(第47章)ジョアン=ハスチネイロ

こんにちは畑内です。
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(第47章)ジョアン=ハスチネイロ

 アメリカ・メリーランド州ボルチモア市の高層ビルで
樟運佑斑聾気侶抓韻燭舛鯆匹なГ辰晋紂凛は友紀と話をしていた。
凛は友紀の黒く裾の長いドレスを見て
「豪華なドレスね!」
「結構すごいでしょ?」
「さすが社長ね!」
「そんな……なんか恥ずかしい~」
と顔から小さいダイヤモンドのピアスを付けた耳まで赤らめた。
「高級品ばっかりで羨ましいわね!普通に働いて……普通に暮らして!あたしには夢のようだわ……」
「でも?あなただって地球防衛軍になって!さっきの悪い連中を倒した時のあなた!
凄くかっこよかったわよ!まるで映画を見ているように!強いっていいじゃない。
あたしはそっちのほうが羨ましいわよ!」
と幾分興奮した口調で友紀が言った。
凛は、高校のころの友紀をちょっと思い出して笑い
「どっちもどっちね!」
しばらくの沈黙の後、凛はふと
「それで?例の勾玉は?」
友紀は驚いた様子で
「どうしてそれを?」
「例のお爺さんと洋子ちゃんと蓮君から話は全部聞いたの!」
友紀は首に掛けた勾玉をじっと見つめた。
「どうしたの?」
と凛が尋ねた。
友紀は口を開き、少し前まで付き合っていた男がいたが、
例の勾玉を首に掛けてデートしている最中、首に掛けていた勾玉が
青緑色の発光した瞬間、我を忘れて、何か酷い事を彼に言ったらしいと言う。
勾玉の光が止んで気が付いて我に帰ったら、彼は
「二度と会わない!」
と言って突然、別れたということだった。
説明し終わると友紀は
「あたしにも!なんだかさっぱり分からないわ!」
友紀の話を聞いた凛は納得した表情で
「成程……その勾玉は確かに本物ね!」
「えっ!」
友紀は、親友、凛の意外な反応を見て驚きの声を上げた。
 それから凛は友紀に、洋子をストーカーした事で捕まった老人の話を聞かせた。

 その老人の話は凛がアメリカに来る2日前、空港に向かう途中、
警視庁を訪れた凛が、洋子に渡した勾玉について老人に問い詰めた時の出来事である。
「詳しく教えて!勾玉について!」
「信じるのかね?」
「まだ信じちゃいないわ!あたしがアメリカに行く前に確認して置きたいだけよ!」
「君は用心深いな……」
「その通りよ!」
「では!私が勾玉の秘密を教える見返りにわしをこの狭苦しい部屋から解放してはもらえぬか?」
凛は頷き
「もし?嘘を言ったら!どうなるか分かるわね?」
と老人を鋭い眼で睨みつけた。
老人は
「勾玉の秘密を教えよう!その前に私が何者かも明かそう。
私の名はジョアン=ハスチネイロ。私は考古学者で、
数年前、京都の海底から回収された『ヤサカニノマガタマ』を調査した。
君の母親が持っているインファント島のお守りの『アマノムラクモノツルギ』
というものは知っているかの。
しかしこの3つの基になったのはあの子にあげたあの勾玉なのじゃ!」
「成程……」 
「実際!その3つの物質から人間に類似した謎の波長が検出されている!
どのお守りからもG塩基に類似した物質が検出されるに違いないだろう!」
凛は
「ありがとう!」
とお礼を言うと椅子から立ち上がり、部屋から出ようとした。
その背後で
「あの勾玉はどうやら人間の奥底に潜む醜く邪悪で
傲慢な心を増幅させる働きがある事も分かっている!気を付けるのじゃぞ!」
凛は少し笑い、扉を開けてドアの外へ出て行った。
 それから凛は洋子の自宅を訪ねた。運よく出かける前の洋子に出会い、
老人に貰った勾玉について聞くと、洋子は
「10日前にアメリカでの成功のお守りとして友紀ちゃんにあげたの……じゃあね!がんばって!」
それから凛は慌てている洋子に対し
「どうして?あたしに早く!その危険な勾玉を渡してくれなかったの……」
洋子はふと足を止めたが
「御免……忙しいの……」
と言うと早足で歩き去った。

 友紀は、凛の今の話を聞いて驚いた口調で
「まさか?謎の老人の正体が考古学者なんて……」
凛は静かに
「その勾玉は人間の奥底に潜む醜く邪悪で傲慢な心を増幅させる働きがあるらしいから!
かなり危険な可能性が高いの……だからあたしに渡して欲しい……」
友紀は半信半疑で
「あたしが彼氏に酷い事を言ったのは本当にこの勾玉のせい?」
と言い首から勾玉を外すと凛の両手に乗せた。
友紀は心配のあまり
「大丈夫なの??やっぱり!何処かに捨てた方がいいんじゃない……
そのお爺さんが言った勾玉の話が全部本当なのかどうかまだ胡散臭いけど……」
「いや……例えまた捨てたとしても、あのノスェラトゥの考古学者達みたいに拾われる……破壊しないと……恐らくもっと悪い事が起りそうな気がするの!
それに樟運佑この勾玉を狙っている以上!
これからずっと狙われるわ!友紀ちゃんも山岸君も誰一人!この戦いに巻き込ませたくない……」
友紀は穏やかな口調で
「分ったわ……きっと!洋子ちゃん……その怪しいお爺ちゃんの言う事を全部、
真に受けちゃったのかも?だからこの前会った時、あんなに悩んでいたのね!」
凛は勾玉と鏡とを一緒に首に掛け、
「さて!行かなきゃ!」
と言い控室のドアノブに手を掛けた。
友紀は黒いソファーから勢いよく立ちあがり
「あなたはあたしの親友よ!何か困った事があったら相談して!ありがとう……」
その言葉を聞いた凛は急に涙がこみ上げ、
「友紀ちゃん……ありがとう!……」
とつぶやくと涙をハンカチで涙を拭き、外へ出た。

 東京の深夜、ベッドの上で怖がって眠れない瑠璃と添い寝をしていた
洋子はまた以前見たのと同じ夢を見た。
 夢の中では、「1999年」の新聞の切れ端、月をバックに
飛んでいたコウモリの様な怪獣の大群、トゲトゲした
怪獣と亀の様な怪獣が炎に包まれた京都の街で戦っている映像が続いていた。
 めまぐるしく場面が変わり、大陸が徐々に海底に沈んで行く場面が見えた。
 今度は女性の悲鳴が聞こえ、その方へ顔を向けると青緑色の勾玉を掛けた
女性が自らナイフを刺して自殺していた。
 まさに悪夢だった。
 洋子は息を切らせ、すぐにベッドから起き上がった。
隣で瑠璃は安らかな表情で寝息を立てていた。
「プルルル」
と真夜中だと言うのに電話が鳴り始めた。
洋子は恐る恐る受話器を取り、耳に当てた。
 瞬間、甲高い「キイイイィィィン!」と言う大きな音が非常ベルの様にけたたましく鳴り響いた。
 洋子は耳が痛くなり大慌てで受話器を宙に放り投げた。
 しかし床に落下してもまだ甲高い音は止まなかった。
 洋子は内心、憤慨しつつも再び受話器を持ち、
なるべく耳を放しながら
「もしもし?」
と静かに話し掛けた。
「前世の大罪の重さは!悲しみは狂気だけでは無いぞ!
死ぬまでずっと背負って行くのだ!
怪獣世界で何から逃れる気か?原罪か?」
洋子は怯えた表情で
「何よ……」
それでも電話から太い男の声は聞こえ続け、
洋子はとうとう我慢が出来ず、受話器を置き、電話を切った。
 周りは静かになり洋子は床に座り込み、あまり泣き崩れた。
 涙目で瑠璃の部屋の入口を見るとポカンと口を開けて見ている瑠璃が見えた。
瑠璃は悲しそうな目つきで
「どうしたの?……何か?悲しい事があったの?」
と尋ねた。
洋子は涙を拭きながら立ち上がり
「何でもないわ……大丈夫よ!大丈夫よ!」
と言った。

(第48章に続く)

では♪♪