行かんと言う事だ。

時には予想外の事も起きる。死神ホラー・タナトスも太陽神テスカトリポカも

天魔ヴァルティエルの連中にはいい薬だな。」

「いや!それはそうだが?この後の俺達の計画はどうなんだよ?」

ティーブンは鋭く大河と阿門法師に突っ込みを入れた。

一方、死神ホラー・タナトスの下腹部から飛び出した黒き月は

そのまま生と死の境界の三途の川の青空の浮き上がった。

黒き月はまるで現実(リアル)の満月のように静止して浮き続けた。

のぴは未だに死神ホラー・タナトスのコア(核)の中に閉じ込められていた。

大河と阿門法師は恐ろしくマイペースに「さて?どうしたものか?」と呟いた。

現在の死神ホラー・タナトスは『デストルド形態』で神の力の一部を失った。

正確には若村秀和に奪い取られたと言うのが正しいのだろう。その姿形は。

頭部は牛のような形をしていて頭から2対の昆虫の触角に似た角が生えていた。

上部は赤色で下部からは美しい緑色をしていた。

さらに4対の青い冷めた輝きを放つ眼を左右に三角形に3つ固まって開いていた。

その目は怒りに満ちていた。両腕は真っ赤な筋肉に覆われて肘の下部から

上腕筋辺りの4対の真っ赤に輝く翼の形をした鋭利なカッターが生えていた。

更に両脚は太く分厚い真っ赤な筋肉に覆われて、まるで恐竜のような脚をしていた。

両膝に緑色の羽根を生やしており。両足は3対の細長い緑色の爪が生えていた。

頭部の顎からまた黄色の角を生やし、両頬から2対の細長い

角のエラの突起物を生やした。

その見た目は超巨大な昆虫のような姿になっていた。

彼女は激昂していた。

彼女は荒々しく砂浜の地面を踏みしめて。

地響きを立てて歩き出し、大声で怒号を上げた。

「決して!許さぬ!もういいっ!楽園の扉を開くなど知った事かっ!!この我!!

いや!メシア一族の仇なすような人間共は全員!我が血を吸い尽くし!

絶滅させてやる!!もう魂は必要ないわ!!」と。

怒り狂う死神ホラー・タナトスは全ての人類を捕食し尽くして滅すべく地上の現世

(こちら側・バイオの世界)へ向かうべく両足を砂浜から浮かせて上空へ飛行した。

しかしそれを逃さず轟天に乗った大河は馬を走らせて砂浜を強く金色のヒズメで

踏みしめて大きく再び飛翔した。大河は両手に牙浪斬馬剣を構えた。

大河が野太い雄叫びを上げた。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

死神ホラー・タナトスの背中に追いつくと背中を背骨からバッサリと切り裂いた。

同時に死神ホラー・タナトスの背中に金色の細長い切れ目が現れた。

彼女は背中の激痛で絶叫し、墜落した。

そしてドスン!と砂柱を上げて着地した。

「ぐおっ!おのれええええええっ!黄金騎士!クソっ!

力が足りぬ!!貴様らハガネ共の魂を貰うぞ!!」

そう叫ぶと彼女は全身から赤い光を放った。すると赤い光を受けた

自身の身体の一部から模倣されたハンターγ(ガンマ)は活性化した。

さらに動きも素早くなり、攻撃力も高まった。同時に彼ら大群は積極的に

他のハガネの魂を捕食しようと丸呑みの為に大口を開けて次々と襲い掛かった。

しかしすでに大河やピアーズ、スティーブン、阿門法師や

他の大勢のハガネの騎士達の協力により天文学的な数に昇っていた

ハンターγ(ガンマ)は半数以上が斬られて消滅していた。

個体も3万体と残り僅かだったがここにきて彼らは更に凶暴化してしまい。

半数以上までハンターγ(ガンマ)に魂を喰われて消失した

ハガネの騎士達は追い打ちをかけられ苦戦を強いられた。

最初はそこまで強くなく数の暴力と言う感じだったがここで一気に

残り3万体が強敵となり一気に追い詰められた形となった。

そして最初は五分五分の闘いだったものが一気に形勢が逆転してしまい。

死神ホラー・タナトスの細胞の一部から複製された2種類の

ハンターγ(ガンマ)達の一方的な即死攻撃によって

2万人まで減ったハガネの騎士と大河達の軍は次第に劣勢になって行った。

現在、死神ホラー・タナトスの細胞の一部から複製された

2種類のハンターγ(ガンマ)の数は3万体。

対してハガネの騎士(大河、阿門法師、ピアーズ、スティーブンも含めて)

約2万人と数の時点で不利にな状態だった。しかもさらにハガネの騎士達は

次々と2種類のハンターγ(ガンマ)の大口により、頭から丸呑みにされて

魂も消化されて捕食されて行った。魂は消滅したのでもう転生は出来ないだろう。

ピアーズ、スティーブン、大河、阿門法師の周囲では狂暴化した死神ホラー・タナトス

の身体の一部で構成された2体のハンターγ(ガンマ)は次々と少なくなって来たハガネの騎士達の魂とアストラル体を飲み込むべく容赦なく執拗に襲い掛かっていた。

最初のハンターγ(ガンマ)の個体は『アルビノガンマ』と

BSAAやブルーアンブレラでは呼ばれていた個体である。

最も体色は真っ赤に輝いているが。

この『アルビノガンマ』は全身が真っ赤な体色は勿論。

両生類らしいぬめりとしたオレンジ色のイボで覆われていた。

前足は小さく退化しており、鋭利な牙とオタマジャクシに

類似した尾ひれを持っていた。

それはどこか凶悪に見えた。

続けて通常のハンターγ(ガンマ)は丸っこいフォルムに

全く歯の無い巨大な口に真っ赤に輝く体色。

また両手には刃物のように鋭い水かきの付いた両手を持ち。

こちらは2足歩行で素早く移動していた。こちらは完全にカエルの姿をしていた。

アルビノガンマ』はオタマジャクシ人間。

『通常のハンターγ(ガンマ)』はカエル人間で区別がつくのである。

そして通常のハンターγ(ガンマ)は鋭い爪と刃物のような鉤爪で次々と

ハガネの騎士の身体と鎧諸共切り裂き続け、弱ったところで大口を開けて

積極的に頭から大口で噛みつき、軽々と頭を持ち上げた。

そして次々とズルッ!とハガネの騎士達の鎧を着た思い身体を持ち上げて

両脚をバタバタさせている抵抗するハガネの騎士達を

丸呑みにして魂を消化して養分となった。

これにより魂は消滅し2度と転生できなくなった。

アルビノガンマもハガネの騎士に襲い掛かった。

アルビノガンマは口を大きく開けると口内に収容された第二の顎を露出させた。

しかも分厚いマジニ似た食虫植物を思わせる

太く長い第2の顎を花弁状に大きく開いた。

そして自分の近くに立っていて油断していたハガネの騎士達の胴体に

4対の太い第2の顎を巻き付かせるとそのまま一気に締め上げた。

「うがああっ!」「ぎゃああっ!」と次々と悲鳴が聞こえた。

ハガネの騎士達の胴体はバキッ!と背骨が折れる音と共に綺麗に

まるで椅子を折りたたまれてコンパクトにされた。

そのあとすぐにバクッ!と口を閉じて丸呑みにした。

そして魂を消化して次々とハガネの騎士達も

2度と転生できぬように自らの養分とした。

こうして次々と残りのハガネの騎士達も数も一方的に減って行った。

それはもはやどの位、経ったのか分からなかった。

 

(第26章に続く)