恋心(Bパート)

お早うございます。
大変お待たせしました。
 
恋心(Bパート)
 
牙狼GARO
シルヴァーと邪美はガッカリとした様子で零が眠っている
小屋に続く石畳の階段を下りていた。
あのタナトスに噛まれた時の古の治療法を試そうにも
あいつの好きな女がいなければ不可能だ。
クソっ!
どうしたらいいんだ?
これじゃあいつ死んでも死にきれないよ!
邪美は徐々に焦りの色を見せ始めていた。
解決策がない。このままじゃ。
ふいに邪美の手の甲に嵌められていたシルヴァが小さな声を上げた。
「まって!小屋の中で強い念を感じるわ!」
「えっ?強い念?まさか烈火?」
邪美は小屋のドアの前に近づいた。
すると小屋の中から零と烈火の呻き声が聞こえた。
さらにそれは苦しみの叫び声に変わった。
「あの治療法を?」
2人の叫び声は徐々に小さくなって行った。
やがて小屋からハアハア息を切らせる声に喘ぐような声が聞こえた。
その後、静かになった。
「まさか?成功したのか?」
シルヴァはふいに大きな声でこう言った。
「2人共、大丈夫なの!」
小屋の中から烈火の慌てふためいた声が聞こえた。
まっ!まてぇ!今!取り込み中です!いいですか絶対に開けないで!!
お願いだから!絶対開けるないで下さい!」
これには邪美も思わす吹き出してしまった。
「あいつ意外と大胆な事やるじゃないか?」
さらに正気に戻った零の声まで聞こえた。
おい!これはなんのつもりだ!しかも何でお前さ!裸体な訳?」
「しっ!静かにしろ!j聞かれちまうだろうか!」
「あっそ!それより早くロープを解いてくれない!
早くあのホラーを封印しちまいたいんだ!」
そして一瞬の沈黙のあと零の声が聞こえた。
「と言うか俺まで?えっ?どういう事?」
零はこの状況が呑み込めておらずただ何か喋っていた。
烈火は恥ずかしくてたまらずこう言った。
「そもそもお前の不注意からこうなったんだろうが!」
「まて!全部俺のせいな訳?」
「やれやれ」
シルヴァは僅かに口元を緩ませそう言った。
その時、安どの表情を浮かべていた邪美が急に小屋の
近くにある林に視線を向けた。
「どうしたの?」
「何か妙な気配が」
「そんな、ホラーは探知していないわよ。」
「気のせいか……」
邪美はそう思った。
 
それから数時間後、再び別の公園。
いやああああああっ!助けてええええっ!」
一人の女が必死に公園の出口まで走っていた。
女はハアハア息を切らせて、後もう少しと言うところで
背後を追いかけていた邪悪な黒い影が女の上を軽々と飛び越え、
公園の出口のところに着地した。
魔獣ホラータナトスだ。
タナトスは大きく吠えた。
その姿は醜い鳥のような嘴つきの頭部に
成人男性の体格で背は女よりも高かった。
両腕は筋肉隆々で逞しかった。
タナトスは堂々と女のところに歩み寄った。
女性は顔は死人のように青ざめ、恐怖の余り
表情は引きつり、両目は飛び出しそうなくらい丸くなっていた。
タナトスは助走をつけてジャンプし、女性に飛び掛った。
女性は絶望のあまり、凄まじい悲鳴を上げた。
だが、別方向からハアアッと女性の気合の入った声が聞こえた。
女性の目の前に金色の光が現れた。
金色の光はまさに女性に飛び掛らんとしたタナトスの頭部に命中した。
女性が見ると滑り台の上に黒い服を着た女性がたっていた。
タナトスはふらふら起き上った。
「魔戒法師!」
そう、烈火だった。
タナトス!これ以上、お前の好きにさせない!」
「グッフェフェフェ!馬鹿め!魔戒騎士と同じく俺の毒でイチコロだ!」
烈火はヘヘッとせせら笑った。
「そいつはどうかな?」
タナトスはバーンと一気に2mジャンプし、大口を開けて烈火に飛び掛った。
烈火は慌てず円を魔導筆で描き、もう一度、ハアッ!と気合を入れた。
すると書かれた金色の円の中央から金色の光線が放たれた。
タナトスはそれを危ういところでかわした。
タナトスは烈火が乗っているブランコを支えている棒の上に着地した。
しばらく魔獣と魔戒法師は睨み合っていた。
タナトスはクンクンと匂いを嗅いだ。
「やはりな。お前の身体からあの魔戒騎士の匂いがするぜ!」
「何だと?」
「しかしお前があんな事が出来るとは思わなかったな。」
烈火はタナトスの言葉を聞き、僅かに動揺した。
「グッフェッフェッフェッ!見た!見た!見た!」
「バッ!馬鹿なことを言うな!閑岱には邪悪な気配もなかったんだぞ!」
「グッフェフェフェ!信じられようだな!」
グッウエエエエエエッ!
タナトスは奇声を上げた。
ダアン!と爆音がした。
タナトスの全身に透明な膜の様なものが現れた。
「ウソだろ?結界だと?」
タナトスはホラーとしては特殊な存在で全身に結界の様なものを発生させて
魔道具のホラー探知能力を無力化させていた。
つまりステルス能力である。
「そう♪だーから♪あいつらは俺を探知できない♪
「だが、白夜騎士は?」
「俺が差し向けたホラーと現在、戦闘中さ!」
烈火は完全に言葉を失っていた。
しかし気が付くと目の前にいた筈のタナトスは消えていた。
「何?」
その瞬間、烈火の背中に激しい衝撃を感じた。
烈火はそのまま吹っ飛ばされ、砂場に落下した。
「抵抗しても無駄さ!」
烈火は背中の激痛で起き上がれなかった。
タナトスはブランコの棒から降りた。
「お前を想っていたよ。1か月前から。」
烈火は魔導筆を握りしめた。
「お前を喰らう気はない。俺は一人で寂しかったのさ!
そう、お前が先輩の魔戒法師と共に閑岱を離れて修行の旅に出ている間、
俺はお前に肉体が欲しくて欲しくてたまらなかった。」
l烈火は仰向けになり、タナトスの目を見た。
奴の目は狂気の喜びに満ちた目をしていた。
うっ!わっ!くっ!くるな!」
烈火はぞわあああっと強烈な悪寒に襲われた。
背筋が凍りついていた。
彼女はホラーに対して生理的嫌悪を感じたのは初めてだった。
彼女はタナトスを自分に近づけまいと魔導筆を振り回した。
しかし気が動転していて、うまく文字が書けない、術が発動しない。
タナトスは右手の甲でバキッ!と魔導筆を払いのけた。
魔導筆を失い、彼女は無防備になった。
タナトスは両手を伸ばすと彼女の黒い服の上から大きな両胸をやさしく揉んだ。
「やっ!めろ!あっ!あっ!」
彼女は僅かに喘ぎ声をあげた。
タナトスは黒いくちばしを彼女の柔らかい唇に重ねようと顔を近づけた。
次の瞬間、銀色の短剣が闇夜を切り裂き、タナトスの頭部にグサリと突き刺さった。
グッ!ウエエエエッ!
タナトスは悲鳴を上げ、恨めしそうに公園の入口
に立っている黒いコートの青年をにらみつけた。
「零!助けてくれ!」
それは烈火の心からの叫びだった。
零はすかさず2本の剣をX字に交差にカシャンと交差させると頭上でひとふりした。
公園内にキイイン!と言う甲高い金属音が響いた。
零の頭上に円形の裂け目が現れた。
その向こうから銀色の光が差し込んだ。
そして裂け目から銀色の光る鎧が落下したかと思うと零はたちまち
銀色に光る鎧に包まれた。
銀色の鎧は煌びやかで彫刻の様に繊細で美しかった。
その鎧の頭は力強く猛々しい牙を向いた狼の様だった。
銀牙騎士絶狼(ゼロ)だ。
ゴルルルッ!
ゼロは僅かに唸った。
ゼロは猛スピードでタナトスに近づこうと力強く大地を踏みしめ、駆け出した。
ゼロは右手に持っていた長い銀色の剣を振り上げ、
タナトスの首筋に刃を突き立てた。
タナトスはにやりと笑った。
「俺を狩れて満足だろ?ゼロ?俺も満足だ!」
「なんだと?」
ゼロは左手に持っていた長い銀色の剣をタナトスの腹部に突き刺した。
タナトスは烈火の方を見るとニヤリと笑った。
「俺はお前に恋心を抱いていた!
常に俺のそばにいて!
お前の肉体を抱いた!
愛してる!愛してる!グッ!グッ!ブルアアアアアアッ!
バキッ!ドカアアン!
タナトスの全身はまるでスイカの様に破裂した。
周囲の土にはホラの返り血が染み込んだ。
タナトスを封印した後、銀色の狼の鎧を着た
ゼロの頭上にはまた銀色の光が差し込み、
銀色の鎧は彼の身体から離れ、
円形の裂け目に消えた。
同時に零は元の黒いコートの青年に戻っていた。
仰向けに倒れていた烈火はタナトスの言った事を想像していた。
もし、あいつが俺のベッドのどこかに身を潜めていたのなら。
さらにあいつが眠っている俺の上に乗って。
烈火は自分がタナトスに馬乗りにされ、
自分の上で満足気に腰を前後に振る姿を想像してしまった。
さらに自分のむき出し、両乳房が上下に大きく揺れて、
乳首が起立していていて。知らずに喘いでいたのでは?
想像するだけでますますひどい吐き気に襲われた。
なのでこれ以上想像するのは止めた。
元の黒いコートの青年に戻った零はショックで倒れて動けない
烈火のもとに歩み寄り、すーっと自然に烈火を御姫様だっこした。
零はシルヴァにこう尋ねた。
「なあ、ホラーと人間は愛し合えるのかな?」
「さあ、人間との共存を第1に考えて魔道具や魔導輪になっている
ホラーはあたしやザルバの他に沢山いるけど。
あいつがあんなにまで人間と同じ愛を求めていたなんて。
どうやらシルヴァも信じられない様子だった。
正直、零も烈火も信じられなかった。
でも、基本ホラーは人間の邪心から生まれたもの、
たとえそれが汚れ無き純愛であってもその愛し方は邪悪で間違っているんだ。
やはりそう考えてはみても零は複雑な心境だった。
END。
 
牙狼GARO(エンディングテーマ)