(第3章)音無凛

(第3章)音無凛

 初めて聞いた人達は信じられないかも知れないけど……
人間と怪獣のハーフは実在するわ!あたしの名前は『音無凛』。
あたしのパパが怪獣でママが普通の人間!他にもあたしと同じ仲間がもう一人いるの!
名前は『山根蓮』。
 彼の父も怪獣でママが普通の人間!
ちなみに彼は人間と怪獣との共存を図る為にあたしと同じ
『怪獣犯罪調査部』に入っているの!
 そんなあたしや蓮君の事をX星人は『カイザー02』と呼んで、
人間は『無症候性モンスター・キャリア』と呼んでいるわ。

 『無症候性モンスター・キャリア』とは通称『無症候性保怪獣者』と呼ばれ、
蓮と凛の様に怪獣の血を持っていながら体内に怪獣化を抑制する免疫機能がある為、
怪獣化する事無く人としての個体を保ち、普通の生活が送れる人間達の事を指す新しい医学用語である。

 その免疫機能を司っているのは『G塩基』と呼ばれる物質で、
怪獣にはゴジラを始め、モスラ、ケーニッヒギドラ、ジュニア、ラドンが確認されている。
 ちなみに医学界ではこの凛や蓮の様に『無症候性モンスター・キャリア』
の血を他の人間に輸血する事について様々な議論が起こっていた。

「怪獣の血を持つ『無症候性モンスター・キャリア』の血液にはG塩基が含まれているので大丈夫だ!」
と言う意見があるかと思えば、
逆に「もし?G塩基による免疫機能を持たない普通の人間の身体に
『無症候性モンスター・キャリア』の血液を輸血したら怪獣化する危険性がある!
それに『無症候性モンスター・キャリア』の血液にG塩基が含まれているからと言って
普通の人間の体内で正常に機能するかどうか疑わしい、」
と言う意見もあった。

 あたし達の役割は人間と怪獣の世界の秩序を守る『リミッター』なの!
それで高校を卒業する前にもう一人仲間が増えたわ!テロリストだった!
確か?サンドラって言う名前のロシア人だったわね……
彼女はロシアの精神科病棟に入院しているって!尾崎さんから聞いたわ!
 最近あたしのママが小笠原怪獣ランドにある研究所を訪ねたっきり行方不明になっているの!
だからあたしは大学を卒業して『特殊生物犯罪調査部』に入って!彼らと協力してママを探すわ!

 凛達が高校と大学を卒業してから数年後。
地球防衛軍本部内『国連テロ対策センター』の廊下を、
肩まで伸びた金髪をなびかせて歩きながら、
凛は『特殊生物情報部』の前で立ち止まった。
ドアノブに手をかけ、グルリと回し部屋の中に入った。
周りを見渡すとそこには黒いサングラスで黒服の人達が
熱心にパソコン作業や電話の対応に追われていた。
「必ず!ママを探し出す!見つかるまで!決してあきらめないわ!」
凛は自分のデスクに座るとパソコンを起動させ、送られてきたメールの資料を熱心に読み始めた。

 さて母親である音無美雪が覇王圭介の子供の音無凛を妊娠したのは、
ようやく大怪我から回復し、真鶴の病院を退院してからだった。
分子生物学者の仕事にようやく復帰した頃、
彼女が働いている国連の仮設研究所に金田トオル内閣官房長官の野中剣士が訪ねて来た。
 そして彼らは美雪が覇王圭介の子供を妊娠している事を告げ、
テログル―プであるバイオメジャーやサラジア共和国から、
美雪とお腹にいる子供の安全を守る事を条件に、一緒に来る様に説得し始めた。
 しかし彼女は自分のお腹の中にいる子供が「対ゴジラ兵器」
として利用されるのを懸念し、拒絶したが真鶴のCCIの特殊生物研究所に拉致された。
 彼女はそこを自力で脱出し、森の中を飲まず食わず逃げ回った末、
精神的にも肉体的にも追い詰められ、彼女はとうとう断崖絶壁から飛び降りて
自殺しようとしたものの、幸いにも尾崎達によって無事救助された。
 それから9ヶ月後、真鶴の断崖絶壁の海底で無事生還した
美雪は1月18日、無事一人娘の音無凛を出産した。

 音無凛が自分の正体を知ったのは16歳の秋だった。
 彼女は自分と母親の美雪を置いて闇に消えた
父の覇王圭介に対しやり場のない強い怒りと恨みを感じていた。
 彼女は父を捜し出そうと怪しげなカウンセラーの所に通っていた。
それでも父の手掛かりは掴めず、彼女はその苛立ちや、母親と娘を置いって行った
父親に対する怒りや恨みを全て母親にぶつけていた。
 しかし母親の美雪は、娘に父親はどこなのかと
何度問い詰められても固く口を閉ざし続け、決して真実を明かさなかった。
 彼女が怪獣と人間の混血児で最初の「無症候性モンスター・キャリア」だと言う真実を知ったのは、
金田トオルが凛と共に、美雪が働いている仮設研究所を訪ねた時だった。
もちろん彼女は怪獣化等の自覚症状が無かったので本当に普通の不幸な人間の一人だと思っていた。
 そして家に帰った後、父親が残した肉声のテープを聞き、
泣きながら、自分が父親に対する怒りや恨みを持っていた事を深く後悔した。
 彼女は自分が不良達から助けた山岸と言う名のオタク系少年
と恋人になった。幸せな生活を送っていた彼女にデストロイアと言う怪獣が現れた。
 そのとき現れた小美人は、凛の前世は若き天才科学者の芹沢大助博士だと告げた。
デストロイアを倒すには音無凛の力が必要だと言う。
本人は望まない戦いを受け入れず、拒絶していたが級友を殺され、
とうとうゴジラと手を組み、デストロイアと戦い、
彼女の前世を頼りに作り出したオキシジェン・デストロイア中和剤によりデストロイアは倒された。
 
 現在26歳の彼女は中国やロシアのテロリスト達の
様々な陰謀に翻弄されながらも強く逞しく成長していた。

(第4章に続く)

では♪♪