(第64章)古い種と新しい種

(第64章)古い種と新しい種

起き上がったサンドラは再び口から大量の血を吐いた。
ゴジラの尾で叩きのめされてビルの瓦礫に沈んだ際に背中から
全身を覆っていた肉芽種の一部が潰れ、潰れた肉芽種から新しいゴジラの鱗に似た皮膚が現れ、
肉芽種の無い綺麗な皮膚に再生した。
 ビルの瓦礫には肉芽種の破片が散乱していたが、
その破片はやがて紫色のアメーバに変わり、動き始めた。
ゴジラはすぐに放射熱線を吐き、その紫色のアメーバを1匹残らず全て焼き付くし、蒸発させた。
ゴジラは彼女の全身に、あの中国の遺跡で見たゴジラやキン
グギドラの天敵である危険な暁色のアメーバの変異体がいると本能的に察知していた。
しばらくサンドラとゴジラはお互い睨み合い殺気を飛ばし合った。
サンドラの真っ赤に充血した眼が徐々に宇宙人の青い眼に戻って行き、正気を取り戻しつつあった。
しかし再びサンドラの身体に激痛が走り、
長い間、戦い続けて蓄積したダメージが一度に襲いかかって来た。
その為、サンドラは耐え難い激痛から逃れようと長く鋭い爪と鉤爪を振り回し、
再びバーサーカーになった。
 ゴジラは素早く、その場から逃れ彼女と距離を取った。

レイの言葉を聞いた美雪は思わず
「それはバガンキングギドラに寄生していた暁のアメーバの事かしら?」
再びサミーが美雪とレイの間に割って入り、美雪に向かって
「必要以上に彼女の相手をするなと言った筈だ!
彼女は賢いんだ!
君を騙して脱走しようとしている!
彼女の話を鵜呑みにするな!」
と大声で叱りつけた。
しかしサミーの怒鳴り声を聞いていたレイは
「古い種が滅びて……新しい種が現れる!人間もX星人も!
それにバガンキングギドラに寄生していた暁のアメーバも同じよ!」
と答えた。
すかさずジーナが
「いや!違うわ!あたし達はたとえどんな試練が訪れても必ず乗り越えてみせるわ!」
しかしレイは何故か笑い声を上げ
「あなたは何も分かっていない……」
と答えた。
ジーナは呆れた顔で外のマイクのスイッチを切った。
G塩基を組み込んだ宇宙植物の入った透明な箱は
自衛官達や地球防衛軍関係者によってどこかの船に運ばれた。
美雪がテントの外を見ると、雪が再びちらつき始めた
網走厚生病院の広場に一隻のアメリカの輸送船が停泊していた。
美雪は
「どうして……ここに輸送船が……」
FBI捜査官は
「何だか……準備が速すぎないかしら?」
と混乱した顔で言った。
美雪は神宮寺博士の方を向き、寒さで凍りついた息を吐きながら
「神宮寺博士!これは!どういうことですか?」
と詰め寄った。
しかし神宮寺博士は
「すまない!今日は行くところがある!君達はテントの中で捕まえた宇宙人の調査を続けてくれ!」
と言うなり、逃げるように歩き去った。
その様子を唖然と見ていたサミーは
「何なんだ?あの学者さん!逃げるように?」
ジーナは
「さあ……分からないわ……」
サミーは
「妙だな……」
美雪は
「ええ……妙よ……」
FBI捜査官は
「神宮寺博士は何かを隠しているわ!」
美雪が
「ええ……」
と答えると3人は一度テントの中に入り、とりあえず美雪達は
神宮寺博士に言われた通り、宇宙人について調べ始めた。
 テントの中でレイが捕獲されているコンテナに待機していた瑞穂は小さなアームを操作し、
8本の触手の中の1本を切って取り出した。
取り出された触手の先端は鋭く尖っていた。
やがて先端が4つに開き、「キーッ!」と甲高い声を上げ吠えた。

(第65章に続く)