(第25章)ゴジラと怪獣の起源

(第25章)ゴジラと怪獣の起源

中生代ジュラ紀
古代のシダに覆われた太古の森の中で、獲物の草食恐竜を探して
肉食恐竜のアロザウルスが葉を掻き分けのっしのっしと歩いていた。
やがてのんびりとシダの葉を食べている雑食性でおとなしい
ティラノサウルスの姿をしたゴジラザウルスを見つけた。
アロザウルスはシダの葉を食べるのを止めた。
アロザウルスは気付かれたと思った。
ゴジラザウルスは空を見上げた。
釣られてアロザウルスも空を見上げた。
上空には体長50mの三角形の巨大な一本角を生やした黒い竜の群れが海に向かって
アロザウルスとゴジラザウルスの真上を特に急いでいる様子も無くのんびりと飛行していた。
その巨大な三角形の一本角の黒い竜の群れはプテラノドンの様な巨大な翼を広げ、
翼を持たない三角形の一本角の黒い竜をよっこらしょっと抱えていた。
やがて三角形の巨大な一本角の黒い竜の群れが海の中に次々と潜り、消えて行った。
ゴジラザウルスの群れとアロザウルスは最後までその様子を見送った。

一方、別のシダの葉が生い茂るジャングルの中に凄まじい大音響と共に青く不気味に光る隕石が落下した。
隕石は青く何度も不気味に発光を繰り返した。
隕石の内部からは名状しがたい呪文のような不気味な呼び声が何度も響いていた。
そこに水しぶきを上げて、湖から青い複眼と2本の腕を持つメガヌロンが出現した。
同時に他の古代生物達は不気味な呼び声に惹かれて集まって来た。
小さなコウモリの生物。(ギャオス)
ムササビの様な皮膜を持つトカゲ。(バラン)
一本角と大きな耳を持つずんぐりとした体形のトカゲ。(バラゴン)
2本の鞭状の腕を持つトカゲ。(グドン
2本の三日月の角と一本角を持つ巨大トカゲ。(ゴモラ
他にも多種多様の古代生物が集まっていた。
やがて隕石の表面の僅かな隙間から青いゲル状の液体がゆっくりと
古代のシダ植物が生い茂る地面に流れ、確実に広がって行った。
そして次々とメガヌロンを初め、周りの多種多様な古代生物達の全身を瞬時に覆い尽した。
古代生物達は見た事の無い姿に変貌した。
同時に飛躍的に巨大化して行った。
正体はX星人に遺伝子改造を施される前の純粋な原始的なアオシソウ。
こうして多種多様の巨大な怪獣達がジュラ紀に突然、大量発生したのだった。

舞台は2030年の現代に戻る。
午後7時20分。
大戸島のモーテル風ホテルの部屋で真鍋はこう覇王と蓮に質問をしていた。
「MBIの仕事とは関係ないですがゴジラの起源は何だと思いますか?
やっぱりあのゴジラザウルスが起源ですか?それとも太平洋戦争で亡くなった
日本人やアメリカ人、アジア人の怨念の集合体が起源なのでしょうか?」
「残念だが、その2つの起源は根拠の無いでっち上げだ。」
蓮はカメラの前で堂々とそう宣言した。
「では?水爆で突然変異して誕生したとされるゴジラは何が起源でしょう?」
ゴジラは中国で発見された宇宙怪獣バガンが起源だと言う説が有力だ。」
「でも、そうなると当然、ラドンも宇宙怪獣バガンが起源なのでしょうか?」
「宇宙怪獣バガンはオスとメスと共に群れで人類誕生以前の太古の地球に飛来したとされる。
つまりオスとメスのバガンは地球の環境に適応してオスのゴジラとメスのラドンに進化したんだ。
そう言う話は凄く心惹かれるのかな?」
「はい、凄く心惹かれます。」
「実は面白い写真があるんだ」
覇王はゴソゴソとMBIの黒いスーツの内ポケットを探り、一枚の写真を取り出した。
写真はキングギドラの細胞の顕微鏡写真だった。
「これは金星で発見されたキングギドラの黄金の鱗の拡大写真だ」
写真には黄金に光る細胞が青く光る細胞を覆い尽していた。
「青い細胞は?」
「原始アオシソウだ」
「まさか?原始アオシソウを取り込んでいる?」
「つまりキングギドラに寄生しようとした原始アオシソウを逆にキングギドラが取り込んだのさ」
真鍋は目を輝かせ、さらに質問した。
「それでG塩基はいつ生まれたんですか?」
覇王はニッコリ山岸が構えるカメラに向かって笑いこう言った。
キングギドラが突然変異してオスとメスのバガンになったと
同時にM塩基がG塩基に変異したのではと最近の国連の生物学者は考えているらしい。」
「最近ゴジラの詳しいライフサイクルが判明したそうですね。」
その質問に対し、山根蓮が答えた。
「普段はオスのゴジラは海底にメスのゴジラ、つまりラドンは空と陸にそれぞれ別々に暮している。」
「だが大体、5月の繁殖期になるとベーリング海に浮かぶアドノア島に集団で集まり、
多数のオスとメスが交尾をする。」
「それで人間くらいの大きさの卵を沢山産むのさ」
「卵から孵化すると人間大のベビーゴジラじゃなくてミニラが生まれるんですね?」
「その通り、それで12カ月かけて50mまで巨大化するんだ。」
「12カ月かけて成長していく過程で徐々に体色が灰色から緑色に変化する。」
「最終的には中くらいのリトルゴジラから50mに巨大化して緑の体色のゴジラに似たジュニアになる」
「つまりティラノサウルスみたいな姿?」
「いいや、違う、ゴジラ族は先祖代々、直立歩行する生物なのさ」
ティラノサウルスみたいに前かがみの姿勢のゴジラは別の存在だ」
「しばらくすれば緑色から黒い体色になり成体ゴジラになる」
ラドンゴジラと同じく人間大の卵から生まれて12カ月かけて50mまで巨大化する。
それで体色も茶色からオレンジ色に徐々に変化するのさ」
「つまりラドンからファイヤーラドンに?」
「意外と成長に時間がかかるんですね」
「映画は尺の長さの関係でいきなり成長させているだけだ。大人の都合でね。」
キングギドラもやはりゴジラと同じ卵を産むのでしょうか?」
「いや、まだよく分かっていない。ただ地球の勝山断層で発見された
赤黒のゲル状の物質の成分から月経の血と思わしき物が発見されている。」
「と言う事は私達と同じく交尾して子供を妊娠して出産をするんでしょうか?」
「月経の血があると言う事はそう考えるのが自然だろう。」
覇王は、自分の話を白々しくしているような気分ながら、真面目にそう答えた。

(第26章に続く)