(第16章)占拠

(第16章)占拠

地球防衛軍の会議室では未だに『音無凛の拉致事件』につい
ての緊急会議が続いていた。
 インターポールの二人に掴まれた4人の外国人の内、一人が
「おい!!船長!!あんたがちゃんと考えねぇからこうなるんだよ!!」
と怒りだしたので、船長は
「あーあ分かったよ!!あの豪華客船の仕事よりは
遥かにマシだった!!危うく死にかけたがね!!」
とケンカを始めた。
 密輸船の男が
「俺達が国連の何を運んだって言うんだ??」
尾崎が
「君達が運んだのは国連の娘さんだ!!」
すると密輸船の男が
「そう言えば船の倉庫で大きなコンテナの中から
女性の声が聞こえていたな……」
密輸船の船長が呆れた様に
「お前!!また覗きを!!」
杏子が
「間違いないのね?」
と聞いた。
船長は呆れかえった様に
「覗きはこいつの趣味だからな……」
再び男は
「ああ……間違いないぜ!!それで『そのコンテナは上海の海
洋研究所から森の研究所に移される』って聞いたし、こんなの
もコンテナの近くで見つけた。」
と言うとポケットから小さな箱と注射針を出した。
船長は
「馬鹿!!そんなものをどこで拾ったんだ!!」
とあわてて言った。
その箱の裏には『中村』と書いてあった。
美雪が
「それ!!凛の担当医師の名前よ!!」
と大声で言った。
尾崎が
「クソ!!中国のスパイがもうすでに!!」
と悔しそうに言った。
 緊急会議が終わって一時間後、CIAの対テロセンターの凛
の護衛を始め、インタポール(国際警察)と地元の警察の捜査
協力により、その凛の担当医師だった男は意外に早く逮捕された。

一方コンテナに閉じ込められていた凛は再び夢の中であの
黄金に光る『何か』と戦っていた。
 黄金の『何か』が不穏な気配を感じたように周りを見た。
凛が訳が分からずその黄金の『何か』の見ている方向を見た時、
突然激しい銃声と爆音に目が覚め飛び起きた。
凛は「何?何が起こったの?どうなってるの?」
と言うとコンテナの隙間の穴から外の様子を見た。
外ではレーザー銃やマシンガンを持った男達が銃撃戦をしていた。
やがて英語で声が聞こえた。
「ここは我々バイオメジャーが占拠した!!これから我々の指示に従ってもらう!!」
日系企業が発掘したと言う怪獣の死体をどう利用するかにつ
いて、及びお前達が現在行っている第2実験についてを……」
中国語で
「それは……」
と口ごもる声が聞こえた。
再び銃声が聞こえ
「言え!!さもないと!!」
中国語であわてた様に
「……M塩基の遺伝子を1時間前に組み込んだ!!」
さらに
「もう!!取引した3人は用済みだが……例の実験の結果がまだ終わっていない…」
とまで言った時、別の英語の声が
「大変です!!ゴジラとジュニアがここへ!!」
凛は訳が分からずその様子を穴の隙間から呆然と眺めていた。
中国人が
「まさか?例の実験体を追って?」
とつぶやいた。
凛が通う高校の教室でチャイムが鳴り、授業が始まった。
眼鏡をかけてリーゼントの様な髪形をした凛の担任の先生は
「いいか!!自動車に免許が必要な様に!!成績が良くなければ!!
良い大学や良い就職にも行けない!!落ちこぼれはダメ人間になる!!」
といつも通りの説教を始めたので友紀は退屈そうに聞いていた。
凛の担任の先生は人差し指で眼鏡を「クイッ」と上げると
「しかし私は君達を落ちこぼれにはしない!!」
山岸は机に突っ伏して
「あの夢は凛ちゃんから聞いたのと同じだった……」
とつぶやきながら考え事をしていた。

(第17章に続く)