(第5章)山根蓮と川根洋子

ゴジラの自作小説の第5章です。
今日洗濯物が多過ぎて風呂をやる時間が無くなった(泣)

(第5章)山根蓮と川根洋子

 東京の2階建ての家。
 一人の男が「うーん」と唸り声を上げベッドから起き上がった。
冒頭で凛が紹介したもう一人の『モンスター・キャリア』。
かつて東京を襲ったデストロイアと言う怪獣の血を持つ、山根蓮である。
 彼のあまりにも不運な誕生の事実は、かつて父親を殺した敵として対立し、
高校で喧嘩ばかりしていた同級生の『音無凛』、実の母親の山根優香、
元M機関や国連の関係者の一部しか知らない……。

 彼の母親、山根優香はかつて東京で猛威をふるっていたデストロイアに襲われ、
子宮に胚を植えつけられた。下腹部を鏡で見ればその時の数cmの傷跡がまだうっすらと残っている。
 他にも何人かの女性にデストロイアは胚を植えつけていたが、全員死産し、
唯一優香の胎内に植えつけられた胚だけが生き残った。
 生まれた生き物は最初8本足の蟹の幼生のゾエアに類似していた。
しかしそれはまるでオタマジャクシからカエルに成長するように人間の男性に成長して行った。
 蓮はそれから母親であるはずの優香に拒絶され、
同じ存在であるはずの音無凛とゴジラを父親の敵として敵対していた。
 蓮は、ヤクザの娘でデストロイアに大事な友達を惨殺された悲しき過去を持つ、
山梨友紀と言う同級生と付き合うようになった。
しかし自分がデストロイアの血を持っていると言う事実
が蓮を苦しめ、学校でも常に孤独でほとんど授業に出る事無く、どこかの部屋に身を潜めていた。
 何も知らない同級生の友紀はそんな彼を心配し、
弁当を食べる際に良くその身を潜めている部屋に来た。
 確かに彼は彼女を愛していたが『デストロイアの血を持つ人間』と言う
あまりに過酷で重い事実に絶望し、苛立ちと不安から喧嘩ばかりをして、
とうとう友紀とは破局してしまった。
 しかし彼は最後に北海道の網走厚生病院で彼女の本音を聞き、
ようやく和解し、母親の優香もカウンセラーのアドバイスを受け、
彼を息子として受け入れるようになった。
 蓮も凛と同じく自分の運命を受け入れ、また新しい恋人を得て無事、高校を卒業し、人生は好転した。
 ちなみに蓮の元彼女の山梨友紀は高校卒業後、ヤクザの父親を説得してまともな会社を興し、
大学へ行かず若き会社社長となっている。

 ようやくベッドから起き上がった蓮の耳に
「おはよう!お寝坊さん!」
と声が別方向から聞こえ、その声がした自分の部屋の角に目を向けると、
ロシア人と日本人のハーフの女性がニコニコしながら、
最近サイエンス雑誌に載せられた記事を立ち読みしていた。
 彼女が読んでいる短い記事の内容は以下の通りである。
「自然界の生物の外因性による怪獣化は癌の一種で、適切な治療を行えば100%完治する!」
と言う見出しから始まり、その雑誌のインタビューで医師の一人は書いていた。
「最近発見されたG塩基には怪獣化を抑制する働きがある事が分かり、
将来、ミュータントや怪獣化を抑える治療薬が開発できるだろう!」。
 ちなみにサイエンス雑誌の短い記事を読んでいる彼女の名前は川根洋子。
彼女は凛と同じクラスにいた高校の同級生であり、蓮の現在の恋人である。
 彼女は実は、木星の13番目の衛星『X星』に住む
宇宙人が他の小惑星の宇宙人を実験台にして人工的に作り出された
ノスフェラトゥ』と言う種族の生き残りである。
 彼女は実の両親を知らず、身寄りの無い彼女は偶然、
カナダに新婚旅行に来ていた日本人の男女に拾われ、日本で育てられた。
彼女が自分の正体を知ったのは、高校卒業を控え、修学旅行で北海道の網走へ行った時、
彼女と同じ『ノスフェラトゥ』で国語の教師の長野古都美先生からである。
 長野先生の裏の顔はロシアのMIB(メン・イン・ブラック)の捜査官である。
MIBとは宇宙人やUFOの目撃者や研究者の前に現れ、警告や脅迫を与え、様々な圧力を行い、
他にも違法に地球に侵入した宇宙人達を逮捕する闇の組織の事である。
 ちなみに世界中の地球防衛軍の『特殊生物犯罪調査部』の関係者の
ほとんどがこのMIBに所属している。
 洋子は唇を尖らせ
「ふーん……ミュータントや怪獣化を抑える薬ね……」
その隣で蓮が
「面白くないね…」
と一蹴した。
「どうして??」
「怪獣は病気とかじゃない!怪獣は……」
洋子はまるで新しいおもちゃに興味を持った子供に様な表情で蓮の顔を静かに見ていた。
蓮は
「怪獣には怪しい炎や光線を吐いて獣の様に町を破壊したり、
中には人を喰らうのもいるから……確かに人間達にとっては迷惑な存在だが……ただ例えば?」
と言い自分の家の壁を指差した。
「自分が住んでいる部屋の壁にいきなりドリルで穴を開けられたりしたらもちろんカンカンに怒るだろ?それと君だって腹が減ったら、怪獣が人を食い物にするのと同じ様に、
ご飯やみそ汁を食べるだろ?単純にそれだけの事なのさ!」
しかし洋子は
「でも……単純にそれだけの事が世間ではなかなか理解されないのよね……」
蓮は大きくため息を付き
「それに……世間では小笠原諸島にある無人島を改造した
『小笠原怪獣ランド』で違法な生物兵器の開発をしているって噂が飛んで、
国会でもかなり問題になっているからな……」
洋子は蓮のスーツを取り出しながら
「でも?本当なの?その噂は?」
蓮はスーツに着替えながら
「分からないよ……でも!本当だったら……許してはおけないね!」
それから洋子が玄関先で
「いってらっしゃい!」
蓮も
「行ってきます!」
と応え、地球防衛軍の『特殊生物犯罪調査部』へ向かって行った。
 彼も音無凛と同じ大学を卒業し、国家公務員になったばかりである。

(第6章に続く)