(第3章)凛の異変

(第3章)凛の異変

中国・上海海洋研究所―

孫飛山は先程のX星人の高新一の質問に答える様に
「我々の仲間のスパイが、ターゲットになる例の少女の担当医師になり、まず第
1実験として、少女の中に眠る『例の生物』の本性を目覚めさせるため、野生に
近い『例の生物』の細胞から取った攻撃ホルモンと性ホルモンを混ぜた薬を精神
安定剤と偽って注射する。それから10日間ようすを見て第1実験が成功すれば
次の計画に移る予定だが……ここで高新一さん質問はありませんか?」
高新一はパチパチと拍手しながら「素晴らしい計画だ!!」
と笑いながら言った。
高新一は「また最近分かった事だが……G塩基を持つ生物だけ寿命が終わって死が
近づくと、ある日突然、何も残らず粒子となって消失してしまうようだ…………
理由は地球人よりも高度な科学力を持つ我々でさえ、全くわからない……G塩基も
同時に消失している。」
孫飛山が「えっ?ゴジラにも寿命があるのですか?」
高新一は
「もちろんゴジラにも寿命はある……しかし何年生きられるかについては未だに
不明だ……モスラも短いが決まった寿命はある……恐らく例の少女もその父親も
……」
と答えた。さらに高新一は
「そして彼らは自らの生を全うして、子孫にG塩基を遺伝させていくのだろうと思
われる。もちろん例の少女も、人間としての死体は残るかも知れない……ただし
普通の人間としてだが……」
孫飛山は「それでは!!彼女に死んでもらっては困りますね!!」
高新一は「あくまでも推測に過ぎないがね……」
と少し笑いながら言った。
孫飛山も「次の日が楽しみだ……」
とコーヒーをすすりながら言った。

8月18日『水曜日』・例の実験1日目)―

分子生物学者,音無美雪の娘、音無凛は高校の友達2人を誘って夕食会が開かれていた。
さすが国連の娘だけあって、食事もデザートも豪華だった。
そのテーブルを囲んで音無凛はショートヘアーの金髪を左右に振り
「今日は来てくれて!ありがとう!!山岸くん!!友紀ちゃん!!」
と嬉しそうな声で言った。
やがて豪華な夕食会は終わり、
友紀が「じゃあね!!今日は夕食会ありがとう!」
と言って迎えに来た母親と共に家へ帰って行った。
山岸は「まだ俺の親父が迎えにくるまでまだ時間があるな~」
と困ったように言った。
すると凛が
「じゃ!!2階でテレビを見ようか?」
と誘った。しかし美雪が大声で
「ちょっと!片付け手伝いなさい!」
凛はそれに
「だって!!」
と答えると山岸と共にさっさと二階に上がった。
凛は自分の部屋でテレビをつけようとした。
山岸は「凛ちゃんの部屋……相変わらず凄いな~」
と感心して周りを見ていた。
凛の部屋は中学校かの時から全く変わっていなかった。
大きい広いスペースの部屋で棚にはドイツ語の「ファウスト」の本があった。
それは凛の実の父である覇王圭介が美雪の部屋に置いて行ったものである。
表紙はボロボロだが凜は父の形見と思い大事にしまっている。
さらにその他の外国語で書かれた本も所狭しと
並んでいた。物理や化学の本は全く無かった。他の棚には天使や悪魔に関する本
、オカルト雑誌または芸術に関する本が並び、有名な画家についての本なら何で
もあった。美雪と杏奈の部屋とはまるで正反対である。
他にも合気道やプロレスの本、生物に関する本、SF小説の文庫本、全て中国語
の古文で書かれている「文選」や「山海経」、中国神話に関する本もあった。ま
た沢山のDVDがあった。DVDのほとんどはSFホラーやモンスターパニックや
アニマルパニックと言ったものである。
ところで最近凜は攻撃的で残虐なシーンが多い映画を多く見る様になった。しか
も徐々にそればかりにのめりこんでいた。今まではあまり見なかった恋愛ドラマ
も多く見るようになった。しかも、性と暴力が関係するような内容のものばかり
である。
その凛の様子を見た高校の友達の友紀や山岸はかなり心配していた。
様々な生物の研究の仕事で忙しい音無美雪は友達2人からその様子を聞いて強い不
安感を覚えた。
しかし凛は普通に仲良く2人の友達と接していたので、
美雪は一応安心したもののまだ不安の色を隠せなかった。

(第4章に続く)