(第43章)負けず嫌いの講師!長野先生登場!

(第43章)負けず嫌いの講師!長野先生登場!

マジックミラーを通して倉庫の様子を観察していた1人の医師が
「不思議なものだな……」
看護婦らしき女性が
「どこも人間に似ているなんて…それに、発情期なのかしら。
よく見ると不気味ですね……祥郷さん……」
祥郷と言う名前の医師は
「それを言っては失礼だ!……ゆかりさんから生まれた
デストロイアの子供は成長が早く、丁度、人間で言えば青年位か?」
看護婦は
「それじゃ……」
祥郷は
「この生物のDNAは人間と類似している。またこの生物は見た通りオスだ」
看護婦は
「それじゃまた人間の女性を?」
祥郷は
「不完全なキメラの可能性が非常に高いと言われているが、
その説も100%正しいかどうか分からないと
分子生物学者達は言っている。
ただこのデストロイアの子供は最近、何度も母親と、もう一人、女性の名前を呼び続けている……」
と答えた。看護婦は
「それは知っています……」
2人がマジックミラーを通してそのデストロイアの子供を観察している間にも、
それははっきりと
「ユ……キ……」
と何度も何度も呼び続けていた。
祥郷は椅子に座りながら
「とにかくこの課題をクリアしなくては!」
看護婦も隣で
「そうですね……」
と答えた。

中国の遺跡で3体の怪獣が暴れた事による落石事故により、
調査チームやFBI捜査官と、凛と友紀は、それぞれ崩れた大岩と瓦礫の山に遮られていた。
そこから2人を救出しようと全員互いに協力しながらレーザー銃や手を使い、
長い間、大小の岩を退かした末、ようやく一人が通れる穴が出来た。
ひと仕事を終えて男女のFBI捜査官の2人は額の汗と泥をハンカチでぬぐいながら
「後は……ここを脱出するだけね!」
「そんな……ここは宇宙人達が何かの実験をした跡地だよ!もう少し調べたい!」
すると女性FBI捜査官は
「何度危険な目に合っても懲りない男ね!呆れて叱る気にもならないわ……」
男性のFBI捜査官はため息をついて
「だって!アメリカ政府の頭の固い老人達の命令で!
東京の日東テレビのX星人の正体が収められた
ビデオテープも全て没収されて!
あのX星人の侵略はオカルト組織が仕掛けたテロ行為だと国連や日本政府に頑なに主張しているし!」
男性FBI捜査官は一息置いて話を続けた。
「覇王圭介少佐とケーニッヒギドラについては曖昧のまま闇のに葬られ!
デスギドラやデストロイアは大規模な火山災害や未知の病原菌の仕業だと結論付けている!
何故?突然それらが消滅したかは今でも謎に包まれているからな……
それで極めつけはゴジラモスラ,ジュニアの戦いに関する出来事は
一切触れられていないと言うことか?これで何番目だ!」
と一気に言い終えると再び大きなため息をついた。
すると女性FBI捜査官は
「多分……950番目位になるんじゃないのかしら?」
しばらくして女性FBI捜査官は不安な表情で再び口を開き
「生きて帰れたら!FBIを引退してどこかの病院に勤務する事になるかしら?
もしかしたら不可解な誰かの失踪事件もやらされるかもね?」
とつぶやく様に言った。男性FBI捜査官は少し笑いながら
「もしそこがとても寒い所だったら?」
女性FBI捜査官は「ここよりは多分マシでしょうね!」
と笑い返しながら言った。
凛と友紀は人一人が通れる穴からようやく抜け出し、
尾崎とゴードン大佐に抱きかかえられ無事救出された。

音無凛と高校の同級生で彼女の恋人である山岸は、
自宅の小さな庭で満月の青い空を見上げながら、ギターを弾いてアニメの曲を歌っていた。
山岸は、青い空と静かな夜を独りで楽しむように何か哲学的な事を考えながら歌っていた。
山岸は友紀や凛の事を思い出した。歌を歌い終わると
「友紀ちゃんと凛ちゃん心配だな……」
と口癖の様になっている言葉をつぶやいた。

翌日高校では、新しい国語の講師が来るらしく、その事で話題になっていた。
しばらくして山岸のクラスにその噂の講師が来た。
その講師は生徒達の噂通り、赤い眼鏡をかけた若い女性だった。
講師が早口で「長野古都美」と自己紹介を始めたかと思えば、
いきなり何の前触れも無く山岸を指さし、早口で川柳についての問題を出した。
山岸は突然、難しい川柳の問題を出されたので、一瞬混乱したが、
凛に日頃から国語を教えてもらっていたおかげでどうにか問題には答えられた。
隣にいた原田先生は唖然とそのやり取りを聞いていた。

どうやらその国語の講師は負けず嫌いな性格らしく何度も違う難しい問題を他の生徒に問いかけていた。
ちなみに他にも凛のおかげで難問をどうにか突破する生徒もいれば、
分からないままに終わる生徒もいた。
その頃、山岸は頭の中ではなんとなく、洋子と原田先生の関係をふと思い出した。
また今まで聞いた凛の夢や怒りっぽい凛の顔、友紀と凛が喧嘩した公園等、
今までの出来事がまるで観覧車の様にグルリグルリと巡る様に思い出されていった。

そして巡って怒りっぽい凛の顔を思い出した時、今度は凛の笑顔を思い出した。
ふと山岸は
「そう言えば今まで気がつかなかったけど……凛ちゃんの顔ってお母さんの顔にそっくりだったな……
金髪やあの狼の様な鋭い眼は誰に似ているんだろう?外国人だよな……
友紀ちゃんは両親のどっち似だろう?洋子ちゃんはあの女優さんと本当に瓜二つなのかな?」
と国語の授業とは全く関係の無い考え事を国語の授業が終わる時間まで
ずっと続けていた。

(第44章に続く)