(第41章)神と悪魔

こんにちは床屋帰りの畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第41章)神と悪魔

真鶴の避難所では周りの子供達は沙羅が
言い掛けた事を聞こうと聞き耳を立てていた。
沙羅は少し恥ずかしそうに
「悪い人達がね!……ゴジラの家を壊したからだよ!」
と言うと抹殺派の人々を睨みつけた。
そして沙羅は
「あんな大人のせいでゴジラは辛い目に合っているのに!」
と言った途端母親が怒鳴った。
「私達の気持も知らない癖に!偉そうな口を利かないでよ!」
沙羅は
「それじゃ!どうして仲良くしないの?
自分勝手に命を軽く奪おうとするの?」
と怒り出した。
母親はまた
「何にもわからない癖に出しゃばらないで!」
と大声で怒鳴ったが沙羅はひるむこと無く
「何よ!そうやって怪獣の気持ちも分からないんじゃ人の気持ちだって分かりっこないよ!」
と反論した。するとさっき母親の手を振りほどいた子供が
「そうだよ!」
と言った。
母親はますます怒り始めた。
モスラとケーニッヒは互いに空中でせめぎ合いながらも、ケーニッヒは小馬鹿に
したような笑みを浮かべモスラに向かって
「地球全体の調和を目指し、地球全ての生物を守ると言うのは一向に分からない
が、ただ、どう考える?この地球住む人間界の有り様を?人間と言う、この世の
小さな神様は、昔からずっと同じ性質で天地創造以来奇妙な事をやり続けている。
いっそあいつらに天の光の照り返しが無かったなら、あいつらも、もう少しま
しな暮らしが出来たかも知れぬ!あいつらはその照り返しを理性と呼んで、どん
なケダモノよりもケダモノらしく振舞う為にその理性を利用している!この人間
という奴は、いつも飛んだり跳ねたりしているが、たちまち草やビルの中に潜っ
て昔ながらの歌を歌う肢の長いバッタの様に思われてならない。おとなしくして
りゃまだしもだが、溝さえ見つかりゃすぐに鼻を突っ込みやがる!」
モスラは静かに
「言う事はそれだけかしら?この地球の人間は永久に気に入らないとでも?
それともあたしに愚痴を言いに出て来たのかしら?」
と更に凄んだ。
ケーニッヒは
「仰せの通り、相も変わらず全然気に入らんな。どこかで同じ事を話した気がするが……
ともかく、月に封印されてからあんたとゴジラ族に怨みがあることは確かだ!」
と返した。
その時ケーニッヒの脳裏に
「違う!」
と言う声が聞こえた。
ケーニッヒは
「何だと?」
とモンスター語でつぶやいた。その瞬間であった。
モスラはあらん限りの力を込めて炎を身に纏いケーニッヒの腹に攻撃を仕掛けた。
ケーニッヒはバリアを張らず、腹に直撃し大爆発した。
しばらくして黒い煙の中からケーニッヒの身体が見えた。
モスラの身体はケーニッヒの腹にめり込んでいたが、
ケーニッヒはたじろぎもせず全く動じもしなかった。
そしてケーニッヒの両目が再び、炎の様に真っ赤に光り、突然、
全身が炎に包まれたかと思うと消失した。
モスラは混乱した様に周りを見渡していたが、やがて別方向からトラックに撥ね
られた様な激しい衝撃が来ると共に大爆発を起こし地面に墜落した。
轟天号ではアヤノが
「これは?モスラのファイヤーヒートアタック?」
尾崎は
「強い……今まで出会った怪獣より遥かに強いぞ!」
ジェレルが
モスラの技をコピーした様です!」
アヤノが
「でも……どうやって?」
ケーニッヒは地上に降り立つと、フラフラになって今にも倒れそうなゴジラに向
かって殺気の目で睨みつけた。ゴジラもすかさず睨み返し、背びれが赤く発光し
たかと思うとクルリと一回転してこれまでで一番強力な赤い放射熱線を放った。
それは再びケ-ニッヒに直撃した。
しかしケーニッヒギドラは身体を張ってゴジラの赤い熱線を凌いでいたのだった。
しかも爆発すらしてもいない。
どういう事なのか?
それはゴジラモスラに対する挑戦なのか?
ケーニッヒの両眼が今度は赤からオレンジ色に変わり、
400mの巨大な翼が不気味に赤く輝いた。
まさか?ケーニッヒは口から赤い放射熱線を放った。
ゴジラはそれを避けようとした。
しかし赤い放射熱線は的確にゴジラの顔面を捉えていた。
強烈な爆音と共に大爆発を起こし、爆風で周りの建物や地面は吹き飛び、
今まで放ったどんな光線よりも遥かに巨大なクレーターが形成された。
轟天号はその爆風に煽られ、バランスを失い墜落しそうになったが、
なんとか持ちこたえた。
ゴードン大佐は
「皆!大丈夫か?」
と呼びかけた。
皆が「無事」だと答えた。尾崎はどこかに頭をぶつけたらしく頭から流血していたが、
やがてカイザーの力で再生した。
ジェレルが口を開き
「分かりました!奴は相手の攻撃の爆発エネルギーを全て吸収して、
その爆発エネルギーを増幅させて跳ね返すのが技のコピーになるものと思われます!
これもバリアの一種です!」
と説明した。
ケーニッヒは静かに倒れているゴジラモスラの目の前に堂々と降り立つと、
無造作に近くのビルの小さな破片を掴み、それをまるでコインの様に「ピーン!」
と空高く弾き、その破片を「パシッ!」と掴む動作を何度も繰り返しながら静か
にモンスター語で
「お前達に反撃のチャンスをやろう!一番結構なのはふっくらとみずみずしい頬
っぺただ!朽ち果てた死骸には用は無いんでね!
猫に死んだネズミと同じ理屈でね!」
と言った。

(第42章に続く)