(第1章)温泉

牙狼バイオハザードクロスオーバー・番外編
 
(第1章)温泉
 
閑岱とある小屋。
朝食を食べ終わったジルは急に邪美に誘われて
朝から女同士で温泉に入っていた。
「ふうーいいお湯ね!」
「なっ!此処の温泉は天然なのさ!」
「へえー凄い!リラックスできるーう!」
ジルは瞼を閉じ、静かにブクブクと顔を温泉の中に沈めた。
彼女は何故か直ぐにザバアアン!
と水の音を立て、温泉の中から顔を出した。
「なあ、クリスの事とはどういう関係なんだい?」
「えっ!えっ!あー長ーい、長ーい付き合いよ!」
邪美はふーんと鼻を鳴らしこう言った。
「でーも結婚はしないんだね?予定あるのかい?彼とさ!」
「ええええええええっ!」
ジルは顔を真っ赤にした。
「だって!長ーい長ーい付き合いなんだろ?」
邪美は悪戯っ子の様にクスクス笑った。
そしてバシャッと水を撥ね、太腿を青空に高く突き上げた。
「いいかい!女の武器は顔、胸、お尻だけじゃないよ!
生足は万能さ!悪い奴を蹴り倒す武器にだってなる!
男を口説き落とす武器にもなる!さあ、やってごらん!」
やってごらんと言われても………。
ジルは何故かチラチラと温泉の湯の中を覗いた。
しかも顔から火が噴き出る程、恥ずかしかった。
そして邪美に何度も促された揚句、とうとうジルは「うーっ」と唸った。
彼女は意を決し、勢い良くお湯をバシャンと跳ね上げ、
自らの右脚を青空高く突き上げた。
「そうそうやるじゃないか?あとはな!」
ぶはあああああっ!
大きな男の声が上がったと同時にバシャンと水柱が上がった。
「……………」と邪美。
「あーっ!あああっ!やっ!やややっぱり!」
2人の視線の先には茶色の短い髪と顔と
白い肌の筋肉質な上半身をびっしょりと濡らし、
ゴホゴホと激しく咳き込んでいるクリスの姿があった。
「うっ!何て事を!ジル!邪美!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!」
「見たの?」と静かにジルは聞いた。
「何をだ!ジル!えええと!」
次の瞬間、ジルはビシッと突っ込んだ。
「いーの言わなくても!」
「スマン……君達がまさか入って来るとは知らなくて……。
君達が入って来て咄嗟に素潜りをしたのだが……。」
「もークリスのエッチ!!」
クリスは猫背になりしゅんとなった。
「まあーまあーここは男女共同だし、
お互いタオルで隠しているから大丈夫さ!」
しかしまだクリスしゅんとなっていた。
なんてこった。一人で朝風呂をしようとしたら。
2人が入って来るなんて……。
クリスはさっきジルと邪美のタオルの奥の……。
いや!忘れよう!別に見たくて見た訳じゃないしさ。
うーん見えたんだよな。
邪美は顔を赤らめじっとしているクリスを見るなりこう言った。
「はあーさてはあたしとジルの良からぬ煩悩に支配されているね。」
「いやっ!そんな訳ない!」
クリスは精一杯、見栄を張った。
そんなクリスを冷めた蒼い瞳で見ていた。
クリスはジルの冷たい視線を感じ、
慌てて何か見苦しい言い訳を言おうとした。
しかしジルは「そんなの聞きたくない」
とでも言わんばかりに プイッとそっぽを向いた。
「最低!邪美、その煩悩を消してやって!」
「お安い御用さ!ジル!」
邪美はタオルに隠していた魔導筆を取り出した。
「えっ?ちょっと待ってくれ!違う!違う!ジル!誤解だ!誤解だ!
うっぎゃあああああああああああああっ!」
やがてバッシャアン!と言う凄まじい水音と共に5m程の水柱が上がった。
彼の絶叫は広大な青空に木霊した。
 
数時間後。ガラッと温泉の入口の戸が開き、
朝風呂をしに来た山刀鈴法師が全身に白いタオルを巻いて現れた。
そして温泉の湯に肩まで浸かり、ふーつと息を吐いた。
「いい湯加減……最近、色々大変な事件が起こり過ぎて……。
なんか疲れちゃった……。」
暫く鈴はしばらく温泉の湯に浸かり、体を温め、疲れを癒した。
ふと温泉の湯の水面に何かが浮かんでいるのを発見した。
「なにかしら?大きな石?誰かが悪戯で投げ込んだのかしら?」
鈴はその浮かんでいる物体に近づいた。
「うっ!クリスさん!」
そう彼女が見たのはまるでクモのような格好のまま湯の水面で
プカプカ浮いているクリス・レッドフィールドその人だった。
「何かあったんですか?」
鈴は慌てふためいて温泉の水面に浮かんでいる
クリスを助け出そうと両手でクリスを抱き抱えた。
しかし鈴は気絶しているクリスの傍に
長い白いタオルが浮いているの気付いた。
鈴は反射的に今しがた抱きかかえたクリスを見た。彼は全裸だった。
さらに不幸な事に鈴法師の茶色の瞳は仰向けに気絶している
クリスの太くそそり立つ黒い毛の生えた象さんを視界に捉えてしまった。
みるみる鈴の顔がピンク色から真っ赤になり、あわあわと口を開けた。
「きゃああああああああああああああっ!」
鈴は取り乱して、絶叫し、両手を組み、力強く振り降ろした。
そしてクリスの胸部に強力な両拳を叩き付けた。
「うっ!ぐえええええええええええっ!」
クリスは胸部の激痛で意識をとり戻した。
しかし彼の身体はくの字に曲がり、勢い良く湯船の底に沈んだ。
同時に再びバッシャアン!
と言う凄まじい水音と共に5m程の水柱が上がった。
暫くして我に返った鈴は湯船の底で
気絶しているクリスを慌てて湯船の外に引き上げた。
「すいません!すいません!すいません!
!すいません!すいません!初めてあれを見たものですから……
すっかり取り乱してしまって!」
鈴は腰にしっかりタオルを巻いて体育座りをしている
クリスに向かって必死に平謝りを繰り返した。
「いや……いいんだ……元をたどれば俺が悪かったんだ……」
クリスは力無くハハハッ!と笑った。
「本当は一人で入るつもりだったんだが。」
そしてクリスは自分の次には言って来た
ジルと邪美と一悶着があった事を話して聞かせた。
その間、ずっとクリスは苦笑いを続けていた。
「一緒に入りませんか?」
「えっ?いやいやいやいや!」
「だってこんな目に遭って温泉を満喫できないんじゃ!
もったい無いですよ!」
鈴は満面の笑顔を浮かべた。
「あっ!そっ!そうかな?」
クリスは困った表情をした。
ちゃぽん!と湯のが跳ねる音がした。
クリスと鈴は身体に白いタオルをしっかりと
巻いたかどうか確認した後、上半身まで湯船に浸かった。
「ふう!これでやっとゆっくりできるな!」
「よかったですね!」
鈴は笑顔でそう言った。
クリスは彼女の屈託の無い笑顔が好きになった。
「いい笑顔だ!」
「えっ?そうですか?」
急にクリスに褒められたので照れてしまった。
「ああ、元気を貰ったよ!」
「ありがとうございますっ!」
しばらく二人は青空を見ながら肩まで温泉の湯に浸かり続けた。
暫くして鈴がこう尋ねた。
「あの、一つ聞いていいですか?」
「なんだ?」
「女の人と……その……。セックスを……した事?ありますか?」
「はっ?」
クリスは鈴にそんな質問をされるとは思わず、ポカンとした表情になった。
そんなポカンとした表情を見た鈴は顔を真っ赤にして、顔を両手で覆った。
「あっ!すいません!すいません!変な質問をしてしまって……」
「いいさ!そうだな。少なくとも俺はそんな経験は無かったかな?」
「ジルとは?」
「ないよ。俺とジルはまだそこまで深い関係じゃないよ。」
彼は苦笑を浮かべた後、そう返した。
それから鈴は自分の事を話し始めた。
「そうですか?実はあたしもその経験はありません。
今は自分の魔戒法師の仕事をこなすのに
精一杯で余り恋人と付き合う余裕が無くて……。」
「大丈夫さ!君の笑顔を好きになる人が必ずいるさ!」
「ありがとうございます……」
鈴はクリスに励まされたのが何故か人生で最高に嬉しかった。
こうしてクリスと鈴はゆっくりと湯に浸かり、
天然の露天風呂を満喫したのであった。
 
(END