(第36章)盗まれたファイル

おはようございます。
畑内です。
ゴジラの自作小説を載せます。

(第36章)盗まれたファイル

 CCI・真鶴特殊生物研究所の金田トオルの部屋に
「コンコン!」とドアを叩く音が聞こえたので、トオルはパソコンのスイッチを切り、
椅子から立ち上がると2人の男性を迎え入れた。
トオルは驚いた顔で
「あれ?今日はどうしたんですか?」
と2人の男性に尋ねた。
するとアメリカ人の男性が口を開き
「お久しぶりです!確か5年ぶりですね!」
と笑顔でトオルと握手を交わした。そのアメリカ人はこれまで5年間、
ゴジラ細胞を利用したテロ事件や怪奇現象、宇宙人、
UFOの独自調査を行ってきた元FBIの凄腕の捜査官だった。
 もう一人はロシア人で、女性型宇宙人の『ノスフェラトゥ』絡みの殺人事件と、
3年前に起こった北海道の網走厚生病院テロ事件の調査をしていたガーニャこと、
ガブリーラ=キルバスキーである。
 トオルは2人の男を部屋のソファーに座らせるとお茶を用意しようとした。
しかしガーニャは慌ててロシア語で
「いや!いいですよ!話はすぐに終わりますから!」
と遠慮した。
「そうですか?それで!例の件ですか?」
と金田トオル
「はい!アメリカの国防総省に保管されていた950の事件ファイルの内、
ゴジラや怪獣に関する4つのファイルが盗まれた件で……少し話を!」
と元FBIの捜査官は幾分声を潜ませ言ったので、金田トオル
「分りました!実はペンタゴン国防総省によれば、
ファイルを盗んだ犯人は他の事件には目もくれずに、
ゴジラや怪獣に関係した事件ファイルだけ抜き取ったらしいですよ」
手を合わせ考え込んでいたガーニャは
「やっぱりノスフェラトゥの仕業だろうか?」
「あるいは地球人のテログル―プが関与しているかですね……」
と金田トオルは腕組みして考え込んだ。

 アメリカ・アパラチア山脈の山中に新設されたアルカドラン
ヘリポートに2機のヘリコプターが着陸した。
 その一機から北村とローランドが、もう一機のヘリから2人
の屈強な男に羽交い絞めにされたマークが降りて来た。
北村はアルカドランのヘリポートを歩いている最中に
「このままでは……我々やミュータントや、家畜である地球人達の命も危ない!」
それからローランドも
「統制官の大規模な空爆計画は間違ってる!あれじゃ単なる大虐殺だ!」
「私もそう思う……だから!それを止める為に……」
「しかし……あの抗生物質の『タブリス』は副作用がある!」
「それでも命が助かれば……」
「確かに……」
「そう言えば?マークの引き継ぎは君でしたっけ?」
「『プロテウス』ですか?」
「はい!私です!」
「それでは?今後はどう進めていますか?」
とカードを使いドアが開いた施設に入りながら答えた。

 『特殊生物犯罪調査部』の凛の部屋で凛が洋子の電話を受けた後、
水着女性の写真集を真剣な顔で見ながら蓮が入って来た。
凛は蓮の顔とその写真集とを見比べながら不満そうな顔をして
「ちょっと!ノック位してよ!」
「スマン!実は洋子から電話で聞いたが、おかしな話をする爺さんにストーキング
されたとか言っていたのを聞いて!
俺も気になって!今少しこちらで調べて見たら、
その爺さんはもう警視庁にいるらしい……くだらん話なのか、それとも?」
「分ったわ!あたしが警視庁に行って!そのお爺さんに話を聞いてくる!」
「やめとけ!次はお前が付きまとわれるぞ!」
「いいわよ!ちょっと気になる話も洋子ちゃんから聞いたから……」
と言うと手帳を持ち、ドアを開けて部屋を出た。
 その後ろ姿を蓮は少し呆れた表情で見送った。

 自宅で洋子は慌ただしく自分のプロレスの衣装や台詞など、色々準備を始めていた。
 洋子が凛との電話に出ていた間、蓮の妹の瑠璃は花壇の珍しい花に
「ち~いさい~たま~つぶ~から~大きくな~った♪♪不思議なは~な♪♪」
と上手に歌いながらじょうろで満遍なくその不思議な花に水をあげていた。
 その花は七色のクリスタル状の花びらをしていて、茎や葉も青黒いクリスタル状の形をしていた。
また時折、黄金色に発光した。
 洋子はその青黒い花にチラッと目をやると、
机に置いてあったリモコンを持ち、テレビの電源を付けた。
 サイエンス番組で特集が放送されていた。
 JBSキャスターでコメンテーターの山根優香が、
スタジオに設置された巨大なスクリーンを指さした。
「歪み始めた生命」と題された文字が見えた。
 さらにその下部には神宮寺博士の「歪み始めた生命」
についての意見が視聴者に分りやすく簡潔に書かれていた。
 ゲストに招かれた国連の分子生物学者は
「生命の歪みの主な原因は、我々人類が作り出した数多くの化学物質と
地球温暖化が考えられると神宮寺博士は説明しています!」
「例えば?どんな化学物質でしようか?」
とすかさず優香は質問した。
 その時、近所で拾った花壇の植物に水をやり終えた瑠璃が
TVのサイエンス番組をボーっと見ていた洋子のシャツの裾を引っ張り、
「ねーっ!悲しいカエル男さんの話!見ていい?」
彼女はテレビから瑠璃の顔に視線を移し
「えっ?また見るの?」
と聞いた。
 瑠璃は元気良く頷いた。

(第37章に続く)

では♪♪