(第5章)覇王の人気と低迷

(第5章)覇王の人気と低迷

覇王が地球防衛軍に入隊してからわずか1日足らず
でその噂は周りの女性オペレーター達の間に広がった。
「イケメンだわ!!」とか「カッコイイ!!」
とかの理由で覇王は爆発的な人気を呼び、次々とファンレターやラブレターが
届いた。覇王は何が何だか訳が分からずかなり困っていた。
数百通のファンレターの中にラブレターが入っていたのだからややこしくて仕方ない。
彼はファンレターとラブレターの区別がつかず、

とにかく几帳面なのでファイルに何冊かまとめしまってあるが、

それがかなりの量になり、ダンボール箱やごみ袋ににまでファイルを

きれいに並べて突っ込んでいった。

尾崎は皮肉交じりに「よかったね」と言った。

まだあの時のことを根に持っているらしい。
覇王はラブレターやファンレターを書く女性たちの気持ちやファンレターや

ラブレターの意味すら全くわからないので一通の返事も書かない始末だった。

彼が寮の中を歩くと女性たちが集まってくるのだが…
ちやほやされると「ウルサイ!!」と怒鳴りつけたり、
「俺はお前たちの心が全く分らん!!」とイライラしたように言うのだった。
その為に何人もの女性が傷付き、とうとう一気にブームは冷めてしまい
彼の事を「酷い男!!」と罵るようになった。さらに平手打ちまで食らう始末だった。
が覇王は「勝手にしろ!!」と冷たく突き放した。
人気の的は再び尾崎に戻った。どうやら覇王が来る前、尾崎はモテモテだったが
彼が来てから女性ファンを取られて、かなりショックだったらしい。
尾崎は再び人気が上がり喜んでいたが、それを全く喜べない女性が一人だけいた。
音無美雪だった。
何故か不機嫌になるのだった。
それから翌朝、尾崎とゴードン大佐は仮設研究所の

テレビでデモ行進の様子を見ていた。
実はこの仮設研究所はガイガンがⅩ星人により復活した時に
以前の研究所が破壊されたため、

代わりに仮設住宅に研究用機材を持ち込んだのである。
ここでは、以前に研究所の住人だった

新宮時一八郎博士と共に、M塩基により怪獣達が二度と
コントロールされない方法を研究されている。
前作を見ていない読者達には良くわからないかも

しれないので説明しておかねばなるまい。
M塩基はX星人という宇宙人が住むX星でありふれた物質である。
普通の人間にはアデニン、グアニン,シトシン、チミンの

4つの塩基しかないがⅩ星人や、「ミュータント」と呼ばれる

人間とX星人のハーフにはもう一つ未知の塩基がある。
それがM塩基である。

これはテレパシー能力に影響を及ぼし、同じM塩基を持つ怪獣や
ミュータント達を意のままにコントロールできる。

さらにこれを持っていると普通の人間の何倍もの身体能力を持つが、

その中から何万分の一の確率で誕生するカイザーと呼ばれる者は

全ての生物を支配し、ミュータントもX星人も超える力を持っている。
前作でX星人の統制官はカイザーだったが、

同じカイザーの尾崎真一との戦いに敗れ去っている。
さて、大体わかったところで話を元に戻そう。
尾崎は「荒れているね……」とつぶやきながらテレビを眺めた。
そこへ美雪と覇王、神宮寺博士が入ってきた。
ゴジララドンについて意外な関係があった」と神宮寺博士が言った。
ゴードン大佐は「一体どんな関係が!!」と聞いた。
神宮寺博士は
ラドンが過去にゴジラそっくりの鳴き声を上げたという報告があったのを受けて、

長年ゴジララドンの関係性について調査していた。

そして最新のDNA鑑定の結果、ラドンゴジラのDNAが一致した。」
尾崎は「えーっ」と驚きの声を上げた。
神宮寺博士は、壁にもたれ掛けてゲーテの小説

ファウスト」を読んでいた覇王に向かって
「M塩基の謎が分かるのはまだ時間がかかるが…ただ分かったことがある。
君の身体から検出された未知の塩基はX星人が予測できないような突然変異
を引き起こしている。またゴジララドンのDNAから全く別の
謎の遺伝子が見つかっている。それはどの地球の生物にも一致しない。
恐らく地球外のものだ!!つまりゴジラのような同族が地球外にもいるらしい……。
また放射熱線は水爆実験の影響で得られた能力だと思われたが、

どうやら元々の能力だったらしい」
その後、謎の生物の化石が中国の森で発見された。
調査した結果これがバガンと呼ばれる宇宙怪獣であることが判明した。
そして化石からもゴジララドンに共通する遺伝子が発見された。
再び東京仮設研究所ではM塩基について尾崎真一と

神宮寺博士、美雪、覇王、ダグラスゴードン大佐が話していた。
美雪が疲れたように
「最近!!ガイガンと頭部とチェーンソーの

サンプルを調べなくちゃいけなくて頭痛いの!
だから絶対邪魔しないでね!!」
と言っているそばで覇王が勝手に報告書をあさっては読んでいた。
美雪は「勝手に触らないで!!」
と怒鳴りつけるとさらにこう言った。
「そういえばハッキリと言って無かったわね!!」
覇王は小馬鹿にしたように
「何だ!!ヨボヨボで頭ガチガチの学者の女を好きで見たかないね!!」
美雪は怒って「失礼ね!!」と言った。
さらに覇王は
「モデル気取りのつもりか?たいそうな言い草だな!!なっ!!尾崎!!」
と尾崎の肩をポンと叩いた。
ゴードン大佐は「やれやれ…」呆れたように手を振った。
美雪は尾崎を睨みつけた。
尾崎は首を振って
「違う!!そこまで言っていない!!」と言った。
さらに覇王は
「俺も言っておこう。俺が考え事をしている時や仕事中に俺に話しかけるな!!

ついでに俺の質問だけ答えろ!!

それと用がある時以外は俺と目を合わせるな!!自分の仕事に集中しろ!!

それから怪しい手紙やメールを送り付けない事だ!!分かったか!!」
美雪は「私のセリフをパクらないで!!」
覇王は「フン!!俺の知ったことか!!」
と怒鳴ると研究所をあとにしょうとした。
しかし突然「待って!!」と声がした。
覇王は振り向いて「何か言ったか」
と聞いた。尾崎は「何にも」と言った。
覇王が「テレパシーか?」
とつぶやいた。
途端に研究所が回転し,いつの間にか島の洞窟に変わっていた。
覇王は「ここは?」
すると「ここはインファント島です。」
と声がした。小美人が現れた。

(第6章に続く)