(第17章)復讐の誓い

(第17章)復讐の誓い

あのジラ出現とM塩基破壊兵器事件から1年後。
秘密結社ドラクルは理想の世界を実現すべく行動を開始した。
だが、まさか自分の腹心の部下であるオニール軍曹の裏切りが発覚するとは。実に遺憾な事だ。
さらに悪い事に、ワインの一気飲みを繰り返す内に、
彼にとって忌まわしく忘れられない戦慄の過去が走馬灯のように思い出された。

2021年・冬
ワシントンDC・ホワイトハウス
「ギャアアアアアアッ!」
ホワイトハウスで男性の絶叫が聞こえた。
続いて「ダアン!ダアン!」と銃声がホワイトハウスの広い廊下に木霊した。
ホワイトハウスは赤い悪魔の襲撃により早くも壊滅状態に追い込まれていた。
その赤い悪魔の名はデストロイア
既にホワイトハウスは白い地獄絵図と化していた。
エバート・F・ウィルソン上級大佐はある女性を探し、
液化した米軍兵の遺体の間を縫って歩き始めた。
女性の名前はジャクリーン。
ホワイトハウスで働く女性職員で、男性職員の間では
人気NO1の絶世の美女と噂された。彼は彼女に夢中だった。
ウィルソンは彼女を助け出すべく勇んでホワイトハウスの廊下を歩いていた。
その先に悪夢が待っている事も知らずに。
当時、彼はあまりにも幼すぎたのだ。
ウィルソンはジャクリーンのいる部屋を必死に探した。
彼は必死に捜し回り、ようやく汗だくになって彼女を見つけた。
そこは彼女の部屋だった。
彼女はブロンドの髪を振り乱し、全身を震わせ後退していた。
彼女の目の前にデストロイアがいた。
奴は巨大なカニの様な姿でウィルソンは気味が悪かった。
デストロイアは黄色い目でジャクリーンの身体をつま先から舐めるように見ていた。
彼女の目は怯え切っていた。
ウィルソンは大声で何度も彼女に呼びかけた。
「早く!こっちに!来るんだ
しかしジャクリーンの身体は金縛りにあった様にそこから一歩も動けなかった。
デストロイアは余裕の笑みを浮かべた。彼はそんな気がした。
デストロイアは体に似合わず敏捷な動きでジャクリーンに近づいた。
チクショウ!なんて素早い奴なんだ!
彼が拳銃の引き金に手を掛けた時、
デストロイアは長い口を素早く伸ばすと先端の鋭い4本の牙を彼女の大きな胸の谷間に突き刺した。
彼女は恐怖で声も出せなかった。
ウィルソンは震える両手で拳銃を構えた。
やめろおおおおっ!!」
彼は絶叫し引き金を引いた。
ダアン!ダアン!ダアン!」と銃声がした。
しかしデストロイアの赤く分厚い光沢のある巨大な背中の甲羅は彼の放った銃弾を至極あっさりとはじき返した。やがてカチッ!カチッ!カチッ!と弾切れを告げる音が鳴り響いた。
彼は無力だった。
「止めろ……」
「やめろおおおおっ!」
声は大きくなった。
しかし武器も無い。
助けも来ない。
勇んでここにきてなんてザマだ。
デストロイアは捕えた獲物である彼女をダンベルの様に持ち上げた。
彼女は最後の力を振り絞り、ウィルソンと視線を合わせた。
たった一言だけ死に際に彼女は言った。
「愛しているわ」と。
ウィルソンも彼女が死ぬ前にこう言った。
「僕も愛してるよ」と。
ウィルソンの言葉を聞いたジャクリーンは安らかな笑みを浮かべた。
しかしすぐに安らかな笑みから額にしわを寄せ、苦しみの表情に変わった。
彼女の大きな胸の谷間に突き刺さった長い口が徐々に膨らんで行った。
そして口内の塊らしきものが後方に何度も繰り返し動き始めた。
その度にまるでコップから水を飲んでいるかのようにゴクッゴクッと喉を鳴らした。
次第に大きな両胸はまるで風船のようにゆっくりと萎んで行った。
はっ……はああっ……はあっ……はあああっああああっ…。
大きな喘ぎ声ともつかぬ声と共に白い液体が彼女の口から頬を伝って流れていた。
それから30分、いやそれ以上の時間が経過しただろうか?
既に彼女を殺したデストロイアは逃げ去り、カーペットに大きな白い液体が水たまりのように広がっていた。
そして彼女の衣服が傷一つなく残されていた。
彼女は原形を留めずただの白い液体と化していた。
ウィルソンは白い液体と化したジャクリーンの遺体に静かに歩み寄った。
彼はバシャッ!と白い液体の上に座りこんだ。同時にタガが外れた様に泣き崩れた。

私はあの悲劇を忘れた事は無い。一生死ぬまで忘れないだろう。
私はデストロイアを当然の様に憎んだ。
しかしデストロイアゴジラに倒された後、私は忌まわしいデストロイアを産み出す
きっかけを作った怪獣王ゴジラ、そして全ての怪獣の存在そのものを激しく憎悪した。
私はジャクリーンの遺体の前で誓った。
「この世からゴジラ族や全ての怪獣族を消し去り!
怪獣の一切存在しない平和な世界を作る!」と。
もう私と同じ悲劇を体験する者を第二第三と生み出してはならないのだ!
私は豪華な黒い革布のソファーの上にもたれかけ、
ワイングラスになみなみと赤ワインを注ぎ、それを一気飲みした。

(第18章に続く)