(第11章)覇王の夢

おはようございます。
畑内です。
出勤前に昔のゴジラの小説を載せます。

(第11章)覇王の夢

真鶴の街ではキングギドラの黄金の光線とゴジラの青白い放射熱線が互いにぶつ
かって大爆発が起こり、ゴジラはそのまま爆発の勢いで吹き飛ばされ、近くの海
岸に落下した。キングギドラも後ろに吹き飛ばされ、
宙返りをして巨大な翼を広げて飛んだ。
倒れて意識不明になったTVレポーターと数人のTVカメラマンは、
気絶をしなかった仲間のカメラマン達に抱えられ、全て窓ガラスが割れた
TV局の車に乗せると車は慌てふためいてその場から避難しようとした。
ふと1人のカメラマンが大声で
「山岸さん!!カメラが!!」
と言った。
山岸という男は
「分かった!!」
と言うと車を出て吹き飛んだビデオカメラを捜し回った。
するともう1人のカメラマンが
「早くしてください!!次の爆発がいつ起きるか分かりませんよ!!」
とせかすように言った。
山岸と言う男は
「あった!!」
と言うとTV局の大きいカメラを抱え上げた。その時ゴジラがフラフラと立ち上
がり背びれが再び青く輝いた。
もう一人のカメラマンが車から出て山岸という男の素手を引っ張ると
「何をしてるんですか?早く乗ってください!!」
と怒鳴った。
ゴジラの口からハイパースパイラル熱線が放なたれたが、全長150mで翼長4
00mのキングギドラは忽然と消失した。
ハイパースパイラル熱線はそのまま大気圏上空まで飛び、やがて細くなって消えた。
地球防衛軍の仮設本部で
アヤノが
「ギドラ……消失……」
と報告した。
司令官の波川は
「また。一体?何故?」
とつぶやいた。
敵を失い怪我の残ったゴジラも海へと去った。
一方、真鶴上空の轟天号内ではゴードン大佐が
「尾崎!!しっかりしろ!!」
と言った。
尾崎はショックのあまり無言だった。
ゴードン大佐は
轟天号……これから帰還する……」
と涙をこらえながら
「一人の隊員が戦死した……名前は覇王圭介…私の責任だ」
と付け加えた。すると室井少佐はゴードン大佐の胸倉をつかみ泣きながら大声で
「何でドックファイターで行かせたんだ!!どうして止めようとしなかった??
あなたはそれでも轟天号の艦長ですか??それが艦長のする事ですか??」
と激しく怒鳴った。しかしゴードン大佐は無言だった。
暗闇の世界で覇王が「俺は……死んだのか?」
とつぶやく様に言った。また脳裏に別の映像が流れた。
土星
そして再び話し声が聞こえた。
(愚かな奴だ!!)
愚かな奴って?誰だ?
(やはりあいつは例のあの息子では?)
息子って何だ!?何の事だ??そして別の声がした。
(まさか?あいつがバガン狩りを生きがいにしていたあいつが??)
バガン狩り??何の事だ??
さらに別の声がした。
(我々が全盛期だった時にその事件は起こった。)
(初めは両者住み分けていたが……)
(そもそも核による突然変異で大量発生しなければこんな事にならなかった。)
(ただでさえ我々一族の裏切り者の同族達だけでも十分脅威なのに……バガン
まで脅威になった!!)
(いつか我々を脅かすかも知れぬ!!)
(あのバガン族や裏切り者の反逆者達がここに居座り続ければ我々一族に未来は無い!!)
(我々を脅かすバガン族や裏切り者達を殺せ!!)
(いつかは戦争がおこるかも知れぬ!!)
(あいつが!!そうだ!!我々一族とバガン族の間に子供がいたらしい……)
(そんなバカな?)
(信じられない!!)
(それは本当か?)
(ああ……本当だ!!我々の魔王が教えた!!)
(あいつが!!)
(何故早く教えてくれなかった??)
(早く教えてくれれば早めに始末できたのに!!実に遺憾な出来事だ!!)
(しかし……裏切り者は我々の魔王が直々に始末したらしい……)
(それはよかった……)
突然
「覇王!!覇王!!」と呼ぶ声がした。
覇王はハッ!!と轟天号内の医務室のベットで目覚めて起き上ろうとしたが、体
中が痛くて指一本も動かせなかった。目が覚めるとゴードン大佐が
「無事だったのか??」
と安心し笑顔になった。

(第12章に続く)