(第32章)さらば暗闇よ!凛の決意!

(第32章)さらば暗闇よ!凛の決意!

轟天号内では尾崎とゴードン大佐が言い争いをしていた。
ゴードン大佐は
「俺は軍人だ!死ぬ覚悟は出来ている!」
と顔を真っ赤にして怒鳴っていた。
すると尾崎が
「でも!冷凍兵器も通用しない相手とどう戦えと言うんですか?」
と怒鳴りつけた。そしてジェレルが
「そうです!彼の言う通りです!一時撤退します!」
と言った。ゴードン大佐は
「艦長は私だぞ!ジェレル!」
とすごい剣幕で怒鳴りつけた。
すると一緒に乗っていた副艦長の室井少佐と熊坂が2人の間に割って入った。
「ここで犬死してもいいのか?!それでいいのか??」
と熊坂が、
デストロイアゴジラに対抗できる兵器は僅かしかないんだぞ!」
と室井少佐が必至にゴードン大佐に訴えた。
ゴードン大佐はとうとう
「勝手にしろ!」
と怒鳴った。
尾崎は画面に視線を戻しながら
「よし!冷凍兵器の全てを集中させて、奴の気を逸らすぞ!」
ジェレルは
「了解!」
と言うと冷凍兵器の全てをデストロイアに集中させた。
デストロイアは動じる事無くミクロオキシゲンで反撃して来た。
轟天号はひたすらバックしてその場を離れようとした。
執拗に攻撃を続けるデストロイアはやがて興味を失ったようにクルリと方向を変えて、
再び光の柱に向かって攻撃を始めた。
尾崎は
「どうしたんだ……何故?追ってこないんだ?」
ニックは
「邪魔な俺達を追い払っただけなのか?」
グレンは
「あいつの獲物はあくまでも光の柱に中にいるゴジラとジュニアか?」
凛はまだ暗闇の中にいた。東京湾の海底で芹沢博士が自ら命綱のロープをナイフ
で切断し、初代ゴジラと共に消失した。
凛は
「人類を守る為に…自らの命をどうしてあんな奴のために命を!」
と信じられない様に言った。
場面がどこかの山奥の映像に変わった。断崖絶壁の先端にCCIの人達が美雪を
追い詰めいる様子が映された。
追い詰められた美雪は
「自分の子供が兵器に使われるくらいなら……ここでいっそ!」
凛は
「ママ!駄目!」
と絶叫した。
しかし美雪は断崖から身を投げて海へ落下した。
凛は
「そんな……ママ!……どうして??」と泣きながらつぶやいた。
凛は真っ暗やみの中から母親の美雪が断崖から身を投げ、
そして美雪の身体が海に沈んで行く様子を呆然と眺めていた。
かすかな声が美雪と凛の耳に聞こえた。
その声は威厳のある声で
「生きろ!それが運命だ!」
と語った。美雪と凛は真っ暗やみの中で
「誰?」とつぶやいた。
さらに同じ声がして
「仲間を死なせるな!ここで散る運命では無い!!」
「何故死のうとする?意味が分からない」
とも聞こえた。凛が目を向けると尾崎から貰った十字架のインファント島のお守りが発光した。
凛は悟った様に
「まさか??本当にゴジラがあたしとママの命を助けたの??」
と驚きを隠せない様子で言った。凛は
「あんな憎い人殺しの怪獣が?どうして?これも運命なの?」
しかし凛は
「駄目……出来ない……私に巫女なんて無理よ!……でもジュニアが助けを求め
ている……それに芹沢博士の因縁を断ち切れって!!あたしにどうすればいいの?」
と言うと泣き出しそうになった。
すると凛の脳裏に、地球防衛軍の特殊生物病院でベッドに横たわる友紀と山岸が
浮かんだ。また、その周りで一人また一人と無残にデストロイアにより
身体が液体化する様子が映し出され、凛は悲鳴を上げた。

それでも医師や看護婦は恐怖と不安で張り裂けそうな精神を押さえつけながら、
懸命にその患者達を救おうと奮闘していた。

さらに場面が変わり、多くの友達を殺された山岸や友紀それぞれの泣き顔が一瞬見えた。
凛はの胸にはあの時の何度も感じたデストロイアに対する悲しみと憤りが同時に湧き上がるのを感じた。
とうとう凛は決心した。

デストロイアのせいで!もうこれ以上大勢の人々の涙をまた見たくない!
もう我慢の限界だわ!デストロイア!あんた達だけは絶対に許さない!!だから……
友紀ちゃん!山岸君!ママ!パパ!優香さん!健太郎さん!ちゃんと最後まで見ていて下さい!!
運命を受け入れたあたしの戦いを!!そしてジュニアあなたと一つになって!」
やがて真っ暗やみの中にいる凛の意識に眩しい光が差し込んだ。
デストロイアが光の柱に向かってミクロオキシゲンを吐こうとした時、地面が激しく揺れ出した。
やがて黄金の光は消失した。高層ビルの瓦礫から、背びれが植物が芽を出す様に
生えて来た。やがて瓦礫の山に少しずつクモの巣状に「ガリガリガリ!」と音を
立ててヒビが入り始めた。

(第33章に続く)